事業報告(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)

1. 企業集団の現況に関する事項

企業集団の事業の経過及びその成果

全般的概況

売上収益

売上収益は、海外たばこ事業における単価上昇効果が不利な為替影響を概ね相殺したものの、国内たばこ事業・医薬事業・加工食品事業での減収により、前年度比1.8%減の2兆1,756億円となりました。

調整後営業利益、営業利益及び当期利益(親会社所有者帰属)

当社グループの経営指標である為替一定ベースの調整後営業利益は、国内たばこ事業及び医薬事業の減少はあるものの、海外たばこ事業及び加工食品事業での増加により、前年度比0.9%増となりました。また、調整後営業利益は、海外たばこ事業における不利な為替影響を受けたことにより、前年度比13.4%減の5,159億円となりました。

営業利益は、医薬事業において抗HIV薬6品の日本国内におけるライセンス契約解消にかかる一時金収入はあるものの、調整後営業利益の減少、不動産売却益の減少及び買収にかかる商標権償却費の増加等に加え、海外たばこ事業において事業運営体制の変革にかかる施策関連費用を計上したことにより、前年度比11.1%減の5,024億円となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、一時的な要因による税負担率の低下が営業利益の減少及び金融損益の悪化を一部相殺したことにより、前年度比9.7%減の3,482億円となりました。

全社業績

(注)

1. 調整後営業利益は、営業利益(損失)から買収に伴い生じた無形資産に係る償却費、調整項目(収益及び費用)を除いて算出した数値です。なお、調整項目(収益及び費用)はのれんの減損損失、リストラクチャリング収益及び費用等です。

2. 調整後営業利益(為替一定)は、海外たばこ事業における当期の調整後営業利益を前年同期の為替レートを用いて換算・算出することにより、為替影響を除いた数値です。

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事業別の概況

国内たばこ事業

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当年度におきましては、趨勢減、RRP(注1)市場の拡大及び2018年と2019年に実施された増税に伴う定価改定の影響による紙巻総需要(注2)の減少に加えて、シェアの減少影響を受けたことから、紙巻販売数量(注3)は前年度比7.9%減の755億本となりました。また、当社のRRPの販売数量は、紙巻たばこ換算ベースで、前年度比5億本増加の33億本となりました。

自社たばこ製品売上収益(注4)につきましては、紙巻単価上昇効果があったものの、紙巻販売数量の減少及びRRP関連売上収益の減少により、前年度比2.3%減の5,689億円となりました。このうち、RRP関連売上収益は609億円となっております。

調整後営業利益につきましては、自社たばこ製品売上収益の減少影響及び低温加熱式たばこ用カプセル製造機械の減損により、前年度比10.4%減の1,872億円となりました。

(注)

1. RRPは、E-Vapor製品及び加熱式たばこ等、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品(Reduced-Risk Products, RRP)を指しております。E-Vapor製品は、たばこ葉を使用せず、装置内もしくは専用カートリッジ内のリキッド(液体)を電気加熱させ、発生するベイパー(蒸気)を愉しむ製品です。一方、加熱式たばこは、たばこ葉を使用し、たばこ葉を燃焼させずに、加熱等によって発生するたばこベイパー(たばこ葉由来の成分を含む蒸気)を愉しむ製品です。

2. 紙巻総需要は、日本市場全体における紙巻たばこ及びたばこ事業法上「葉巻たばこ」に分類されるリトルシガーの販売数量を指しておりますが、RRP等の販売数量は含まれておりません。

3. 紙巻販売数量は、当社の日本市場における紙巻たばこ及びリトルシガーの販売数量を指しておりますが、RRP等の販売数量は含まれておりません。また、当該数値の他に、国内免税市場及び当社の中国事業部管轄の中国・香港・マカオ市場の当年度における販売数量40億本(前年度の当該数量は40億本)があります。

4. 国内たばこ事業における自社たばこ製品売上収益は、国内免税市場及び当社の中国事業部管轄の中国・香港・マカオ市場における売上収益並びにRRP・リトルシガー等に係る売上収益が含まれていますが、輸入たばこ配送手数料等に係る売上収益は含まれておりません。

海外たばこ事業

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当年度におきましては、バングラデシュ、ギリシャやロシアにおける買収効果により、総販売数量(注1)は、前年度比4.3%増の4,458億本となりました。また、GFB(注2)販売数量は4ブランドすべてでの販売数量の増加により、前年度比4.0%増の2,770億本となりました。

円ベースの自社たばこ製品売上収益(注3)につきましては、単価上昇効果及び買収に伴う販売数量の増加が不利な為替影響を相殺し、前年度比0.2%増の1兆2,530億円となりました。また、円ベースの調整後営業利益につきましては、不利な為替影響を受けて、前年度比11.4%減の3,408億円となりました。

