事業報告(2023年1月1日から2023年12月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

1.事業の経過及びその成果

当連結会計年度における我が国経済は、雇用情勢や、企業収益・設備投資の改善、インバウンド需要の増加などもあり、緩やかな景気回復の動きがみられました。

不動産投資マーケットにつきましても、低金利等を背景に不動産投資家の旺盛な投資マインドが継続したため、安定的に推移しました。

こうした環境のもと、当社グループは、2020年度を初年度とする中長期経営計画に基づき、「変革」と「スピード」をベースに、環境変化に柔軟に対応した進化を通じて、持続的な企業価値向上の実現に注力してまいりました。

その結果、当連結会計年度の連結業績は、営業収益は446,383百万円(前期比△77,040百万円、14.7%減)、営業利益146,178百万円(前期比20,031百万円、15.8%増)、経常利益137,437百万円(前期比14,214百万円、11.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益94,625百万円(前期比15,474百万円、19.5%増)となりました。

営業収益につきましては、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件によりオフィス等の不動産賃貸収入が安定的に推移したことに加え、販売用不動産の売上も順調に推移しました。営業利益につきましては、物件の竣工、取得によりオフィス等の不動産賃貸収入が安定的に推移したことに加え、販売用不動産の売上総利益が増加したことにより、増益となりました。経常利益につきましては、賃貸解約関係収入の減少により営業外収益が減少したものの、営業利益の増加があったこと等により、増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、経常利益の増加に加え、受取補償金の増加により特別利益が増加したこと、建替に関連する費用の減少により特別損失が減少したこと及び税金費用が増加したこと等により、増益となりました。

事業別の状況は、次の通りであります。

事業区分別の概況

営業収益
前期比 %減
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

不動産賃貸業務、不動産開発業務、アセットマネジメント業務等

当社グループの中核事業は、東京23区を中心に、約250件(販売用不動産除く)の賃貸物件・賃貸可能面積約138万㎡を活用した不動産賃貸事業であります。環境変化に対応した競争優位性のある高品質な賃貸ポートフォリオを構築する観点から、継続的な物件の入れ替えや耐震・環境配慮に優れた開発・建替の加速による優良アセットの積み上げに取り組んでおります。また、開発・建替、バリューアッド物件のパイプラインを充実させ、出口戦略の多様化により、安定的・継続的な開発利益と運用報酬の獲得にも取り組んでおります。

当連結会計年度の新規物件(固定資産)の取得につきましては、島忠府中店(東京都府中市)、ROOM DECO 幕張新都心店(千葉県千葉市)、ヒューリック渋谷美竹通りビル(東京都渋谷区)、ユニデン八丁堀ビル(東京都中央区)、ヒューリック銀座7丁目ビル(一部)(東京都中央区)、オリナスモール・オリナスコア(東京都墨田区)及びグランドスケープ池袋(底地)(東京都豊島区)などを取得いたしました。

開発・建替事業(固定資産)につきましては、(仮称)南橋本開発計画(相模原市中央区)の開発用地を取得したほか、(仮称)千駄ヶ谷センタービル建替計画(東京都渋谷区)、(仮称)福岡ビル建替計画(福岡市中央区)、(仮称)三郷物流開発計画(Ⅰ期)(埼玉県三郷市)、(仮称)銀座ビル建替計画(東京都中央区)、(仮称)札幌建替計画(2期工事)(札幌市中央区)、(仮称)心斎橋開発計画(大阪市中央区)、(仮称)三郷物流開発計画(Ⅱ期)(埼玉県三郷市)、銀座コア(東京都中央区)及び(仮称)新宿318開発計画(東京都新宿区)などが順調に進行しております。

PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業につきましては、ヒューリック錦糸町コラボツリー(東京都墨田区)が1月に竣工したほか、東京都と渋谷区実施の「都市再生ステップアップ・プロジェクト(渋谷地区)渋谷一丁目地区共同開発事業」などが順調に進行しております。

販売用不動産につきましては、ヒューリック秋葉原中央通りビル(東京都千代田区)、相模原底地(一部)(相模原市中央区)及びヒューリック新宿五丁目ビル(東京都新宿区)などを売却しております。

このように、当セグメントにおける事業は順調に進行しており、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件によりオフィス等の不動産賃貸収入は安定的に推移したことに加え、販売用不動産の売上も順調に推移したことなどから、当連結会計年度の営業収益は408,599百万円(前期比△84,543百万円、17.1%減)、営業利益は154,432百万円(前期比14,652百万円、10.4%増)となりました。

