事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

当社グループの現況に関する事項

事業の経過及びその成果

当期の経済環境

当期における世界経済は総じて減速傾向となりました。欧米では物価上昇及び主要中央銀行による利上げ、中国では12月にかけて厳格な新型コロナウイルス感染対策が続いたことが、景気の主要な下押し要因となりました。原油価格(WTIベース/1バレルあたり)は、各国の対露経済制裁による原油供給の先行き不透明感等を背景に、期初の101ドル台から6月半ばに123ドル台へ上昇しましたが、その後は世界経済の減速に伴い反落しました。3月には欧米における一部銀行の経営悪化を受けて一時64ドル台まで下落が進みましたが、期末は75ドル台で終えました。

日本経済は、新型コロナウイルス感染対策に係る行動制限の解除を受けて人出が回復する中で、サービス分野を中心に景気が持直しました。但し、夏場・冬場の新型コロナウイルス感染拡大や物価上昇、世界経済の減速により緩やかな増勢にとどまりました。ドル・円相場は、米国長期金利の上昇に伴い期初の122円台から10月下旬にかけて一時151円台まで円安が進みましたが、その後は日本政府の為替介入等により1月中旬にかけて一時127円台まで円高が進み、期末は133円台で終えました。日経平均株価は、米国株価の下落が下押しした一方、円安や国内景気の持直しが下支え要因となって一進一退が続きましたが、期末には28,000円台に乗せ、期初の27,000円台後半を僅かに上回りました。10年物国債利回りは、米国長期金利に連れた上昇圧力が強まるもとで、12月下旬に日銀が長期金利目標の変動幅を拡大したことから、従来の上限であった0.25%前後から0.50%前後へ上昇しましたが、3月中旬以降は欧米における一部銀行の経営悪化を受けた安全資産を購入する動きの広がりにより低下し、期末は0.39%で終えました。

当社グループの当期の業績

当期の収益は、エネルギー・化学品はエネルギートレーディング取引及び化学品関連取引並びにエネルギー関連事業での市況価格上昇等により増収、食料は食糧関連取引での市況価格上昇及び食品流通関連事業での取扱数量増加等により増収、住生活は建材関連事業での市況価格上昇及びEuropean Tyre Enterprise Limited(欧州タイヤ関連事業)での採算改善に加え、北米住宅用構造材関連事業の子会社化等により増収、金属は鉄鉱石価格の下落はあったものの、石炭価格の上昇に加え、円安の影響等により増収となり、全体としては前期比1兆6,523億円(13.4%)増収の13兆9,456億円となりました。

売上総利益は、エネルギー・化学品は市況価格上昇に伴うエネルギートレーディング取引の採算改善及び電力取引の堅調な推移等により増益、金属は鉄鉱石価格の下落はあったものの、石炭価格の上昇に加え、円安の影響等により増益、住生活は国内不動産事業の堅調な推移及びEuropean Tyre Enterprise Limitedでの採算改善に加え、北米住宅用構造材関連事業の子会社化等により増益、機械は自動車関連事業及び北米建機関連事業での販売好調等により増益となり、全体としては前期比1,927億円(9.9%)増益の2兆1,299億円となりました。

販売費及び一般管理費は、前第1四半期末に全家便利商店股份有限公司(以下、「台湾FM」という。)を子会社から関連会社に区分変更したことによる減少はあったものの、堅調な収益拡大及び円安による経費増加等により、前期比724億円(5.4%)増加の1兆4,191億円となりました。

貸倒損失は、一般債権に対する貸倒引当金の増加等により、前期比9億円増加の89億円(損失)となりました。

有価証券損益は、北米飲料機器メンテナンス事業及びコネクシオ(株)の売却に伴う利益はあったものの、ファンド保有株式の評価損益悪化に加え、前期の台湾FMの一部売却、(株)Paidyの連結除外及び日伯紙パルプ資源開発(株)の売却に伴う利益並びにITOCHU Coal Americas Inc.の連結除外に伴う為替差益の実現の反動等により、前期比1,447億円(68.3%)減少の672億円(利益)となりました。

