事業報告(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)

1. 企業集団の現況に関する事項

企業集団の事業の経過及びその成果

全般的概況

当年度におきましては、売上収益から当期利益まで、過去最高の実績(注1)を達成いたしました。

売上収益

当社グループの経営指標である為替一定ベース(注2)のcore revenue(注3)は、前年度比4.8%増となりました。また、売上収益は、すべての事業において増収したことにより、前年度比14.3%増の2兆6,578億円となりました。

調整後営業利益、営業利益及び当期利益(親会社所有者帰属)

当社グループの経営指標である為替一定ベースの調整後営業利益(注4)は、加工食品事業における減少があったものの、たばこ事業及び医薬事業での増加により、前年度比9.0%増となりました。また、調整後営業利益は、たばこ事業において為替影響がポジティブに作用したことにより、前年度比19.2%増の7,278億円となりました。

営業利益は、調整後営業利益が増加したことに加え、たばこ事業運営体制強化施策等の費用の剥落もあり、前年度比31.0%増の6,536億円となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の増加が金融損益の悪化を上回り、前年度比30.8%増の4,427億円となりました。

当社グループの経営指標

全社業績

    (注)
  • 売上収益、調整後営業利益、継続事業における営業利益、継続事業における親会社の所有者に帰属する当期利益の実績です。
  • 為替一定ベースは、たばこ事業における当期の調整後営業利益、core revenue又は自社たばこ製品売上収益から、前年同期の為替レートを用いて換算・算出した為替影響及び一定の方法を用いて算出した一部市場のインフレに伴う売上又は利益の増加分を除いたものです。
  • core revenueは、自社たばこ製品売上収益、医薬事業・加工食品事業・その他の売上収益の合計です。
  • 調整後営業利益は、営業利益+買収に伴い生じた無形資産に係る償却費+調整項目(収益及び費用)です。なお、調整項目(収益及び費用)はのれんの減損損失±リストラクチャリング収益及び費用等です。

事業別の概況

たばこ事業

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当年度より国内・海外に分かれていたたばこ事業を統合し、新たなスタートを切りました。新たな事業運営体制のもとで明確かつ的確な戦略を掲げ中長期に亘る持続的な利益成長にコミットしてまいります。また、当社グループはロシア・ウクライナ情勢が長期化・複雑化する中、国内外におけるあらゆる制裁措置を遵守したうえでロシア市場における事業運営を継続しております。今後も事態の変化に応じて、経営理念である「4Sモデル」に則り、必要な意思決定を行っていくことにより、この難局に対処していきます。

当年度におきましては、継続的なシェアの伸張及びEMA(注1)での販売数量の増加が、Asia(注1)及びWestern Europe(注1)の主要市場における総需要の減少影響をほぼ相殺し、総販売数量(注2)は前年度比0.5%減の5,273億本となりました。なお、EMAでは、ブラジル・Global Travel Retail(注3)・イラン・ポーランド・米国を中心として販売数量が増加しました。また、Combustibles販売数量(注4)は、前年度比0.7%減の5,194億本となったものの、RRP販売数量(注5)は、日本でのPloom X販売・シェア伸張により、前年度比10.3%増の79億本となりました。

自社たばこ製品売上収益(注6)及び調整後営業利益は、主要市場である日本・フィリピン・ルーマニア・ロシア・スペイン・台湾・トルコ・英国を含むすべてのクラスターでポジティブな単価差影響が発現したこと、底堅い総需要、継続的な市場シェアの伸張、RRP関連売上収益の増加及び円安によるポジティブな為替影響により、前年度に比べて増加しています。

財務報告ベースの自社たばこ製品売上収益は、ポジティブな単価差・商品構成影響がネガティブな数量差影響を上回ったことにより、前年度比15.6%増の2兆3,152億円となりました(為替一定ベースでは前年度比4.8%増)。RRP関連売上収益(注7)は、前年度比4.4%増の754億円となりました。

財務報告ベースの調整後営業利益は、自社たばこ製品売上収益の増加が、サプライチェーン関連コストの増加を上回り、前年度比18.0%増の7,540億円となりました(為替一定ベースでは前年度比8.2%増)。

Ploom Xの貢献により、日本市場におけるHTS(注8)カテゴリ内シェアは8.1%(当年度第4四半期時点)と順調に伸張しております。また、当年度よりPloom Xの販売を英国で開始しており、2023年以降も積極的にグローバル市場での展開を予定しております。加えて、米国におけるHTS製品の商業化を目的として、Altria Group, Inc.グループとともに合弁会社を設立すること、RRPの更なる事業機会を探求するため、長期に亘る戦略的なグローバル·パートナーシップを締結することについて合意しました。引き続き、将来の成長に向けた施策を着実に進めてまいります。

