事業報告(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)

1. 企業集団の現況に関する事項

企業集団の事業の経過及びその成果

全般的概況

売上収益

当社グループの経営指標である為替一定ベース(注1)のcore revenue(注2)は、前年度比6.1%増となりました。また、売上収益は、たばこ事業及び医薬事業での増収により、前年度比6.9%増の2兆8,411億円となりました。

調整後営業利益、営業利益及び当期利益(親会社所有者帰属)

当社グループの経営指標である為替一定ベースの調整後営業利益(注3)は、主にたばこ事業における増加により、前年度比5.2%増となりました。また、調整後営業利益は、一部現地通貨による為替影響がネガティブに発現し、前年度と同水準の7,280億円となりました。

営業利益は、調整項目における買収に伴い生じた無形資産に係る償却費の減少や、不動産の処分に係る収益の増加により、前年度比2.9%増の6,724億円となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の増加に加えて、金融損益の改善や法人所得税費用の減少により、前年度比8.9%増の4,823億円となりました。

当社グループの経営指標

全社業績

    (注)
  • 為替一定ベースは、たばこ事業における当期の調整後営業利益、core revenue又は自社たばこ製品売上収益から、前年同期の為替レートを用いて換算・算出した為替影響及び一定の方法を用いて算出した一部市場のインフレに伴う売上又は利益の増加分を除いたものです。
  • core revenueは、自社たばこ製品売上収益、医薬事業・加工食品事業・その他の売上収益の合計です。
  • 調整後営業利益は、営業利益+買収に伴い生じた無形資産に係る償却費+調整項目(収益及び費用)です。なお、調整項目(収益及び費用)はのれんの減損損失±リストラクチャリング収益及び費用等です。

事業別の概況

たばこ事業

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当年度におきましては、EMA(注1)における堅実な伸長、Asia(注1)における底堅い販売数量、継続的なシェアの伸張及び一部市場における堅調な総需要トレンドにより、英国を中心としたWestern Europe(注1)における総需要減少影響を上回り、総販売数量(注2)は前年度比2.4%増の5,401億本となりました。また、Combustibles販売数量(注3)は、Winston及びCamelの伸長により、前年度比2.3%増の5,313億本となりました。RRP販売数量(注4)は、日本においてHTS(注5)販売数量が伸長したことや欧州におけるPloom Xの新規投入により、前年度比11.8%増の88億本となりました。

自社たばこ製品売上収益(注6)は、Western Europe及びEMAにおけるポジティブな単価差・商品構成影響、Asia及びEMAにおけるポジティブな数量差影響並びにポジティブな為替影響により、前年度比7.1%増の2兆4,786億円となりました(為替一定ベースでは前年度比6.4%増)。RRP関連売上収益(注7)は、前年度比8.3%増の816億円となりました。

調整後営業利益は、ネガティブな為替影響により、前年度比0.6%減の7,498億円となりました(為替一定ベースでは前年度比4.4%増)。

    (注)
  • JTグループのたばこ事業をより深く理解していただくために、同事業を3地域のクラスター(Asiaは日本を含むアジア全域、Western Europeは西欧地域、EMAは東欧、中近東、アフリカ、トルコ、南北アメリカ大陸及びGlobal Travel Retail)に区分けしたものです。
  • 総販売数量は、水たばこ/製造受託/RRPデバイス及び関連アクセサリーを除くたばこ製品の販売数量です。
  • Combustibles販売数量は、水たばこ/E-Vapor/無煙たばこ(Snus・ニコチンバウチ)/加熱式たばこ/製造受託を除くたばこ製品の販売数量です。
  • RRP(Reduced-Risk Products)は、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品です。当社製品ポートフォリオにおけるHeated tobacco sticks、Infused tobacco capsules、E-Vapor、無煙たばこ製品等が含まれます。また、RRP販売数量は、Reduced-Risk Productsの販売本数を紙巻きたばこに換算した数量であり、RRPデバイス/関連アクセサリー等は含みません。
  • HTS(Heated tobacco sticks)は、高温加熱型の加熱式たばこです。
  • 自社たばこ製品売上収益は、物流事業/製造受託等を除く売上収益です。
  • RRP関連売上収益は、自社たばこ製品売上収益の内訳としての、RRPデバイス/関連アクセサリー等を含むReduced-Risk Productsの売上収益です。
Ploom Xの進捗
  • 日本におけるHTSカテゴリ内シェアは、競争が激化する中でも着実に伸張し、2023年度末時点で11.4%のシェアを獲得
  • 地理的拡大も順調に進捗しており、2023年度末の展開市場数は13市場に到達
  • 2025年度末には世界全体のHTS総需要の約80%をカバーする見込み。2026年度末までに40以上の市場でPloom Xを展開
市場シェアは引き続き伸張
  • 2023年度は50以上の市場でシェアが伸張し、Totalシェアは過去最高を達成
  • 市場シェアは、イタリア・日本・フィリピン・台湾といった主要市場を中心に伸張

