事業報告(自2021年4月1日 至2022年3月31日)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過および成果

全般の概況

当社グループは、当連結会計年度末現在でHOYA株式会社および連結子会社141社(国内5社、海外136社)ならびに関連会社18社(国内5社、海外13社)により構成されております。

ライフケアおよび情報・通信の各事業部門が、それぞれの責任のもと世界各国に展開する子会社を統括する経営管理体制をとっており、米州・欧州・アジアの各地域の地域本社が、国・地域とのリレーションの強化、法務支援および内部監査等を行い事業活動の推進をサポートしております。また、欧州地域本社(オランダ)にはグループのフィナンシャル・ヘッドクォーター(FHQ)を置いております。

<国際会計基準の適用>

当社グループでは、第73期から会社計算規則第120条第1項の規定により国際会計基準(IFRS)に準拠して連結計算書類を作成しております。これに伴い、事業別の概況における報告セグメントについても、IFRSに基づき、「ライフケア」事業、「情報・通信」事業および「その他」事業の3つの報告セグメントに区分しております。

「ライフケア」事業ではメガネレンズ、コンタクトレンズ等のヘルスケア関連製品および眼内レンズ、内視鏡等のメディカル関連製品を取扱い、「情報・通信」事業では、半導体やFPD、HDD等のエレクトロニクス関連製品およびデジタルカメラ用レンズ等の映像関連製品を取扱います。「その他」事業は、主に音声合成ソフトウェア、情報システムサービスを提供する事業であります。

<売上収益の状況>

当社グループのライフケア事業については、ヘルスケア関連製品のメガネレンズとコンタクトレンズ、メディカル関連製品の医療用内視鏡と白内障用眼内レンズいずれも大幅増収となり、ライフケア事業全体としても大きく増収となりました。

情報・通信事業については、エレクトロニクス関連製品の半導体用マスクブランクス、FPD用フォトマスク、ハードディスク用ガラスサブストレート、映像関連製品が大幅増収となり、情報・通信事業全体でも大きく増収となりました。

この結果、当連結会計年度の売上収益は6,614億66百万円と、対前連結会計年度で20.7%の増収となりました。

<利益の状況>

利益については、税引前当期利益は2,107億6百万円、当期利益は1,653億22百万円となり、対前連結会計年度で32.3%、32.0%の増益となりました。

税引前当期利益率は31.9%となり、前連結会計年度の29.1%から2.8ポイント上昇しました。

なお、当連結会計年度、前連結会計年度ともに非継続事業はありませんので、表示の数値および増減率は全て継続事業によるもののみであります。

<財産の状況>

当連結会計年度末では、総資産は前連結会計年度末に比べて1,395億49百万円増加し、9,928億39百万円となりました。

非流動資産は、111億68百万円増加し、3,098億74百万円となりました。これは主として、有形固定資産―純額が47億8百万円、のれんが39億59百万円、長期金融資産が20億72百万円増加した一方、無形資産が13億42百万円減少したことによるものであります。

流動資産は、1,283億81百万円増加し、6,829億65百万円となりました。これは主として、現金及び現金同等物が845億8百万円、売上債権及びその他の債権が169億23百万円、棚卸資産が140億74百万円、その他の短期金融資産が33億26百万円増加したことによるものであります。

資本合計は、1,166億44百万円増加し、7,890億56百万円となりました。これは主として、当期利益によって1,653億22百万円、その他の包括利益によって494億98百万円増加した一方、自己株式の取得によって657億64百万円、剰余金の配当によって333億9百万円減少したことによるものです。

親会社の所有者に帰属する持分合計は1,158億51百万円増加し、8,038億51百万円となりました。

負債は、229億5百万円増加し、2,037億83百万円となりました。これは主として、その他の流動負債が63億70百万円、未払法人所得税が60億85百万円、仕入債務及びその他の債務が46億30百万円増加したことによるものであります。

当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は81.0%となり、前連結会計年度末の80.6%から0.4ポイント上昇しました。

なお、利益剰余金の増減の内訳は、後掲の「連結持分変動計算書」に記載のとおりであります。

事業別(報告セグメント)の概況

売上収益
前期比 %増
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売上高構成比

(単位:

ヘルスケア関連製品

メガネレンズ、コンタクトレンズとも新型コロナウイルスにより事業活動に影響を受けた前年と比べ、経済活動再開に伴う回復により大幅増収となりました。

メガネレンズは海外がけん引し、高付加価値製品の販売増も増収に寄与しました。

コンタクトレンズは日本国内での緊急事態宣言発令期間を中心に、専門小売店「アイシティ」では一部店舗の臨時休業や時間短縮営業により販売活動が影響を受け、また外出機会の減少に伴い一時的な需要の減少が見られましたが、アイシティ会員への宅配サービスが順調に推移し、さらに経済活動再開に伴う需要の回復などにより大幅増収となりました。

メディカル関連製品

医療用内視鏡、白内障用眼内レンズとも新型コロナウイルスにより事業活動に影響を受けた前年と比べ、経済活動再開に伴う回復により大幅増収となりました。

医療用内視鏡は、病院における設備投資の回復が見られ当社販売も回復傾向にありましたが、一部の部材供給不足の影響がありました。

白内障用眼内レンズは、海外を中心に白内障の手術件数の回復が見られ当社販売も回復傾向にありました。

この結果、当セグメント(ライフケア事業)の売上収益は4,075億49百万円と、19.2%の増収となりました。セグメント利益は862億69百万円と、35.8%の増益となりました。

