事業報告2022年1月1日から2022年12月31日まで

サッポログループ(企業集団)の現況

事業の経過及び成果

  • ・当期において、サッポログループは新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたものの、行動制限が緩和されたことにより、主に業務用ビール売上、ビヤホール等の外食店舗売上が、前期から増加しました。
    一方で、ウクライナ情勢や急激な円安進行、原材料高騰による物価上昇により、消費者の生活防衛意識が高まることが懸念される等、先行きが不透明な状況にありました。
  • ・そのような中、売上収益は、食品飲料事業及び不動産事業が減収となった一方で、酒類事業が増収となり、全体では前期から増収となりました。
  • ・事業利益は、不動産事業が減益となった一方で、構造改革効果が寄与した酒類事業や食品飲料事業が増益となり、全体では前期から増益となりました。
  • ・営業利益は、事業利益が改善した一方で、前年の投資不動産の売却益の反動等により減益となりました。

事業セグメント別の概況

売上高
前期比 450 億円 15.5 %増
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当期の概況
  • ・売上収益は、日本国内の業務用市場の回復、価格改定、アメリカの家庭用市場における好調な販売、期中にSTONE BREWING CO., LLC(以下、STONE社)を連結子会社化したこと等により、前期から増収となりました。
  • ・事業利益及び営業利益は、原材料高騰等により変動費が増加したものの、増収効果や酒類事業の構造改革効果により、前期から増益となりました。

(単位:

  • 売上収益
    3,346億円(前期比450億円、15.5%増)
  • 事業利益
    77億円(前期比23億円、42.1%増)
  • 営業利益
    89億円(前期比68億円、315.0%増)

国内酒類、海外酒類、外食の詳細は次のとおりです。

(国内酒類)

  • ・当期は、新型コロナウイルスの感染の波が断続的に繰り返されたことにより、業務用市場の需要は一時的に落ち込むこともありましたが、前期の緊急事態宣言発出時に比べ影響は穏やかでした。また、価格改定による需要減退の影響も限定的であったこともあり、日本国内のビール類総需要は、前期比102%程度になったと推定されます。
  • ・そのような中、サッポログループの国内におけるビール類合計の売上数量は、業務用商品の売上数量の増加により、前期比103%となりました。また、RTD(※)の売上数量は前期比103%となり、前期に引き続き好調に推移しました。

(海外酒類)

  • ・新型コロナウイルス感染症対策により経済再開が進み、業務用市場の需要は前期より回復傾向にあるものの、北米におけるビール類総需要は、アメリカ、カナダともに前期を下回ったと推定されます。
  • ・そのような中、海外ブランドのビールの売上数量は、カナダでは業務用市場の回復により前期を上回りました。さらに、サッポロブランドビールの売上数量は、アメリカでの業務用市場が回復したことや、家庭用への取り組みの強化が奏功したことにより、アメリカにおける売上数量は前期比110%となり、前期に引き続き過去最高を記録しました。
  • ・また、特にアメリカにおけるサッポロブランドビールのさらなる伸長に向けた製造拠点の獲得と、新たなブランド獲得によるビール事業の拡大等を目的として、8月末にSTONE社の持分を100%取得し、連結子会社化しました。

(外食)

  • ・新型コロナウイルスの影響を受け、パブレストラン・居酒屋業界の需要は不安定な状況が続いていますが、営業上の規制が解除された4月以降、緩やかな回復基調に転じております。コロナ禍において進めてきた不採算店舗の閉鎖等の構造改革効果が寄与し、前期と比較し大幅に赤字が縮小しました。
  • ※ RTD : Ready To Drinkの略。購入後そのまま飲める缶チューハイ等のアルコール飲料

売上高
前期比 25 億円 2.0 %減
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当期の概況
  • ・売上収益は、不採算自動販売機の削減による売上数量の減少や4月にカフェ事業を売却した影響もあり、前期から減収となりました。
  • ・事業利益及び営業利益は、原材料高騰の影響を受けたものの、価格改定の実行や、カフェ事業の売却等の構造改革による利益改善の効果が寄与し、前期から増益となりました。

(単位:

