事業報告(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)

1. 企業集団の現況に関する事項

企業集団の事業の経過及びその成果

全般的概況

売上収益

売上収益は、加工食品事業において減収となったものの、力強いプライシング効果及び数量成長等による海外たばこ事業の大幅な増収に加え、国内たばこ事業及び医薬事業の増収により、前年度比11.1%増の2兆3,248億円となりました。

調整後営業利益、営業利益及び当期利益(親会社所有者帰属)

当社グループの経営指標である為替一定ベースの調整後営業利益は、医薬事業において減少したものの、加工食品事業での増加に加え、コロナ禍という特異な環境下においても、年間を通じて海外たばこ事業及び国内たばこ事業が牽引したことにより、前年度比22.9%増となりました。また、調整後営業利益は、海外たばこ事業において為替影響がポジティブに作用したことにより、前年度比25.4%増の6,104億円となりました。

営業利益は、たばこ事業運営体制強化施策費用の計上及び葉たばこ耕作の⾯積調整に関する施策の実施等があったものの、調整後営業利益が増加したことにより、前年度比6.4%増の4,990億円となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人税の増加があったものの、営業利益の増益及び金融損益の改善により、前年度比9.1%増の3,385億円となりました。

当社グループの経営指標

全社業績

(注)

1.調整後営業利益(為替一定)は、海外たばこ事業における当期の自社たばこ製品売上収益又は調整後営業利益から、前年同期の為替レートを用いて換算・算出した為替影響及び一定の方法を用いて算出した一部市場のインフレに伴う売上又は利益の増加分を除いたものです。なお、当社グループは、超インフレ経済下にある子会社の財務諸表について、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」(以下、IAS第29号)に定められる要件に従い、会計上の調整を加えておりますが、為替一定ベースの自社たばこ製品売上収益及び調整後営業利益にはIAS第29号の影響は含めておりません。

2.調整後営業利益は、営業利益(損失)から買収に伴い生じた無形資産に係る償却費、調整項目(収益及び費用)を除いて算出した指標です。なお、調整項目(収益及び費用)はのれんの減損損失、リストラクチャリング収益及び費用等です。

事業別の概況

国内たばこ事業

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当年度におきましては、趨勢減、RRP(注1)カテゴリの拡大及び定価改定等の影響によるcombustible総需要(注2)の減少に加えて、combustibleシェア(注2)の減少により、combustible販売数量(注3)は前年度比9.5%減の622億本となりました。また、当社のRRP販売数量(注4)は、紙巻たばこ換算ベースで、前年度比7億本増加の46億本となりました。

自社たばこ製品売上収益(注5)につきましては、combustible単価上昇効果及びRRP関連売上収益の増加が、combustible販売数量の減少影響を上回ったことにより、前年度比0.8%増の5,198億円となりました。このうち、RRP関連売上収益は、RRP販売数量の増加により、前年度比40億円増の598億円となりました。

調整後営業利益につきましては、combustible販売数量の減少影響があったものの、combustible単価上昇効果、RRP関連売上収益の増加により、前年度比8.6%増の1,824億円となりました。

なお、2022年度より、たばこ事業の事業運営体制の一本化に伴い、従来「国内たばこ事業」、「海外たばこ事業」と区分していた報告セグメントを「たばこ事業」として一本化いたします。

(注)

1.RRPは、加熱式たばこ及びE-Vapor製品等、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品(Reduced-Risk Products, RRP)を指しております。加熱式たばこは、たばこ葉を使用し、たばこ葉を燃焼させずに、加熱等によって発生するたばこベイパー(たばこ葉由来の成分を含む蒸気)を愉しむ製品です。一方、E-Vapor製品は、たばこ葉を使用せず、装置内もしくは専用カートリッジ内のリキッド(液体)を電気加熱させ、発生するベイパー(蒸気)を愉しむ製品です。

2.Combustible総需要及びcombustibleシェアには、製造受託/水タバコ/加熱式たばこ/無煙たばこ/E-Vaporを除く燃焼性のたばこ製品が含まれております。

