事業報告2019年1月1日から2019年12月31日まで

企業集団の現況に関する事項

事業の経過及びその成果

全般的概況

当社グループは、モバイルメッセンジャー・アプリケーション「LINE」を入り口として、人々の生活すべてが完結する世界の実現を目指す、スマートポータル戦略を推進しております。

2019年12月末時点の主要4ヵ国(日本、台湾、タイ、インドネシア)における「LINE」のMAU*は1億6,400万人(前年末比0.2%増)、国内MAUは1年間で約400万人増加し、8,300万人まで成長いたしました。

また、ユーザーとのエンゲージメントの強さを示す指標である主要4ヵ国DAU**/MAU比率は79%と引き続き高水準で安定し、特に日本においては86%と圧倒的な利用率を誇っております。

「LINE」のエンゲージメントの高さは、当社グループの戦略推進及び今後の事業拡大において優位にあります。当社グループは、この「LINE」を基盤とし、スタンプやゲーム、マンガ、ニュース等のコンテンツサービスや、決済やショッピングといったさまざまな領域でNo.1サービスを創出してまいりました。これらのサービスが発展することにより蓄積された膨大なノウハウやデータを活用し、さらに各ユーザーに最適なサービスを提供できるという好循環を実現しております。

また、当社グループは、「LINE」の力強い成長を基盤に、2019年12月期からの3ヵ年度を「第二の創業期」と位置付け、O2O/コマース、Fintech、AIといった新たな領域への挑戦を続けております。

2019年12月期における当社グループの売上収益は前連結会計年度比9.8%増の2,275億円となり、過去最高を達成いたしました。これは主にディスプレイ広告やアカウント広告サービスの堅調な成長により広告売上が増加したことによるものです。営業利益は、事業拡大に伴う人件費の増加、戦略事業推進のための開発費用の増大、LINE Pay等におけるマーケティング費用の増加等により、390億円の損失(前連結会計年度は161億円の利益)となりました。

これらの結果、当社の株主に帰属する当期純損失は469億円(前連結会計年度は37億円の損失)となりました。

* 月間アクティブユーザー数(MAU:Monthly Active Users):その特定の月において、モバイル端末から1回以上LINE若しくはLINE GAMEを起動したユーザーアカウント数、又はPCやモバイル端末からLINE若しくはLINEを基盤としたその他関連アプリケーションを起動しメッセージを送信したユーザーアカウント数をいいます。

** 日次アクティブユーザー数(DAU:Daily Active Users):その特定の日次において、モバイル端末から1回以上LINE若しくはLINE GAMEを起動したユーザーアカウント数、又はPCやモバイル端末からLINE若しくはLINEを基盤としたその他関連アプリケーションを起動しメッセージを送信したユーザーアカウント数をいいます。

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セグメント別の状況

億円
%増
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<広告事業>

主なサービス:
LINE広告、LINE公式アカウント、LINEスポンサードスタンプ、LINEセールスプロモーション等

■インターネット広告市場の堅調な拡大を背景に、広告サービスの売上収益は1,248億円(前連結会計年度比15.3%増)、全売上収益に占める割合は54.9%となり、当社グループの売上収益全体を押し上げる原動力となりました。

■運用型広告プラットフォームを提供するディスプレイ広告では、新たに「Smart Channel」と呼ばれる「LINE」アプリのトークリスト最上部への広告配信を開始しました。また、継続的な広告プラットフォームの機能向上や広告主の増加等により、売上収益は前連結会計年度比37.1%と大きな成長を達成しております。

■アカウント広告は、広告主の裾野の広がりに対応すべく、「LINE公式アカウント」において従量課金による新プランの提供を開始しました。これにより、アカウント数は順調に拡大し、売上収益は前連結会計年度比10.5%の増加となりました。

<コンテンツ、コミュニケーション、その他>

主なサービス:
スタンプ、LINE GAME、LINEマンガ、LINE MUSIC等

■コンテンツ、コミュニケーション、その他の売上収益は719億円、前連結会計年度比2.4%の増加となりました。

■LINE GAMEは、新規タイトルの開始に加え、大型のコラボレーションやイベント等を実施し、売上収益は底堅く推移しました。

■LINEマンガ、LINE MUSICにおいては、機能改善やコンテンツ強化等の施策を実施した結果、順調にサービスは成長し、決済高、ユーザー数も大幅に上昇しました。

億円
%増
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<O2O/コマース、Fintech、AI>

主なサービス:
LINE Pay、LINE Score、LINE Pocket Money、LINE証券、LINE FRIENDS、LINEショッピング、LINEデリマ、LINE BRAIN、LINEカーナビ等

■LINE Payは、消費税増税に伴うキャッシュレス決済のポイント還元による、コード決済の認知度の高まりも追い風となり、決済高は大きな成長を見せ、前連結会計年度比10.4%増の1兆1,799億円となりました。LINE Payではユーザーの利便性を向上させる取組みの一環として、Visaとの協業を発表し、また、更なるサービス拡大のため、企業から個人への送金を可能にする「LINE Pay かんたん送金サービス」や、銀行振込サービスを開始しました。そして、LINE Pay国内スマホ決済対応箇所は200万箇所を達成しました。

