事業報告(2022年 4 月 1 日から2023年 3 月31日まで)

企業集団の現況

事業の経過及び成果

① 経済環境

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和等により緩やかな回復基調にありましたが、資源価格の高騰等による物価の上昇や、世界的な金融引き締め等による海外経済の減速懸念などが重なり、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

② 企業集団の状況

こうした環境の下、当社グループは、2022年4月より5か年(2022年度~2026年度)の中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」をスタートさせました。計画初年度である2022年度は事業活動を通じて社会と企業の共有価値を創造するCSV(Creating Shared Value)の実践により、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現することで、外部環境が大きく変化していく中で力強く持続的に成長する企業グループを目指して、計画に掲げたビジネス戦略・マネジメント戦略を着実に遂行しました。

2022年度における中期経営計画の遂行状況は次のとおりであります。

【ビジネス戦略】

中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」のビジネス戦略を着実に推進するため、社会の変化に応じた経営資源の機動的な配分を行い、3つの成長ドライバーに区分した7つの事業領域を中心にビジネス領域の拡大に取り組みました。

<3つの成長ドライバーと7つの事業領域>

1.ライジングトランスフォーメーション<社会的な地殻変動を捉えた戦略的成長>

●モビリティ

電気自動車導入に係るワンストップサービス提供においてアライアンス先との協業体制構築に取り組むとともに、自動運転の社会実装に向けた複数の実証実験に参加しました。

海外においても、物流領域における更なる事業拡大を目的に、米国を中心に物流機器等のオペレーティング・リース事業を展開する持分法適用関連会社のPacific Rim Capital,Inc.を連結子会社化しました。

●サーキュラーエコノミー

循環型社会の実現に向けて、製品寿命の長期化と再資源化を実現し、持続可能な形で資源を利用するサーキュラーエコノミーへのお客様の参加と貢献を可能にする「サーキュラーエコノミーリース」の2023年4月からの取扱い開始に向けた検討を進めました。

2.アクセラレーティングトランスフォーメーション<市場トレンドを捉えた加速度的成長>

●エネルギー環境

欧州を中心に海外における再生可能エネルギー事業の拡大を積極的に進め、英国での洋上風力発電事業への参画や、欧州の再生可能エネルギー事業ファンドへの出資契約締結を実現しました。

●BPO/ICT(※1)

多様化するお客様ニーズへの対応を目的にサービス機能の強化を進め、B to B企業向け動画制作・配信事業を展開する株式会社ヒューマンセントリックスを連結子会社化しました。また、アライアンス先との業務提携等を通じて、IT業務のアウトソーシング・メニューの高度化とサービス提供体制の強化を進めました。

●医療福祉

地域金融機関等との連携を進め、医療・介護事業者を支援し、地域の安定したヘルスケア基盤構築への貢献を目指す「地域特化型ヘルスケアファンド」の組成に向けた取組を進めました。

3.グロウイングパフォーマンス<中核分野の安定的成長>

●不動産

リスクとリターンのバランスを意識した案件の選別、資産の入替えを進めることで、マーケット環境の変化に適切に対応しました。

●航空機

航空機リースの需要拡大が見込まれる米国において、航空機リース子会社を有人化するなどネットワークの拡充等を通じて、オペレーティング・リースの取組を強化しました。また、エールフランス航空と契約を締結した、航空会社向け初となるサステナビリティ・リンク・ローン(※2)付き日本型オペレーティング・リースの取扱いを開始し、航空業界における脱炭素化の促進に貢献しております。

※1 BPO(Business Process Outsourcing)
お客様の業務の効率化や経営資源の集中などを目的に、業務処理を受託する事業

ICT(Information and Communication Technology)
情報通信技術に関連するサービスやソリューションを提供する事業

※2 サステナビリティ・リンク・ローン
借入人の包括的なサステナビリティの取組成果と金利等の借入条件を連動させるローン

<事業を通じた社会価値の創出>

事業を通じた持続可能な社会の構築と企業としての継続的な成長の両立を実現するため、当社グループはCSVの考え方を経営の根幹に位置付け、サステナビリティに関する取組を強化しております。

