事業報告(抜粋)(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

事業の経過およびその成果

当連結会計年度におけるわが国経済は、持ち直しの動きが見られるものの、新型コロナウイルス感染者数の高止まりの影響により、一部に弱さがみられました。先行きにつきましては、感染対策が定着し、経済社会活動の正常化を模索する中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待されますが、不安定な国際情勢や金融資本市場の変動、供給面での制約等による景気下振れリスクに加え、感染症による影響に十分注意する必要があると考えます。また、原油価格の高騰により依然として原材料価格は高値を維持しており、販売価格への転嫁を実施しつつも依然として予断を許さない状況です。

このような環境のもと、中期経営計画「変革への決意 Commit to Transformation 2023(CX2023)」の初年度として、「1.社会課題の解決、2.新事業・新製品・新技術の獲得、3.ボーダレスの加速、4.デジタルの実装、5.グループ経営の再整備、6.経営基盤の進化」の6つの重点実施項目を設定し計画達成に向け事業活動を行ってまいりました。

これらの結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は1,419億3千6百万円(前年同期比5.6%増)、営業利益は86億5千1百万円(前年同期比1.6%増)、経常利益は90億8千4百万円(前年同期比3.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益段階での増益に加え、特別損益の改善、子会社の清算に伴う繰越欠損金引継ぎによる一過性利益もあり66億6千万円(前年同期比24.9%増)となりました。

(ご参考)

次に、各事業のセグメント別の概況をご報告申しあげます。

売上高
前年同期比 %増
詳細はこちらを閉じる
売上高構成比率 %

(単位:

住設建材事業の住宅資材および管工機材部門は、新設住宅着工戸数の回復により堅調に推移しました。一方、採光建材およびサイネージ部門は、非住宅物件の受注低迷や企業の広告宣伝費の削減等の影響を受け低調に推移し事業全体としては減収となりました。

床・建装事業は、床部門において、マンション改修物件の受注増により増収となりました。建装部門においても、国内市場はコロナ禍影響からの回復がみられ、海外市場は欧州、豪州、北米が好調を持続し、事業全体として増収となりました。

その結果、建築資材事業セグメントの売上高は444億1千8百万円(前年同期比5.4%増)、営業利益は27億1千6百万円(前年同期比31.2%増)となりました。

売上高
前年同期比 %減
詳細はこちらを閉じる
売上高構成比率 %

(単位:

アグリ事業は、足元の原材料価格高騰を反映した次年度価格改定の公表により、上期同様に期末にも製品値上げ前の駆け込み需要があり増収となりました。

インフラマテリアル事業は、更生管事業や産業資材関連の販売は年間を通して堅調を維持しましたが、大型工事物件の長期停止や工事計画自体の変更、豪雨や豪雪などの自然災害の影響が依然として継続しており、全体的には低調な販売により減収となりました。

その結果、環境資材事業セグメントの売上高は538億7千4百万円(前年同期比1.9%減)、営業利益は14億5百万円(前年同期比39.7%減)となりました。

売上高
前年同期比 %増
詳細はこちらを閉じる
売上高構成比率 %

(単位:

高機能材事業は、世界的な半導体需要の拡大を背景に、製造装置向けの工業用プレート、エンプラ材の販売が伸長しました。また、電子回路基板向け等へのナノ材料販売も好調を維持しました。加えて、欧米を中心に新型コロナウイルス対策の緩和の動きから消費活動の回復もみられ、眼鏡フレーム用アセテート板の販売が増加しました。マイクロモータの販売についても、民生用機器向けを中心に高い水準を維持しました。

その結果、高機能材事業セグメントの売上高は216億2千5百万円(前年同期比23.7%増)、営業利益は31億4千4百万円(前年同期比74.4%増)となりました。

売上高
前年同期比 %増
詳細はこちらを閉じる
売上高構成比率 %

(単位:

ボンセット事業は、シュリンクフィルムが国内販売および欧米市場において堅調に推移し増収となりました。

サンジップ事業は、ジッパーテープが日本国内、アジア、欧州を中心に医薬、食品、ペットフードおよびアパレル関係で好調に推移し増収となりました。

その結果、機能フィルム事業セグメントの売上高は213億5千2百万円(前年同期比9.7%増)、営業利益は14億4千万円(前年同期比27.4%減)となりました。

対処すべき課題

<次期の見通し>

2022年度の日本経済の見通しにつきましては、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待されるものの、原油価格の更なる高騰や不安定な国際情勢等による原材料価格の上昇、金融資本市場の変動、供給面での制約等による景気下振れリスクに加え、新型コロナウイルス感染症による影響に十分注意する必要があり、予断を許さない状況です。

