事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

企業集団の現況

当事業年度の事業の状況

事業の経過および成果

期初における新型コロナウイルス感染状況の一時的な改善により、経済活動は正常化に向けて持ち直しの動きも見られたものの、オミクロン変異株による新型コロナウイルス感染者数の感染再拡大や為替の円安進行、またウクライナ情勢の長期化に加え、世界的な半導体不足や原油高の影響など、社会・経済情勢は不透明な状況が続きました。

このような状況のなか、企業・経済活動はテレワークやオンラインの活用を常態化させる動きと、以前の状態へ戻す動きに二極化する一方、クラウド基盤を活用した事業・業務領域は一層拡大するなど、社会全体としてデジタルの利活用は確実に増加しています。

また、デジタルの利活用と連動してサイバー脅威の領域も拡大しており、デジタル社会の発展を脅かしかねない身代金要求型攻撃(ランサム攻撃)をはじめ、以前から問題視されている高度なスパイ攻撃活動や内部による不正、更には直接的に金銭の獲得を目的とした金融犯罪など、巧妙化、悪質化が進むサイバー攻撃から社会を守る総合的なサイバーセキュリティ対策が求められています。

当社は、このようにデジタルが浸透していく社会環境のなか、2022年6月に新たな経営メッセージとして、パーパス(存在意義)とビジョン(目指す姿)を策定しました。パーパスを「たしかなテクノロジーで『信じられる社会』を築く。」、ビジョンを「デジタル社会を生き抜く指針となる。」と定め、安心・安全な社会基盤の構築に貢献してまいります。

当連結会計年度の売上高は、セキュリティソリューションサービス事業(SSS事業)はコンサルティング、診断などが拡大し、またシステムインテグレーションサービス事業(SIS事業)は開発サービスやソリューションサービスが伸長したことにより、44,018百万円(前期比3.2%増)となりました。利益面では、営業利益は1,775百万円(同11.3%増)、経常利益は1,813百万円(同2.5%増)となったものの、社内基幹システム開発の中止に伴う損失を特別損失として計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失は147百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益1,401百万円)となりました。

事業区分別の概況

当連結会計年度の事業別の状況は、次のとおりであります。

売上高
前期比 %増
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<主要な事業内容>

情報セキュリティ対策の策定・導入・運用支援、サイバー攻撃緊急対応、セキュリティ構築・運用監視、セキュリティ診断および情報セキュリティ教育等のサービス、ならびにセキュリティ関連商品の販売とその保守サービスの提供

セキュリティコンサルティングサービスは、企業へのサイバー脅威が衰えを見せることなく猛威を振るうなか、コンサルティング案件が拡大するとともに、エンドポイント対策支援サービスや教育・訓練サービスが伸長したことにより、売上高は3,956百万円(前期比5.9%増)となりました。

セキュリティ診断サービスは、主力のWebアプリケーション診断サービスやプラットフォーム診断サービスが好調に推移したことなどにより、売上高は2,748百万円(同12.0%増)となりました。

セキュリティ運用監視サービスは、特定企業向けに高度な対策を行う個別監視サービスや内部不正監視サービスなどが伸長したことにより、売上高は5,951百万円(同2.2%増)となりました。

セキュリティ製品販売は、サービス妨害型攻撃にも対応したWebセキュリティ対策向けクラウド対応製品などが拡大したものの、前期に計上した大型案件を上回るまでの伸長には至らず、売上高は6,004百万円(同0.8%減)となりました。

セキュリティ保守サービスは、クラウド対応製品の拡大に伴い既存案件が減少したことにより、売上高は860百万円(同34.6%減)となりました。

この結果、SSS事業の売上高は19,521百万円(同0.7%増)、セグメント利益は2,366百万円(同2.1%増)となりました。

売上高
前期比 %増
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<主要な事業内容>

情報システムに関するコンサルティングサービスおよび情報システムの設計、開発・構築、運用・保守サービス、ならびに関連商品の販売およびその保守サービス等の提供

主力ビジネスである開発サービスは、前期にあった大型案件終息などの影響もなく、大手銀行やクレジットカードなど金融業向け案件に加え、サービス業向けなどの案件が大幅に伸長したことにより、売上高は16,354百万円(前期比6.5%増)となりました。

HW/SW販売は、クラウドサービスの拡大等で需要は縮小しており、更新案件等が減少したことにより、売上高は2,459百万円(同1.3%減)となりました。

IT保守サービスは、更新案件等は堅調に推移したものの、子会社であったアイ・ネット・リリー・コーポレーション株式会社の事業譲渡による影響をうけ、売上高は3,300百万円(同3.7%減)となりました。

ソリューションサービスは、サイバーセキュリティ対策にも寄与するソリューション製品関連の販売が伸長したことにより、売上高は2,382百万円(同19.0%増)となりました。

この結果、SIS事業の売上高は24,497百万円(同5.2%増)、セグメント利益は3,429百万円(同14.9%増)となりました。

直前3事業年度の財産および損益の状況

対処すべき課題

当社は、デジタル技術を活用したより高度で堅牢な社会インフラの充実が人々の生活を守るうえで極めて重要と認識しており、システムインテグレーションとサイバーセキュリティ対策の両サービスの付加価値を高めるとともに、その対応力を強化し、安心・安全な社会構築にいかに貢献し続けていくかということを優先課題としております。

クラウド基盤やAIなどの活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)が社会全体で推進されているようにデジタル技術革新により急速に変化する社会において、当社では「共創と挑戦」をテーマに、サイバーセキュリティとシステムインテグレーションの事業共創によってきたるべき未来へ挑戦を続けることを中期経営計画で掲げています。また「耐久力:サイバーセキュリティ、システムインテグレーション両事業の収益力、付加価値向上」、「適応力:市場ニーズの把握と対応、技術革新への適応」、「デジ力:デジタルを全ての部門で活用、当社が誇る様々なセキュリティデータの統合的な連携活用」の成長戦略3つの方針を定めており、主な施策は以下のとおりです。

①サイバーセキュリティ事業

今後も成長が期待されるサイバーセキュリティ市場において、当社の知見を更に深化しスケールさせることにより各サービスの競争力を維持・向上すべく、主に次の取り組みを推進します。

・運用監視サービス

大手企業向けに当社独自の高度なセキュリティ対策を行う個別監視サービスを中心に事業拡大を進めつつ、その知見を活かしエンドポイント、ネットワーク、クラウドなどを包括的に監視する新たなサービス開発を加速し事業を成長させていきます。

・診断サービス

当社の強みを活かした高付加価値型案件や大型案件を中心に規模拡大を図り、その知見とAIを活用し最適化された独自のセキュリティ診断サービスを展開しビジネスの拡大を目指します。

・緊急対応サービス

戦略的パートナーとの協業や技術開発などを推進し、大規模化・複雑化するサイバー被害へ迅速かつ幅広に対応する技術力とサービス提供能力の向上に取り組みます。

②システムインテグレーション事業

市場拡大が続くSaaS型クラウドソリューションの導入・活用を支援する付加価値提供ビジネスへ転換を図り、技術力と収益力の向上を目指します。

なお、最新の技術動向にも注視し、生成AIを活用した社内生産性の向上と事業開発の検証に取り組み、セキュリティ事業を軸とした業務効率化とサービス開発などを視野に積極的に推進してまいります。

連結計算書類