事業報告(2022年6月1日から2023年5月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

⑴ 事業の経過および成果

当連結会計年度(2022年6月1日から2023年5月31日まで)における世界経済及びわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動への制約の緩和が進んだ一方、ウクライナ情勢の長期化などにより、インフレの進行、金利の上昇、為替相場の大幅な変動など、先行きの不透明感が強まりました。

このような状況のなか当社グループでは、ウェブ会議やプロモーション動画の活用などの新しい様式での活動は継続しつつ、感染防止策を講じた上で、展示会の開催や国内外への出張などリアルベースの活動も段階的に再開いたしました。

これらの結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、為替相場が前期比大幅に円安となったこともあり、売上高は772億63百万円(前期比42億13百万円、5.8%増)となりました。品目別では、野菜種子はペッパー、カボチャ、レタス、花種子ではトルコギキョウが好調に推移いたしました。

売上総利益は、利益率の向上と売上高の増加を受けて増益となりましたが、円安の影響に加え、実質ベースにおいても人件費、旅費交通費、研究開発費などを中心に販売費及び一般管理費が増加し、営業利益は109億18百万円(前期比2億63百万円、2.4%減)となりました。経常利益は、受取利息や為替差益の増加により、123億4百万円(前期比1億89百万円、1.6%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期計上した米国での固定資産売却による特別利益が剥落したことなどにより、94億89百万円(前期比27億66百万円、22.6%減)となりました。

セグメント別の業績の概要

売上高 122 72 百万円
前期比 5 11 百万円
%減
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売上高構成比 %

(単位:

事業内容

国内の種苗会社等への農園芸商材(野菜種子・花種子・球根・苗木・資材)の卸売

国内卸売事業は、青果市況の低迷や生産コストの上昇などにより作付面積が減少傾向にあり、全般的に低調に推移いたしました。このような中、SNSにおける商品情報発信やWEB上の顧客限定交流サイトの機能強化など、新しい営業活動の取組を進めております。

商品別では、野菜種子では、トマト、レタスが産地への導入が進み増加しましたが、ホウレンソウ、ニンジン、ネギが減少しました。また、家庭園芸向け需要の落ち着きもあり、花種子と苗木も減少しました。資材は、農園芸肥料は増加しましたが、値上がり前の特需からの反動により、全体では若干の減収となりました。

営業活動の再開などによる経費増はありましたが、効率的な業務体制の構築により営業費用の抑制に努めました。

これらの結果、売上高は122億72百万円(前期比5億11百万円、4.0%減)、営業利益は49億7百万円(前期比21百万円、0.4%減)となりました。

レタス「ブルラッシュ」

サンパチェンス「オーキッド」

売上高 562 64 百万円
前期比 42 19 百万円
%増
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売上高構成比 %

(単位:

事業内容

海外の種苗会社等への農園芸商材(野菜種子・花種子・苗木)の卸売

海外卸売事業は、為替レートが全般的に円安になったことなどから、前期比、増収となりました。

野菜種子は、北中米では、ブロッコリーが米国西部の干ばつの影響から減少したものの、ペッパー、ホウレンソウ、スイカ、メロン、ビートが好調に推移し、増収となりました。欧州・中近東では、カボチャ、ブロッコリー、ハクサイが増加しましたが、トマトがエジプトの外貨規制の影響で出荷を一時見合わせたことから大きく減少し、現地通貨ベースでは減収となりました。南米では、メロンが減少しましたが、カボチャ、ペッパー、ブロッコリー、レタスが大きく伸び、増収となりました。アジアでは、商流変更による販売時期の変更などからニンジンが減少しましたが、ネギ、ブロッコリー、オクラが好調に推移し、増収となりました。

花種子は、ヒマワリは減少しましたが、トルコギキョウが欧州・中近東を除く地域で大きく増加したほか、北中米ではカンパニュラ、南米ではパンジー、アジアではマリーゴールドなどが好調に推移いたしました。

これらの結果、売上高は562億64百万円(前期比42億19百万円、8.1%増)、営業利益は168億21百万円(前期比5億45百万円、3.4%増)となりました。

カボチャ(バターナッツ)「まろあじ」

カンパニュラ「チャンピオンiQ ピンク」

売上高 53 43 百万円
前期比 1 91 百万円
%増
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売上高構成比 %

(単位:

事業内容

ホームセンター・通信販売・直営ガーデンセンターを通じた園芸愛好家への園芸商材(野菜種子・花種子・球根・苗木・資材)の販売

小売事業は、ガーデンセンター横浜と通信販売分野では、巣ごもり需要の落ち着きなどから、前期比減収となりました。量販店向けのホームガーデン分野では、一部帳合替えもあり資材の売上が増加したほか、野菜種子も好調に推移し、前期比増収となりました。

