事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

企業集団の現況

当事業年度の事業の状況

事業の経過および成果

新型コロナウイルス感染症に対し、一時的には政府の緊急事態宣言の解除により経済活動の正常化が期待されたものの、より感染力が強いとされるオミクロン株など変異株の発生と感染者数の急拡大により、社会・経済情勢は抑圧的な状況が続きました。

このようななかでも、日本再興に向けた社会のデジタル化は必須と捉えられ、2021年9月のデジタル庁の設置など、国を挙げてのデジタル化の推進が開始されました。さらには、「デジタル」や「グリーン」への対応が企業の事業継続上の重要課題であり、サプライチェーン全体で取り組むべきとの認識のもと、テレワークやクラウド基盤の更なる活用など企業のデジタル化の推進も新型コロナウイルス感染症を背景に一層加速しています。

そして、デジタル化等への対応には、サイバーセキュリティ対策と連動した取り組みが不可欠です。国や組織の関与と見られるサイバー犯罪や、デジタル上での機能やデータを人質にとる悪質な身代金目的のサイバー犯罪、直接的に金銭を目的とした金融犯罪等が後を絶たず、国だけではなく企業や個人の安全がますます脅かされる状況になっています。日本のサイバーセキュリティ戦略において経済安全保障がうたわれたように、サイバーセキュリティ対策は、単なる被害防止の観点を超え、これまで以上に国の存続や発展を支える重要な要素として、サプライチェーン全体で取り組むべきであるという認識になりつつあります。

当社は、このような技術革新による急速な社会変化が見込まれるなか、2021年度を起点とする新たな3ヵ年の中期経営計画(2021~2023年度)を策定しました。「共創と挑戦」をテーマに、当社の特徴であるセキュリティ事業を軸として、基盤構築に定評のあるシステムインテグレーション事業でお客様との共創に挑戦し、確固たる信頼を獲得し続けることで、当社グループの持続的な成長と進化を目指しています。その取り組みの一環として、全社視点でDXを推進すると同時に、今後、DX推進で備えるべきサイバーセキュリティ対策を実践するため、当社の経営力と事業力の両面の強化を図っています。

また当社は、新型コロナウイルスや今後想定される様々な脅威とSDGsへの対応において、企業レジリエンスの一環でもあるテレワーク中心の勤務形態を継続しており、今後、テレワークとオフィスワークのハイブリッド型による最大限の成果が出せる組織への変貌を目指しています。しかしながら、感染者数の急拡大や新たな変異株が発生する未曽有の危機のなか、顧客企業において事業活動が停滞するなどの動きが見られ、当社のサービス提供や受注活動などにも影響を受けました。

当連結会計年度の売上高は、セキュリティソリューションサービス事業(SSS事業)はコンサルティング、製品販売などが拡大し増収となったものの、システムインテグレーション事業(SIS事業)がIT保守サービスにおける子会社の事業譲渡の影響等で減収となったことにより、42,660百万円(前期比2.4%減)となりました。利益面では、事業拡大に向けて販売体制等の強化を進めたことにより、営業利益は1,595百万円(同24.7%減)、経常利益は、持分法による投資利益の増加等があったものの、1,769百万円(同21.1%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、株式譲渡に伴う子会社株式売却益および投資有価証券売却益を特別利益として計上したことにより、1,401百万円(同359.8%増)となりました。

事業区分別の概況

当連結会計年度の事業別の状況は、次のとおりであります。

売上高
前期比 %増
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<主要な事業内容>

情報セキュリティ対策の策定・導入・運用支援、サイバー攻撃緊急対応、セキュリティ構築・運用監視、セキュリティ診断および情報セキュリティ教育等のサービス、ならびにセキュリティ関連商品の販売とその保守サービスの提供

セキュリティコンサルティングサービスは、企業に対するサイバー攻撃が依然として猛威を振るうなか、緊急対応サービスが大きく伸長したことにより、売上高は3,737百万円(前期比6.5%増)となりました。

セキュリティ診断サービスは、標的型攻撃メールに対する予防訓練サービスやプラットフォーム診断サービスは増加しましたが、緊急事態宣言下でのお客様のシステム開発延期、競争激化の影響を受けてWeb診断サービスが落ち込んだことにより、売上高は2,453百万円(同7.5%減)となりました。