医薬事業

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医薬事業につきましては、次世代戦略品の研究開発推進と各製品の価値最大化を通じ、当社グループへの利益貢献を目指しております。

開発状況としましては、現在当社において8品目が臨床開発段階にあります。

アトピー性皮膚炎治療薬「コレクチム®軟膏0.5%、0.25%」につきましては、乳幼児アトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験の成績を踏まえ、2023年1月30日に乳幼児(生後6ヶ月以上2歳未満)の患者様への適応拡大が認められました。

JTE-061(tapinarof)につきましては、2023年9月15日にアトピー性皮膚炎及び尋常性乾癬を適応症として国内製造販売承認申請を実施しました。なお、JTE-061は、小児アトピー性皮膚炎を適応症とした国内Phase3試験についても実施中です。

enarodustatにつきましては、導出先である中国のSalubris社が、透析導入前(保存期)の成人の慢性腎臓病に伴う貧血を適応症として、2023年6月7日に中国における製造販売承認を取得しました。

delgocitinibにつきましては、導出先であるデンマークのLEO Pharma社が、慢性手湿疹を適応症として欧州医薬品庁販売承認申請を実施し、2023年8月17日に受理されました。

当年度における売上収益につきましては、導出品のライセンス契約に係る一時金収入及びグループ会社である鳥居薬品株式会社の増収により、前年度比14.4%増の949億円となりました。

調整後営業利益につきましては、売上収益の増収により、研究開発費の増加があったものの、前年度比56.2%増の174億円となりました。

コレクチム®軟膏0.5%

臨床開発品目一覧(2024年2月13日現在)

加工食品事業

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加工食品事業につきましては、冷食・常温事業、調味料事業に注力し、付加価値の高い商品の販売を強化するなど、収益力の向上に取り組んでおります。

当年度の冷食・常温事業におきましては、注力している冷凍麺、パックごはん、お好み焼等は引き続き国内市場において高いシェアを維持するとともに、具材、麺、スープにこだわった有名店監修の冷凍具付ラーメン「まるぐシリーズ」を展開するなど、更なる競争力の強化に向け、家庭用新製品を20品、リニューアル品を30品発売しております。

また、急激な為替の変動等による原材料費の高騰等が続き、事業に対してネガティブな影響がありました。そのような厳しい事業環境においても、生産性向上やコスト削減等の継続的な取組みに加え、出荷価格改定を実施し、利益の創出に最大限努めてまいりました。

当年度における売上収益につきましては、冷食・常温事業において、価格改定に加えて、外食需要の回復による業務用製品のトップライン伸長があるものの、ベーカリー事業の譲渡に伴う売上収益の剥落により、前年度比1.1%減の1,539億円となりました。

調整後営業利益につきましては、冷食・常温事業における価格改定効果や業務用製品のトップライン伸長が、原材料費等の高騰を上回り、前年度比95.2%増の68億円となりました。

2. 企業集団が対処すべき課題

(1)経営の基本方針

当社グループの経営理念は、「4Sモデル」の追求です。これは「お客様を中心として、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく」という考え方です。

当社グループは、「4Sモデル」の追求を通じ、中長期に亘る持続的な利益成長の実現を目指しています。持続的な利益成長のためには、お客様に新たな価値・満足を提供し続けることが前提となることから、中長期的な視点に基づき、将来の利益成長に向けた事業投資を着実に実施していくことが肝要と考えております。

この「4Sモデル」を追求していくことが、中長期に亘る企業価値の継続的な向上に繋がると考えており、株主を含む4者のステークホルダーにとって共通利益となるベストなアプローチであると確信しております。

また、社会・事業環境が非連続に変化し、その不確実性・複雑性がますます高まっていく中で、当社グループが持続的な存在であるための方向性を明確にするものとして、2023年度にJT Group Purpose「心の豊かさを、もっと。」及び各事業Purposeを策定しました。この実現に向けた行動指針についても策定が完了しております。