固定資産に係る損益は、Doleでの減損損失等により、前期比325億円悪化の501億円(損失)となりました。

その他の損益は、海外特定債権・事業に係る利益等により、前期比54億円増加の151億円(利益)となりました。

受取利息、支払利息の合計である金利収支は、米ドル金利上昇に伴う支払利息の増加等により前期比189億円悪化の275億円(費用)となり、受取配当金は、LNGプロジェクト及びブラジル鉄鉱石関連投資からの配当金の増加はあったものの、石油ガス上流権益からの配当金の減少等により、前期比11億円(1.3%)減少の797億円となりました。その結果、金利収支に受取配当金を加えた金融収支は、前期比200億円減少の522億円(利益)となりました。

持分法による投資損益は、その他及び修正消去(注)はCITIC Limitedでは鉄鉱石価格下落の影響及び傘下の関係会社に係る減損損失があったものの、総合金融分野の堅調な推移及び証券事業の再評価に係る利益並びに円安の影響等により取込損益が増加したことに伴い増加、金属は価格下落による鉄鉱石事業の取込損益減少はあったものの、北米事業の堅調な推移による伊藤忠丸紅鉄鋼(株)の取込損益増加に加え、円安の影響等により増加、住生活は海外不動産事業での物件売却益に加え、パルプ市況上昇等によるITOCHU FIBRE LIMITED(欧州パルプ事業)の取込損益増加等により増加となり、一方、食料は北米穀物関連事業の堅調な推移等はあったものの、北米畜産関連事業では中国での販売価格下落や円安による対日販売の不調及び穀物市況上昇による生産コスト増加並びに減損損失に伴う取込損益悪化があり減少となりましたが、全体としては前期比292億円(10.0%)増加の3,207億円(利益)となりました。

(注)「その他及び修正消去」は、各事業セグメントに帰属しない損益及びセグメント間の内部取引消去が含まれております。

以上の結果、税引前利益は、前期比432億円(3.8%)減益の1兆1,069億円となりました。法人所得税費用は、税引前利益の減少等により、前期比89億円(3.3%)減少の2,622億円となり、税引前利益1兆1,069億円から法人所得税費用2,622億円を控除した当期純利益は、前期比343億円(3.9%)減益の8,447億円となりました。このうち、非支配持分に帰属する当期純利益442億円(利益)を控除した当社株主に帰属する当期純利益は、前期比198億円(2.4%)減益の8,005億円となりました。

(ご参考)

日本の会計慣行に基づく営業利益(売上総利益、販売費及び一般管理費、貸倒損失の合計)は、エネルギー・化学品は市況価格上昇に伴うエネルギートレーディング取引の採算改善及び電力取引の堅調な推移等により増益、金属は鉄鉱石価格の下落はあったものの、石炭価格の上昇に加え、円安の影響等により増益、機械は自動車関連事業及び北米建機関連事業での販売好調等により増益、住生活は国内不動産事業の堅調な推移及びEuropean Tyre Enterprise Limitedでの採算改善に加え、北米住宅用構造材関連事業の子会社化等により増益となり、全体としては前期比1,194億円(20.5%)増益の7,019億円となりました。

見通しに関する注意事項

本事業報告に記載されているデータや将来予測は、現在入手可能な情報に基づくもので、種々の要因により影響を受けることがありますので、実際の業績は見通しから大きく異なる可能性があります。従って、これらの将来予測に関する記述に全面的に依拠することは差し控えるようお願いいたします。また、当社は新しい情報、将来の出来事等に基づきこれらの将来予測を更新する義務を負うものではありません。