■その他の金融事業に関しても、LINE Score、LINE Pocket Money、LINE証券等を新たにリリースし、順調にサービスを拡大しました。

■LINE のAIソリューション事業である「LINE BRAIN」はチャットボット技術、文字認識技術、音声認識技術等のAI技術の外部企業への提供を開始しました。また、トヨタ自動車株式会社のカーナビゲーションエンジンを搭載し、AIアシスタント「Clova」により音声操作が可能な「LINEカーナビ」を開始しました。

対処すべき課題

当社グループが属するインターネット業界については、急激に市場が拡大しているものの、新規参入企業の増加に伴い、競争環境も激化しております。

このような状況の下、当社グループは「LINE」を社会的インフラとして成長させ、多様化するユーザーのニーズに応えるための継続的な新規コンテンツ及びサービスの拡充や、それを実現するための組織体制を整備しています。また、今後の規模拡大に伴い、コーポレートガバナンスの強化も重要な課題として認識しております。

具体的には、以下の点を主な経営の課題と認識しております。

① 「LINE」の継続的成長

当社グループでは、「LINE」を通じてユーザーが必要とするコンテンツやサービスを提供し続けることが当社グループの安定的・継続的な発展に必要不可欠であると考えております。

継続的な新規コンテンツの提供とサービスラインナップの拡大は、ユーザー数を増加させ、ユーザーエンゲージメントを高めるとともに、LINEプラットフォームをより強固なものにします。

当社グループでは、今後も高い企画力・開発力により、革新的なサービスを提供することに取り組んでいく方針であります。

② 収益基盤の拡大

当社グループでは、常に新しい収益化の機会を探求しております。「LINE」を通じたユーザー基盤の拡大に加え、LINEプラットフォーム上でユーザーの生活をより豊かで便利なものにするコンテンツやサービスを提供し、これらのサービスがユーザーの利用に応じてそれぞれ成長することで収益基盤を拡大しております。さらに、これらのコンテンツサービスの提供を通じ高いユーザーエンゲージメントを維持することで、広告主にとってもメディア価値の高いプラットフォームとなり広告収益の拡大につながります。

また、当社が「コア事業」と位置付けている広告、コミュニケーション及びコンテンツの分野におけるユーザー、広告主及びプラットフォーム提携先に対する提供価値の向上に加えて、中長期的な成長に貢献すると考え「戦略事業」と位置付けているO2O/コマース、Fintech、AIを中心とした注力領域において、既存サービスの発展及び新規サービスの導入を通じ新たな付加価値の創出を加速してまいります。

③ 海外における事業展開

当社グループは、2011年6月に「LINE」を日本でリリースし、その後、海外に順次展開いたしました。今日、「LINE」はユーザー規模において日本、タイ、台湾及びインドネシアにおけるモバイルメッセンジャー・アプリケーションの主要なプレーヤーであり、また、米国、韓国、ベトナム、サウジアラビア、マレーシア等を含むその他の世界各国においてもユーザーを獲得しております。

当社グループでは、今後も特にアジアや「LINE」の認知度が高い市場に焦点をあて、メッセンジャーアプリケーションだけではなく、その他のサービスにおいてもユーザー基盤の拡大及びユーザーエンゲージメントの向上を目指してまいります。

④ 競合他社への対応

当社グループが提供する「LINE」は、モバイルメッセンジャー・サービスとの直接的な競合関係だけでなく、幅広いソーシャル・ネットワーキング・サービス、オンライン広告サービス、ゲーム会社、携帯通信事業者、eコマース企業、音楽配信企業、AI関連企業、Fintech関連企業等、LINEプラットフォーム上で提供するサービスの特定機能と競合する可能性のある製品やサービスを提供する企業との競争に直面しております。当社グループでは、製品及びサービスの実用性、性能及び信頼性、プラットフォーム提携先との関係構築及び関係維持等により、ユーザーの拡大を進めるとともに、ユーザーの規模や構成により魅力的なコンテンツやサービスを提供する企業を惹きつけ、差別化を図っております。

さらに当社は、広告主の予算や宣伝活動の管理及び最適化用ツールやシステムの開発の面において、オンラインメディアを含むメディア媒体と競合しております。広告主の予算を獲得するため、当社グループでは、ユーザーのサービス利用の促進、広告在庫の確保、ターゲティング機能等を含む広告プラットフォームの機能改善を通じ、差別化を図っております。

当社グループでは、上記の差別化を図りながら、既存サービスの利便性を強化し、更なる成長を進めるとともに、新規サービスの投入及び海外展開により一層積極的に取り組んでまいります。

⑤ 優秀な人材の採用

当社グループでは、今後の更なる成長にとって優秀な人材を適時に採用することが経営上重要な課題と認識しております。特に上級管理者、エンジニア、デザイナー及びプロダクトマネージャー等、高度な技能を有する人材を巡って厳しい競争を迎えており、採用コストは増加傾向にあります。当社グループでは、優秀な人材を採用していくために、独立性、創造性、イノベーションを奨励する労働環境等の従業員の高いモチベーションにつながる環境整備や、やりがい及び報酬等の人事制度の面から企業としての採用競争力を強化してまいります。