今後は事業戦略の遂行・行動指針の実践を通じて、成果を創出し、実績を積み上げていくことにより、JT Group Purposeの実現を目指してまいります。

<事業Purpose>

  • ・たばこ事業:Creating fulfilling moments. Creating a better future.
  • ・医薬事業:科学、技術、人財を大切にし、患者様の健康に貢献します。
  • ・加工食品事業:食事をうれしく、食卓をたのしく。

時代や人により、多様で、変化していく「心の豊かさ」の領域を、今後も社会から任され、貢献できる存在であり続けるため、当社グループは絶えず進化してまいります。

(2)中長期的な会社の経営戦略及び課題

当社グループの中長期の経営資源配分は、「4Sモデル」及びJT Group Purposeに基づき、中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資(注1)を最優先とし、同時に事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視する方針です。

当社グループは、たばこ事業を利益成長の中核かつ牽引役と位置付け、たばこ事業の持続的な利益成長に向けた事業投資を最重要視します。一方、医薬事業及び加工食品事業は全社利益成長を補完すべく、必要な投資を実行していきます。

各事業の中長期の目標は以下のとおりです。

当社グループは、不確実性を増す経営環境を見極め、スピード感を持って競争力を強化すべく、期間を3年間とした経営計画を1年ごとにローリングを行う方式で策定しており、経営理念及び経営資源配分方針を踏まえ、全社利益目標及び株主還元の中長期の方向性を「経営計画2024」において設定しています。

「経営計画2024」においては、今後最も成長が見込まれるHTS(注3)への大規模な戦略的投資を行う影響等により、2024年度為替一定ベースの調整後営業利益は前年同水準を見込んでおりますが、経営計画期間後半にかけてはHTSの成長ペースが高まることから、期間中における為替一定ベースの調整後営業利益の成長率は、年平均mid single digit(注4)を見込んでおります。なお、中長期に亘っては、年平均mid to high single digitの成長へと回帰させてまいります。

株主還元方針については、「4Sモデル」及びJT Group Purposeに基づく経営資源配分方針で掲げる「中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資を最優先」と「事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視」という観点から、以下のとおりとしています。

  • ・強固な財務基盤(注5)を維持しつつ、中長期の利益成長を実現することにより株主還元の向上を目指す
  • ・資本市場における競争力のある水準(注6)として配当性向75%を目安(注7)とする
  • ・自己株式の取得は、当該年度における財務状況及び中期的な資金需要等を踏まえて実施の是非を検討

全社中長期利益目標の達成に向け、各事業においてはそれぞれの目標に沿って邁進し、特に、質の高いトップライン成長を最重要視してまいります。また、コスト競争力の更なる強化を実現すること及びこれらを支える基盤強化を推進していくことで、持続的な利益成長を実現してまいります。

当社グループを取り巻く経営環境は、地政学リスクの顕在化やハイパーインフレ市場等における為替変動リスク等、不確実性を増していると認識しております。こうした不透明な経営環境を乗り越え、適切にグローバルビジネスを運営し、持続的な利益成長を実現するためには、「変化への対応力」が必要であると考えております。これは、不確実性に対処すべく、計画策定時において想定の範囲を拡げるとともに、それでも起こりうる想定を超える変化・出来事に対して、素早く・柔軟に対応する能力を指しており、この変化への対応における巧拙とスピード感は、引き続き企業の競争力を決定する重要なファクターになると考えております。

加えて、デジタル・テクノロジーの進展、生活者の意識・行動の変化及びESGやサステナビリティに対する意識の高まり等、世の中の大きくかつ急速な流れを踏まえ、「変化への対応力」という受け身の対応だけではなく、自ら変化を起こし、変革をリードする組織への進化を加速してまいります。

    (注)
  • たばこ事業の成長投資を最重要視し、お客様・社会への新たな価値・満足の継続的な提供を通じて、質の高いトップライン成長を実現することで、為替一定調整後営業利益の成長を目指す。
  • mid to high single digit:一桁台半ばから後半のパーセンテージ
  • Heated tobacco sticks。高温加熱型の加熱式たばこ。1スティック=RMC1本として換算
  • mid single digit:一桁台半ばのパーセンテージ
  • 経済危機等に備えた堅牢性、及び機動的な事業投資等への柔軟性を担保
  • ステークホルダーモデルを掲げ、高い事業成長を実現しているグローバルFMCG(Fast Moving Consumer Goods)企業群の還元動向をモニタリング
  • ±5%程度の範囲内で判断

連結計算書類