中期経営計画においては、事業を通じて社会課題の解決に貢献するCSVの考え方に基づき、成長ドライバーに区分した7つの事業領域を、持続可能な地球環境の実現への貢献を目指す「環境」と、豊かな社会と健やかな人の実現への貢献を目指す「社会とひと」の分野にそれぞれ紐づけ、様々な取組を進めております。

「環境」分野では、国内外での再生可能エネルギー事業の拡大や、「サーキュラーエコノミーリース」の新設などを通じて、気候変動問題の解決や循環型社会の実現に向けた取組を強化しました。また、「社会とひと」の分野では、BPO/ICTサービスにおけるサービス機能の強化を進め、お客様の新たな価値創造時間の創出に努めました。このような取組を進めていくことで、社会課題の解決と経済価値の同時実現による持続的な成長を目指してまいります。

【マネジメント戦略】

ビジネス戦略を支える経営基盤を強化するため、マネジメント戦略では以下取組を進めました。

  • 高付加価値人材の継続的輩出に向け人的投資を積極的に進めるとともに、新たに明文化した企業グループのミッション/ビジョン/バリューの役職員への浸透を目的としたワークショップをグループベースで展開するなど、持続的な価値創造に大切な「ひと」の育成に注力しました。
  • DX推進の基盤作りを進め、当社及びシャープファイナンス株式会社は経済産業省が定めるDX認定制度に基づく「DX認定事業者」に新たに認定され、当社グループにおけるDX認定事業者は株式会社WorkVisionを含め3社となりました。
  • 財務健全性及び資本効率向上の両立に資する資金調達手段として、当社として初めてハイブリッド債(劣後特約付社債)を発行しました。また、株式会社格付投資情報センター(R&I)の当社発行体格付が「A」から「A+」に引き上げられるとともに、株式会社日本格付研究所(JCR)の当社長期発行体格付(A+)の見通しが、「安定的」から「ポジティブ」に変更されました。

以上のことから、当社グループの連結業績につきましては、次のとおりとなりました。

当連結会計年度の契約実行高は前年度比10.6%増加の1兆5,308億3千万円となり、当連結会計年度末の営業資産残高(割賦未実現利益控除後)は前連結会計年度末比1,385億8千7百万円(5.4%)増加して2兆7,045億2千6百万円となりました。

損益面では、売上高は前年度比4.7%増加の6,886億5千5百万円、営業利益は前年度比12.0%増加の515億6千1百万円、経常利益は前年度比13.2%増加の596億9千9百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度比14.9%増加の389億3千9百万円となりました。

セグメントの業績

当連結会計年度におけるセグメントの業績は次のとおりであります。

[リース及び割賦]

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リース及び割賦の契約実行高は前年度比3.0%減少して4,825億4千9百万円となり、営業資産残高は前連結会計年度末比1.0%減少して1兆7,409億5千1百万円となりました。リース及び割賦の売上高は前年度比3.3%増加して6,118億6千3百万円となり、セグメント利益は前年度比12.0%増加して366億7千9百万円となりました。

[ファイナンス]

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ファイナンスの契約実行高は前年度比18.2%増加して1兆480億9千5百万円となり、営業資産残高は前連結会計年度末比20.3%増加して9,341億6千7百万円となりました。ファイナンスの売上高は前年度比18.4%増加して262億8百万円となり、セグメント利益は前年度比12.6%増加して186億5百万円となりました。

[その他]

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その他の契約実行高は前年度比25.2%増加して1億8千5百万円となり、営業資産残高は前連結会計年度末比7.5%減少して294億7百万円となりました。その他の売上高は前年度比16.2%増加して505億8千3百万円となり、セグメント利益は前年度比15.1%増加して101億6百万円となりました。

企業集団の対処すべき課題

① ミッション/ビジョン/バリュー

当社グループは、コーポレートスローガンである「前例のない場所へ。」の方向性を定め、役職員が一丸となって持続的な成長の実現を目指すため、企業グループとしてのミッション/ビジョン/バリューを明文化しております。

これにより、CSV経営の考え方を更に推し進め、持続可能な社会づくりに貢献するとともに、企業価値の向上に取り組んでまいります。

② 中期的な経営方針・戦略

今後の経済見通しにつきましては、経済・社会活動の正常化に伴い緩やかな回復基調で推移することが見込まれるものの、地政学的リスクの高まりや欧米における金融システム不安等から不透明な状況が続くものと予測しております。

