事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)

経営の基本方針

経営理念および行動準則

積水化学グループは、経営に対する理念を体系化しています。企業活動の根底にある考え方や方針を示す「社是」、社是をうけて中長期で当社グループが目指す姿を示した「グループビジョン」、グループビジョンを実現していくための具体的な「経営戦略」により構成されています。

(1) 社是「3S精神」

当社の社章は、創業当時の社名「積水産業」の頭文字の「S」3つを化学記号ベンゼン環の中に配置して、「水」という文字をかたどったものです。1959年11月、当社は、このマークに「3S精神」という明確な定義づけを行い、社是として制定しました。

「企業活動を通じて社会的価値を創造する(Service)」「積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する(Speed)」「際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する(Superiority)」の3S精神は、積水化学グループの理念体系の根幹をなすものであり、約2万7千名の全社員の間で、しっかりと共有されています。

<社是「3S精神」>

Service :企業活動を通じて社会的価値を創造する

Speed :積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する

Superiority :際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する

(2) グループビジョン

積水化学グループは、ステークホルダーの期待に応え、社会的価値を創造し、事業を通して社会に貢献することを目指しています。

地球規模での人口増加や気候変動、先進国を中心とする高齢化、都市基盤の老朽化などに加え、これらすべてに関連する資源エネルギー問題がこれまで以上に喫緊な社会的課題になりつつある中、グループがこれまで蓄積してきた「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」の分野に関する経験・知見を活用して、これらの社会課題の解決に資する価値を創造し続けることを目指しています。

<グループビジョン>

積水化学グループは、際立つ技術と品質により、「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献します。

(3) 積水化学グループ 企業行動指針

積水化学グループは、グループの役員・従業員が従うべき行動指針である「積水化学グループ企業行動指針」を定め、日々の事業活動を通じて社会的信頼を高め、より一層魅力ある会社を目指しています。

<企業行動指針>

1. 社会の発展に役立つ事業活動を行う。

2. 個人の能力を最大限に発揮し、活力ある組織をつくる。

3. お客様・取引先・株主・地域など広く社会から信頼される企業をめざす。

4. あらゆる企業活動において法およびその精神を遵守し、誠実に行動する。

5. よき企業市民として、サステナブルな視点で地球環境問題と社会貢献に取り組む。

グループビジョンを実現するための経営戦略

積水化学グループは、社是「3S精神」の下、グループビジョンに掲げる「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」を両輪として成長していくため、新たな長期ビジョン「VISION 2030」、ならびに2020年度から2022年度までの3か年を対象期間とした中期経営計画「Drive 2022」を策定し、以下の取り組みを推進しています。

(1) 長期ビジョン「VISION 2030」

長期ビジョン「VISION 2030」では、積水化学グループがイノベーションを起こし続けることにより、「サステナブルな社会の実現に向けてLIFEの基盤を支え『未来につづく安心』を創造していく」という強い意志を込めたビジョンステートメント「Innovation for the Earth」を掲げています。レジデンシャル(住まい)、アドバンストライフライン(社会インフラ)、イノベーティブモビリティ(エレキ/移動体)、ライフサイエンス(健康・医療)の4つの事業領域を設定し、「ESG経営を中心においた革新と創造」を戦略の軸にして現有事業の拡大と新領域への挑戦に取り組み、2030年の業容倍増を狙います。

<長期ビジョンの全体像>

<ESG経営>

積水化学グループの「ESG経営」では、「サステナブルな社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立の実現を目指し、その鍵となる以下の3つのステップをステークホルダーとともに取り組んでいます。

①環境・CS品質・人材の「3つの際立ち」と「ガバナンス」の磨き上げ

②3つのアプローチ(量を増やす・質を高める・持続的に提供する)で社会課題解決を加速

③4つの事業領域で「未来につづく安心」という価値の創出・拡大

このESG経営を加速するため、全社主要施策について中長期目標を定めるとともに、今中期経営計画ではESG投資枠400億円を設定し、重大インシデントにつながるリスク軽減に向けた取り組みやDX(デジタル変革)・人材・環境など経営基盤の強化を進めてまいります。