⑥ 経営管理体制及び法令遵守の強化

当社グループは、事業拡大により従業員数が急激に増大しており、市場動向、競合企業、顧客ニーズ等の変化に対して速やかにかつ柔軟に対応できる組織を運営するため、また、企業価値を継続的に向上させるため、諮問委員会によるガバナンス向上や、内部統制に係る体制、法令遵守の徹底に向けた体制の強化に努めてまいります。

⑦ システム基盤の強化

当社グループは、ユーザーの個人情報保護に対する取組みの一環として、技術及び人的資源への投資を行っており、当社グループのセキュリティ室は、商用ツール、コードの安全性の検討や侵入試験、内部及び外部監査を利用したセキュリティの脆弱性の調査を積極的に実施しております。また、当社グループは、情報の保護の方策を厳格に実行するための内部方針を制定し、加えてセキュリティ及びプライバシー両方の国際的な認証を取得しております。なお、ユーザーが誰と何を共有するかはユーザーの権限であるとの方針の下、ユーザー間のプライベートなコミュニケーションの監視は行っておりません。

当社グループでは、今後も引き続きユーザー数の増加に対応するための負荷分散等、設備への先行投資をはじめ、継続的にシステム基盤の強化を図るとともに、大容量データのハンドリング技術や高い障害対応能力をさらに進化させ、ユーザーが安心して利用できる信頼性の高いシステム構築に取り組んでまいります。

⑧ サービスの安全性及び健全性の確保

当社グループが提供する「LINE」は、ユーザー同士の密接なコミュニケーションを補完するツールであります。そのサービスの特質上、時としてユーザーがトラブルに巻き込まれてしまうことを当社としては非常に憂慮しており、各種対策を行っております。

「LINE」はユーザーが他のユーザーからのLINE IDによるアカウント検索を許すか否かについて選択できるように設計されている他、未成年の利用者のトラブルを未然に防ぐ目的で、年齢確認をしていない利用者や18歳未満の利用者は、「LINE」のID設定及びID検索機能をご利用いただけません。

また、当社グループでは青少年の健全なインターネット利用を啓発するための教材の開発や、学生、生徒、児童向けや、教職員、PTA等に向けた、安心安全な利用を呼びかける啓発講演活動を2012年以降継続して実施する等、情報モラル教育の発展に努めております。

今後も引き続き、利用者保護のための適切な措置を随時講じる等、サービスの安全性及び健全性の確保に努めてまいります。

⑨ SDGsの取組み

2015年9月、「国連持続可能な開発サミット」において、人間及び地球の繁栄のための行動計画として、「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」が掲げられました。SDGsは、貧困や飢餓、健康・福祉といった問題から、働きがいや経済成長、男女平等、環境問題に至るまで、21世紀の世界が抱える課題を解消し、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されています。当社もこの目標に賛同し、積極的に取り組むべきものと考えています。

当社グループは、さまざまな社会課題に真摯に向き合うとともに、事業を通じて社会や環境に良い影響をもたらすことで、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。

また、当社は、2019年12月23日付けで、Zホールディングス株式会社(以下「ZHD」といいます。)と対等な精神に基づく経営統合(以下「本経営統合」といいます。)を行うことに合意いたしました。これを踏まえ、当社グループでは、上記の課題とあわせ、以下の点も経営の課題と認識しております。

① 本経営統合の推進

当社とZHDは、2019年12月23日、本経営統合に関して、それぞれの親会社であるソフトバンク株式会社及びNAVER Corporationを含む4社間で本経営統合を実現するための取引の方法等に関して定めた経営統合契約書を、当社とZHD間で本経営統合後の統合会社のガバナンス・運営等について定めた資本提携契約書を、それぞれ締結いたしました。

今後、本経営統合に向けた当事者間の協議や必要な手続を進め、2020年10月の本経営統合の完了を目指してまいります。

なお、当社とZHDは、今後、本経営統合を進めてまいりますが、本経営統合は、競争法、外為法その他法令上必要なクリアランス・許認可等の取得が完了すること、その他経営統合契約書において定める前提条件が充足されることを条件として行われます。そのため、当事者間の協議の進捗や競争当局による審査等の結果により、現在想定しているスケジュールが変更になる可能性があります。

② 本経営統合後の統合会社における効率的な経営資源の活用

当社とZHDは、本経営統合を通じて、経営資源を集約し、それぞれの事業領域の強化や新規事業領域への成長投資を行うことにより、日本のユーザーに対し便利な体験を提供し、日本の社会や産業をアップデートしてまいります。そして、その革新的なモデルをアジア、さらには世界に展開していくことで、日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指してまいります。

そのためには、経営資源の効率的な活用とシナジー効果を最大限発揮できるようなグループ全体の事業戦略を立案・推進していくことが求められます。

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