3.Combustible販売数量は、製造受託/水タバコ/加熱式たばこ/無煙たばこ/E-Vaporを除く燃焼性のたばこ製品販売数量となります。また、当該数値の他に、国内免税市場及び当社の中国事業部管轄の中国・香港・マカオ市場の当年度における販売数量17億本(前年度の当該数量18億本)があります。

4.RRP販売数量は、1パック当たり紙巻たばこ20本として換算しております。当該数値には国内免税市場における販売数量は含まれておりません。なお、RRP関連売上収益には国内免税市場における売上収益及びデバイス・関連アクセサリー等に係る売上収益が含まれております。

5.国内たばこ事業における自社たばこ製品売上収益は、国内免税市場及び当社の中国事業部管轄の中国・香港・マカオ市場における売上収益並びにRRP・リトルシガー等に係る売上収益が含まれていますが、輸入たばこ配送手数料等に係る売上収益は含まれておりません。

海外たばこ事業

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当年度におきましては、市場シェアの伸長、特に上期における複数市場において渡航者数の減少により内需が拡大したこと及び不法取引の減少等により、総販売数量(注1)は、前年度比5.6%増の4,602億本となりました。また、GFB(注2)販売数量は「ウィンストン」及び「キャメル」が牽引し、前年度比10.5%増の3,117億本となりました。

円ベースの自社たばこ製品売上収益(注3)につきましては、単価差・商品構成影響、数量差影響及び為替影響がポジティブに作用したことにより、前年度比18.5%増の1兆4,821億円となりました。また、円ベースの調整後営業利益につきましても、前年度比33.3%増の4,544億円となりました。

ドルベースの自社たばこ製品売上収益につきましては、一部主要市場等で発現した単価差・商品構成影響及び数量差影響により、前年度比14.9%増の13,468百万ドルとなりました(為替一定ベースでは前年度比10.6%増)。また、ドルベースの調整後営業利益につきましては、単価差・商品構成影響及び数量差影響により、前年度比で30.7%増の4,157百万ドルとなりました(為替一定ベースでは前年度比29.6%増)。

(注)

1.製造受託、水たばこ製品及びE-Vapor製品を除き、Fine cut tobacco、シガー、パイプ、スヌース、クレテック及び加熱式たばこを含めております。

2.当社グループのブランドポートフォリオの中核を担う「ウィンストン」「キャメル」「メビウス」「LD」の4ブランドをGFB(グローバル・フラッグシップ・ブランド)としております。

3.海外たばこ事業における自社たばこ製品売上収益は、水たばこ製品及びRRPに係る売上収益が含まれていますが、物流事業及び製造受託等に係る売上収益は含まれておりません。

(注)

IAS第29号に従い、超インフレ経済下にある子会社の財務諸表を米国ドルへ換算する際に、2020年12月末時点及び2021年12月末時点のレートを適用しております。また、米国ドルから日本円へ換算する際も、同様のレートを適用しております(2020年12月末時点 米国ドル/円:103.50、2021年12月末時点 米国ドル/円:115.02)。なお、その他のレートについては、期中平均レートを適用しています。

(注)

1.2020年の市場シェアにつきましても、2021年12月末時点のデータに基づき、更新しております。

2.2021年より、ロシアにおける市場シェアは、combustibles及びheated tobacco sticksを含みます。これに伴い、2020年データについても変更しています。

医薬事業

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医薬事業につきましては、次世代戦略品の研究開発推進と各製品の価値最大化を通じ、当社グループへの利益貢献を目指しております。

開発状況としましては、現在当社において7品目が臨床開発段階にあります。

2021年3月に、アトピー性皮膚炎を適応症として販売している「コレクチム®軟膏0.5%(一般名:デルゴシチニブ)」について、小児患者に対する用法及び用量に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得し、併せて日本国内における小児患者に対するアトピー性皮膚炎を適応症として、「コレクチム®軟膏0.25%」の製造販売承認を取得しました。「コレクチム®軟膏0.25%」については、2021年5月26日に薬価基準に収載され、6月21日よりグループ会社である鳥居薬品株式会社(以下、鳥居薬品)が販売しております。