  • 売上収益
    1,229億円(前期比25億円、2.0%減)
  • 事業利益
    18億円(前期比11億円、148.2%増)
  • 営業利益
    23億円(前期は34億円の損失)
  • ・業務用市場や自動販売機における需要は、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受けてはいるものの、行動制限の緩和により回復し、国内における飲料総需要は、前期比102%と推定されます。
  • ・そのような中、サッポログループにおける国内飲料では、キレートレモンが7年連続で過去最高出荷を更新する等、健康意識の高まりを背景にレモン飲料が堅調に推移したものの、不採算自動販売機の削減による売上数量の減少等により、飲料全体の売上数量は前期比98%となりました。
  • ・海外では、シンガポールにおいて、新型コロナウイルス感染症拡大による各種制限が緩和されたことで、シンガポール国内の売上収益は前期比103%となりました。また、シンガポール国外への輸出も好調に推移し、売上収益は前期比115%となりました。
  • ・なお、伸長するレモン事業を中心とした成長分野へ経営資源を集中させるため、4月にカフェチェーン「カフェ・ド・クリエ」を展開するポッカクリエイト社の全株式を譲渡しました。また、11月には郊外型の自動販売機オペレーター子会社であるパブリック・ベンディング・サービス社を清算しました。

売上高
前期比 11 億円 5.2 %減
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当期の概況
  • ・売上収益は、前期6月の「恵比寿ファーストスクエア」の売却や、当期から開始した「恵比寿ガーデンプレイス」でのオフィスの空調更新工事による稼働率低下の影響等により、前期から減収となりました。
  • ・事業利益は、売上収益の減収の影響により、前期から減益となりました。
  • ・営業利益は、前期の「恵比寿ファーストスクエア」の売却益の反動等により、前期から減益となりました。

(単位:

  • 売上収益
    207億円(前期比11億円、5.2%減)
  • 事業利益
    65億円(前期比18億円、21.5%減)
  • 営業利益
    54億円(前期比238億円、81.4%減)
  • ・首都圏におけるオフィス賃貸市場では、稼働率及び平均賃料水準は年初より回復には至っておりません。
  • ・そのような中、サッポログループにおいては、大型複合施設「恵比寿ガーデンプレイス」のオフィス稼働率が、市況悪化の影響や空調機能の長期修繕の開始もあり低下した一方で、「恵比寿ガーデンプレイス」の新施設「センタープラザ」は、当期11月の開業後、来館者及び売上が順調に推移しています。

対処すべき課題

(1)サッポログループの経営理念と提供価値

サッポログループは、「潤いを創造し 豊かさに貢献する」を経営理念に掲げ、「ステークホルダーの信頼を高める誠実な企業活動を実践し、持続的な企業価値の向上を目指す」ことを経営の基本方針として、企業活動を実践しています。
サッポログループは、「個性かがやくブランド」と「お客様や地域とのつながり」という資産を活用し、”時間”と”空間”という2つの側面から、独自のブランド体験を創造してきました。
時代とともに変容する“豊かさ”の本質によりいっそう向き合い、明日につながる、自然、社会、心の“豊かさ”に貢献していきます。

【サッポログループが提供する価値】

全ての事業が提供する時間と空間で、人々と地域社会のWell-beingに貢献

(2)中期経営計画(2023~26)

1876年の創業以来、様々なイノベーションを発揮し、お客様に潤いと豊かさをもたらす商品やサービスをお届けしてきたサッポログループは、2026年に創業150周年を迎えます。
150年を越えて独自の存在価値を発揮し続けるために、2023年~2026年までの4か年の新たな経営計画を策定しました。本計画のポイントは、事業ポートフォリオの見直しと、各事業のポジショニングに沿ったグループマネジメントを実現し、資本効率を高め企業価値を向上させていくことです。ステークホルダーの皆様の期待に確実に応える4年間とします。

詳細はホームページをご参照ください。 https://www.sapporoholdings.jp/news/items/20221109_sh.pdf

<中期経営計画(2023~26)骨子>

(3)「中期経営計画(2023~26)」の推進とモニタリング

サッポログループは、「中期経営計画(2023~26)」の達成に向けて、内部運用ならびに外部開示の2つの観点からモニタリング体制を構築し、運用して参ります。内部運用の観点では、各事業セグメントにおける構造改革および成長戦略に関する具体的なアクションプランの進捗について、取締役会等を通じて綿密なモニタリングを行い、計画達成の確度を高めて参ります。また、外部開示の観点では、サッポログループの取り組みを具体的に分かりやすく、タイムリーにステークホルダーの皆様にお伝えすることで、計画達成に向けた信頼性の向上に努めて参ります。