主要な事業内容

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、国内及び海外におけるネットワークを通じて、繊維、機械、情報・通信関連、金属、石油等エネルギー関連、生活資材、化学品、食糧・食品等の各種商品の国内、輸出入及び海外取引、更には損害保険代理業、金融業、建設業、不動産の売買、倉庫業並びにそれらに付帯または関連する業務及び事業への投資を多角的に行っています。

セグメント別業績
  • (注1) 当社は、連結計算書類を国際会計基準(IFRS)に準拠して作成しております。
  • (注2) 「その他及び修正消去」には、各事業セグメントに帰属しない損益及びセグメント間の内部取引消去が含まれております。CITIC Limited及びC.P. Pokphand Co. Ltd.に対する投資及び損益は当該セグメントに含まれております。
  • (注3) 第8及び第8以外のセグメント(以下、「主管セグメント」という。)で株式持合いをしていた関係会社について、2022年10月1日付で当該持合いを解消し、主管セグメントのみの保有に変更しております。当該変更は、当第3四半期及び当第4四半期の実績に反映しており、当第1四半期及び当第2四半期の実績については修正しておりません。これに伴い、前期についても第3四半期及び第4四半期のみ当該持合いが解消した前提で組替えて表示しております。
連結財政状態

総資産は、日立建機(株)の株式取得等による持分法で会計処理されている投資の増加に加え、取引増加や市況価格上昇等による営業債権及び棚卸資産の増加並びに円安に伴う為替影響等により、前期末比9,580億円(7.9%)増加の13兆1,117億円となりました。

有利子負債から現預金を控除したネット有利子負債は、堅調な営業取引収入はあったものの、配当金の支払及び自己株式の取得に加え、日立建機(株)の株式取得並びに円安に伴う為替影響等により、前期末比1,082億円(4.7%)増加の2兆3,912億円となりました。有利子負債は、前期末比1,007億円(3.5%)増加の3兆66億円となりました。

株主資本は、配当金の支払及び自己株式の取得はあったものの、当社株主に帰属する当期純利益の積上げ及び円安に伴う為替影響等により、前期末比6,202億円(14.8%)増加の4兆8,195億円となりました。

株主資本比率は、前期末比2.2ポイント上昇の36.8%となり、NET DER(ネット有利子負債対株主資本倍率)は、前期末比0.05改善の0.50倍となりました。

連結キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、営業取引の伸長による運転資金の増加はあったものの、金属、第8、エネルギー・化学品及び住生活での営業取引収入の堅調な推移等により、9,381億円のネット入金となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、機械での北米飲料機器メンテナンス事業及び情報・金融でのコネクシオ(株)の売却はあったものの、機械での日立建機(株)の株式及び住生活での北米住宅用構造材関連事業の取得並びに金属でのカナダ鉄鉱石事業への投資に加え、食料、第8、機械及びエネルギー・化学品での固定資産の取得等により、4,538億円のネット支払となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、リース負債の返済に加え、配当金の支払及び自己株式の取得等により、5,001億円のネット支払となりました。

現金及び現金同等物の当期末残高は、前期末比57億円減少の6,060億円となりました。

2022年度の定性的成果

当社グループは、中期経営計画「Brand-new Deal 2023」(2021年度から2023年度までの3ヵ年計画)において、『「マーケットイン」による事業変革』と『「SDGs」への貢献・取組強化』を基本方針として掲げています。「Brand-new Deal 2023」2年目である2022年度の具体的成果は、次のとおりです。

繊維カンパニー

「リーボック」の日本における販売権及びライセンス権取得

当社は、優れたデザイン性と革新的な機能の両立により世界中で抜群の知名度と人気を誇る、スポーツブランド「リーボック」の日本における販売権及びライセンス権を取得しました。ブランドビジネスに関して圧倒的なノウハウを有する当社と、EC運営大手(株)ロコンドで推進するシューズ事業では、スポーツからファッションまで幅広い商品展開やプロモーションの強化を通じ「リーボック」の更なるブランド価値向上を図ります。