    (注)
  • JTグループのたばこ事業をより深く理解していただくために、同事業を3地域のクラスター(Asiaは日本を含むアジア全域、Western Europeは西欧地域、EMAは東欧、中近東、アフリカ、トルコ、南北アメリカ大陸及びGlobal Travel Retail)に区分けしたものです。
  • 総販売数量は、水たばこ/製造受託/RRPデバイス及び関連アクセサリーを除くたばこ製品の販売数量です。
  • Global Travel Retailは、従来の国内たばこ事業と海外たばこ事業の免税市場を統合した呼称です。
  • Combustibles販売数量は、水たばこ/E-Vapor/無煙たばこ(Snus・ニコチンバウチ)/加熱式たばこ/製造受託を除くたばこ製品の販売数量です。
  • RRP(Reduced-Risk Products)は、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品です。当社製品ポートフォリオにおけるHeated tobacco sticks、Infused tobacco capsules、E-Vapor、無煙たばこ製品等が含まれます。また、RRP販売数量は、Reduced-Risk Productsの販売本数を紙巻きたばこに換算した数量であり、RRPデバイス/関連アクセサリー等は含みません。
  • 自社たばこ製品売上収益は、物流事業/製造受託等を除く売上収益です。
  • RRP関連売上収益は、自社たばこ製品売上収益の内訳としての、RRPデバイス/関連アクセサリー等を含むReduced-Risk Productsの売上収益です。
  • HTS(Heated tobacco sticks)は、高温加熱型の加熱式たばこです。
クラスター別内訳
Ploom Xの進捗
  • 2021年8月の全国発売後、HTSカテゴリにおけるJTシェアは着実に推移
  • 日本での知見を活かし、海外市場での上市を順次実施

医薬事業

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医薬事業につきましては、次世代戦略品の研究開発推進と各製品の価値最大化を通じ、当社グループへの利益貢献を目指しております。

開発状況としましては、現在当社において6品目が臨床開発段階にあります。

JTE-061(tapinarof)につきましては、2022年7月に日本国内で実施したアトピー性皮膚炎患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験及び9月に日本国内で実施した尋常性乾癬患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験の良好な速報結果を得ました。現在、他の臨床試験の成績等を基に日本国内における製造販売承認申請を目指しております。

enarodustatにつきましては、導出先である韓国のJW Pharmaceutical Corporationが、血液透析患者における腎性貧血治療薬「ENAROY®錠」として、2022年11月17日に韓国における製造販売承認を取得しました。

アトピー性皮膚炎治療薬「コレクチム®軟膏0.5%、0.25%」につきましては、乳幼児アトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験の成績を踏まえ、2023年1月30日に乳幼児(生後6ヶ月以上2歳未満)の患者様への適応拡大が認められました。

当年度における売上収益につきましては、前年度の導出品に係る一時金収入の剥落や海外ロイヤリティ収入の減少があったものの、グループ会社である鳥居薬品株式会社(以下、「鳥居薬品」という。)の増収により、前年度比3.1%増の829億円となりました。

調整後営業利益につきましては、売上収益の増収が、鳥居薬品における研究開発費等の増加を相殺し、前年度比0.5%増の111億円となりました。

コレクチム®軟膏0.5%

臨床開発品目一覧(2023年2月14日現在)

加工食品事業

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加工食品事業につきましては、冷食・常温事業、調味料事業に注力し、付加価値の高い商品の販売を強化するなど、収益力の向上に取り組んでおります。

当年度の冷食・常温事業におきましては、注力している冷凍麺、パックごはん、お好み焼等は引き続き国内市場において高いシェアを維持するとともに、調理が簡単で商品一つで食事が完結する「一食完結型」の「お皿がいらないシリーズ」を展開するなど、更なる競争力の強化に向け、家庭用新製品を31品、リニューアル品を21品発売しております。

また、急激な為替の変動や原油価格の上昇等により原材料費・エネルギー費等の高騰が続き、事業に対してネガティブな影響がありました。そのような厳しい事業環境においても、生産性向上やコスト削減等の継続的な取組みに加え、2回の出荷価格改定を実施し、利益の創出に最大限努めてまいりました。

当年度における売上収益につきましては、冷食・常温事業等における価格改定を主因に、前年度比5.6%増の1,555億円となりました。

調整後営業利益につきましては、売上収益が増収となったものの、原材料費等の高騰とネガティブな為替影響、また、前年度に発生した保険金入金の反動影響により、前年度比11.3%減の35億円となりました。

なお、ベーカリー事業を運営する株式会社サンジェルマンについては、2022年12月1日付で株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスへ全株式を譲渡しております。

2. 企業集団が対処すべき課題

(1)経営の基本方針

当社グループの経営理念は、「4Sモデル」の追求です。これは「お客様を中心として、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく」という考え方です。

当社グループは、「4Sモデル」の追求を通じ、中長期に亘る持続的な利益成長の実現を目指しています。持続的な利益成長のためには、お客様に新たな価値・満足を提供し続けることが前提となることから、中長期的な視点に基づき、将来の利益成長に向けた事業投資を着実に実施していくことが肝要と考えております。

