事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

売上収益

当連結会計年度における売上収益は、モビリティ&テレマティクスサービス分野が、自動車向けスピーカー、アンプ、ケーブルなどの販売拡大に加え、半導体などの部品不足の解消などにより、分野全体で大幅な増収となりました。さらに、パブリックサービス分野の無線システム事業の販売が想定を大幅に上回って好調に推移したことに加え、メディアサービス分野の販売も堅調に推移したことから、全社の売上収益は前年同期比で約548億円の大幅増(19.4%増収)となる3,369億10百万円となりました。

コア営業利益(事業利益)

コア営業利益(事業利益)は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除することにより算出され、主として一時的な要因からなる、その他の収益、その他の費用、為替差損益などを含みません。

当連結会計年度における全社のコア営業利益は、上記のとおり大幅な増収となったことなどから、前年同期比で約87億円の大幅増(121.6%増益)となる158億36百万円となりました。なお、従業員の雇用などに関わる政府補助金を純損益として認識し、売上原価と販売費及び一般管理費から控除しています。

営業利益

当連結会計年度における営業利益は、前年度に計上した子会社の売却益および金融資産の評価益が減少したものの、コア営業利益が大幅な増益となったことに加え、第3四半期連結会計期間に固定資産譲渡益(約97億円)を計上したことなどから、前年同期比で約126億円の大幅増(138.9%増益)となる216億34百万円となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益

当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益が大幅な増益となったことなどから、前年同期比で約104億円の大幅増(176.3%増益)となる162億29百万円となりました。

事業区分別の概況

モビリティ&テレマティクスサービス分野

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※2021年3月期の実績は、2022年3月期に編入したテレマティクスサービス事業を含みます。

売上収益

1,97564百万円
(前連結会計年度比20.3%増)

OEM事業は、車載用スピーカー、アンプ、ケーブルなどの販売拡大に加え、半導体などの部品不足が解消したことで用品が増収となったことなどから、前年同期比で大幅な増収となりました。

アフターマーケット事業は、半導体などの部品不足の解消に加え、国内外で販売が堅調に推移したことなどから、前年同期比で大幅な増収となりました。

テレマティクスサービス事業も部品不足の解消に加え、損害保険会社向け通信型ドライブレコーダーなどのテレマティクスソリューション関連商品が堅調な販売を継続したことなどから、前年同期比で増収となりました。

コア営業利益(事業利益)

4396百万円
(前連結会計年度比95.7%増)

テレマティクスサービス事業は、部品価格高騰の影響を受けたことなどから減益となったものの、OEM事業、アフターマーケット事業は増収の効果により大幅増益となったことから、モビリティ&テレマティクスサービス分野全体でも、前年同期比で大幅な増益となりました。

パブリックサービス分野

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売上収益

74652百万円
(前連結会計年度比28.5%増)

無線システム事業は、全世界的な危機管理への機運の高まりにより需要が拡大していることに加え、米国において多額の政府予算を背景に公共安全市場の需要が堅調であること、さらに高機能を有する新製品トライバンド対応無線機の導入により受注獲得が進んでいることなどによって好調に推移し、前年同期比で約161億円の大幅な増収となりました。

業務用システム事業は、株式会社JVCケンウッド・公共産業システムで、売上規模の大きい電設市場の販売回復が遅れているものの、ヘルスケアが増収となったことから、前年同期比で約5億円の増収となりました。

コア営業利益(事業利益)

10675百万円
(前連結会計年度比332.6%増)

無線システム事業が増収効果により前年同期比で大幅な増益となったことから、パブリックサービス分野全体でも大幅な増益となりました。

メディアサービス分野

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売上収益

57265百万円
(前連結会計年度比7.2%増)

メディア事業は、第2四半期連結会計期間以降にプロジェクターの販売が回復したことなどから、前年同期比で約25億円増収となりました。

エンタテインメント事業は、年間を通じてコンテンツビジネスの販売が堅調に推移したことなどから、前年同期比で約13億円増収となりました。

コア営業利益(事業利益)

798百万円
(前連結会計年度比70.5%減)

エンタテインメント事業は、増収効果により前年同期比で増益となりましたが、メディア事業でヘッドホン、イヤホンなどが仕入価格高騰による影響を受けたことなどから、前年同期比で減益となり、メディアサービス分野全体では前年同期比で減益となりました。

会社の対処すべき課題
新中期経営計画「VISION2025」について

1.中期経営計画「VISION2023」の進捗状況

当社は、2021年に中期経営計画「VISION2023」を策定し、「変革と成長」を基本戦略として収益基盤の確保と構造改革で安定した事業収益を「稼げる体質」へ変革し、既存事業の収益基盤の強化、事業ポートフォリオの再定義により新たな成長分野を確立し、エクセレント・カンパニーへの飛躍に向けて様々な経営施策に取り組みました。

これらの取り組みの結果、「VISION2023」の最終年度(2023年度)に設定した主要な経営目標を2022年度に前倒しで達成しました。

一方、地政学リスク増大によるサプライチェーンの見直しや世界経済動向の不透明化など、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しています。経営指標の前倒し達成と事業環境の変化を踏まえて、今回新たに企業価値最大化の観点から「変革と成長」の基本戦略を強化した、2025年度を最終年度とする新中期経営計画「VISION2025」を策定しました。