生活消費分野に強みを持つ当社は、市場や消費者のニーズに応える「マーケットイン」の発想を通じて、重点分野と位置付けるスポーツ関連ビジネスの収益基盤強化を図ります。

(世界中のファンを魅了してきた「リーボック」ブランドのシューズ)

サーキュラーエコノミー実現の加速に向けた戦略的な提携・投資

当社は、繊維業界が抱える廃棄問題の解決を目指し業界の変革を志す「RENUプロジェクト」を軸に、繊維製品回収サービスを手掛ける(株)ecommitやポリエステルのケミカルリサイクル技術ライセンス展開を行う(株)RePEaTへの出資等、国内外のパートナー企業との連携を更に強化しました。繊維原料から、テキスタイル・服飾資材・アパレル、そして、小売に至るまで総合商社随一の規模を誇る当社のバリューチェーンを通じ、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現を目指し、「SDGs」への貢献を果たしてまいります。

(注目のブランド「トモ コイズミ」にも高品質を評価され、ドレスに採用)

機械カンパニー

北米建機ファイナンス・リース会社「ZAXIS Financial Services Americas, LLC(ZAXIS Finance社)」の設立

当社は、2022年に日本産業パートナーズ(株)との合弁会社を通じ、日立建機(株)の総議決権数の26.0%にあたる株式を取得し、筆頭株主となりました。日立建機(株)との資本提携後の協業第一弾として、当社、日立建機(株)及び東京センチュリー(株)との3社合同で、世界市場の約40%を占める世界最大の北米市場において日立建機製品の販売金融を行うファイナンス・リース会社(ZAXIS Finance社)を設立しました。

当社と東京センチュリー(株)は、北米において長年ファイナンス事業に取組んできた実績があり、両社の知見を活かして、これまで日立建機(株)が北米で取組めていなかった建機ファイナンス事業を強化することで、多様なサービスを提供し、北米における日立建機製品の拡販を推進していきます。

(北米で稼働する日立建機(株)の製品ラインアップ)

北米における再生可能エネルギー事業への取組強化

当社の米国子会社Tyr Energy, Inc.は、米国において再生可能エネルギーの開発を専業に取組むTyr Energy Development Renewables, LLC(TED社)を設立しました。TED社を通じ、土地確保・電力系統接続・各種許認可取得・ファイナンス組成等、再生可能エネルギーの開発に必要な一連の業務を1社で完結できる体制を総合商社で唯一構築しており、既に約2GWのソーラー発電所を開発しています。

また、当社の米国子会社Tyr Wind, LLCを通じて北米において6件の風力発電所に参画するとともに、同じく当社の米国子会社で世界最大の独立系発電所運転・保守サービス会社であるNAES Corporationの知見も活用し、今後拡大が期待される北米再生可能エネルギー市場における取組を加速していきます。

(米アーカンソー州で開発する太陽光発電施設の完成後イメージ)

金属カンパニー

カナダ最大の鉄鉱石事業の権益取得、貴重な高品位鉄鉱石を生産

当社は、鉄鋼大手ArcelorMittal Canada Inc.、韓国Posco Holdings Inc.、台湾China Steel Corporationがカナダで操業中の同国最大の鉄鉱石事業ArcelorMittal Mining Canada G.P.及びArcelorMittal Infrastructure Canada G.P.(AMMC)の一部権益を取得しました。AMMCは、同国最大級の鉄鉱山であり、生産・出荷に必要となる重要なインフラ(鉄道、港湾、ペレット生産設備等)をすべて保有する一貫操業体制により非常に高いコスト競争力を有し、年間25百万トンの鉄鉱石とペレットを安定的に生産しています。生産される高品位の鉄鉱石は、還元鉄の生産に不可欠な原料となります。還元鉄を用いた製鉄プロセスでは、従来と比較しCO2排出量を最大で半減させることができるため、鉄鋼業の低炭素化に大きく寄与することが期待されます。

