事業報告2021年1月1日から2021年12月31日まで
サッポログループ(企業集団)の現況
事業の経過及び成果
当期において、サッポログループは新型コロナウイルス感染症拡大による度重なる緊急事態宣言の発出及びまん延防止等重点措置による酒類提供制限等の影響を受け、主に業務用ビール売上、ビヤホール等の外食店舗売上は各種制限が解除された10月以降、一部回復傾向が見られたものの、通期では前期から減少となりました。
一方、家庭用商品では、「サッポロ生ビール黒ラベル」、「ヱビスブランド」、「サッポロ GOLD STAR」の缶商品売上数量が前期を上回り好調に推移しました。
また、生活環境の変化や健康意識の高まりを背景にレモン商品の需要が高まり、「ポッカレモン100」、「キレートレモン」がともに3年連続で過去最高売上数量を更新しました。
上記の結果、売上収益は前期から増収となり、事業利益はコスト構造改革等による費用の減少により、前期から増益となりました。また、投資不動産の売却等により、営業利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益は前期から増益となりました。
事業セグメント別の概況
酒類事業
当期の概況
(国内酒類)
新型コロナウイルス感染症の影響等により、日本国内のビール類総需要は前期比95%に留まったと推定されます。
当社はビールの魅力化、多様化の提案を続けてきており、ビール類の缶製品が継続的に成長しています。主力の「サッポロ生ビール黒ラベル」、「ヱビスブランド」、「サッポロ GOLD STAR」の缶製品売上数量はそれぞれ前期比110%、102%、116%と好調に推移しました。一方で、業務用商品の売上数量減により、ビール類合計の売上数量は前期比96%となりました。
RTD(※1)では、3月に発売した缶の新商品「サッポロ 濃いめのレモンサワー」が好調で、コラボRTDの主軸商品である「男梅サワー」も順調に推移し、売上収益は前期を大幅に上回りました。輸入洋酒では、スコッチウイスキー「デュワーズ」が家庭用市場での拡大もあり、好調に推移しました。和酒では、甲乙混和芋焼酎売上No.1(※2)の「こくいも」、「濃いめのレモンサワーの素」が引き続き好調に推移し、売上収益は前期を上回りました。
(海外酒類)
北米のビール類総需要は、新型コロナウイルス感染症の影響等によりカナダは前期を下回ったものの、アメリカは回復傾向にあり前期を上回ったと推定されます。
ブランド別では、海外ブランドは、スリーマン社による戦略的な商品改廃により、ビールの売上数量は前期を下回りましたが、注力しているRTDの売上数量は前期を上回りました。サッポロブランドビールでは、家庭用への取り組みの強化が奏功したとともに、アメリカのレストランの営業制限解除に伴い業務用市場が回復したことにより、同国における売上数量は過去最高を記録しました。
(外食)
新型コロナウイルス感染症の影響等により、パブレストラン・居酒屋業界全体が前年から引き続き甚大な影響を受けています。当社の外食事業においても、酒類提供制限の期間は多くの店舗で休業・営業時間の短縮となる状況が続きました。そのような中、食事メニューやテイクアウト・デリバリー商品の強化を図るとともに、不採算店舗の閉鎖・低コストオペレーション業態へのシフト等に取り組んだ結果、売上収益は前期から減少しましたが、事業損失は前期から改善しました。なお、12月末時点の店舗数は162店舗となりました。
以上の結果、酒類事業の売上収益は2,897億円(前期比43億円、1.5%増)となり、事業利益は54億円(前期比31億円、129.7%増)、営業利益は21億円(前期は49億円の損失)となりました。
※1 RTD : Ready To Drinkの略。購入後そのまま飲める缶チューハイなどのアルコール飲料
※2 インテージSRI 甲乙混和芋焼酎市場2020年2月~2021年11月累計販売金額全国SM/CVS/酒DSの合計
食品飲料事業
当期の概況
国内の飲料総需要は前期比101%と推定されます。当社では、瓶の「キレートレモン」をはじめレモン飲料が伸長し、その結果、レモン飲料は前期比115%と過去最高の売上を更新しました。一方、自販機の販売減が影響し、飲料合計の売上数量は前期並みとなりました。