<中期経営計画の推進>

中期経営計画「変革への決意 Commit to Transformation 2023(CX2023)」の2年目として、定量目標および以下の6つの重点実施項目の計画達成に向け邁進しております。

定量目標(2023年度計画)
重点実施項目(*:2021年度実績をもとに修正または新設した項目)

1.社会課題の解決

社会の持続可能性(サステナビリティ)を意識し、SDGsを踏まえた事業活動とマテリアリティの着実な実行により具体的な社会課題の解決に寄与します。

2.新事業・新製品・新技術の獲得

未来の変化・需要を見据えて、次世代を担う新事業・新製品・新技術の創出にチャレンジし、実現します。

3.ボーダレスの加速

販売・生産拠点のグローバル進出、新しい価値基準でのマーケティング、ダイバーシティ(性別、人種、国籍、宗教、年齢)の組織・企業文化での実現など、ボーダレスな視点で企業価値向上と事業成長を追求します。

4.デジタルの実装

全ての業務プロセスにおいて最先端技術の活用を検討し、作業の効率化、省力化、コストダウンなどの成果を追求します。販売面において新たな付加価値を生むようなデジタル活用を推進し、新たなビジネスモデルの創出を目指します。

5.グループ経営の再整備

主管事業部による連結事業戦略の立案、グループ内での共有を図り、複合的な事業協働や投資効率の最大化を果たすことで、連結事業体としての価値創造を実現します。

6.経営基盤の進化

ワークライフバランスによる制度設計を進化させ、全社員による「充実人生 経営宣言」を実践します。無事故、ハラスメント撲滅など、職場環境や日常のコミュニケーションを再度見直し、安全・安心に働ける職場への進化も追求します。

<マテリアリティ>

当社グループは、SDGsをはじめとする社会課題やESG(環境・社会・ガバナンス)に関する社会的要請の変化を踏まえ、優先的に取り組むべきマテリアリティ(サステナビリティ上の重要課題)10項目を2019年度に特定しました。翌年度にはKPIおよび年度目標を策定のうえ、各々の取り組みを加速させ、成果を追求しております。

<環境に関する取り組み>

脱炭素

脱炭素への取り組みとして、具体的な目標を設定しました。

目標:‌①CO2排出量を削減し、2023年度13%削減、2030年度30%削減を目指します。(2018年度比)
なお、削減目標は2021年実績をもとに上方修正予定です。

②2022年度でコミットメントレターの提出を行い、SBT申請を目指します。
目標達成に向けた施策としましては、ⅰ)太陽光発電システム導入によるCO2削減、ⅱ)省エネ施策の実施、ⅲ)再生可能エネルギーの導入としました。

気候変動対応

当社は2021年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明しました。

提言に基づく開示拡充に向けて、まずは当社を取り巻く環境が今後気候変動の影響によってどのように変化し、どのような影響が考えられるか、当社の各セグメントで予測される「リスクと機会」の特定に向けTCFD対応プロジェクトチームを発足し検討を進めています。現時点の状況は「リスクと機会」の特定を完了した段階で、今後は特定された「リスクと機会」を1.5℃、4.0℃シナリオの世界観に照らし合わせ財務面でのインパクト評価・分析を進めるとともに、全社的なリスクマネジメントの中で気候変動についても監督し、適切な対策を実施していきます。

物理的に発生するリスクに対しては、事業継続推進委員会の中で分析・モニタリング・予防対策の推進を実施し、経営会議へ報告しております。また、脱炭素社会への移行に伴うリスクに対しては、当社のリスクマネジメント体制の中で発生しうるリスクへの具体的対応策の検討と推進を行っています。さらにサステナビリティ委員会で進捗のモニタリング・情報開示・事業計画への組み込みを行い、中長期的視点で本リスクへの対策を拡充・推進し、取締役会へ報告しております。

<人材に関する取り組み>

健康経営

社員の充実した人生を支援するために、重点施策を中心に制度の制定や活用の促進に取り組んでいます。2020年度からは、代表取締役社長を委員長とする「充実人生 経営宣言」推進委員会を定期的に開催し、取り組みを推進しています。また、評価の基準(KPI)として「社員ワークエンゲージメントスコア」、「社員ロイヤルティスコア」を設定し、年1回の社員アンケートにより仕事への熱意や会社に対する満足度を確認し、各施策の改善、経営や組織の課題解決に活かしています。