営業収益
前期比 %増
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

保険代理店業務

保険事業におきましては、連結子会社であるヒューリック保険サービス株式会社が、国内・外資系の保険会社と代理店契約を結んでおり、法人から個人まで多彩な保険商品を販売しております。保険業界の事業環境は引き続き厳しい環境にありますが、既存損保代理店の営業権取得を重点戦略として、法人取引を中心に営業展開をしております。

この結果、当セグメントにおける営業収益は3,646百万円(前期比30百万円、0.8%増)、営業利益は1,087百万円(前期比47百万円、4.5%増)となりました。

営業収益
前期比 %増
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

ホテル及び旅館の運営業務

ホテル・旅館事業におきましては、連結子会社であるヒューリックホテルマネジメント株式会社は「THE GATE HOTEL」シリーズ及び「ビューホテル」シリーズ、ヒューリックふふ株式会社は「ふふ」シリーズを中心に、ホテル及び旅館の運営をおこなっております。

当連結会計年度においては、コロナの5類移行以降、国内・インバウンドとも好調に推移し、稼働・客室単価とも高水準を維持しております。

この結果、当セグメントにおける営業収益は37,351百万円(前期比9,716百万円、35.1%増)、営業利益は1,026百万円(前期は営業損失5,099百万円)となりました。

営業収益
前期比 %減
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

建築工事請負業務、設計・工事監理業務等

その他におきましては、主に連結子会社であるヒューリックビルド株式会社が、当社保有ビル等の営繕工事、テナント退去時の原状回復工事、新規入居時の内装工事を中心に受注実績を積み上げた結果、営業収益は6,550百万円(前期比△1,076百万円、14.1%減)、営業利益は511百万円(前期比△96百万円、15.8%減)となりました。

2.対処すべき課題

今後の経済環境の見通しにつきましては、景気回復の動きは継続するものの、金融資本市場の変化や、物価上昇圧力、人手不足の深刻化などによる先行き不透明な状況が続くものと予想しています。

また、不動産事業環境におきましては、日銀の金融正常化に向けた動きはあるものの、急速な引き締めを直ちに懸念する状況にはないことが想定されるため、収益不動産の投資市場は引き続き堅調に推移すると考えております。

こうした環境のもと、当社グループは、2023年度から中長期経営計画(2020-2029)のフェーズⅡに位置する新中期経営計画(2023-2025)をスタートさせ、①高品質の賃貸ポートフォリオ構築と柔軟な収益構造を維持・強化、②開発・建替、バリューアッド物件のパイプライン充実。出口を多様化して確実に収益化、③新規事業領域の取組み強化による収益源の多様化、④格付水準の維持を目線とした財務健全性の確保とリスク管理、⑤環境対応、人的資本育成対応などサステナブル経営の一層の深化、の5点を「対処すべき課題」と捉え、更なるレベルアップをはかってまいります。

そのために、それぞれの課題に対して、主に以下の戦略に取り組んでまいります。

① 高品質の賃貸ポートフォリオ構築と柔軟な収益構造を維持・強化

当社グループの中核事業は、東京23区の駅近を中心に保有する不動産の不動産賃貸事業であり、本事業をベースとした「安定性」と「効率性」を両立したビジネスモデルの進化をはかりながら、環境変化に柔軟に対応した収益構造を維持・強化してまいります。

当社グループの所有物件は、駅近の好立地のビルが大宗を占めており、マーケットより常に低い空室率を維持し、安定的な収益を確保しております。更に、CRE等戦略的ソーシングによる着実なポートフォリオの拡充に加え、多様な投資スキームを駆使した物件取得により、不動産賃貸事業の拡大をはかってまいります。

また、本格的な人口減少等環境変化に対応した競争優位性のある高品質の賃貸ポートフォリオ構築のため、今後も継続的に物件の入れ替えを実施することで、2029年に高耐震建物比率100%、オフィス比率50%、重点エリア比率50%、再エネビル比率100%を目指し、引き続き空室率1%未満を堅持してまいります。

② 開発・建替、バリューアッド物件のパイプライン充実。出口を多様化して確実に収益化

開発事業につきましては、保有物件の開発・建替・バリューアッド・PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業に取り組んでおり、2023年度は14物件が竣工し、2024年度についても9物件が竣工する計画となっております。新中期経営計画(2023-2025)では、2025年末までに100物件超の開発・建替案件に目途をつける計画としており、今後も、中長期パイプラインの整備に基づき、耐震・環境配慮に優れた不動産開発を推進することによって、優良な賃貸ポートフォリオの増強及び開発・建替利益の獲得をはかってまいります。