食品では、「じっくりコトコト」シリーズが25周年を迎えました。注力している冷製缶スープの売上数量は前期比127%と大きく上回りました。レモン食品では、「ポッカレモン」が家庭内需要の拡大により引き続き好調で、売上数量は前期比107%と過去最高となりました。プランツミルクでは、健康志向の高まりにより豆乳ヨーグルトが貢献し、売上数量は前期比109%と上回りました。
カフェチェーン「カフェ・ド・クリエ」を展開するポッカクリエイト社は、カフェ業界が前期から新型コロナウイルス感染症の影響を受けており、影響が生じる以前の水準まで回復はしていませんが、売上収益は前期を上回りました。
以上の結果、食品飲料事業の売上収益は1,255億円(前期比4億円、0.3%減)となり事業利益は7億円(前期は26億円の損失)、営業損失は34億円(前期は169億円の損失)となりました。
不動産事業
当期の概況
首都圏のオフィス賃貸市場では、稼働率及び平均賃料水準は下降トレンドにあります。
そのような中、不動産事業では、収益の柱である「恵比寿ガーデンプレイスタワー」をはじめ首都圏を中心に保有する物件において一部のテナントが退去し、稼働率は低下しましたが、「恵比寿ファーストスクエア」等の売却や、商業施設を保有するファンドへのエクイティ投資など、物件ポートフォリオの戦略的な組み替えを行いました。商業施設では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けておりますが、恵比寿ガーデンプレイスでは2022年の商業棟リニューアルの改装工事を進めています。
以上の結果、不動産事業の売上収益は219億円(前期比14億円、6.0%減)、事業利益は82億円(前期比26億円、24.2%減)、営業利益は293億円(前期比174億円、146.0%増)となりました。
対処すべき課題
(1)新型コロナウイルス感染症による影響
2年間にわたる新型コロナウイルス感染症の流行は、わたしたちの行動様式を大きく変え、サッポログループでは、特に業務用の酒類事業や外食事業を中心に大きな影響を及ぼしました。
しかし、このような環境下においても、「グループ経営計画2024」で掲げた基本方針に沿った取り組みを着実に推進することで、各事業会社がスピード感を持って環境変化に対応した成長戦略と構造改革を推進して参りました。
新型コロナウイルス感染症については、変異株の流行により依然として予断を許さない状況が想定されますが、サッポログループでは「酒類」「食品飲料」「不動産」の各事業分野で、ウィズ・アフターコロナにおける新たな時代のニーズに即した当社独自の価値を創出して参ります。
(2)サステナビリティ経営の推進について
サッポログループは、2019年に策定した「サッポログループ サステナビリティ方針」のもと、取り組みの軸となるサステナビリティ重点課題を「4つの約束」として整理し、「サステナビリティ経営」として推進しています。
これからも、世界中のサッポログループ従業員と、ステークホルダーとのパートナーシップのもとに、社会価値と経済価値の創出を両立させ、持続可能な社会の実現に向けて取り組んで参ります。
「サッポログループ サステナビリティ方針」
●大地と、ともに、原点から、笑顔づくりを。
「4つの約束」
①『酒・食・飲』による潤いの提供、②社会との共栄、③環境保全、④個性かがやく人財の輩出
(3)DXの推進について
大きな環境変化が続く中で、サッポログループでは新たな時代のニーズに即した価値を創出するための手段として、DX(デジタルトランスフォーメーション)を本格的に推進して参ります。
その第一歩として、以下のとおり「サッポログループDX方針」を策定し、グループ内でのDX・IT人財の育成と活用を進めて参ります。
「サッポログループDX方針」
- ●お客さまとつながり、理解を深め、寄り添うこと
- ●お客さま起点で考えぬかれた新たな価値の創造と、稼ぐ力を増強すること
-
●サッポログループにかかわるあらゆるステークホルダーと共に成長し続けるため
自分たちの仕事をもっと楽に、もっと楽しく、働くことに誇りを持てるものにしていくこと
(4)「グループ経営計画2024」
サッポログループは、2020年よりスタートした「グループ経営計画2024」の達成に向けて、4つの基本方針のもとにグループのさらなる成長を目指しております。
基本方針
本業集中と強靭化
・ビール事業への経営資源集中
・低収益事業の縮小・撤退と、食をはじめとする成長分野へのシフト
