第24期事業報告(2022年12月1日から2023年11月30日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過及びその成果

全般的概況

当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大による行動制限の緩和を受け、消費活動に回復の兆しが見え始めました。一方で、ウクライナ情勢の長期化、原材料・エネルギー価格の高騰による物価上昇の広がり、世界的な金融引締め等による景気後退リスクなど、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

そのような中、当社グループは、社会的価値と経済的価値創出の両立を経営の基本方針として、社会貢献性が高く、付加価値の高い事業を複数展開するポートフォリオ経営を推進してまいりました。ビジネスソリューション事業においては、主力の障がい者雇用支援サービスや急成長中の環境経営支援サービスなど、ほぼ全てのサービスが増収となり、売上は堅調な伸びとなりましたが、利益面については、先行投資の影響等により小幅な増加にとどまりました。人材派遣サービスを主力とする人材ソリューション事業においては、インバウンド関連に注力した販売支援業務の売上回復は進んだものの、コールセンター業務のコロナ関連の売上減少の影響が大きく、大幅な減収減益となりました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は25,784百万円(前連結会計年度比3.3%減)、営業利益は2,616百万円(前連結会計年度比15.4%減)、経常利益は2,684百万円(前連結会計年度比13.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,026百万円(前連結会計年度比12.0%増)となりました。

事業別概況

当連結会計年度のセグメント業績(セグメント間内部取引消去前)は以下のとおりであります。

売上高
前期比 %増
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事業別売上高
構成比率
%

(単位:

[事業概要]

ビジネスソリューション事業では、シニアや障がい者など潜在労働力の活用を支援するサービスや、企業の業務の一部を受託するアウトソーシングサービスを提供しています。前者においては、株式会社エスプールプラスが、障がい者の就労に適した農園を企業に貸し出し、主に知的障がい者の採用・教育から定着までを支援するサービスを行っています。株式会社エスプールでは、様々な経験やノウハウを有するシニアを企業の経営課題や業務課題の解決に役立てるサービスを提供しています。

後者のアウトソーシングサービスでは、株式会社エスプールロジスティクスが、通販商品の発送を代行する物流サービスを行っています。株式会社エスプールリンクは、アルバイトやパートの採用業務の一部を代行するサービスを提供しており、株式会社エスプールセールスサポートでは、対面型の会員獲得業務や販売促進業務を行っています。ブルードットグリーン株式会社は、温室効果ガス(GHG)排出量の算定や環境情報の開示に関するコンサルティング、カーボンオフセット仲介など、企業の環境経営を支援するサービスを提供しています。株式会社エスプールグローカルでは、複数の自治体の行政業務を一括で受託する広域行政BPOサービスを行っています。

[当連結会計年度の経営成績]

障がい者雇用支援サービスについては、法定雇用率の引き上げを2024年4月に控え、営業活動が活発になりました。類似サービスが増える中で、法令順守をはじめとした適正なサービス提供を重視する機運が追い風となっており、第4四半期の新規受注は過去最高となりました。設備販売に関しても、第4四半期は過去2番目となり、通期計画を上回ることができました。ロジスティクスアウトソーシングサービスにおいては、売上高は計画通りとなりましたが、利益面に関しては2023年7月に新設した流山センターの開設費用に加え、安定稼働に想定よりも時間と費用を要したため減益となりました。採用支援サービスについては、コロナ禍からの需要回復に加え、サービス業を中心とした人手不足感の強まりが大きな追い風となり、売上高は過去最高となりました。広域行政BPOサービスにおいては、営業活動がすでに来年度以降の案件が中心となっていることから、直近の案件の積み上げはなく、当第4四半期の売上高は第3四半期と同水準で推移しました。通期の売上高は前期から約5割増となりましたが、営業活動の遅れ等により新センターの稼働率が計画を大きく下回り、わずかながら営業損失が発生しました。環境経営支援サービスについては、ESG・サスティナビリティへの社会的な意識の高まりを背景に企業の環境対応の取り組みが加速しており、環境情報開示に関連したコンサルティングサービスが大幅な伸びとなりました。

その結果、当連結会計年度の売上高は12,555百万円(前連結会計年度比23.1%増)、営業利益は2,981百万円(前連結会計年度比2.0%増)となりました。

売上高
前期比 %減
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事業別売上高
構成比率
%

(単位:

[事業概要]