・ESG経営概念図

(2) 中期経営計画「Drive 2022」

長期ビジョンに基づいて策定した新しい中期経営計画「Drive 2022」では、積水化学グループの業容倍増に向け、持続可能な「成長」「改革」「仕込み」にドライブをかけることを基本方針とし、①成長と改革、②長期への仕込み、③ESG基盤強化の3つの重点課題をESG経営の実践により、グローバルに推進します。

<中期経営計画「Drive 2022」の全体像>

<中期経営計画の数値目標>

(注)

1.「純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」を表しています。

2.上記数値目標から新規M&A等は除きます。

<基本戦略>

中期経営計画「Drive 2022」の基本戦略は、ESG経営を実践し持続的に企業価値を向上させることのできる企業体制の構築を追求すること、長期ビジョンの第一歩として①成長と改革、②長期への仕込み、③ESG基盤強化の3つの重点課題(Drive)に取り組むこと、さらに融合施策とデジタル変革により取り組みを加速させることにあります。

①成長と改革(現有事業Drive)

  • 成長戦略:全社売上高約900億円の増分を獲得する
  • 構造改革:全社営業利益率10%レベルの収益性を確保する
  • DX:推進体制を強化し、成長戦略・構造改革をサポートする

②長期への仕込み(新事業Drive)

各ドメインにおいて新領域の事業基盤を構築します。

  • アドバンストライフライン:BR実証開発本格化
  • イノベーティブモビリティ:航空機分野参入・拡大
  • レジデンシャル:まちづくり事業拡大
  • ライフサイエンス:次なる柱の獲得

③ESG基盤強化(経営基盤Drive)

  • 持続経営力の強化に向けたKPIとして、ROICを導入
  • 資本効率向上と長期的な調達コスト低減により、持続経営力を高める

<投資・財務戦略>

中期経営計画「Drive 2022」の3年間に獲得するキャッシュに加え、適切かつ機動的な資金調達を行うため、投資枠5,000億円を設定します。戦略投資は前中期経営計画比2倍以上となる4,000億円に引き上げ、うち3,000億円をM&A投資枠として設定し、技術やノウハウ、グローバルの販路獲得などに活用します。また、環境負荷低減、働き方改革、デジタル変革など長期的に資本コストを抑制し、企業価値向上に寄与するESG投資枠400億円を新たに設定しました。

*ESG投資:長期的に資本コストを抑え込み、企業価値向上に寄与する先行投資(環境、働き方改革、DXなど)

<株主還元>

中期経営計画「Drive 2022」では、株主の皆様への「剰余金の配当等に関する基本方針」の内容を見直し、株主還元のコミットを強化・明確化しました。連結配当性向35%以上、総還元性向50%以上(D/Eレシオ(負債資本倍率)が0.5以下の場合)としつつ、DOE(自己資本配当率)3%以上を確保し、業績に応じ、かつ安定的な配当政策を実施いたします。

(3) サステナビリティ貢献製品による持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

気候変動などの社会課題が深刻化し、持続可能な社会の実現に貢献することを企業に求める声が高まってきていることを背景に、グループビジョンの中で「世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献する」ことを掲げる企業として、積水化学グループはさまざまな製品や事業を通じて、持続可能な社会の実現のために2030年までに世界が成し遂げるべき「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた企業活動を推進しています。

中でも、自動車向け遮音・遮熱中間膜や太陽光発電システム搭載住宅、管路更生SPR工法といった、地球および社会環境における課題解決への貢献度が高い製品をサステナビリティ貢献製品と認定し、連結売上高に占めるサステナビリティ貢献製品比率を高めています。

TOPICS

「世界で最も持続可能性の高い100社」に選出

2021年1月、当社は、カナダのコーポレートナイツ社が選定する2021年版「世界で最も持続可能性の高い100社(2021 Global 100 Most SustainableCorporations in the World Index(以下Global 100))」に選出されました。選出は4年連続6度目となります。日本企業は当社を含め5社が選出され、当社は51位にランクされました。