加えて、デルゴシチニブについては、2021年12月に、日本国内で実施した乳幼児アトピー性皮膚炎患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験の速報結果を得ました。速報結果では、乳幼児アトピー性皮膚炎患者においてデルゴシチニブ軟膏の皮膚炎改善効果が示され、安全性についても確認されました。今後、本試験のすべての成績及びほかの臨床試験成績をもとに、日本国内における承認申請を目指しております。

また、慢性腎臓病患者における高リン血症の改善を適応症として販売している「リオナ®錠250mg」について、鉄欠乏性貧血を新たな効能又は効果として製造販売承認事項一部変更承認を取得しました。

当年度における売上収益につきましては、鳥居薬品の増収が海外ロイヤリティ収入の減収を上回り、前年度比1.8%増の804億円となりました。

調整後営業利益につきましては、研究開発費及び鳥居薬品における販管費の増加により、前年度比35.4%減の111億円となりました。

コレクチム®軟膏0.5%

臨床開発品目一覧(2022年2月14日現在)

加工食品事業

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加工食品事業につきましては、冷食・常温事業、調味料事業及びベーカリー事業に注力するとともに、コスト競争力の強化に努め、収益力の向上に取り組んでおります。

当年度の冷食・常温事業におきましては、注力している冷凍麺、パックごはん、お好み焼等は引き続き国内市場のシェア上位に位置づけるとともに、簡便ニーズに応えた「お皿がいらないシリーズ」等の家庭用新製品を27品、リニューアル品を25品発売しております。

また、コロナ禍の巣ごもりにより家庭で料理をする機会が増加する中、調理の簡便性や様々なメニューに展開できるアレンジ性の訴求に加え、ホームページやSNS等のWebを基軸とした販売促進活動を積極的に展開・強化し、お客様へ向けて製品の更なる認知度向上に努めてまいりました。

当年度における売上収益につきましては、前年において一時的に増加した冷食・常温事業における家庭用製品の売上が相対的に減少したことに加え、冷食・常温事業及び調味料事業における外食向け製品の販売減少により、前年度比1.4%減の1,472億円となりました。

調整後営業利益につきましては、売上収益の減少はあるものの、販管費等の低減に加え、前年に計上したベーカリー事業における減損損失の剥落により、前年度比47億円増となりました。

2. 企業集団が対処すべき課題

(1)経営の基本方針

当社グループの経営理念は、「4Sモデル」の追求です。これは「お客様を中心として、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく」という考え方です。

当社グループは、「4Sモデル」をベースに、「JTならではの多様な価値を提供するグローバル成長企業であり続けること」を目指す企業像(ビジョン)として定めており、また、「自然・社会・人間の多様性に価値を認め、お客様に信頼される『JTならではのブランド』を生み出し、育て、高め続けていくこと」が、当社グループの使命であると考えております。

加えて、当社グループ社員の一人ひとりが徹底すべき行動規範・価値観として「JTグループWAY」を掲げており、「お客様を第一に考え、誠実に行動すること」「あらゆる品質にこだわり、進化し続けること」「JTグループの多様な力を結集すること」という3つのステートメントによって、表現しております。

当社グループは、「4Sモデル」を追求することを通じ、これまで持続的な利益成長を実現してきており、今後もその実現を目指してまいります。持続的な利益成長のためには、お客様に新たな価値・満足を提供し続けることが前提となることから、中長期的な視点に基づき、将来の利益成長に向けた事業投資を着実に実施していくことが肝要と考えております。

この「4Sモデル」を追求していくことが、中長期に亘る企業価値の継続的な向上に繋がると考えており、株主を含む4者のステークホルダーにとって共通利益となる、ベストなアプローチであると確信しております。

(2)中長期的な会社の経営戦略及び課題

当社グループの中長期の経営資源配分は、経営理念に基づき、中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資を最優先とする方針です。