2.位置づけ

当社は企業理念※2で掲げる「感動と安心を世界の人々へ」提供すべく、「たくましさ」と「したたかさ」を併せ持つエクセレント・カンパニーへの飛躍を目指しています。

「VISION2025」では、「VISION2023」で掲げた基本戦略「変革と成長」をさらに進化させ、事業ポートフォリオを最適化することで成長モメンタムを加速し、企業価値最大化を目指していきます。

※2:当社グループの「企業ビジョン」を「企業理念」として再定義

3.基本戦略:「変革と成長」

<基本戦略>

「VISION2025」では、「変革と成長」を基本戦略とした事業ポートフォリオとキャピタル・アロケーションの最適化を図るとともにサステナビリティ経営を推進し、企業価値の最大化に向けて取り組んでいきます。また、これらの取り組みを通じて、安定的にROE10%を確保する体質を構築し、PBR1.0倍超の早期実現を目指していきます。

新中期経営計画「VISION2025」の詳細は、インターネット上の当社ウェブサイト(https://www.jvckenwood.com/jp/corporate/policy.html)に掲載しています。

<企業価値の最大化に向けた事業ポートフォリオの最適化>

「VISION2025」では、企業価値最大化の観点で、中期的な事業の成長性※3と自社の資本効率性を考慮した資源配分を行い、2025年度に向けて最適な事業ポートフォリオ変革をさらに進め、持続的な企業価値と株主価値の向上に取り組んでいきます。

※3:2023年度~2025年度の3年間における売上成長率

<戦略強化の方向性>

「VISION2025」では、当社を取り巻く事業環境の変化と企業価値最大化の観点から、「VISION2023」より戦略強化の方向性を見直し、当社の目指す事業戦略をより明確にするために分野名称を変更いたしました。

<VISION2025 経営指標>

「VISION2025」における経営指標は以下のとおりです。

4.財務戦略

「VISION2025」では、資本コストを重視した資本効率向上と成長投資バランスのとれたキャピタル・アロケーションの実行により、企業価値最大化を目指していきます。

当社グループは、企業理念の「感動と安心を世界の人々へ」を行動の原点として共有し、大きく変化する事業環境の中で中長期的に企業価値を向上していくとともに、今後も変化を先取りして未来を切り拓く「たくましさ」と「したたかさ」を併せ持ったエクセレント・カンパニーへ飛躍していきます。

5.サステナビリティ戦略(ESG戦略)

当社を取り巻くマテリアリティと社会課題の特定

企業理念である感動と安心を世界の人々へ提供するという価値観を軸として、当社を取り巻くマテリアリティを結びつけて社会課題の解決を図ります。

当社グループは、先進の技術力に基づいた製品やサービスの創出および環境活動を通じて、すべてのステークホルダーとともに現在だけでなく将来にわたり、地球環境を保全し、健全で持続可能な社会の実現に貢献します。

TCFD提言に基づく情報開示

当社グループは、2023年3月「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候変動のリスク・機会をより一層意識した経営戦略の策定を進めるとともに、TCFD提言に沿った「気候変動に関する情報」を開示しました。

人材戦略、多様性、健康経営の推進

「VISION2025」では、経営戦略と連動した人材要件の策定、またそれを実現するための人材育成計画を策定し実行します。取組テーマである、「人材戦略」、「多様性」、「健康経営推進」を行う上で、採用人数、研修人員数、エンゲージメント指標、自己都合退職率、生産性指標、休職者率を重要な指標と捉え、個々の施策を進めます。

当社グループは、「ダイバーシティ&インクルージョン推進」を重要な戦略の一つと位置付けています。従業員が生き生きと活躍できる組織を実現し、エンゲージメントを高めることが企業発展につながると考えています。多様性の実現にむけた人事制度改革、働き方改革を通じて、経営方針である「イノベーションを実現する人材の育成と組織能力の強化」に貢献しています。

また、その活動の全ての源となる健康経営について、「JVCケンウッド健康宣言」を制定し、安全で健康な職場づくりに努めています。その結果、2018年から6年連続で「健康経営優良法人」に認定されており、2023年には5回目となる「ホワイト500」の認定を受けました。

人権に関する取組み

「JVCケンウッド人権方針」に基づき事業活動における人権尊重の取組みを今後より一層進めていきます。

当社グループは、2023年4月、サステナビリティ全般についての推進主体組織である「サステナビリティ委員会」をCEO直轄組織として設置しました。

同委員会は、毎年2回の定例開催に加え、必要に応じて臨時開催し、議論の内容は執行役員会や取締役会に報告することとしています。また、同委員会の下部組織として、テーマごとに担当役員を責任者とする専門部会を設置し、それぞれのテーマの課題の抽出、目標や実施計画、具体的対応等を協議し、推進していきます。取締役会は、これらの委員会、会議を監視、監督し、意思決定を行います。

外部機関による評価指標の主な選定・受賞状況

当連結会計年度(2022年度)もESG活動に取り組んでまいりました。引き続き、外部の評価指標を取り入れ、ESG強化によって持続的な企業価値向上を図ります。

連結計算書類