2021 Global 100では、世界の大企業8,080社が対象となり、財務状況、環境、人事、安全などの項目が評価されました。当社は「クリーンレベニュー」「環境貢献投資」「安全」「従業員の定着率」などで高い評価を受けています。

<社外からの主な評価>

(4) ダイバーシティ経営の取り組み

積水化学グループでは、2015年から推進しているダイバーシティ経営を加速するため、2018年に働き方改革、2019年に健康経営の活動を加えました。従業員一人一人の持ち味を活かすとともに、働きがい向上を図るため、全社をあげて活動に取り組んでいます。

①ダイバーシティ

多様な持ち味を活かすための組織風土づくり(職場ごとのボトムアップ活動と上司層のマネジメント教育)とともに、女性活躍、障がい者雇用に注力しています。2020年度は、多様な人材を活かす組織風土づくりとして、自組織の長期ビジョンを部下に伝える活動を積水化学グループの全組織において展開しました。

②働き方改革

生産性向上(設備投資やシステム導入の支援)や柔軟な働き方(リモートワーク、ペーパーレス)の推進を通じ、グループ従業員の労働時間削減を図っています。2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、インフラや各種制度(在宅勤務制度等)の整備が大幅に進展しました。緊急事態宣言下においても事業活動を継続することができ、時間や場所にとらわれない働き方を実践することができました。

③健康経営

健康管理(従業員のからだとこころの健康、組織の健康)を通じ、働きがい・やりがいの向上を図っています。2019年度に策定した「健康経営基本方針」に基づき、2020年度はアプリを活用した「7つの健康習慣」応援プログラムや、ウォーキングイベントを展開しました。さらに、コロナ禍だからこそ求められる、からだとこころの健康づくりを積水化学グループ全体で実践しました。

TOPICS

「2020年度なでしこ銘柄」に選定

2021年3月、当社は、女性の活躍を中長期的な企業価値向上につなげている企業として経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「2020年度なでしこ銘柄」に選定されました。

2016年度、2017年度、2019年度に続き、4度目の選定となります。

「健康経営銘柄2021」に初選定

2021年3月、当社は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業として経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄2021」に初めて選定されました。

今後もすべての従業員が心身ともに、そして社会的にも良好な状態であるWell-Beingを目指して健康経営を推進し、事業を通じて地域・社会へ貢献していきます。

積水化学グループの現況に関する事項

事業の経過およびその成果、対処すべき課題

積水化学グループ2020年度の業績

積水化学グループの長期ビジョン「VISION 2030」に基づき、新たに策定した中期経営計画「Drive 2022」のスタートとなる2020年度は、新型コロナウイルス感染症による国内外の自動車・航空機の需要低迷、工事物件の停止・遅延、国内の新設住宅着工数の減少、営業活動の制限などの影響を受けました。第3四半期以降は自動車、スマートフォンなどの市況が緩やかに回復したことに加え、固定費削減と構造改革の取り組みを前倒しで推進し、下期の営業利益は前年度並みとなりました。

その結果、売上高は前年度比6.4%減の1兆565億円、営業利益は23.5%減の673億円、経常利益は28.2%減の626億円、親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益が前年度に比べ減少したことなどが影響し、前年度比29.8%減の415億円となり、減収減益となりました。

一方、将来への仕込みとして、環境・ライフラインカンパニー総合研究所の新研究開発棟や高機能プラスチックスカンパニーのイノベーションセンターを開設し、研究開発体制を強化しました。また、海外事業拡大のための仕込みとしては、欧州における放熱材料の生産拠点の稼働、鉄道まくらぎ向け合成木材(FFU)の生産工場設立も決定しました。さらに、ウィズコロナ・ポストコロナなど、新たな社会課題に全社の総合力で対応する「ESGタスクフォース」を結成しました。

2021年度の計画概要

2021年度は、中期経営計画「Drive 2022」の2年目として、ESG経営をさらに加速し、力強い業績回復とともに、中期経営計画達成のための道筋をつける年と位置づけています。