ドルベースの自社たばこ製品売上収益につきましては、単価上昇効果及び販売数量の増加により、前年度比1.5%増の11,496百万ドルとなりました(為替一定ベースでは前年度比9.3%増)。また、ドルベースの調整後営業利益につきましては、不利な為替影響を受けて、前年度比10.5%減の3,126百万ドルとなりました(為替一定ベースでは前年度比10.7%増)。

(注)

1. 製造受託、水たばこ製品及びE-Vapor製品を除き、Fine cut、シガー、パイプ、スヌース、クレテック及び加熱式たばこを含めております。

2. 当社グループのブランドポートフォリオの中核を担う「ウィンストン」「キャメル」「メビウス」「LD」の4ブランドをGFB(グローバル・フラッグシップ・ブランド)としております。

3. 海外たばこ事業における自社たばこ製品売上収益は、水たばこ製品及びRRPに係る売上収益が含まれていますが、物流事業及び製造受託等に係る売上収益は含まれておりません。

医薬事業

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医薬事業につきましては、次世代戦略品の研究開発推進と各製品の価値最大化を通じ、当社グループへの安定的な利益貢献を目指しております。

開発状況としましては、現在当社において8品目が臨床開発段階にあります。JAK阻害剤「JTE-052(一般名:デルゴシチニブ)」につきましては、アトピー性皮膚炎を適応症として、2019年1月に日本国内における製造販売承認申請を行いました。また、HIF-PH阻害薬「JTZ-951(一般名:エナロデュスタット)」につきましては、腎性貧血を適応症として、2019年11月に日本国内における製造販売承認申請を行い、2019年12月に、Shenzhen Salubris Pharmaceuticals Co., Ltd.と中国、香港、マカオ及び台湾における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約を締結いたしました。

直近では、「tapinarof(アリル炭化水素受容体(AhR)モジュレーター)」について、2020年1月にDermavant Sciences GmbHと日本国内における皮膚疾患領域での独占的開発・商業化権に関するライセンス契約を締結し、それに伴い、グループ会社である鳥居薬品株式会社と日本国内における共同開発及び販売に関する契約を締結しました。加えて、2019年1月に申請を実施していた「JTE-052(製品名:「コレクチム® 軟膏0.5%」)」について、2020年1月に製造販売承認を取得しました。

当年度における売上収益につきましては、抗HIV薬6品の日本国内におけるライセンス契約解消の影響及び海外ロイヤリティ収入の減少等により、前年度比22.3%減の885億円となりました。また、調整後営業利益につきましては、売上収益の減少により、前年度比43.9%減の159億円となりました。

なお、当社がGilead Sciences Inc.及び鳥居薬品株式会社との間で締結していた抗HIV薬6品の日本国内での独占的開発・商業化権のライセンス契約について、2019年1月1日に本契約が終了し、2019年12月1日にGilead Sciences Inc.の日本法人であるギリアド・サイエンシズ株式会社への製造販売承認の承継が完了しております。

医薬総合研究所(大阪府高槻市)

臨床開発品目一覧(2020年2月6日現在)

加工食品事業

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加工食品事業につきましては、冷凍・常温食品、調味料及びベーカリーに注力するとともに、コスト競争力の強化に努め、収益力の向上に取り組んでおります。

当年度の冷食・常温事業におきましては、冷凍麺、冷凍米飯、パックごはん、焼成冷凍パンに注力した商品展開を図り、新商品27品、リニューアル品43品を発売しました。また、販売20周年を迎えた家庭用冷凍食品「ごっつ旨い」シリーズの認知向上を目的に、5月2日を「ごっつの日」と記念日登録し、特設ウェブサイトの公開・期間限定の動画配信等メディア展開を図りました。

当年度における売上収益につきましては、注力しているステープル商品等で販売が伸長したものの、その他の商品の販売が減少したことにより、前年度比1.7%減の1,586億円となりました。また、調整後営業利益につきましては、売上収益の減少、原材料費及び物流費の上昇があったものの、価格改定効果に加え、商品構成の改善及びコスト低減といった収益性改善の取組みにより、前年度比31.8%増の54億円となりました。

また、2019年1月より、加工食品事業全体の戦略立案及びガバナンスを担う食品事業企画室を当社に新設し、新体制での加工食品事業運営を開始いたしました。なお、テーブルマーク株式会社、富士食品工業株式会社及び株式会社サンジェルマン等の各事業会社の事業内容に変更はありません。

2. 企業集団が対処すべき課題

(1)経営の基本方針

当社グループの経営理念は、「4Sモデル」の追求です。これは「お客様を中心として、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく」という考え方です。