効率的な業務運営による経費削減に努めておりますが、販売運賃の高騰などの影響を受け、営業費用は増加しました。

これらの結果、売上高は53億43百万円(前期比1億91百万円、3.7%増)、営業利益は92百万円悪化し、61百万円の損失(前期は31百万円の営業利益)となりました。

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売上高構成比 %

事業内容

造園緑花事業(造園工事・緑花関係の育成維持管理)、その他

造園緑花分野は、新型コロナウイルス感染症の影響継続に加え、資材や燃料費などの原価上昇による厳しい状況下にありましたが、民間及び公共工事の安定した受注や、緑花関係の育成維持管理業務を着実に実施することができたことから、売上高は33億83百万円(前期比3億14百万円、10.3%増)、営業利益は84百万円(前期比3百万円、4.0%増)となりました。

富士本栖湖リゾート 富士芝桜まつり

次に当社グループの研究開発についてご報告いたします。

主力商品である野菜と花の品種開発は研究本部、農園芸資材の開発はソリューション統括部が担当し、全世界の市場に向けた品種の育成、農園芸資材の開発を行っております。研究開発拠点として、日本国内では静岡県掛川市をはじめ5か所に、海外では北米、南米、欧州、アジア圏など、11カ国14カ所に研究農場を配して、グローバルな研究体制を構築し、気候や環境、土壌や食文化などを踏まえ、世界中で栽培される品種を研究開発しております。

当社の理念である「心と体の栄養」を世界の人々にお届けすることを目標に、サカタオリジナルの価値ある商品開発を進めてまいります。

当連結会計年度の主な研究内容および成果は、次のとおりであります。

【野菜】

当連結会計年度は、カボチャ「SH7-014」、ホウレンソウ「C1-071」、レタス「M8-055」が、一般社団法人日本種苗協会主催の第73回全日本野菜品種審査会において1等特別賞を受賞し、さらにカボチャ「SH7-014」は農林水産大臣賞も受賞いたしました。また、ダイコン「SC8-182」は第64回東京都野菜・花き種苗改善審査会において農林水産大臣賞を受賞するなど、高い研究開発力が評価されました。

新品種におきましては、促成・夏秋栽培で秀品率が高く、食味のよい大玉トマト「れおん」、べと病R–1~19抵抗性の秋冬ホウレンソウ「スーパーセーブ」、寒締め栽培に向く甘みの強いホウレンソウ「寒締め吾郎丸」、根こぶ病耐病性で、耐暑性、早生性を兼ね備えたブロッコリー「アーリーキャノン」、黒腐病耐病性で玉ぞろいのよいキャベツ「ふうりん」、発色のよい紫キャベツ「レッドブライト」など、オリジナル性を重視した品種を数多く発表いたしました。今後も国内外市場において、生産者にも消費者にも喜ばれる品種開発に邁進いたします。

トマト「れおん」

ブロッコリー「アーリーキャノン」

【花】

当連結会計年度は、キンギョソウ「キャンディートップス ローズ」が第64回東京都野菜・花き種苗改善審査会において農林水産大臣賞を受賞しました。また、トルコギキョウ「SM1-389」、「SM9-A-730M」、アスター「SM9-668」、ハボタン「ローブホワイト」(SK3-147M)が、一般社団法人日本種苗協会主催の第68回全日本花卉品種審査会において1等特別賞を受賞しました。海外においてもトルコギキョウの「ロジータ3 ピュアホワイト」がオランダの国際園芸博覧会「フロリアード2022」において最優秀賞を受賞し、国内外での研究開発力の高さを示すことができました。

新品種におきましては、トルコギキョウ「ボヤージュ」シリーズや無花粉タイプ「ソロ PF」シリーズ等で計11品種の切り花品種をそれぞれ発表いたしました。さらに人気の「サンパチェンス」、カリブラコア「ふわリッチ」、カリブラコアとペチュニアの属間雑種「ビューティカル」、ペチュニア「よく咲くペチュニア バカラiQ」、種間雑種ベゴニア「バイキング」の各シリーズにおいて、花壇苗品種をそれぞれ発表いたしました。

今後も国内外市場において、当社のオリジナル性あふれる品種開発が、高く評価されるよう努めてまいります。

キンギョソウ「キャンディートップス ローズ」

ハボタン「ローブホワイト」

【ソリューション】

当連結会計年度は、スマート農業ビジネスへの取り組みとして引き続き環境制御システム「アルスプラウト」の普及を進め、特にイチゴへの導入が大きく拡大し、生産現場の省力化を目指す多くのユーザーにご好評頂きました。また、行政との取り組みではシステム導入からコンサルティング業務の請負等、新たなビジネスが進展いたしました。