グローバル展開の加速
・海外事業を事業会社に全て移管、一貫したブランドの世界戦略を展開
・北米とアジアパシフィックを中心に収益力強化と共に成長を加速
・グローバル人財の育成
シンプルでコンパクトな企業構造の確立
・小さい本社・わかりやすい組織に再編、BPR(※)・DXの推進
・サッポロホールディングス社は、ガバナンス・事業会社支援・経営資源配分機能に特化
・事業会社に事業推進の機能全てを移管し、機動力を発揮
※BPR=「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」の略。既存の組織や制度を抜本的に見直し、業務プロセスを再設計すること。
サステナビリティ経営の推進
・良質原料を自ら作り上げる仕組みなどをはじめとした、社会的価値と経済的価値の両立
・恵比寿、札幌、銀座というゆかりある地域のまちづくり推進
・時代の要請に即した経営の透明性と公正性の進化
財務目標・財務方針・株主還元方針
(5)サッポログループの主要事業での取り組み課題
【国内】
● ビールブランドの魅力化とプレミアム価値の訴求:
- ・好調な「サッポロ生ビール黒ラベル」の継続成長、ブランドコンセプトを刷新した「ヱビスブランド」の強化
- ・多様で個性的なブランドの展開とお客様接点拡大
● 新市場でのリーズナブル価値の訴求:
- ・RTD主要ブランド「濃いめのレモンサワー」「男梅サワー」への注力
- ・微アルコールビールテイスト「サッポロ The DRAFTY」やノンアルコールの機能性表示食品「サッポロ LEMON'S FREE」の展開
【海外】
● アメリカ :「Sapporo」ブランド及び「Anchor」ブランドの成長加速、新商品発売
● カナダ :スリーマン社のプレミアムビール伸長とRTD強化
【外食】
●新たな商圏の研究と収益率の高い業態の展開・開発を加速
●サッポロビール社との連携によるブランド発信強化
●不採算店舗の閉鎖や店舗賃料の削減、効率的な働き方や人員配置による人件費抑制などの構造改革を継続
「未来の食のあたりまえ」を創造するため、「植物性素材を核とした次世代領域」を目指す
●レモン事業
- ・レモン総需要拡大に向けた攻めのマーケティング戦略の実行
●プランツミルク事業
- ・大豆ならではの健康価値の訴求、「植物性素材×発酵」領域の拡大
●飲料事業
・国産原料を用いた「TOCHIとCRAFT」シリーズなど、ソーシャルグッド・ドリンクとしての位置付け強化
●加工食品
- ・「じっくりコトコト」ブランドの強化、健康価値付加による年間を通じた需要拡大への取り組み
恵比寿・札幌を中心としたまちづくりと新たな価値共創によるエリア価値向上
●不動産賃貸事業
- ・ハード及びソフト両面における競争力強化の継続と保有物件の稼働率及び賃料水準の維持向上
- ・中核物件「恵比寿ガーデンプレイス」「サッポロファクトリー」の利便性向上と新たな機能・付加価値の提供による、収益の維持向上とまち全体のブランド価値向上
- ・保有物件ポートフォリオの戦略的な組み替え
●新規事業領域での収益獲得
- ・私募ファンドへのエクイティ投資など、新たな事業領域での収益獲得
(ご参考)コーポレートガバナンス・ダイジェスト
機関設計
当社は、1998年11月には「指名委員会」及び「報酬委員会」を任意で設置し、取締役の人事・処遇に係る運営の透明性を高め、経営機構の健全性の維持、向上に取り組んでいます。加えて、2015年12月には「社外取締役委員会」を設置し、当社及びサッポログループの経営戦略、並びにコーポレートガバナンスに関する事項などについて、独立社外取締役の情報交換、認識共有の強化を図っています。
また、当社は、2020年3月に監査等委員会設置会社に移行し、取締役会における独立社外取締役の比率を半数まで高めるなどコーポレートガバナンスを一層充実させることに加え、機動的な意思決定を可能とすることを通じて、さらなる企業価値の向上を図っています。
取締役会
指名委員会及び報酬委員会
当社は、取締役の人事・処遇に係る運営の透明性を高め、経営機構の健全性を維持する目的から、取締役会の諮問機関として「指名委員会」と「報酬委員会」を設置しています。両委員会のメンバーは、すべての独立社外取締役(監査等委員である取締役を除く)、すべての監査等委員である取締役及び取締役社長の計7名で構成し、委員長は独立社外取締役より選出することとしています。