2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの、自動車、スマートフォンのグローバル市況は堅調に推移し、住宅着工をはじめ内需も緩やかに回復していくと想定しています。業容を拡大する施策として、社会課題解決への貢献度の高い「サステナビリティ貢献製品」の創出・拡大を軸に、成長分野への新製品投入や高機能品の拡販を進め、新規市場開拓を図ります。また、収益体質の強化として、固定費削減、生産最適化、事業構造改革に努めます。さらに、事業基盤を構築するために、ESG経営の全社浸透による持続経営力の向上を目指します。

これらの取り組みにより、売上高は1兆1,326億円、営業利益は860億円、経常利益は860億円、親会社株主に帰属する当期純利益は600億円を見込み、すべてのセグメントで大幅な増収増益を目指します。

また、「ごみ」を「エタノール」に変換する技術のバイオリファイナリーの事業化、DX推進、M&A機能強化など、中長期の成長に向けた先行投資を継続して推進します。

株主の皆様におかれましては、持続的な成長を目指す積水化学グループに、引き続き、厚いご支援を賜りますようお願いいたします。

事業区分別の概況

住宅カンパニー

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住宅カンパニー2020年度の業績

期初受注残の減少に加え、新型コロナウイルス感染症の影響を受け受注が減少したことにより、売上高は前年度比5.4%減の4,852億円、営業利益は前年度比19.2%減の305億円となり、減収減益となりました。一方、生産最適化や固定費抑制などの収益体質強化の取り組みは進捗しました。

新築住宅事業は、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、通期の受注は前年度を下回りましたが、第3四半期以降、市況は回復基調で、下期の受注は前年同期並みとなりました。分譲・建売住宅は好調に推移しました。施策面では、WEB集客やオンライン商談を推進するとともに、10月に発売した「スマートパワーステーションFR GREEN MODEL」によりエネルギー自給自足の訴求を図りました。また、好調な分譲・建売住宅の拡販に向け、土地・建売在庫の拡充に努めました。

リフォーム事業は、お客様との接点が減少したことにより、売上高は前年度を下回りましたが、コスト削減が計画以上に進捗し、下期は増益に転換しました。施策面では、定期診断専任担当者の設置などの体制整備を進めるとともに、受注残の管理を強化することにより、施工・売上の平準化を推進しました。

まちづくり事業は、「あさかリードタウン」「東松山リードタウン」の売上による収益貢献が本格化するとともに、今後のプロジェクト案件の確保も順調に進捗しました。

2021年度の計画概要

2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響は続くものの、回復基調が継続すると見込まれ、生産最適化、コスト削減の効果を発現することにより、増収増益を目指します。

新築住宅事業は、引き続きWEBや体感型ショールームを活用した集客・商談を推進するとともに、セキスイハイム誕生50周年記念プロジェクトを展開し、スマート&レジリエンスのほか「新しい生活様式」に対応した商品や、分譲・建売住宅のさらなる拡販に取り組みます。さらに、生産最適化などの体質強化を推進します。

リフォーム事業は、定期診断の拡充やショールーム、WEBの活用によりお客様との接点を強化するとともに、蓄電池などニーズに合った商材の提案を推進することにより、売上の増大を図ります。

まちづくり事業は、収益貢献拡大を図るとともに、買取再販事業「Beハイム」の全国展開など、不動産や、その他の事業の成長加速を図ります。

TOPICS

「あさかリードタウン」がABINC(エイビンク) ADVANCE(アドバンス)認証を単独の企業グループで初取得

「あさかリードタウン」の完成予想図

2020年6月、複数の街区を越えてエリア全体で実施される、生物多様性保全を通じたサステナブルな地域・まちの実現や、SDGsの達成を目指す民間セクターの貢献について、一般社団法人いきもの共生事業推進協議会が評価する新たな認証システムである、「ABINC ADVANCE認証」を取得しました。

「あさかリードタウン」では、3つの公園に加え、まち全体に豊富な植栽を施すことで、高い緑被率を実現しています。積水化学グループの総合力を結集させた災害にも強いインフラ設備に加え、緑地の保水能力も活用し、豪雨の被害の抑制を図っています。