当社は、本権益取得により他社に類を見ず、大洋州・南米・北米の3地域で優良な鉄鉱石資源を確保し、安定供給体制を強化するとともに、パートナー企業と鉄鋼業の低炭素化に貢献していきます。

(AMMCが操業するカナダ最大の露天掘り鉄鉱山)
【出典:https://northamerica.arcelormittal.com/our-operations/arcelormittal-mines-and-infrastructure-canada

エネルギー・化学品カンパニー

太陽光発電の「オフサイトコーポレートPPA事業」本格化

当社は、2021年に国内の遊休地を有効活用し、複数の中小規模の太陽光発電所を開発・保有(オフサイト型)したうえでグリーン電力を束ね、都心のオフィスビル等のお客様へ長期に電気と環境価値の提供を行う(株)クリーンエナジーコネクト(CEC社)へ資本参画しました。CEC社を通じて2022年度時点で全国500箇所での発電を開始しており、国内オフサイト型PPA業界でのリーディングポジションを確立しています。また、2023年2月には、Amazonに対して国内における追加性のある再生可能エネルギーを長期で供給するオフサイトコーポレートPPAの提供を開始し、2024年度までに日本国内で約700箇所、計70MWのAmazon専用のNon-FIT低圧太陽光発電所を開発する計画です。

当社は、CEC社との取組を通じ、2025年度までに現状の10倍にも及ぶ約5,000箇所、累計500MWの太陽光発電所を導入し、国内で最大規模のオフサイトコーポレートPPA運営事業者となることを目指し、再生可能エネルギー分散型電源の普及を推進していきます。

(遊休地を活用したオフサイト型太陽光発電事業)

再生航空燃料ビジネスの拡大

当社は、日本国内で最初に商用フライトへの再生航空燃料(SAF)の供給を行ったSAF供給のフロントランナーです。世界最大のリニューアブル燃料メーカーであるフィンランドNeste OYJが生産するSAFの全日本空輸(株)及び日本航空(株)への供給に続き、アブダビに本拠地を置くEtihad Airways PJSCへの供給を開始しました。日本から海外の航空会社への供給は当社が初めてとなります。また、国内でSAF導入を推進する国土交通省航空局の実証案件を通じて、SAFの原液を輸入し、富士石油(株)の協力のもと、国内で化石由来のジェット燃料と混合して供給するという新たな取組によりSAF混合サプライチェーンを構築しました。

これらの取組を通じ、次世代燃料の普及、サプライチェーンの構築・拡充を加速し、脱炭素社会の実現を目指します。

(SAFを使用したANA Green Jet)

食料カンパニー

国内製糖事業の再編

国内人口動態の変化や砂糖需要の多様化に対応するため、2023年1月、当社100%子会社であった伊藤忠製糖(株)と住友商事(株)が筆頭株主であった東証プライム市場上場の日新製糖(株)との経営統合を実施し、当社を筆頭株主とする持株会社ウェルネオシュガー(株)を発足させました。当社は、海外拠点をフル活用した原料糖の安定調達から日本随一の精製効率を誇る伊藤忠製糖(株)の高品質な砂糖の販売まで、50年以上にわたって強靭な砂糖事業バリューチェーンを構築してきました。新会社は国内砂糖シェア3割を有し、中京圏では盤石な伊藤忠製糖(株)の「クルルマーク」と東京・大阪の大都市圏で高認知度を持つ日新製糖(株)の「カップ印」という地域別に高いブランド認知度を誇る両社の小売商品ラインアップにより全国の需要を隈なくカバーします。

商社トップクラスである当社の海外原料調達能力や当社グループの中間流通・川下領域でのネットワークを活かした販売シナジーに加え、両社の研究開発力の結集によるオリゴ糖をはじめとする健康訴求品の開拓加速等の統合効果を追求し、砂糖事業を拡大していきます。

(統合した伊藤忠製糖(株)と日新製糖(株)の両ブランド商品)