このような状況の下、当社グループは、事業活動を通じて社会と企業の共有価値を創造するCSVの実践を通じて、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現することで、外部環境が大きく変化していく中で力強く持続的に成長する企業グループを目指してまいります。

中期経営計画の2年目となる2023年度も、経営目標の達成に向けて、中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」で掲げているビジネス戦略及びマネジメント戦略を着実に推進してまいります。

【ビジネス戦略】

ビジネスごとの成長性や収益性、当社グループの強みなどを総合的に判断し、当社グループが有する複数の事業領域の中から7つを選び、3つの成長ドライバーに区分しております。マーケットの拡大・創出が見込まれる事業領域には経営資源を集中的に投下し、持続的な利益成長を目指すととともに、成熟しつつあるマーケットにおける事業領域では徹底した差別化を進めることで、安定的な成長の実現を図ってまいります。

<3つの成長ドライバーと7つの事業領域>

2023年度も、事業環境や社会の変化を捉えた経営資源の機動的な配分を継続し、成長ドライバーに区分する7つの事業領域を中心としたビジネスの拡大を通じて、多様な事業から構成される「連峰型」の収益構造への転換を進めてまいります。

<事業を通じた社会価値の創出>

事業を通じて社会課題の解決に貢献するCSVの考え方に基づき、成長ドライバーに区分した7つの事業領域を、持続可能な地球環境の実現への貢献を目指す「環境」と、豊かな社会と健やかな人の実現への貢献を目指す「社会とひと」の分野にそれぞれ紐づけ、様々な取組を進めてまいります。

例えば「環境」分野では、事業を通じたお客様及び社会のCO₂排出の削減貢献、プラスチックのリサイクルによる廃棄物削減などを通じて気候変動問題の解決や循環型社会実現への貢献を図ります。また、「社会とひと」の分野では、BPO/ICTサービスの提供を通じてお客様に新たな価値創造時間を創出するなど、社会的インパクトを重視した事業運営を行ってまいります。このような取組を進めていくことで、社会課題の解決と経済価値の同時実現による持続的な成長を目指してまいります。

【マネジメント戦略】

「CSV経営」と「グループガバナンス」をマネジメント戦略における中心軸に据え、持続的な価値創造を支える組織・体制の強化を進めてまいります。加えて、「人材戦略」において持続的な成長を支える高付加価値人材の育成を強化するとともに、「DXに向けたデジタルサポート」においては、営業活動をサポートする社内営業管理システムの刷新やデータ利活用に向けた推進体制の整備、デジタルを活用した業務効率化に取り組んでまいります。

「システム戦略」、「業務改革」、「財務戦略」、「リスクマネジメント」についても高度化・合理化を進め、事業環境の変化が加速する中で多様化するリスクに柔軟に対応することで、適切な事業運営に努めてまいります。

③ 目標とする経営指標

中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」では、計画最終年度である2026年度の財務目標及び非財務目標を以下のとおり設定しております。

経営目標の達成に向けて最大限努力してまいります。

株主の皆様におかれましては、より一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

【ご参考】

1. コーポレートガバナンスへの取組

  • (1) 基本的な考え方
    当社グループは、株主、顧客、従業員、地域社会など様々なステークホルダーとの関係を重視し、当社グループの「ミッション/ビジョン/バリュー」(前述「(2) 企業集団の対処すべき課題①をご参照ください)のもと、2022年度~2026年度の中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」に掲げる経営目標を実現するために、誠実かつ公正な企業活動を遂行することがコーポレートガバナンスの基本であり、最も重要な課題であると考えております。
    当社は、コーポレートガバナンスの枠組及び運営方針等を定めた「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を取締役会の決議により制定し、これに則った企業活動を行っております。
  • (2) コーポレートガバナンス体制
    当社は、監査役会設置会社の形態を採用しております。監査役は内部監査部門及び内部統制部門と密接に連携して監査を行っており、独立社外監査役を2名設置しております。
    また、当社は、外部的視点から業務執行に対する監督及び助言を得るべく独立社外取締役を4名設置しており、当社の取締役会の構成は業務執行取締役以外の取締役5名と業務執行取締役4名となっております。さらに、2022年6月より、取締役会議長は業務執行取締役以外の取締役から選定することとし、現在は取締役会長が議長を務めております。
    加えて、当社は、取締役会の任意の諮問機関として、独立社外取締役全員と業務執行取締役以外の社内取締役1名により構成する「指名・報酬等諮問委員会」を設置しております。同委員会では、取締役・監査役の候補者選定・解任、取締役の報酬、取締役社長(社長執行役員)の後継者計画、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」の改正、取締役会全体の実効性に関する分析・評価等について審議し取締役会に対し答申しており、恣意性を排除するとともに透明性の高い経営体制としております。こうした体制とすることにより、当社は、取締役会の監督機能の一層の向上を図っております。
    さらに当社は、経営の監督機能と業務執行との分離により、意思決定のスピードアップと経営効率を高めるため、執行役員制度を導入しております。当社のコーポレートガバナンス体制の全体像は下図のとおりとなります。

