事業報告(2023年1月1日から2023年12月31日まで)

企業集団の現況

(1) 当事業年度の事業の状況

事業の経過及び成果

当連結会計年度における事業環境は、インフレ率は2022年後半をピークに緩やかな落ち着きを見せたものの、コロナ禍以前の水準に比べ依然として高く、また、ウクライナ情勢の長期化に加えて、中東地域も不安定な状況がさらに悪化したことによる地政学的リスクの高まりや、世界的な原燃料費の高騰など、国際情勢に重大な影響を及ぼす事象の発生が続き、経済活動の重しとなる状況でありました。
国内においては、原燃料高や、半導体製造装置等の輸出規制、在庫調整局面等により電気機器関連は、生産活動が停滞する状況となりました。一方、新型コロナウイルスの感染対策の緩和など政策的な追い風が見られ、また、主要顧客である大手輸送用機器メーカーにおいては半導体等の部材不足の影響が緩和し、生産活動は回復基調にあります。また、労働市場が逼迫するなか、ITに限らず幅広い業種においてエンジニアの活用ニーズはいまだ活況であります。
このような国内の事業環境に対して、当社グループは、かねてより業績平準化による成長基盤の強化を推進してまいりました。製造系分野においては、長く重石となっていた半導体等の部材不足の影響が緩和し、生産活動は回復基調となりました。外国人技能実習生等の管理受託分野においては、適切な管理実績が顧客に高く評価され、12月末の管理人数は22,215名と国内首位を維持することに加えて、実習生が借金を背負って出国する債務労働問題の解消に向けた外国人労働市場全体の健全化にも取り組んでおります。
技術系分野においては、高止まりするエンジニアニーズに対して、当社グループの教育機関であるKENスクールを活用し、機械設計のみならず、ITや建設、医薬分野に至るまで、多岐にわたって未経験者を教育して配属するスキームにより、採用単価の上昇を抑えながら増員して業績を伸長させました。加えて、新卒採用人数も国内首位を争う規模となり、4月には約1,800名(連結では約2,300名)の新卒者が入社しております。これは採用力のみならず、未経験者の配属先を開拓する営業力と新人教育力、さらには派遣先との信頼関係の賜と考えます。このほか、マクロ環境の影響を受けやすい製造分野とは異なり、景気変動の影響を受けにくい事業分野も拡大を図っております。米軍施設向け事業では、建物や設備の改修・保全への需要は引き続き堅調でありましたが、調達リードタイム長期化及び資材高騰により足もとの成長は足踏みする結果になりました。
一方、海外においては、2022年後半をピークに緩やかに推移しているインフレ率を背景に、経済成長が低迷し金融リスクが高まるなか、先行き不透明感が増している状況でありました。
このような海外の事業環境に対して、当社グループは、海外においても従前より業績平準化による成長基盤の強靭化を力強く推し進めてまいりました。景気変動の影響を受けにくい政府事業等の公共系アウトソーシング事業等を拡充することに加えて、根強い需要がある技術系分野を展開するほか、人材不足の国に対して人材の余剰感のある国から人材を流動化するスキームをグローバル規模で展開しております。事業ポートフォリオ及び地域ポートフォリオ分散の取組が功を奏し、技術系のみならず製造系及びサービス系も増収となりました。
利益面では、国内セグメントにおいては半導体の在庫調整局面等を起因とした需要鈍化等、また海外セグメントにおいては欧米における景気の先行き不透明感を背景としたのれん等の減損損失9,051百万円生じたほか、インフレに伴う人件費等の増加や南米子会社における係争関連費用を受け、利益を押し下げる結果となりました。また、のれんの減損損失は税金計算には加味されないため、税引前当期利益以下の各利益を押し下げる影響を及ぼしました。
以上の結果、連結売上収益は749,608百万円(前期比8.6%増、過去最高を更新)、営業利益は16,476百万円(前期比27.6%減)、税引前利益は13,607百万円(前期比23.5%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,162百万円(前期比51.6%減)となりました。
なお、当社グループは、成長の持続可能性を重視しております。SDGs経営に向けたサステナビリティ方針として、当社グループでは、事業を通して世界の様々な人々の「就業機会」と「教育機会」の創造を実現し、社会課題の解決と事業の成長、ステークホルダーへの貢献に持続的に取り組み、事業活動が広く社会に還元される仕組みを追求してまいります。

事業区分別の概況

売上収益
前期比 %増
営業利益
前期比 8.7 %増
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売上収益構成比 %

売上収益

(単位:

営業利益

(単位:

事業内容

当社子会社にて、メーカーの設計・開発、実験・評価工程への高度な技術・ノウハウを提供するサービス、WEB・スマートフォン等の通信系アプリケーションやECサイト構築、基幹系ITシステム・インフラ・ネットワークの各種ソリューションサービス及び構築、医療・化学系に特化した研究開発業務へのアウトソーシングサービス、建設施工管理・設計や各種プラントの設計・施工・管理等の専門技術・ノウハウを提供するサービス、ITスクール事業等を行っております。

国内技術系アウトソーシング事業におきましては、人材獲得競争による採用費の高騰及び固定資産の減損損失が354百万円生じたものの、旺盛なエンジニアニーズを背景に増収増益となりました。引き続きKENスクールを活用した未経験者を教育して配属するスキームにより採用単価の抑制を図ってまいります。各産業における採用活動の復活及び採用競争の激化はあるものの、期末外勤社員数は、前期末(2022年12月末)比1,148名増の25,861名と、後発ながら業界トップクラスとなっております。製造業の景気変動の影響を受けにくくするための重点分野として位置付けているIT分野や建設、医薬分野も引き続き拡大しました。
以上の結果、売上収益は162,459百万円(前期比8.6%増)、営業利益は11,018百万円(前期比8.7%増)となりました。

売上収益
前期比 %増
営業利益
前期比 35.3 %減
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売上収益構成比 %

売上収益

(単位:

営業利益

(単位:

事業内容

当社及び当社子会社にて、メーカーの製造工程の外注化ニーズに対し、生産技術、管理ノウハウを提供し、生産効率の向上を実現するサービスを行っております。また、顧客が直接雇用する期間社員等の採用代行(有料職業紹介)、期間社員及び外国人技能実習生や留学生等の採用後の労務管理や社宅管理等に係る管理業務受託事業及び期間満了者の再就職支援までを行う、一括受託サービスを行っております。

国内製造系アウトソーシング事業におきましては、自動車業界の生産回復があった一方、半導体を含む電気機器関連の生産停滞を背景に、前期比で0.8%の増収となりました。利益面ではグループ再編コストや半導体の在庫調整局面等を起因とした需要鈍化等によるのれん等の減損損失が4,080百万円生じたことなどにより減益となりました。期末外勤社員数は前期末比1,835名減の24,694名であります。管理業務受託におきましては、顧客メーカーの外国人技能実習生活用ニーズは引き続き堅調であり、適切な管理実績を引き続き高く評価され、国内首位の事業者として12月末の管理人数は22,215名となりました。
以上の結果、売上収益は123,389百万円(前期比0.8%増)、営業利益は4,485百万円(前期比35.3%減)となりました。

売上収益
前期比 %増
営業利益
前期比 13.4 %減
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売上収益構成比 %

売上収益

(単位:

営業利益

(単位:

事業内容

当社子会社にて、米軍施設等官公庁向けサービスや物流向けサービス、コールセンター向けサービス等を提供しております。

国内サービス系アウトソーシング事業におきましては、製造系とは異なり景気変動の影響を受けにくい米軍施設向け事業が主力事業であります。米軍施設の建物や設備の改修・保全業務の需要は堅調であるものの、輸入建設資材の船便遅延といった調達リードタイム長期化が継続し、加えて建設資材や海上輸送費の高騰の影響により費用が増加したことにより、増収減益となりました。しかしながら米軍施設向け事業においては受注残高を積み増しており、中長期での事業収益力は損なわれていないと考えます。
以上の結果、売上収益は33,553百万円(前期比9.8%増)、営業利益は2,762百万円(前期比13.4%減)となりました。

売上収益
前期比 %増
営業利益
前期比 1.1 %減
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売上収益構成比 %

売上収益

(単位:

営業利益

(単位:

事業内容

在外子会社にて、欧州及び豪州を中心にIT、金融、製薬、ライフサイエンス、医療、ヘルスケアなどへの専門スキル人材の派遣・紹介事業、AIを活用した公的債権回収等を行っております。

海外技術系事業におきましては、前期比で増収減益となりました。英国では利益率の高い公的債権回収事業が回復傾向を継続し、回収効率が向上した一方で、アイルランドではグローバルIT大手のレイオフ等の先行き不透明感が人材紹介事業に一部影響を及ぼしました。インフレに伴う人件費等の費用増となりましたが、派遣事業が安定的に手堅く推移しました。
以上の結果、売上収益は174,873百万円(前期比5.7%増)、営業利益は7,900百万円(前期比1.1%減)となりました。