(4)サステナビリティ経営の推進

サッポログループは、「中期経営計画(2023~26)」の策定にあたり、グループを取り巻く社会情勢や事業環境の変化に対応してサステナビリティ重点課題を全面的に見直しました。「サッポログループ サステナビリティ方針」のもと、取り組みの軸となる新しいサステナビリティ重点課題9項目に対し、それぞれ新たな目標を設定し、その達成に向けて、進捗をモニタリングしながら取り組みを推進していきます。
また、サッポログループは、企業における気候変動のリスクと機会に関する評価・管理、情報開示を促すTCFDの提言に賛同しており、積極的な情報開示を進めています。
これからも、世界中のサッポログループ従業員と、ステークホルダーとのパートナーシップのもとに、社会価値と経済価値の創出を両立させ、持続可能な社会の実現に向けて取り組んで参ります。

詳細はホームページをご参照ください。 https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/

【サッポログループ サステナビリティ方針】

大地と、ともに、原点から、笑顔づくりを。

【サステナビリティ重点課題】

(5)人財戦略

サッポログループは、「中期経営計画(2023~26)」の基本方針である「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」を実現する上で、「ちがいを活かして変化に挑む 越境集団となる」を掲げ、人財戦略を経営基盤の柱として位置づけております。人財戦略においては「スピードある成長に向けた積極投資」「多様性の促進」「エンゲージメント向上と健康促進」「経営人財育成」を重点施策として定め、より具体的なアクションプラン、KPIに基づき、確実に経営戦略の実行を支えて参ります。

詳細はホームページをご参照ください。 https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/human/

(6)DXの推進

大きな環境変化が続く中で、サッポログループでは新たな時代のニーズに即した価値を創出するための手段として、DX(デジタルトランスフォーメーション)を本格的に推進しております。
その第一歩として、以下のとおり「サッポログループDX方針」を策定し、グループ内でのDX・IT人財の育成と活用を進めて参ります。

【サッポログループDX方針(概要)】
  • ・お客さまとつながり、理解を深め、寄り添うこと
  • ・お客さま起点で考えぬかれた新たな価値の創造と、稼ぐ力を増強すること
  • ・サッポログループにかかわるあらゆるステークホルダーとともに成長し続けるため
    自分たちの仕事をもっと楽に、もっと楽しく、働くことに誇りを持てるものにしていくこと

詳細はホームページをご参照ください。https://www.sapporoholdings.jp/news/dit/?id=8912

(7)財務戦略

「持続的成長と資本効率重視」をテーマに、構造改革・事業成長による収益力強化と、資産や事業ポートフォリオの見直しにより資本効率を高め企業価値向上を確かなものにします。
財務の健全性は、現状格付けを維持することを基本とします。投資については、営業キャッシュフローとのバランスを取りながら、海外への投資を優先することで成長促進を図るとともに、サステナビリティ関連の投資も推進します。なお、M&A 等の成長投資の機会には、現状格付を確保できる範囲で機動的に対応します。
株主の皆様への利益還元は、経営上の重要政策と位置付けており、業績や財務状況を勘案して安定した配当を行うことを基本方針としています。今後の配当水準につきましては、連結配当性向 30%以上を基本に、現状水準を下限として、企業価値向上を伴わせた配当水準の向上を図ります。なお、特殊要因にかかる一時的な損失や利益計上により、当期利益が大きく変動する場合は、その影響を考慮して配当金額を決定することがあります。

(8)サッポログループの主要事業での取り組み課題

【国内】

● 2023年10月の酒税改正を見据えたビール強化

● 仙台工場のRTD設備稼働による生産性向上

● 商品ミックスの組み換えや価格改定による収益力向上

● 個性と物語によるブランド価値確立

  • ・黒ラベル:家庭用と業務用の連動キャンペーン等、独自の顧客接点戦略の推進
  • ・ヱビス :新たな高価格帯商品の発売、「YEBISU BREWERY TOKYO」の開業
  • ・RTD :商品開発力の強化、新市場創造による「お酒」の新しい魅力を提案
【海外】

