第21期事業報告(2019年12月1日から2020年11月30日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過及びその成果

全般的概況

当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大により個人消費や企業活動が停滞したことで非常に厳しい状況で推移しており、経済活動に段階的な再開の動きが見受けられたものの、依然として先行きは不透明な状況となっております。

そのような中、当社グループは、領域の異なる事業を複数展開するポートフォリオ経営を推進してきたことにより、新型コロナウイルスの影響を上手く分散し、確実に増収増益を達成することができました。

主力の人材派遣サービスでは、コールセンター業務が好調を維持し、計画を大きく上回る水準で推移しました。計画に遅れが生じていた障がい者雇用支援サービスについても、営業活動及び障がい者の採用・教育活動が急回復し、当第4四半期では過去最高の売上・利益となりました。また、ロジスティクスアウトソーシングサービスにおいては、通販の発送代行サービスが巣ごもり消費の拡大を追い風に堅調に推移したほか、新型コロナウイルスの影響を最も受けたセールスサポートサービスについても、キャンペーン需要が急ピッチで戻ってきており、新型コロナウイルス感染拡大前の水準まで回復しております。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は21,009百万円(前連結会計年度比19.9%増)、営業利益は2,228百万円(前連結会計年度比38.9%増)、経常利益は2,229百万円(前連結会計年度比37.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,580百万円(前連結会計年度比46.0%増)といずれも過去最高を更新いたしました。

事業別概況

当連結会計年度のセグメント業績(セグメント間内部取引消去前)は以下のとおりであります。

売上高
前期比 %増
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事業別売上高構成比率 %

(単位:

[事業概要]

ビジネスソリューション事業では、シニアや障がい者など潜在労働力の活用を支援するサービスや、企業の業務の一部を受託するアウトソーシングサービスを提供しています。前者においては、株式会社エスプールプラスが、障がい者雇用を希望する企業に同社が運営する農園を貸し出し、主に知的障がい者を企業が直接雇用し、収穫した野菜を従業員の健康促進に役立てる福利厚生プログラムの提供を行っています。また、株式会社エスプールでは、様々な経験やノウハウを有するシニアを企業の経営課題や業務課題の解決に役立てるプロフェッショナル人材サービスを提供しています。

後者のアウトソーシングサービスでは、株式会社エスプールロジスティクスが、通販商品の発送を代行する物流サービスを提供しています。また、株式会社エスプールリンクでは、アルバイトやパートの求人応募の受付を代行する採用支援サービスを提供しており、株式会社エスプールセールスサポートでは、対面型の会員獲得業務や販売促進業務を行っています。ブルードットグリーン株式会社は、CO2の排出量算出やカーボンオフセット仲介など環境経営の支援に関するサービスを提供しており、2020年6月に子会社となりました。

[当連結会計年度の経営成績]

主力事業である障がい者雇用支援サービスについては、営業活動や障がい者の教育訓練に関し、新型コロナウイルスの影響を一時的に受けたものの、最終的には前期を上回る設備販売を達成し、ストック収入となる管理収入も着実に増加しました。ロジスティクスアウトソーシングサービスにおいては、巣ごもり消費の拡大が追い風となり通販の発送代行サービスが大きく伸びました。配送費の計上方法を変更したため、売上増は前期比7%と微増となっていますが、前期と同条件で比較した実質的な増収率は約25%となっております。損益面では、障がい者雇用支援サービスの管理収入に関する利益が大きく増加しました。また、ロジスティクスアウトソーシングサービス、採用支援サービスについても、運営する施設の稼働率が向上し、収益の改善が進みました。その結果、当連結会計年度の売上高は5,825百万円(前連結会計年度比15.5%増)、営業利益は1,619百万円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。

売上高
前期比 %増
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事業別売上高構成比率 %

(単位:

[事業概要]

人材ソリューション事業は、人材派遣サービスを主力とする株式会社エスプールヒューマンソリューションズが提供するサービスで、コールセンター等のオフィスサポート業務と、スマートフォンや家電製品等の店頭販売支援業務に関する人材サービスを展開しています。サービスの特徴は、フィールドコンサルタント(FC)と呼ばれる同社の従業員と派遣スタッフをチームで派遣する「グループ型派遣」の形態を採用している点になります。派遣先に配置されたFCが、現場で派遣スタッフを手厚くフォローすることで、未経験者を短期間で育成できるだけでなく定着率の向上にもつながり、顧客満足度の向上とシェア拡大に寄与しています。

[当連結会計年度の経営成績]