ルイボスティーの取組

当社は、健康や美容への関心の高まりを背景にノンカフェイン飲料として注目されているルイボスティーの原料輸入・加工・ブランディングを行い、飲料メーカー、コンビニエンスストア等に販売しています。ルイボスは、南アフリカ共和国のみで栽培されている希少な植物で、生産量の約50%が輸出に回る中、日本向けの輸出は過去10年間で約7倍へと急拡大しています。当社は、単なる原料販売にとどまらず、消費者の嗜好を汲み取った商品開発をメーカーと進めてきました。伊藤忠食糧(株)と共同で、バリューチェーン全体を構築するオーガナイザー機能を発揮し、国内大手飲料メーカー向けのシェアは約50%と圧倒的な立ち位置を確立しています。

今後も自社ブランドでのティーバッグやルイボスチョコレート等の新商品開発を推進し、ルイボスのような高機能商材を世界各地で開発するとともに、消費者ニーズに即した付加価値ある最終商品の開発まで踏み込むことで、強固な川中・川下グループ企業群を有する当社にしかできないバリューチェーンの構築を進めてまいります。

(南アフリカ共和国での収穫風景/(株)ファミリーマートのルイボスティー)

住生活カンパニー

北米住宅用構造材事業の取得

当社は、米国にて住宅用構造材の製造・販売を展開する Pacific Woodtech Corporation(PWT社)を通じLouisiana-Pacific Corporation(LP社)より柱・梁材製造事業を取得し、業界最大手の一角となりました。LP社の米国カリフォルニア州、ノースカロライナ州、加国ブリティッシュコロンビア州の3工場を取得することで、全米をカバーする製造拠点の体制が整いました。

北米建材事業では、既に業界No.1であるフェンス事業に続き、住宅用構造材事業においてもバリューチェーンの強靭化を実現し、単板積層材専門の製造業者としてNo.1の地位を確立しました。今後も高付加価値製品の製造力を強化し、更なる事業の拡大・収益力強化を図ってまいります。

(PWT社製 単板積層材を使用した住宅用構造材)

Metsä Fibre Oy(MF社)との取組強化

当社は、100%子会社ITOCHU FIBRE LIMITED(IFL社)を通じ世界最大手市販針葉樹パルプメーカーであるフィンランドのMF社に25.0%出資しています。2022年10月には省人化を実現した最新鋭の新製材工場が稼働し、竣工式にはフィンランド首相が駆けつける等、地元からも支持される事業を展開しています。2022年度においては、当社が長年培ってきた販売ネットワークを活かしながら、好調なパルプ市況もあり、IFL社は史上最高益を達成しました。2023年度にはパルプ新工場稼働を予定しており、MF社として400万トン規模まで生産量を拡大することで、他商社を圧倒し、業界No.1の地位を更に盤石のものとします。また、パルプ工場で発電される木材由来の再生エネルギーは、自社使用分を除いて周辺地域へと供給し、地域環境保全にも貢献しています。

引続きMF社が生産を、当社が成長市場であるアジアを中心とした世界中の販売を担い、更なるパルプビジネスの拡大を図ります。

(MF社パルプ新工場の完成後イメージ)

情報・金融カンパニー

(株)外為どっとコムの持分法適用会社化

当社は、2022年9月に外国為替証拠金取引(FX)大手の(株)外為どっとコムに40.2%の出資を実行し、持分法適用会社化しました。これにより、当社は、スイスを拠点とする世界的総合金融ブローカーであるトラディショングループに次ぐ株主となりました。FX市場は2022年に過去最高となる取引額を記録する等、安定した成長を続けています。同社は、「お客様第一主義」を掲げ、業界最低水準の手数料や長期的な運用ができる積立サービス、質の高いFX関連情報の発信等、徹底的に顧客の立場に立ったサービスの提供を強みに口座数を約58万まで拡大し、利用者数を伸ばしています。