● アメリカ :当期に子会社化したSTONE社との早期のシナジー創出(サッポロブランドビールの売上成長と生産及び物流体制の確立)

● カナダ :スリーマン社のプレミアムビール伸長とRTD強化及びコスト構造改革による収益力向上

【外食】

● YEBISU BAR、銀座ライオン等の注力業態へのリソースシフトによる強固な収益基盤の確立

● お客様アンケートやアプリデータの活用等、「顧客体験価値」の向上による既存事業強化

● ブランド発信拠点としてのサッポロビール社との連携強化

【国内食品飲料】

● 成長事業であるレモン事業へのリソース集中に向けた取り組み加速

● 価格改定、コスト削減やSKUの大幅な削減等、原材料高騰への対応と生産性向上

● 事業ポートフォリオの整理による収益力向上

【海外飲料】

● シンガポール国内で確立した高シェアの維持

● シンガポールを起点としたマレーシア及び中東等、成長余地のある国での販売及びマーケティング体制の強化

長期的な時間軸で、賃貸中心から総合的に資産価値向上を図る事業体に転換し、収益性と資産効率を向上させる。

● 恵比寿及び札幌エリアのコア物件の価値向上とまちづくりの推進

  • ・恵比寿ガーデンプレイスにおける物件価値向上
  • ・まちづくりを通じた地域との更なる関係性強化
  • ・札幌創成イーストエリア開発、サッポロガーデンパークの再開発に向けた取り組み推進

● 収益構造多様化・資産効率向上

  • ・エクイティ投資、VA流動化事業等、資産回転型ビジネスへの取り組み拡大
(ご参考)コーポレートガバナンス・ダイジェスト
1.機関設計

当社は、1998年11月に「指名委員会」及び「報酬委員会」を任意で設置し、取締役の人事・処遇に係る運営の透明性を高め、経営機構の健全性の維持、向上に取り組んでいます。加えて、2015年12月には「社外取締役委員会」を設置し、当社及びサッポログループの経営戦略、並びにコーポレートガバナンスに関する事項などについて、独立社外取締役の情報交換、認識共有の強化を図っています。また、当社は、2020年3月に監査等委員会設置会社に移行し、取締役会における独立社外取締役の比率を半数まで高めるなどコーポレートガバナンスを一層充実させることに加え、機動的な意思決定を可能とすることを通じて、さらなる企業価値の向上を図っています。

2.指名委員会及び報酬委員会

当社は、取締役の人事・処遇に係る運営の透明性を高め、経営機構の健全性を維持する目的から、取締役会の諮問機関として「指名委員会」と「報酬委員会」を設置しています。両委員会のメンバーは、すべての独立社外取締役(監査等委員である取締役を除く)、すべての監査等委員である取締役及び取締役社長で構成し、委員長は独立社外取締役より選出することとしています。

3.コーポレートガバナンス改革の歴史
4.政策保有株式
  • ①政策保有株式に関する方針
    当社は、円滑な事業の継続、営業上の関係強化による収益拡大等の視点から、中長期的な企業価値の向上に資すると判断した場合に、政策的に株式を保有することとしています。個別の政策保有株式の保有の適否は、毎年、当社規程に基づき取締役会で検証します。保有に伴う便益やリスク等について、取引の規模や今後の発展性等の定性面を評価した事業性評価や資本コストとの比較などの定量面を評価した投資性評価を総合的に判断し、売却対象とした銘柄は縮減を進めます。
    なお、当社は「中期経営計画(2023~26)」期間(2023年12月期~2026年12月期)中において、政策保有株式を、親会社の所有者に帰属する持分合計に対する保有株式簿価の比率が20%未満となるよう縮減していく方針です。
  • ②政策保有株式に係る議決権の行使
    当社は、政策保有株式に係る議決権の行使に当たり、当社の保有方針及び投資先の株主共同の利益に鑑み、中長期的な視点から総合的に賛否を判断します。議案の内容等については、必要に応じて投資先と対話を行います。
  • ③銘柄数及び貸借対照表計上額と親会社の所有者に帰属する持分合計
  • ④売却額及び銘柄数の推移

連結計算書類