売上収益
前期比 %増
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売上高構成比

(単位:

エレクトロニクス関連製品

半導体用マスクブランクスは、EUV(Extreme Ultraviolet)向けを含む先端品における活発な研究開発や量産開始のための需要を取り込んだことで大幅に増収となりました。

FPD用フォトマスクは、研究開発向けのフォトマスク需要の回復が見られ、当社の売上収益も一時の落ち込みから回復し大幅に増収となりました。

ハードディスク用ガラスサブストレートは、今後大きな成長が見込まれる3.5インチ製品は最終顧客であるデータセンターでニアライン向けの需要が続いたことにより売上収益が大きく増加しました。また、2.5インチ製品も、HDD(Hard Disk Drive)からSSD(Solid State Drive)への置き換えが継続しておりますが、新型コロナウイルスの影響によるパソコン出荷数増加に伴い、上期を中心に外付けHDDへの需要が増え当社の製品需要も増加し、売上収益は大きく増加しました。その結果、事業全体でも大幅に増収となりました。

映像関連製品

カメラ向けのレンズは、コンパクトデジタルカメラ向け・交換レンズ向けともにスマートフォンによる侵食の影響は継続していますが、新型コロナウイルスにより事業活動に影響を受けた前年と比べ経済活動再開に伴う回復により大幅増収となりました。

この結果、当セグメント(情報・通信事業)の売上収益は2,484億3百万円と、23.6%の増収となりました。セグメント利益は1,228億86百万円と、29.5%の増益となりました。

対処すべき課題

当社グループは、持続的成長と企業価値の最大化に向けて、「ライフケア」と「情報・通信」の複数の事業において、グローバルに経営を推し進めております。多岐にわたる事業を運営するなか、経営資源の最適な配分により、競争力を最大化することで、業績向上に取り組んでまいります。

(1) 目標とする経営指標

当社グループは、資本に対するコストを上回る利益を生んだとき、企業価値が増大し、すべてのステーク ホルダーにご満足いただけるものと考えております。その実現のための経営指標としてSVA( Shareholders Value Added )を導入し、効率的な経営に努めております。

(2) 中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題

① 市場の変化への迅速かつ柔軟な対応と経営資源の効率的な活用

当社グループの事業領域は多岐にわたっておりますが、事業部門に大幅に権限を委譲することで意思決定のスピードを早め、競合に先んじて顧客のニーズに沿った戦略を立案してまいります。また、当社グループの経営資源を適切に配分し、設備投資、事業提携、M&A、事業の撤退・縮小といった判断をタイムリーに行ってまいります。

② 新たな事業、技術の創出

当社グループは、収益を確保し成長し続けるために、従来とは異なる成長分野において、内部開発やM&Aなどにより新たな事業や技術を獲得していくことが重要な課題と認識しております。今後も世界に通用する技術や競争優位性の高い事業の内部開発やM&Aによる獲得、それらを担う人材の採用・育成にさらに力を注いでまいります。

③ 成長市場での事業拡大

デジタルデバイスの長時間使用などによる若年層の視力低下や世界的な高齢化により視力矯正を必要とする人口が増え続けています。医療の現場では医師・患者双方の要求として身体への負担軽減・治療の短時間化が望まれるようになり、低侵襲医療が加速度的に普及しています。また、情報化社会の進展により高性能で省電力な半導体の開発やデータセンターへの投資が進められています。以上のような背景から、当社グループは人々の視力や健康、情報化社会の進展をサポートする製品を成長分野と位置づけ、経営資源を積極的に投入し事業の拡大を目指してまいります。

④ Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)への対応

ESGに対するステークホルダーの関心の高まりや継続的な企業価値の増大のために、当社グループでは2019年8月に設けたESG委員会を中心とした活動を行ってまいりましたが、ESGに対する取り組みを加速させるため、2022年3月にChief Sustainability (ESG) Officerを任命の上、CSOのもとESGの専門部署であるESG推進室を新設し、2022年5月にHOYAグループのサステナビリティ方針を定めました。ESG分野での活動を推進し、サステナブルな社会の構築への貢献と中長期的な企業価値の増大を目指してまいります。

また、社内で議論、検討を進めてきた当社グループの中長期的な成長に資する項目(マテリアリティ)についても特定作業が完了し、2021年9月に取締役会にて承認を得ました。各マテリアリティのさらなる取り組みをグループ全体で積極的に進めてまいります。

〈HOYAグループ マテリアリティ〉

・温室効果ガス(CO2)削減

・製品品質・安全

・従業員エンゲージメント、ダイバーシティ&インクルージョン

・サプライチェーンマネジメント

環境面では、製造拠点における生産性の向上やエネルギー効率の高い装置の導入によるCO2や廃棄物などの削減を推進しており、さらに再生可能エネルギー導入・活用の検討を進めております 。また、2021年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しました。継続して環境負荷の低減を推進するとともに、TCFD 提言に基づいた気候変動に関する情報開示の準備作業も進めてまいります。

社会面では、人種や性別を問わず積極的に優秀な人材を採用し、価値観や多様性を確保するダイバーシティの推進を優先事項として取り組んでおります。また“会社は人なり” の考えのもと、2020年より従業員エンゲージメント調査を定期的に実施しており、多様な人材が活躍できる、より良い職場環境の実現に向けて取り組みを推進してまいります。

ガバナンス面では、過半数を占める社外取締役や委員会制度といった仕組みを基盤とした客観性と透明性の高い経営を行っております。

連結計算書類