これらの活動を通じ、国連が提唱するSDGsに示されている「住み続けられるまちづくりを」、「気候変動に具体的な対策を」、「陸の豊かさも守ろう」、「パートナーシップで目標を達成しよう」などの目標の実現に寄与します。

環境・ライフラインカンパニー

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環境・ライフラインカンパニー2020年度の業績

国内外での新型コロナウイルス感染症の影響による工事物件の遅延・延期の影響や、国内における建築関連(非住宅施設)市況が低調であったことなどにより、売上高は前年度比13.8%減の2,045億円、営業利益は前年度比27.3%減の112億円となり、減収減益となりました。一方、構造改革、業務効率化、固定費削減は計画以上に進捗しました。

配管・インフラ分野は、国内公共事業、海外プラント(半導体・液晶)向けが堅調でしたが、国内建築関連(非住宅施設)向けの需要が低迷し、売上高は前年度を下回りました。

建築・住環境分野は、戸建・リフォーム向けが回復基調でしたが、非住宅向け需要が低調で、構造改革の影響もあり売上高は前年度を下回りました。

機能材料分野は、米国の成形用プラスチックシートの医療機器向けを中心とした新用途への展開が進捗しましたが、航空機向けの需要が低調であったことと、事業譲渡による構造改革影響で売上高は前年度を下回りました。合成木材は、国内の需要(まくらぎ・水処理関連用途など)が堅調に推移しました。

2021年度の計画概要

2021年度は、重点拡大製品・新製品の拡販と海外事業の拡大に注力するとともに、原材料価格高騰に対応した製品価格是正を着実に推進し、増収増益を目指します。

また、DXによる効率性向上、生産の自動化などを推進します。

配管・インフラ分野は、引き続き人手不足やインフラ老朽化などの社会課題解決に資する重点拡大製品・新製品を中心に業容の拡大を図ります。

建築・住環境分野は、災害対応製品や介護向け製品の一層の拡販を推進します。

機能材料分野は、鉄道まくらぎ向け合成木材の海外での採用拡大や、成形用プラスチックシートの用途開拓を推進していきます。また合成木材については、欧州生産工場の2022年度の生産開始に向けた準備を着実に進めます。

TOPICS

欧州における鉄道枕木向け合成木材(FFU)の生産工場設立について

新工場の外観イメージ

2020年10月、オランダにおいてガラス長繊維強化プラスチック発泡体「FFU」製鉄道用まくらぎの生産工場設立を決定しました。これにより、FFU製まくらぎの生産能力はこれまでの1.8倍に拡大します。

現在、FFU製まくらぎは、ほぼ全量を滋賀栗東工場で生産していますが、海外市場の需要拡大により生産能力の向上や納品期間の短縮が必要となってきました。そこで、海外における最大の需要地である欧州に生産工場を設立し、より一層の事業拡大を推進することとしました。環境意識の高い欧州では、「FFU」が環境課題を解決する素材として高い評価を受けています。

生産工場は、SEKISUI ESLON B.V.内に新設します。また、市場・顧客ごとに製品仕様が異なるため、販売先の近傍で加工パートナーと連携し、欧州における需要に対応します。

高機能プラスチックスカンパニー

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高機能プラスチックスカンパニー2020年度の業績

新型コロナウイルス感染症の影響によるモビリティ分野・住インフラ材分野における需要の大幅な低迷により、売上高は前年度比3.9%減の3,098億円、営業利益は前年度比22.6%減の289億円となり、減収減益となりました。一方、サプライチェーン全体のコスト革新や構造改革による徹底した収益体質強化策を推進し、需要が回復した下期は前年同期比で増収増益となりました。

エレクトロニクス分野は、モバイル端末の需要増と基板・半導体、接合部材、放熱製品などの非液晶分野への拡販の取り組みが順調に進捗したことにより、売上高は上期、下期ともに前年同期を大幅に上回りました。

モビリティ分野は、上期における自動車市況の減退や航空機関連部材の需要低迷により、売上高は前年度を下回りましたが、第3四半期以降は自動車市況が大きく回復したため、高機能品の拡販が順調に進捗し、下期の売上高は前年同期を上回りました。