主力のコールセンター業務においては、通常案件に加えスポット案件を上手く取り込んだことにより、グループ型派遣が主要顧客を中心に大きく増加しました。また、新規取引先の開拓も順調に進んでおり、売上の底上げにつながりました。販売支援業務については、新型コロナウイルスの影響により業務の縮小が続いていましたが、第3四半期を底にして徐々に回復の兆しを見せております。また、地域別では、支店を集中的に展開している東京、大阪、福岡、沖縄エリアが高い伸びを示しました。損益面では、売上増による利益増に加え、効率的な支店運営、派遣スタッフの募集費抑制が進んだことで大幅な増益となりました。その結果、当連結会計年度の売上高は15,250百万円(前連結会計年度比21.8%増)、営業利益は1,757百万円(前連結会計年度比48.5%増)となりました。

対処すべき課題

当社グループは、社会的価値と経済的価値の両立を実現することを中期的なビジョンとし、ソーシャルビジネスを通じて新たな社会的価値を提供することと、高い収益性を確保することで成長への投資と株主の皆さまへの安定的な還元の双方を実現することを目指しております。また、経営面では、環境変化に強い企業グループを目指すポートフォリオ経営を基本戦略とし、以下の3点を重点戦略として定めております。

・既存事業の深掘りによるオーガニック成長の継続

・新たな事業領域における成長機会の獲得

・ESGを軸とした経営基盤の強化

当社グループは、持続的な成長を実現していくために、以下6点を対処すべき課題として認識しております。

①既存事業の深掘りによる継続的な発展

当社グループは、持続的な成長を実現するには、既存事業の継続的な発展による安定的な収益基盤を構築することが重要であると考えています。根幹となる既存事業においては、現在の事業領域で継続的な収益を確保しつつ、派生事業の開発に取り組むことで収益構造の多様化を進めてまいります。また、長期的視点での成長を確実なものとするために、既存サービスの継続的な改善及び高付加価値化によって競争優位性を着実に高め、お客様との強固な関係の構築に取り組んでまいります。

②主力事業への依存度の軽減

当社グループは、主に雇用に関する社会課題の解決を目的とした人材サービスを展開していますが、人材派遣サービスと障がい者雇用支援サービスの主力2事業の連結営業利益における構成比は95.7%を占めております。今後の事業を取り巻く環境の変化等により売上が急激に減少した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があるため、主力2事業に次ぐ新たな収益の柱の構築が急務であると認識しております。具体的には、ロジスティクスアウトソーシングサービス並びに採用支援サービスなど成長軌道に乗りつつある事業のより一層の推進を図るとともに、今後の市場拡大が期待できる環境ビジネス領域など新たな事業領域での成長機会の獲得を目指してまいります。

③DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

新型コロナウイルス感染症対策をきっかけとして私たちの生活や経済活動はオンラインを前提とした業務への移行が進んでいます。また、ダイバーシティ推進の側面からも、多様な働き方を支える環境構築には優れたITシステムの整備が必須となっています。こうした環境変化に対応するため、当社グループでは、DXに対応したITやデジタル技術、蓄積データの活用を推進することで、業務の効率化、生産性の向上、営業力の強化を図り、より一層の競争力向上を実現してまいります。

④社会的感度の高い人材の採用・育成

「社員の成長が会社の成長につながる」という方針のもと、当社グループのビジョンに共鳴する優秀な人材を採用し育成を続けることが重要であると考えております。ソーシャルビジネスの推進に必要な資質、具体的には社会変化や課題を敏感に察知し、主体的に解決に取り組むことのできる人材の採用を積極的に進めるとともに、若手リーダーの育成にも注力してまいります。

⑤ダイバーシティ・インクルージョンの推進

当社グループは、女性をはじめとする多様な人材が長期的に活躍することで企業の競争力を高めることを目指しております。全ての従業員が長く安心して働くことができるように、各グループ会社の特性に合わせた人事制度の導入を段階的に進めているほか、新卒育成プログラムに基づくジョブローテーションの実施など退職抑制のための取り組み、ブーメラン制度(退職した従業員の出戻り制度)の活用など、環境整備に注力しております。

⑥新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は国内外における経済活動に多大な影響を与え、依然として先行きは不透明な状況となっております。このような状況の下、当社グループでは、障がい者雇用支援サービスにおける農園設備や人材派遣サービスにおける採用拠点といった各事業における主要施設において、感染予防対策として抗菌・抗ウイルスコーティングを実施するとともに、日々の活動においても衛生管理の徹底した上で事業運営を行っております。また、経営の安定性を図るための手元流動性の確保、リモートワークやWeb会議、Web営業の実施など、様々な取組みを立案、実行し、その影響を最小限に抑える努力を継続してまいります。

連結計算書類