当社は、ポケットカード(株)、(株)オリエントコーポレーション及び香港・タイ・英国等海外でのリテール金融事業等、他商社比で圧倒的な強みのあるリテール金融基盤を有しています。今回の(株)外為どっとコムへの出資を機に、リテール金融事業の「融資・決済」分野と連携し、同社の更なる顧客基盤拡大を支援しつつ、消費者ニーズを捉えた「資産運用」分野へも事業領域を拡大し、優位性を更に高めてまいります。

(初めての方にも丁寧・適切な情報の発信で利用をサポート)

Docquity Holdings Pte. Ltd.(Docquity社)の持分法適用会社化

当社は、2022年8月に医師向けオンラインプラットフォームを展開するDocquity社に筆頭株主となる29%の出資を実行し、持分法適用会社化しました。近年、東南アジアにおける医療・ヘルスケア分野のデジタル化が加速しており、国を超えた医師同士の知見共有や製薬企業等から医師への情報提供において、オンラインの活用が急速に浸透しています。同社のプラットフォームは、東南アジアを中心に総会員数約35万人(東南アジアの医師数全体の7割以上)を有し、東南アジア最大の事業規模を誇っています。当社は、情報通信分野において強みを持ち、かつ、ヘルスケア分野においても長年培った知見を有しているからこそ、同社のような先進企業への出資を、他商社に先駆けて初めて実現することが可能となりました。

当社は、治験受託大手のエイツーヘルスケア(株)が有する製薬業界に対するノウハウに加え、当社グループの国内外のネットワークを活用することで、同社の既存事業である医薬品・医療機器マーケティング事業の更なる成長を支援するとともに、新たな医師・医療機関向けのデジタルサービスの展開等、医療・ヘルスケアDX事業を推進してまいります。

(時代の変化に合わせたコミュニケーション手段を提供)

第8カンパニー

広告・メディア事業の取組拡大

(株)データ・ワンは、前期比14%増とマーケットの急成長が続くデジタル広告市場において、1日1,500万人が来店する(株)ファミリーマートの購買データと(株)NTTドコモのdポイントデータを活用し、消費者及び広告主双方のニーズに合わせたデジタル広告配信事業を展開しています。通常、広告配信効果は市場全体の売上によって大まかにしか測ることができませんが、本事業では実際の購買データから広告配信効果をきめ細かく検証することが可能であり、広告主より高評価をいただいています。また、実際の購買データに基づく顧客属性に応じた広告を配信するため、消費者にとってもニーズに沿った広告が届くことでストレスフリーに閲覧可能であり、広告配信ユーザー数は国内最大級となる約2,900万人となりました。

今後は、ファミリーマート店舗で展開拡大するメディア事業との一層の連携を図ります。2023年度内に1万店舗へ設置予定のデジタルサイネージで配信する広告と(株)データ・ワンのデジタル広告を連携させ、リアルとオンラインを融合した新しい広告事業へと進化させていきます。

(大型デジタルサイネージとも連携したデジタル広告を配信)

処方薬の店舗受取サービス「ファミマシー」の開始

(株)ファミリーマートは2022年5月、処方薬の店舗受取サービス「ファミマシー」を開始しました。ファミマシーは、凸版印刷(株)グループ会社が運営する「とどくすり薬局」と連携し、処方薬を最短翌日に、送料・手数料無料で首都圏の約4,500店舗で受取が可能なサービスです。24時間いつでも、利用者のタイミングで最寄りのファミリーマート店舗で受取ができることで、調剤薬局への処方箋の持参、処方の順番待ちといった不便さを解消します。

今後は、サービス展開地域を拡大するとともに、「マーケットイン」の発想を通じて、引続き消費者ニーズに基づいた利便性の高いサービスを提供していきます。

(ファミリーマート店頭で処方薬を受取)