セキュリティ運用監視サービスは、運用監視サービスの既存および新規導入案件の進捗は堅調に推移したものの、子会社の株式会社ラックサイバーリンクにおける人材派遣ビジネスを戦略的に縮小した影響により、売上高は5,822百万円(同2.8%減)となりました。

セキュリティ製品販売は、エンドポイント対策向けおよびサービス妨害型攻撃にも対応したWebセキュリティ対策向けクラウド対応製品などが拡大したことにより、売上高は6,050百万円(同19.5%増)となりました。

セキュリティ保守サービスは、クラウド対応製品の拡大に伴い既存案件が減少したことにより、売上高は1,316百万円(同8.6%減)となりました。

この結果、SSS事業の売上高は19,380百万円(同3.9%増)、セグメント利益は販売体制の強化等により2,319百万円(同8.8%減)となりました。

売上高
前期比 %減
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<主要な事業内容>

情報システムに関するコンサルティングサービスおよび情報システムの設計、開発・構築、運用・保守サービス、ならびに関連商品の販売およびその保守サービス等の提供

主力ビジネスである開発サービスは、一部金融業向けの新規開発案件が滞ったことや公共関連の大型案件の終息などの影響があったものの、サービス業や製造業向けに案件が拡大したことにより、売上高は15,356百万円(前期比0.3%増)となりました。

HW/SW販売は、クラウドサービスの拡大等で需要は縮小しており更新案件が減少したことにより、売上高は2,493百万円(同5.6%減)となりました。

IT保守サービスは、HW/SW関連の保守契約において、前期は大型案件があったものの当期は同様の案件がなかったこと、また子会社のアイ・ネット・リリー・コーポレーション株式会社の事業譲渡影響等により、売上高は3,428百万円(同28.8%減)となりました。

ソリューションサービスは、マルチクラウド開発管理などクラウド関連のソリューション販売等が好調に推移したものの、子会社の株式会社アクシスにおいて前期に計上した教育分野向けの大型案件が当期はなかったことにより、売上高は2,000百万円(同11.4%減)となりました。

この結果、SIS事業の売上高は23,279百万円(同7.0%減)、セグメント利益は2,985百万円(同5.9%減)となりました。

直前3事業年度の財産および損益の状況

対処すべき課題

新型コロナウイルス感染症により不透明な状況が続くことが想定されるものの、このような社会・経済環境を前提とした、テレワーク等による働き方の変容への対応やクラウド基盤を活用したサービス・業務システムの導入など、ITによる変革“デジタルトランスフォーメーション”への投資は一層拡大することが見込まれます。また、ITの利活用と連動してセキュリティ対策需要も引き続き伸長していくことが想定されます。 

当社は、ITを活用した社会インフラの持続性が人々の生活を守るうえで極めて重要と認識しており、システム開発とサイバーセキュリティ対策の両サービスを継続的に提供するとともに、その対応力を強化し、安心・安全な社会構築にいかに貢献し続けていくかということを優先課題としております。

2021年度を初年度とする3カ年の中期経営計画では、「共創と挑戦:セキュリティとシステムインテグレーションの事業共創によってきたるべき未来へ挑戦を続ける」をテーマにし、「耐久力」「適応力」「デジタル活用力(デジ力)」の3つの方針を定め、以下の取り組みを行います。

 「耐久力」

セキュリティ、SIの2つの基幹事業の稼ぐ力を向上させるとともに、サービスの更なる高付加価値化を図ります。具体的には、基幹事業の生産性向上およびコスト構造改革の推進に加え、単発ビジネスから継続ビジネス“リカーリング”への展開を目指します。さらには、当社ブランドの認知力を活用した事業拡大に取り組みます。

 「適応力」

市場環境変化に機動力で適応し、新たな成長機会の創出に挑みます。具体的には、成長分野のクラウドソリューションの強化、事業ノウハウのデジタル化と顧客サービスの高度化を推進するとともに、独自サービス・ソリューションの強化に取り組みます。

 「デジ力」

経営・事業のデジタルトランスフォーメーションによりデータドリブンな経営体質への転換を図るとともに、自社のデジタル化の知見を顧客サービスへと還元します。具体的には、経営・事業管理の徹底したデジタル化と業務プロセス変革に取り組み、商機に柔軟に対応できるよう独自の事業基盤システムを整備します。加えて、デジタルマーケティングやデジタル営業による新規顧客開拓に取り組みます。

連結計算書類