また、開発・建替物件の竣工本格化に備え、既存の公募リート、私募リートに加えて、ファンドの活用など出口戦略の多様化により、開発・建替利益を確実に実現するとともにバランスシートのコントロールをおこなってまいります。

③ 新規事業領域の取組み強化による収益源の多様化

高齢者ビジネスについては、引き続き多数の高齢者施設を開発、取得及び保有しているほか、ITを活用した業務効率化・科学的介護等を提供するスマートシニアハウジング構想にも取り組んでおります。

観光ビジネスについては、自社運営ホテルの「THE GATE HOTEL」及び「ビューホテル」シリーズや、高級温泉旅館「ふふ」シリーズの開発・運営をおこなっており、国内外の観光需要を着実に取り込んだことで業績は急回復しています。今後は、将来の成長分野とするための新たな開発計画の推進を検討してまいります。

また、入居テナントがフレキシブルにオフィスを利用できる「Bizflex」のシリーズは3件が満床稼働しているほか、新たに2件の開発が確定しています。2023年度は、M&Aにより成長分野であるレンタルオフィス事業への参入もおこなっております。

更にこどもを対象にした教育関連サービスを提供する「こども教育事業」は、株式会社リソー教育、コナミスポーツ株式会社との業務提携に基づき、こども向けワンストップサービスを提供する「こどもでぱーと」の計画が6件進行しております。

今後も、これらの事業を拡大するとともに、M&Aや資本・業務提携などを活用することで、新たな価値創造を提供する新規事業を開拓・軌道化し、グループ連携を活かした収益機会の獲得及びシナジー追求によるグループ総合力の向上をはかってまいります。

④ 格付水準の維持を目線とした財務健全性の確保とリスク管理

2023年度は、昨年に引き続き日本格付研究所(JCR)より取得している当社の外部格付が「AA-」格となり、強固な経営基盤を評価いただきました。今後も健全な財務基盤を維持しながら、中長期的な収益の維持・向上を実現してまいります。

また、「内部統制」、「リスク管理」、「コンプライアンス」、「開示統制」についても従前から徹底をはかっております。

リスク管理に関しては、「事業継続基本計画」(BCP:Business Continuity Plan)に基づき、定期的に訓練を実施する等、今後も有事対応力の向上を進めてまいります。

⑤ 環境対応、人的資本育成対応などサステナブル経営の一層の深化

サステナビリティビジョンに基づき、社会活動の基盤となる商品・サービスを提供することにより、「持続可能な社会の実現」と「企業としての継続的な成長」を目指し、サステナビリティを意識した事業運営と価値創造により、社会課題の解決及び社会価値の創造と企業成長が連動する取り組みを推進しております。

環境への取り組みとしては、「脱炭素社会・循環型社会」の実現に向けて環境配慮経営を推進しており、2023年に自社開発のFIT制度を活用しない太陽光発電による「RE100」を達成しました。引き続き2029年の「全保有建物の使用電力の100%再生可能エネルギー化」を目指し、自社で新規に開発・保有する非 FIT 再エネ電源から自社保有ビルへの電力供給をおこなってまいります。また、100年以上安全に使用できるオフィス標準仕様の導入による廃棄物削減、耐火木造建築・植林活動を通じた森の循環による環境負荷の低減に取り組むほか、水素・蓄電池活用の研究も進めてまいります。

社会への取り組みとしては、建物の耐震性能強化を重要な課題と認識して積極的に取り組んでまいります。耐震性能強化につきましては、2029年までに高耐震建物比率100%の目標を掲げておりますが、そのマイルストーンとして2025年末までに建替予定建物を除いた高耐震建物比率100%に取り組んでまいります。また、2023年には「ヒューリック人権方針」を改定し、人権デュー・デリジェンスの仕組みを構築しました。さらに、地域社会をはじめ各ステークホルダーとの関係強化及び社会貢献活動も重視しております。人的資本については、人材育成のための種々取り組みを実践してまいります。健康経営・働き方改革等の取り組み、女性活躍推進法に基づく行動計画策定など、多様な人材が等しく能力を発揮できるバイアスのない職場としてまいります。一級建築士をはじめとした高い専門性を有する人材集団、一人当たり生産性の高い企業、人が育つ企業を目指してまいります。

ガバナンスの取り組みとしては、2021年6月に改訂された「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を踏まえ、当社の持続的成長・企業価値向上に向けての最適なコーポレートガバナンスを実現するための枠組みを、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」において開示しております。ガイドラインを基に健全な企業統治の下で株主の権利に留意し、永続的な企業価値の向上を目指してまいります。

連結計算書類