売上収益
前期比 %増
営業利益 百万円
前期比 53.9 %減
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売上収益構成比 %

売上収益

(単位:

営業利益

(単位:

事業内容

在外子会社にて、アジア、南米、欧州等において製造系生産アウトソーシングへの人材サービス及び事務系・サービス系人材の派遣・紹介事業や給与計算代行事業等を行っております。また、欧州及び豪州にて公共機関向けBPOサービスや人材派遣、欧州及びアジアにて国境を越えた雇用サービス等を行っております。

海外製造系及びサービス系事業におきましては、オランダの大手スーパーを中心としたインターネットショッピング関連事業だけでなく物流系への注力や派遣単価引上げ、また、ドイツにおける航空業界向けの堅調な需要を背景に二桁増収となりました。
一方、利益面では、欧米における景気の先行き不透明感を背景としたのれん等の減損損失4,617百万円が生じたほか、海外技術系と同様にインフレに伴う人件費等の費用増や南米子会社における係争関連費用を受け、利益を押し下げる結果となりました。
以上の結果、売上収益は255,272百万円(前期比14.9%増)、営業利益は2,106百万円(前期比53.9%減)となりました。

売上収益 百万円
前期比 %増
営業利益 百万円
前期比 29.0 %減
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売上収益構成比 %

売上収益

(単位:

営業利益

(単位:

事業内容

当社子会社にて、事務代行業務等を行っております。

その他の事業におきましては、特例子会社での障がい者による事務のシェアードサービス事業及び手話教室事業等が、計画どおりに推移しました。一方、利益面は賃金上昇等により、利益を押し下げる結果となりました。
以上の結果、売上収益は62百万円(前期比1.3%増)、営業利益は226百万円(前期比29.0%減)となりました。

(2) 直前3事業年度の財産及び損益の状況

① 企業集団の財産及び損益の状況

(注) 第24期・第25期・第26期において行った企業結合に係る暫定的な会計処理の確定に伴い、第24期・第25期・第26期の関連する諸数値について遡及修正しております。なお、第24期・第25期・第26期の数値は、過年度の不正または誤謬による虚偽表示の訂正による遡及処理後の数値であります。

② 当社の財産及び損益の状況
    (注)
  • 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第26期の期首から適用しており、第26期以降に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。
  • 第24期・第25期・第26期の数値は、過年度の不正または誤謬による虚偽表示の訂正による遡及処理後の数値であります。

(3) 対処すべき課題

今後の世界経済の見通しにつきましては、インフレ圧力の高まりは2022年後半をピークに緩やかな落ち着きを見せたものの、コロナ禍以前と比べ依然として高く、また、ウクライナ情勢の長期化に加えて、中東地域も不安定な状況がさらに悪化したことによる地政学的リスクの高まりや、世界的な原燃料費の高騰など、国際情勢に重大な影響を及ぼす事象の発生が続き、これらのリスク増大によって世界経済は、不透明感がなお色濃い状況であります。
当社グループでは、このように先行きが不透明な事業環境にあっても、持続的成長を実現していくために、以下を対処すべき主要課題と捉えております。

① ガバナンス体制の強化

グローバルに事業拡大している当社及び当社子会社では、買収した会社も含めて健全な経営を行う必要があります。これを継続して実現するため、各国の法令を尊重しつつも、グローバル経営の視点に立った同一目標・同一管理手法を確立し、加えて、内部統制システムを全社に適用し、当社グループ全体のガバナンス強化及びコンプライアンス体制の拡充を図ってまいります。
当社は、2023年12月20日に株式会社東京証券取引所より公表措置が実施され、2024年1月15日に改善状況報告書を提出しております。ステークホルダーの皆さまに、多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを、改めて深くお詫び申し上げます。当社は、当社及び当社子会社における一連の不適切な会計処理の問題(以下「2022年訂正事案」といいます。)を受けて当社グループとして策定した再発防止策の実行による内部統制の整備・運用を図るとともに、内部管理体制等の強化に努めてまいりました。その結果、当社及び国内子会社において、発生原因となった企業風土改革・従業員のコンプライアンス意識の醸成・会計リテラシー向上について一定の成果が現れてきたものと考えておりました。
そのような状況下、コーポレート・ガバナンスの更なる強化を目的として、経営の監督機能と執行機能の分離をより一層明確にし、経営監督機能を強化しながら迅速・果断な意思決定を行うために、指名委員会等設置会社へ移行いたしました。
しかしながら、当社及び国内子会社において、雇用調整助成金の不正受給の疑義及び国内子会社における一部の取引先との取引プロセスに疑義等がある旨の問題(以下「2023年訂正事案」といいます。)が発生してしまいました。これに伴い、外部調査委員会からは、2022年訂正事案を受けた再発防止策が形骸化している旨が指摘され、また、再発防止策に対する真摯な取組及びその理解・浸透の徹底、稟議手続等における実効的な牽制機能の実現、及びコンプライアンス意識の再徹底が提言されました。これを受け、新たな再発防止策を決議するに至り、その内容は、2022年1月に公表した再発防止策を踏襲しつつ、再発防止策をどのように徹底していくかを修正の主な内容としております。また、再発防止策を徹底することのできる新たな企業風土の醸成・浸透を進めるため、社外取締役をトップとしたOSグループガバナンス委員会を設置し、再発防止策の検証と実行を担うことといたしました。