2. 持続可能な価値創造を支える体制

当社グループはCSV(※)の考え方を経営の軸と位置付け、事業を通じてSDGsに代表される社会課題を解決することで、持続可能な社会の構築と企業としての持続的な成長の両立を目指しております。
「持続的な価値創造を支える体制にかかる基本方針」で基本的な考え方を定めるとともに、グループ横断的にCSVを推進するため2020年に「CSV推進委員会」を設立し、非財務面の指標・目標の策定、その推進にかかるモニタリング等を行っております。

※CSV(Creating Shared Value):共有価値の創造。事業活動を通じ、社会価値と企業価値を同時に 追求、両立させることを目指す経営の考え方。

3. 人材投資に関する考え方

当社グループは、「人」すなわち社員が当社グループの持続的な価値創造を支える基盤であり、最大の財産であると考え、積極的な人材投資を行っております。

[人材投資の3つの柱]

  • ・事業領域の多様化、高度化に対応する「戦略的人材育成」
  • ・多様な個性や才能、能力が最大限発揮できる「ダイバーシティ&インクルージョン」
  • ・健康で生き生きと働ける職場環境の整備、「健康経営、ワークライフバランス」

このうち、戦略的人材育成では、語学やDXなど全ての事業領域において付加価値の創出を底上げするスキルの教育や、自己啓発プログラムの拡充による自律的な学びの推進に注力しております。また、親密企業への出向等を実施し、事業領域ごとの専門性を高めております。

ダイバーシティ&インクルージョンや健康経営では、特に女性の能力を発揮できる環境づくりに取り組んでおります。女性社員と経営陣との交流会や、女性経営者によるキャリア講演会など、多様なロールモデルに触れる機会を提供しております。また、女性の健康課題への理解を深めるオンラインセミナーや、女性医師による個別相談会も開催しております。

4. 気候変動問題と再生可能エネルギーへの対応

  • (1) 気候変動問題に対する当社グループの認識
    当社グループは、気候変動がもたらすリスクと機会への対応が重要と認識し、2019年に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、2022年よりこれらリスクと機会が業績や財務面に与える影響の分析及び情報開示を実施しております。当社グループの脱炭素化へ取り組むとともに、ビジネスソリューションの提供を通じてお客様の脱炭素化を推進していくこととし、「脱炭素社会実現への貢献」を重要な取組課題(マテリアリティ)の一つに掲げております。
  • (2) 温室効果ガス排出削減に向けた取組
    当社グループは2018年に国内総合リース会社として初めて「RE100」に参加しました。2021年にカーボンニュートラル宣言を公表し、当社グループが排出するCO2(スコープ1及び2)を2030年までに実質ゼロにすることを目標に掲げ、オフィススペース消費電力の再生可能エネルギー化や社用車のEV・FCV化を進めております。
    さらに、お客様や地域の温室効果ガス排出削減に向けて、再生可能エネルギー発電事業への取組を拡大するとともに、お客様の脱炭素に資する製品・物件等を対象にした脱炭素ファイナンスプログラムを継続して推進する等、脱炭素推進に向けた資金投下額を5年間累計で3,000億円、CO2の排出量削減貢献を2026年において年間50万t-CO2/年を中期経営計画の非財務目標に設定して取り組んでおります。

連結計算書類