  • 1)多様な働き方支援

    社員個々のライフステージに応じた働き方ができる職場を目指し、「時間単位年休制度」、「テレワーク勤務制度」等の制度を導入しています。新型コロナウイルス感染防止対策では、「テレワーク勤務制度」の対象を在宅で業務が可能な全社員に広げてインフラ整備を行い、「時差出勤」も併用しています。

  • 2)働き甲斐支援

    社員の働き甲斐を支援する仕組みとして「キャリア面談」「ジョブローテーション制度」を実施しています。「キャリア面談」は上司との面談を通じてキャリア開発支援を実現する仕組みで、社員自らが考えたキャリアビジョンシートを基に、毎年将来のありたい姿やキャリアに対する思いを上司と部下で共有したうえで、行動計画を作成し、成長プロセスの確認を行うものです。「ジョブローテーション制度」は入社後数年の間に異なる部門へ異動を行う制度で、様々な経験が成長に繋がることを期待しています。これらの仕組みを通じて、会社からの期待とキャリアに対する熱意が、社員の充実した仕事と働き甲斐に繋がるように支援しています。

  • 3)健康増進支援

    心身ともに健康に効率よく働ける職場の実現を目指して、健康経営宣言を公表しました。その健康経営宣言のもと、2020年度に引き続きオンライン禁煙プログラムの実施、社員が健康に効率よく働ける職場の実現、有給休暇の取得奨励、産業医・工場等との連携強化による特定保健指導実施率の向上、健康診断有所見者における再検査受診勧奨を行いました。2020年度から喫煙率を2ポイント以上引き下げ、有給休暇取得は高い数値を維持、特定保健指導実施率は27.4ポイント引き上げることとなりました。2022年度は、喫煙率25%以下、有給休暇取得率80%以上、特定保健指導実施率80%以上を目標とし、喫煙者へのオンライン禁煙プログラム参加フォローや計画的な有給休暇の取得促進、保健指導の推奨を引き続き実施していきます。これら以外にも社員の健康増進に向け、性別特有のがん検診の実施、ストレスチェックの実施、女性の健康に関するセミナーを実施致します。

    当社は、2021年度に引き続き2022年度 健康経営度調査にて、「健康経営優良法人 2022」に認定されました。今後もホワイト500の取得を目指して「充実人生 経営宣言」の取り組みを強化してまいります。

ダイバーシティ&インクルージョン

年齢、性別、国籍を問わず、多様な人材を受け入れ、様々な価値観や意見を理解し、尊重することが、組織の活性化や社員の成長に繋がると考えています。2021年度には「ダイバーシティ&インクルージョン」の考えを社員一人ひとりがより一層理解するため、全従業員対象の社内教育を実施し、個々人の様々な価値観や違いを尊重し全ての人々が持てる力を十分に発揮できる企業風土を継続的に醸成していきます。

  • 1)女性の管理職登用

    当社は多様な人材の活用に向け、女性活躍推進を積極的に進めており、採用の強化や事務職から総合職への職種転換等を通じて優秀な人材の確保を図るとともに、柔軟な働き方を支援する制度の拡充を図っております。また、将来的に経営の意思決定に関わる女性社員の育成に向けた施策を実施していきます。

  • 2)外国人の管理職登用

    外国人の管理職への登用は現時点ではありませんが、国籍を問わない採用活動を進めており、毎年数名の外国人を総合職として採用しております。

    なお、当社グループを支える海外事業会社においては、事業運営を担うポスト約120のうち、約50%で外国人人材が活躍しております。

  • 3)中途採用者の管理職登用

    現在、当社管理職ポストにおける中途採用者の割合は約12%となっております。

    中長期的な事業戦略の実現を支える多様な人材の確保を目的として、毎年度総合職採用人数の約30%を中途採用にて実施する予定としております。

  • 4)人材育成・社内環境整備方針

    当社の価値向上を支える社員の育成に向け、職種・等級による必要な能力を育成する研修、グローバル人材として活躍するための教育制度等、社員のキャリアプランに応じた教育プログラムを構築しております。

    また、社員一人ひとりが充実した人生を送ることが、会社の継続的な成長に繋がると考え、良質な職場の構築に向けた重点施策として「多様な働き方支援」、「働き甲斐支援」、「健康増進支援(健康経営)」を掲げ、新たな企業風土の醸成を進めております。

連結計算書類(抜粋)