その他

「ITOCHU SDGs STUDIO」からの発信を強化

当社は、2022年7月に次世代を担うこどもたちが「遊び」を通してSDGsの考え方を体験できる施設「ITOCHU SDGs STUDIO KIDS PARK」を新設しました。安心安全に遊べる無料の施設として注目され、1日300人の予約枠は常時満枠となっています。更に「こどもの視展」等の展示、当社冠番組のJ-WAVEラジオ公開収録等で前年度比約5倍の年間約10万人が来場する等、他に類を見ないSDGs発信拠点として成長しています。SNSフォロワー数も3万人に上り、当STUDIOの発信強化に寄与しています。今後も、消費者との接点を更に拡大し、あらゆる生活者がSDGsと出会うきっかけを提供していきます。

(「ITOCHU SDGs STUDIO」外観)

対処すべき課題

来期の見通し

来期の経営環境を展望しますと、世界経済は、主要中央銀行による金融引締めの効果が強まるもとで、欧米を中心に景気が一段と減速することが懸念されます。中国経済も、ゼロコロナ政策撤廃により内需が持直すものの、輸出が伸び悩むことから景気回復ペースは緩慢となる見通しです。日本経済は、輸出が伸び悩むものの、賃金上昇とインフレ率低下、日銀の金融緩和継続が内需を後押しする他、インバウンド需要の一層の復調も見込まれるため、景気の回復が期待されます。ドル・円相場は、米国長期金利の低下基調に伴い円高地合いが予想されます。原油価格は、主要産油国による供給抑制により、期初の80ドル近辺で底堅く推移する見通しです。

なお、ロシア・ウクライナ情勢に係る高い不確実性の他、欧米における銀行の貸出抑制姿勢の強まりから海外景気が下振れするリスク等には引続き注視してまいります。

中期経営計画「Brand-new Deal 2023」の更なる推進

現中期経営計画「Brand-new Deal 2023」(2021年度から2023年度までの3ヵ年計画)の最終年度となる2023年度は、当該中期経営計画の基本方針である、『「マーケットイン」による事業変革』と『「SDGs」への貢献・取組強化』の更なる推進を通じて、引続き、多様化するマーケットニーズへの対応と、本業を通じた生活基盤の維持・環境改善等の「SDGs」実現への貢献を果たしてまいります。

人的資本等の強みである非財務資本と安定した財務基盤に基づき、成長投資の着実な実行とハンズオン経営の徹底による既存事業の磨きを通じ、持続的成長を実現する事業基盤の強化・拡大を力強く進めてまいります。

基本方針

<「マーケットイン」による事業変革>

多様化する売り手/買い手の顕在・潜在ニーズを捉えて、川下から川上までのバリューチェーン変革による事業成長を実現するため、現中期経営計画における主要施策への取組を継続します。

  • ・グループ最大の消費者基盤であるファミリーマート事業の進化
  • ・川下起点のバリューチェーン全体の変革
  • ・データ活用・DXによる収益機会拡大

グループ最大の消費者基盤であるファミリーマートを起点に、グループが保有する機能を最大限活用したファミリーマートのデジタル化、顧客接点・データ基盤を活用した広告・メディア・金融事業等の新たな収益基盤の創出、ファミリーマート以外での新たな消費者接点・データ基盤の獲得を通じた更なる収益の拡大を図ります。

<「SDGs」への貢献・取組強化>

大きく変化する経営環境をチャンスと捉え、「SDGs」実現に貢献してまいります。

  • ・脱炭素社会を見据えた事業拡大
  • ・循環型ビジネスの主導的展開
  • ・バリューチェーン強靭化による持続的成長
株主還元方針

「Brand-new Deal 2023 新配当方針」に則り、累進配当(連続増配)の継続と配当性向30%を実現し、2023年度の1株当たり配当金は、当社史上最高を更新する160円とします。

加えて、自己株式取得についても、市場環境・キャッシュアロケーションの状況を踏まえ、機動的、継続的に実行し、総還元性向33%以上を目指します。

株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。

連結計算書類