当社グループは、たばこ事業を利益成長の中核かつ牽引役と位置付け、たばこ事業の持続的な利益成長に向けた事業投資を最重要視します。一方、医薬事業及び加工食品事業は全社利益成長を補完すべく、事業基盤の再構築に注力することとし、そのために必要な投資を実行していきます。今後も、中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資(注1)を最優先に実行し、同時に事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視するという経営資源配分方針に変更はありません。

各事業の中長期の目標は以下のとおりです。

当社グループは、不確実性を増す経営環境を見極め、スピード感を持って競争力を強化すべく、期間を3年間とした経営計画を1年ごとにローリングを行う方式で策定しており、経営理念及び資源配分方針を踏まえ、全社利益目標及び株主還元の中長期の方向性を「経営計画2022」において設定しています。

「経営計画2022」においても、引き続き為替一定ベースの調整後営業利益の成長率における、中長期に亘る年平均mid to high single digit(注2)成長を目指してまいります。

株主還元方針については、「4Sモデル」に基づく経営資源配分方針で掲げる「中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資を最優先」と「事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視」という観点から、以下のとおりとしています。

・強固な財務基盤(注3)を維持しつつ、中長期の利益成長を実現することにより株主還元の向上を目指す

・資本市場における競争力のある水準(注4)として配当性向75%を目安(注5)とする

・自己株式の取得は、当該年度における財務状況及び中期的な資金需要等を踏まえて実施の是非を検討

全社中長期利益目標の達成に向け、各事業においてはそれぞれの目標に沿って邁進し、特に、質の高いトップライン成長を最重要視してまいります。また、コスト競争力の更なる強化を実現すること及びこれらを支える基盤強化を推進していくことで、持続的な利益成長を実現してまいります。

なお、当社グループは、国内外のたばこ事業の事業運営体制の一本化、国内の支社体制の改編等による競争力強化、事業環境に適応した製造・原料拠点の統廃合及び当社における要員適正化を内容とした「たばこ事業運営体制強化」に取り組んでおります。

当社グループを取り巻く経営環境は、国際的な政治情勢の変化や新興国通貨における減価傾向等の為替変動リスク等、不確実性を増していると認識しております。新型コロナウイルス感染拡大に伴う消費者行動や企業活動の変化、変異株の出現等による世界的な経済活動の停滞リスク等により、今後の見通しは引き続き不透明な状況にあると認識しております。こうした不透明な経営環境を乗り越え、適切にグローバルビジネスを運営し、持続的な利益成長を実現するためには、「変化への対応力」が必要であると考えております。これは、不確実性に対処すべく、計画策定時において想定の範囲を拡げるとともに、それでも起こりうる想定を超える変化・出来事に対して、素早く・柔軟に対応する能力を指しており、この変化への対応における巧拙とスピード感は、引き続き企業の競争力を決定する重要なファクターになると考えております。加えて、デジタル・テクノロジーの進展、生活者の意識・行動の変化及びESGやサステナビリティに対する意識の高まり等、世の中の大きくかつ急速な流れを踏まえ、「変化への対応力」という受け身の対応だけではなく、たばこ事業の事業運営体制の一本化やコーポレート部門の進化を通じ、自ら変化を起こし、変革をリードする組織への進化を加速してまいります。

(注)

1.たばこ事業の成長投資を最重要視し、質の高いトップライン成長を通じた為替一定調整後営業利益の成長を目指す

2.mid to high single digit:一桁台半ばから後半のパーセンテージ
今次経営計画期間中の見立て(2022-2024年):RRPへの投資を強化するものの、年平均成長率はmid single digitを想定

3.経済危機等に備えた堅牢性、及び機動的な事業投資等への柔軟性を担保

4.ステークホルダーモデルを掲げ、高い事業成長を実現しているグローバルFMCG(Fast Moving Consumer Goods)企業群の還元動向をモニタリング

5.±5%程度の範囲内で判断

連結計算書類