当社グループは、「4Sモデル」をベースに、「JTならではの多様な価値を提供するグローバル成長企業であり続けること」を目指す企業像(ビジョン)として定めており、また、「自然・社会・人間の多様性に価値を認め、お客様に信頼される『JTならではのブランド』を生み出し、育て、高め続けていくこと」が、当社グループの使命であると考えております。

加えて、当社グループ社員の一人ひとりが徹底すべき行動規範・価値観として「JTグループWAY」を掲げており、「お客様を第一に考え、誠実に行動すること」「あらゆる品質にこだわり、進化し続けること」「JTグループの多様な力を結集すること」という3つのステートメントによって、表現しております。

当社グループは、「4Sモデル」を追求することを通じ、これまで持続的な利益成長を実現してきており、今後もその実現を目指してまいります。持続的な利益成長のためには、お客様に新たな価値・満足を提供し続けることが前提となることから、中長期的な視点に基づき、将来の利益成長に向けた事業投資を着実に実施していくことが肝要と考えております。

この「4Sモデル」を追求していくことが、中長期に亘る企業価値の継続的な向上につながると考えており、株主を含む4者のステークホルダーにとって共通利益となる、ベストなアプローチであると確信しております。

(2)中長期的な会社の経営戦略及び課題

当社グループは、長期的に目指す企業像である「JTグループならではの多様な価値を提供するグローバル成長企業」の実現に向け、これまで推進してきた戦略を継承し、さらに発展させるためには、変化への対応力が必要であると考えており、この変化への対応における巧拙とスピード感こそが、今後の企業の競争力を決定する重要なファクターになると考えております。加えて、受け身の対応だけではなく、自ら変化を起こし、変革をリードする組織への進化を加速させることが、中長期に亘る持続的な利益成長の実現を可能とすると考えます。

こうした考えのもと、予測不可能な変化へスピード感を持って適切に対応すべく、期間を3年間とした経営計画を1年毎にローリングを行う方式で策定しております。

今回策定した「経営計画2020」においても、中長期に亘る持続的な利益成長につながる事業投資を最優先に実行し、同時に事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視するという経営資源配分方針に変更はありません。

「経営計画2020」においても、引き続き為替一定ベースの調整後営業利益の成長率(注1)における、中長期に亘る年平均mid to high single digit(注2)成長を目指してまいります。

株主還元につきましては、積極的な事業投資を継続しながらも、起こり得る環境変化にも対応できる強固な財務基盤(注3)を維持しつつ、中長期の利益成長に応じた株主還元の向上を図ってまいります。

具体的には、1株当たり配当金について、安定的・継続的な成長(注4)を目指してまいります。

自己株式の取得につきましては、事業環境や財務状況の中期的な見通し等を踏まえて、実施の是非を検討することといたします。

なお、引き続き、ステークホルダーモデルを掲げ、高い事業成長を実現しているグローバルFMCG(注5)の還元動向もモニタリングしてまいります。

各事業の中長期の目標と役割は以下のとおりです。

全社中長期利益目標の達成に向け、各事業においてはそれぞれの目標と役割に沿って邁進し、特に、質の高いトップライン成長を最重要視してまいります。また、コスト競争力のさらなる強化を実現すること、及びこれらを支える基盤強化を推進していくことで、持続的な利益成長を実現してまいります。

当社グループを取り巻く経営環境は、グローバルにおける景気の動向、為替変動リスク及び国際的な地政学リスク等、引き続き不確実性が高いものと認識しております。当社グループとしては、こうした不透明な経営環境を乗り越え、適切にグローバルビジネスを運営していくために、引き続き「4Sモデル」に基づき、一貫した事業投資と変化への対応力に加え、自ら変化し、変化を起こす力を身につけることで、中長期に亘る持続的な利益成長を目指すとともに、株主還元を着実に実現してまいります。

(注)

1. 調整後営業利益は、営業利益(損失)から買収に伴い生じた無形資産に係る償却費、調整項目(収益及び費用)を除いて算出した数値です。
なお、調整項目(収益及び費用)はのれんの減損損失、リストラクチャリング収益及び費用等です。
また、為替一定ベースの調整後営業利益の成長率とは、海外たばこ事業における当期の調整後営業利益を前年同期の為替レートを用いて換算・算出することにより、為替影響を除いた指標です。

2. mid to high single digit: 一桁台半ばから後半のパーセンテージ

3. 「財務方針」として、経済危機等の環境変化に備えた堅牢性及び事業投資機会等に対して機動的に対応できる柔軟性を担保する強固な財務基盤を保持する

4. 中長期の為替一定調整後営業利益の成長率の見通しを基本としつつ、当期利益の水準も勘案

5. FMCG: Fast Moving Consumer Goods(日用消費財)企業群

連結計算書類