(再発防止策)

  • ・企業風土改革
  • ・コンプライアンス意識の一層の醸成、再発防止策の徹底
  • ・経営体制の強化
  • ・コーポレート・ガバナンス体制・組織体制の再構築
  • ・内部統制部門の強化
  • ・内部通報制度の見直し
  • ・会計処理に係る社内ルールや経理会計システムの見直し
  • ・実現可能な事業計画・予算の策定
  • ・取引先の限定

このような事態を二度と繰り返さないためにも、これまで実施してきた再発防止の取組を今後も全社一丸となって継続的に実行・改善し、上場企業にふさわしいガバナンス体制とコンプライアンス体制を維持することで、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に励み、株主、取引先、地域社会、従業員等を含むすべてのステークホルダーの皆さまからの更なる信頼回復に努めてまいる所存です。

② SDGs経営の強化

当社グループは、サステナビリティ方針に基づき、社会と企業の持続可能な発展に貢献できるよう取り組んでおります。この活動をさらに強化し、5つのマテリアリティ(重要課題)に沿ってKPIを定めており、事業を通じて社会問題の解決に寄与しながらSDGsの目標達成に貢献してまいります。

③ 人材育成による企業体質の強化

人材を活用したビジネスを行う当社グループは、人材を最も重要な資産として捉えております。人材を適正に扱うため、また人材を扱った各種サービスを適正に提供するための基礎的な知識・能力や、生産現場における労務管理能力及び生産管理能力を向上するための教育・育成を徹底しております。併せて高度・多様化し続ける顧客ニーズに迅速、柔軟かつ的確に対応するためにも、優秀な人材確保及び人材育成を重要課題として取り組んでおります。
今後も、世界で通用する規律・遵法意識を兼ね備え、多様な知識と経験を有する有能な人材を、国籍や性別を問わず、グローバルに採用・教育することを通じて、企業体質の強化に取り組んでまいります。

④ 変動の激しい事業を補完する体制の構築

製造系アウトソーシング事業は、生産変動の激しい量産工程に対する人材派遣や業務請負を行っている性質上、リーマンショックのような大きな景気後退時には、急激かつ大量の雇用解約が発生するのに対し、景気回復時の増産時には採用が追い付かず、往時の業績に戻ることのできない同業者が散見され、機会損失が非常に大きな問題となっています。
このような状況に対し、当社グループでは、急な大型減産でもグループ全体では黒字を維持しながら雇用解約せずに人材を確保しておき、その後の増産に即時配属して業績を回復できる体制が必要と考えます。そのために製造とは異なるサイクルの分野や景気の影響を受けにくい分野の事業拡大を推進し、製造系アウトソーシング事業の売上構成比を相対的に抑制しながら、業績平準化による成長基盤の強靭化を目指してまいります。

⑤ 成長機会を逃がさない基盤構築

日本国内の人口は減少傾向にあるため人材市場は限定的となり、今後の大きな成長は望めませんが、世界全体では人口は増加傾向にあり、今後30億人増加するともいわれております。当社グループの事業の多くは稼働している人員数に業績が連動しているため、人口が増加し余剰感のある国から不足している国へ、グローバルに人材を流動化させる体制を構築し、この成長ポテンシャル獲得に取り組んでまいります。併せて、人材流動化スキームで移動する労働者をサポートするための事業にも取り組み、雇用を伴わない新たな事業の柱としての確立・発展を目指します。グローバル人材流動ネットワークを確立した暁には、世界一の人材サービス企業への道も拓けると考えており、体制構築に向けた成長投資を推進してまいります。

連結計算書類