人材ソリューション事業は、人材派遣サービスを主力とする株式会社エスプールヒューマンソリューションズが提供するサービスで、コールセンター等のオフィスサポート業務とスマートフォンや家電製品等の店頭販売支援業務、ホテル業など接客業務に関する人材サービスを展開しています。サービスの特徴は、フィールドコンサルタント(FC)と呼ばれる同社の従業員と派遣スタッフをチームで派遣する「グループ型派遣」の形態を採用している点になります。派遣先に常駐するFCが派遣スタッフを現場で手厚くフォローすることで、未経験者を短期間で育成できるだけでなく定着率の向上にもつながり、顧客満足度の向上とシェア拡大につながっています。

[当連結会計年度の経営成績]

主力のコールセンター向けの人材派遣サービスにおいては、新型コロナウイルス感染症に関連したスポット案件が終了したことにより、大幅な減収となりました。関連業務の終了はほぼ一巡し、第4四半期には売上減少にようやく歯止めがかかりつつある状況がみられましたが、新規案件に対する需要が弱く本格回復には至りませんでした。販売支援業務については、通信キャリア関連の人材派遣ニーズの回復が依然として遅れているため、人手不足が深刻となっているインバウンド関連の営業に注力しました。この取り組みにより、ホテルや空港関連の案件の獲得が進み、回復に転じることができました。

その結果、当連結会計年度の売上高は13,310百万円(前連結会計年度比19.7%減)、営業利益は1,257百万円(前連結会計年度比24.7%減)となりました。

対処すべき課題

当社グループでは、次の10年の成長を見据えた新たな事業戦略を推し進めてまいります。当社グループの中でも、優良な顧客基盤を有し、高い成長が期待できる「障がい者雇用支援サービス」、「環境経営支援サービス」、「広域行政BPOサービス」を重点注力分野としてまいります。それぞれの分野では、既存サービスの深化によるオーガニック成長に加え、新規事業開発やM&Aを通じて事業領域を拡大していくことで新たな成長を追求してまいります。障がい者雇用支援サービスについては、これまでの農園型のサービスに加え、障がい者の特性に合わせて多様な働き方を可能とするサービスの開発にも取り組んでまいります。環境経営支援サービスでは、環境分野のコンサルティングメニューの拡充に加え、ISSBやESG評価対応の支援など、事業領域をサステナビリティ全般に広げてまいります。広域行政BPOサービスにおいては、地方自治体ネットワークを活用し、事業承継や行政MaaS、移住・定住など地方創生をテーマにしたサービスの開発に取り組んでまいります。

現状・今後の経営環境を踏まえ、以下、当社グループが中長期観点から対処すべき課題を記載します。

① 既存事業の継続的な発展

当社グループは、持続的な成長を実現するには安定的な収益基盤を構築することが重要であると考えております。その根幹となる既存事業においては、現在の事業領域で継続的な収益を確保しつつ、派生事業の開発に取り組むことで収益構造の多様化を進めてまいります。また、長期的視点での成長を確実なものとするために、既存サービスの継続的な改善及び高付加価値化によって競争優位性を着実に高め、お客様との強固な関係の構築に取り組んでまいります。

② 主力事業への依存度の軽減

当社グループの営業利益の構成比は、障がい者雇用支援サービスと人材派遣サービスの主力2事業で88.6%を占めております。環境変化等により主力事業の収益が悪化した場合には、業績に大きな影響を与える可能性があることから、新たな収益の柱の構築が必要であると認識しております。具体的には、ロジスティクスアウトソーシングサービスをはじめとした既存事業のより一層の推進を図るとともに、市場拡大が期待できる自治体向けのBPOサービス領域や環境ビジネス領域など新たな事業領域での成長機会の獲得を目指してまいります。

③ 優秀な人材の採用・育成

「社員の成長が会社の成長につながる」という方針のもと、当社グループのビジョンに共鳴する優秀な人材を採用し育成していくことが重要であると考えております。社会変化や課題を敏感に察知し、主体的に解決に取り組むことのできる人材を積極的に採用していくために、社会的意義のある事業(ソーシャルビジネス)のより一層の推進はもとより、若手を中心とした次世代リーダーの育成にも注力してまいります。

④ 多様な人材の活躍促進

多様な人材が高い意欲を持ち長期的に活躍できる環境を構築することが企業の競争力を高める上で重要であると考えております。そのためにキャリアチャレンジ制度やカンパニー制など社員の挑戦を後押しする制度や、従業員持株会の奨励金100%付与(積立金額に対して同額の奨励金を会社から支給)や保健室を中心とした健康経営の推進など、長期的に安心して働くことができる仕組みの導入など、環境整備に注力しております。

連結計算書類