この「4Sモデル」を追求していくことが、中長期に亘る企業価値の継続的な向上に繋がると考えており、株主を含む4者のステークホルダーにとって共通利益となるベストなアプローチであると確信しております。

また、自然・社会・個人の様々なスケールで非連続な変化が起こり、事業環境の不確実性・複雑性がますます高まっている状況下において、当社グループが持続的な存在であるための方向性を明確にするものとして、JT Group Purposeを策定いたしました。具体的には、当社グループが未来において社会から求められ、かつ、長期に亘り価値を発揮し続けていくべき領域を「心の豊かさ」であると同定し、この領域を任され、貢献し続けていきたいとの考えから「心の豊かさを、もっと。」をJT Group Purposeとしています。加えて、JT Group Purposeの実現に向けて、各事業においてもこれを踏まえた事業Purposeを策定しております。

<事業Purpose>

  • ・たばこ事業:Creating fulfilling moments. Creating a better future.
  • ・医薬事業:科学、技術、人財を大切にし、患者様の健康に貢献します。
  • ・加工食品事業:食事をうれしく、食卓をたのしく。

時代や人により、多様で、変化していく「心の豊かさ」の領域を、今後も社会から任され、貢献できる存在であり続けるため、当社グループは絶えず進化してまいります。

(2)中長期的な会社の経営戦略及び課題

当社グループの中長期の経営資源配分は、「4Sモデル」及びJT Group Purposeに基づき、中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資(注1)を最優先とし、同時に事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視する方針です。

当社グループは、たばこ事業を利益成長の中核かつ牽引役と位置付け、たばこ事業の持続的な利益成長に向けた事業投資を最重要視します。一方、医薬事業及び加工食品事業は全社利益成長を補完すべく、事業基盤の再構築に注力することとし、そのために必要な投資を実行していきます。

各事業の中長期の目標は以下のとおりです。

当社グループは、不確実性を増す経営環境を見極め、スピード感を持って競争力を強化すべく、期間を3年間とした経営計画を1年ごとにローリングを行う方式で策定しており、経営理念及び経営資源配分方針を踏まえ、全社利益目標及び株主還元の中長期の方向性を「経営計画2023」において設定しています。

「経営計画2023」においても、引き続き為替一定ベースの調整後営業利益の成長率における、中長期に亘る年平均mid to high single digit(注2)成長を目指してまいります。

株主還元方針については、「4Sモデル」及びJT Group Purposeに基づく経営資源配分方針で掲げる「中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資を最優先」と「事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視」という観点から、以下のとおりとしています。

  • ・強固な財務基盤(注3)を維持しつつ、中長期の利益成長を実現することにより株主還元の向上を目指す
  • ・資本市場における競争力のある水準(注4)として配当性向75%を目安(注5)とする
  • ・自己株式の取得は、当該年度における財務状況及び中期的な資金需要等を踏まえて実施の是非を検討

全社中長期利益目標の達成に向け、各事業においてはそれぞれの目標に沿って邁進し、特に、質の高いトップライン成長を最重要視してまいります。また、コスト競争力の更なる強化を実現すること及びこれらを支える基盤強化を推進していくことで、持続的な利益成長を実現してまいります。

当社グループを取り巻く経営環境は、国際的な政治情勢の変化や新興国通貨における減価傾向等の為替変動リスク等、不確実性を増していると認識しております。こうした不透明な経営環境を乗り越え、適切にグローバルビジネスを運営し、持続的な利益成長を実現するためには、「変化への対応力」が必要であると考えております。これは、不確実性に対処すべく、計画策定時において想定の範囲を拡げるとともに、それでも起こりうる想定を超える変化・出来事に対して、素早く・柔軟に対応する能力を指しており、この変化への対応における巧拙とスピード感は、引き続き企業の競争力を決定する重要なファクターになると考えております。

加えて、デジタル・テクノロジーの進展、生活者の意識・行動の変化及びESGやサステナビリティに対する意識の高まり等、世の中の大きくかつ急速な流れを踏まえ、「変化への対応力」という受け身の対応だけではなく、自ら変化を起こし、変革をリードする組織への進化を加速してまいります。

    (注)
  • たばこ事業の成長投資を最重要視し、お客様・社会への新たな価値・満足の継続的な提供を通じて、質の高いトップライン成長を実現することで、為替一定調整後営業利益の成長を目指す。
  • mid to high single digit:一桁台半ばから後半のパーセンテージ
  • 経済危機等に備えた堅牢性、及び機動的な事業投資等への柔軟性を担保
  • ステークホルダーモデルを掲げ、高い事業成長を実現しているグローバルFMCG(Fast Moving Consumer Goods)企業群の還元動向をモニタリング
  • ±5%程度の範囲内で判断

連結計算書類