当社の事業環境は、これまで以上に環境との調和や持続可能な農園芸商品、サービスの提案が重要なテーマとなっております。こうした中、さまざまな栽培環境の変化に対応する資材としてご愛顧いただいておりました「高機能液肥」シリーズを、『サカタマモル』シリーズとしてリニューアルし、商品の認知拡大を図るためシリーズ感を持たせました。特に日照不足や、猛暑など異常気象への対策として高い評価を受けており、商品ごとの効果を組み合わせてご使用いただくことで、弱った作物の回復や健全な育成を促しユーザーのさまざまな課題解決を応援しております。

また、近年注目を浴びているバイオスティミュラント資材や有機栽培に対応した商品開発を進めております。引き続き、多くのユーザーに安心してご使用いただける商品の提供をお約束いたします。

環境制御システム「アルスプラウト」

『サカタマモル』シリーズ

⑵ 設備投資の状況

当連結会計年度に実施いたしました設備投資の総額は、62億25百万円であります。

主な内容は、掛川総合研究センターにおける研修施設の建設(8億65百万円)、子会社であるSakata Seed Chile S.A.における倉庫施設の建設(7億54百万円)及びSakata Seed America, Inc.における倉庫及びオフィスの拡張(6億85百万円)等であります。

⑶ 資金調達の状況

設備投資、運転資金、借入金の返済などに必要な資金は自己資金の充当および金融機関からの借入により調達しております。

対処すべき課題

世界的な大規模自然災害や地球温暖化などの大きな課題が山積する中で、今まで以上の高い付加価値を種苗に付与し、それを生産者の方々に安定供給すること、そして、持続可能な農業の実現、ひいては世界の人々の豊かな暮らしに貢献していくことが、私ども種苗会社に託された使命です。

当社は、良質な商品とサービスの提供により世界の人々の生活文化向上に貢献し、世界一の種苗会社を目指すこと、そして顧客、取引先、そしてサカタグループの三者が共に栄える「三者共栄」、社員、経営者、株主は一体であり共に繁栄する「三位一体」、地球上の自然とその自然に内包される社会、そして社会に帰属する企業の持続的な共生を目指す「三層共生」を経営理念として掲げております。

「三層共生」はサステナビリティへの取り組みを明確にするため、2022年に新たに経営理念に位置付けられました。自然環境は地球上の生命維持システムであり、社会は人の暮らしや企業活動を支える基盤です。そして企業は、自然や社会から新たな価値を創出していきます。当社は社業である種苗事業や緑花事業を通じて、環境や社会の持続性に寄与するサステナビリティ経営を目指しており、その実現のために2022年8月、「サステナビリティ基本方針」を制定いたしました。

当社グループでは、事業活動を通じて、より良い社会の実現に貢献するとともに、企業としての更なる成長を目指してまいります。具体的には下記の5つの基本方針に基づき、当社の事業計画を推進しております。

①高収益ビジネスモデルの確立

生産者が安心して栽培を実現し、高い収益の確保につなげられるよう、当社では高品質で、オリジナル性の高い種苗を継続的に創出する研究体制の構築を行っております。

また、新たにトップシェアを狙う戦略品目の開発・拡販に努め、経営資源の重点戦略品目への集中とアジアを中心とした新興国市場における成長機会の取り込みによる高収益体制を確立いたします。

②各地域における健全な収益構造の構築と重点戦略の推進

成長市場における市場拡大、成熟市場における高収益モデルの確立を行うことによって、アジア・北米・南米・欧州アフリカの各地域における健全な収益構造を確立いたします。また、成熟市場においては、戦略品目でのシェアの拡大、新興市場においては、野菜や花の消費需要喚起と地域栽培環境に応じた商品の開発等、具体的な重点戦略を立案、実行いたします。

③安定供給と効率化を実現するサプライチェーンインフラの整備

種子の安定供給を実現する生産体制・技術・機能を強化し、効率的なグローバルサプライチェーンマネジメント体制の実現に向けた仕組みづくりを行い、コストと在庫の削減を目指します。

④グローバルカンパニー実現に向けた人財育成、組織、マネジメント体制の構築

日本国籍のグローバルカンパニー実現に向けた人的資源の管理体制の構築や、経営体制の整備とグループマネジメントの高度化をさらに進めます。

⑤経営の効率化を実現するグローバルIT基盤の整備

情報系、会計、サプライチェーン管理のシステムを再整備し、グローバルに最適な事業管理、経営判断を支援するITシステム基盤を構築します。

連結計算書類