住インフラ材分野は、塩素化塩ビ(CPVC)樹脂のグローバル需要が第3四半期以降回復したものの、第1四半期のロックダウンの影響や国内市況の低迷が続いたことにより、売上高は前年度を下回りました。

2021年度の計画概要

2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響からの市況の回復が見込まれる中、戦略分野において成長施策にシフトするとともに、原材料価格高騰の影響をコスト削減施策で最小化し、増収増益を目指します。

エレクトロニクス分野は、5G関連需要の拡大を見込み、基板・半導体関連をはじめとする非液晶分野の拡販を加速させ、引き続き増収を図ります。

モビリティ分野は、半導体供給の逼迫や北米寒波影響などのリスク要因はあるものの、引き続きヘッドアップディスプレイ用を中心とした高機能中間膜の拡販を推進し、大幅な増収を図ります。

住インフラ材分野は、国内需要の回復に遅れはあるものの、海外のCPVC樹脂の拡販を推進するとともに、不燃性ウレタン製品を中心に耐火材料事業の拡大を進め、増収を図ります。

TOPICS

開発研究所にイノベーションセンターを開設

水無瀬イノベーションセンター

2020年8月、高機能プラスチックスカンパニーの主要研究開発拠点である開発研究所(大阪府三島郡島本町)内に、規模拡大とイノベーションの一層の加速を狙い、水無瀬イノベーションセンター(MIC)を併設しました。

3つの戦略分野(エレクトロニクス・モビリティ・住インフラ材)においては、通信業界における5Gの普及、自動車業界の自動運転を含むCASEの進展など、通信や自動車業界の変容に伴い、各分野を横断した人や情報の融合が、イノベーションを創出していく上で重要になっています。

MICの開設により社内外の融合を促進し、社会問題解決と当社グループの成長に資するイノベーションの創出をさらに推進し、サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、「未来につづく安心」の創造を目指します。

メディカル事業

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メディカル事業 2021年度の計画概要

2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大による生活習慣病の外来検査減少の影響を受けたものの、米国の新型コロナウイルス感染症検査キット拡販と医療事業の新規原薬拡販により、売上高は前年度並みの723億円となりました。一方、検査薬の需要減少に伴う利益率低下などにより、営業利益は前年度比23.8%減の70億円となりました。

2021年度は、検査事業においては、既存品の売上を新型コロナウイルス感染症まん延以前の水準まで回復させるとともに、新製品の販売を推進します。医療事業においては、新規原薬の販売拡大を図ります。

R&D(研究開発)の取り組み事例

「ごみ」を「エタノール」に変換する技術の事業化を目的に合弁会社を設立

2020年4月、当社と株式会社INCJは、当社と米国ベンチャー企業Lanza Techが共同開発した、微生物触媒を活用して可燃性ごみをエタノールに変換する技術(BRエタノール技術)の実証実験の実施および事業展開を行うことを目的として、合弁会社「積水バイオリファイナリー株式会社」を設立しました。

積水バイオリファイナリーでは、BRエタノール技術の実用化・事業化に向けた最終段階の実証を行うため、まず岩手県久慈市に実証プラントを新設し、2021年度末に稼働を開始、実証事業を行う予定です。実証プラントでは、標準的な規模のごみ処理施設が処理するごみの1/10程度の量(約20t/日)を既存ごみ処理施設から譲り受けて原料とし、エタノールを生産する予定です。

また、自治体やごみ処理関連企業、プラントメーカー等のパートナーを広く募るとともに、実証プラントにて生産したエタノールを、本技術に関心をお寄せいただいている多くの業界の企業等に提供し、エタノールを活用する様々な製品・事業の検証を行っていただく予定です。これらの取り組みを経て、BRエタノール技術の本格事業化を目指します。

当社とINCJは、積水バイオリファイナリーにおけるBRエタノール技術の実証事業等を通じて、社会課題の解決に寄与する究極の資源循環社会システムの創生に貢献していきます。

<想定するBRエタノール技術の事業化および事業展開のスケジュール>

連結計算書類