事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

経営の基本方針

経営理念および行動準則

積水化学グループは、経営に対する理念を体系化しています。企業活動の根底にある考え方や方針を示す「社是」、社是をうけて中長期で当社グループが目指す姿を示した「グループビジョン」、グループビジョンを実現していくための具体的な「経営戦略」により構成されています。

(1) 社是「3S精神」

当社の社章は、創業当時の社名「積水産業」の頭文字の「S」3つを化学記号ベンゼン環の中に配置して、「水」という文字をかたどったものです。1959年11月、当社は、このマークに「3S精神」という明確な定義づけを行い、社是として制定しました。

「企業活動を通じて社会的価値を創造する(Service)」「積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する(Speed)」「際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する(Superiority)」の3S精神は、積水化学グループの理念体系の根幹をなすものであり、約2万6千名の全社員の間で、しっかりと共有されています。

<社是「3S精神」>
・Service
:企業活動を通じて社会的価値を創造する
・Speed
:積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する
・Superiority
:際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する
(2) グループビジョン

積水化学グループは、ステークホルダーの期待に応え、社会的価値を創造し、事業を通して社会に貢献することを目指しています。

地球規模での人口増加や気候変動、先進国を中心とする高齢化、都市基盤の老朽化などに加え、これらすべてに関連する資源エネルギー問題がこれまで以上に喫緊な社会的課題になりつつある中、グループがこれまで蓄積してきた「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」の分野に関する経験・知見を活用して、これらの社会課題の解決に資する価値を創造し続けることを目指しています。

<グループビジョン>

積水化学グループは、際立つ技術と品質により、「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献します。

(3) 積水化学グループ 企業行動指針

積水化学グループは、グループの役員・従業員が従うべき行動指針である「積水化学グループ企業行動指針」を定め、日々の事業活動を通じて社会的信頼を高め、より一層魅力ある会社を目指しています。

<企業行動指針>

1 社会の発展に役立つ事業活動を行う。

2 個人の能力を最大限に発揮し、活力ある組織をつくる。

3 お客様・取引先・株主・地域など広く社会から信頼される企業をめざす。

4 あらゆる企業活動において法およびその精神を遵守し、誠実に行動する。

5 よき企業市民として、サステナブルな視点で地球環境問題と社会貢献に取り組む。

グループビジョンを実現するための経営戦略

積水化学グループは、社是「3S精神」の下、グループビジョンに掲げる「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」を両輪として成長していくため、長期ビジョン「VISION 2030」、ならびに2020年度から2022年度までの3か年を対象期間とした中期経営計画「Drive 2022」を策定し、以下の取り組みを推進しています。

(1) 長期ビジョン「VISION 2030」

長期ビジョン「VISION 2030」では、積水化学グループがイノベーションを起こし続けることにより、「サステナブルな社会の実現に向けてLIFEの基盤を支え『未来につづく安心』を創造していく」という強い意志を込めたビジョンステートメント「Innovation for the Earth」を掲げています。レジデンシャル(住まい)、アドバンストライフライン(社会インフラ)、イノベーティブモビリティ(エレキ/移動体)、ライフサイエンス(健康・医療)の4つの事業領域を設定し、「ESG経営を中心においた革新と創造」を戦略の軸にして現有事業の拡大と新領域への挑戦に取り組み、2030年の業容倍増を狙います。

<長期ビジョンの全体像>

<ESG経営>

積水化学グループは、「サステナブルな社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立の実現を目指し、その鍵となる以下の3つのステップをステークホルダーとともに取り組んでいます。

①環境・CS品質・人材の「3つの際立ち」と「ガバナンス」の磨き上げ

②3つのアプローチ(量を増やす・質を高める・持続的に提供する)で社会課題解決を加速

③4つの事業領域で「未来につづく安心」の創出・拡大

このESG経営を加速するため、当社グループ主要施策について中長期目標を定めるとともに、今中期経営計画ではESG投資枠400億円を設定し、重大インシデントにつながるリスク軽減に向けた取り組みやDX(デジタル変革)・人材・環境など経営基盤の強化を進めています。

・ESG経営概念図

(2) 中期経営計画「Drive 2022」

長期ビジョンに基づいて策定した中期経営計画「Drive 2022」では、積水化学グループの業容倍増に向け、持続可能な「成長」「改革」「仕込み」にドライブをかけることを基本方針とし、①成長と改革、②長期への仕込み、③ESG基盤強化の3つの重点課題をESG経営の実践により、グローバルに推進します。

<中期経営計画「Drive 2022」の全体像>

<中期経営計画の数値目標>

(注)
  • 「純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」を表しています。
  • 上記数値目標から新規M&A等は除きます。
  • 2022年度の計画については招集ご通知の53ページに記載のとおりです。

<基本戦略>

中期経営計画「Drive 2022」の基本戦略は、ESG経営を実践し持続的に企業価値を向上させることのできる企業体制の構築を追求すること、長期ビジョンの第一歩として①成長と改革、②長期への仕込み、③ESG基盤強化の3つの重点課題(Drive)に取り組むこと、さらに融合施策とデジタル変革により取り組みを加速させることにあります。

  • ①成長と改革(現有事業Drive)
    • ・成長戦略:全社売上高約900億円の増分を獲得する
    • ・構造改革:全社営業利益率10%レベルの収益性を確保する
    • ・DX:推進体制を強化し、成長戦略・構造改革をサポートする
  • ②長期への仕込み(新事業Drive)
    各ドメインにおいて新領域の事業基盤を構築します。
    • ・アドバンストライフライン:BR実証開発本格化
    • ・イノベーティブモビリティ:航空機分野参入・拡大
    • ・レジデンシャル:まちづくり事業拡大
    • ・ライフサイエンス:次なる柱の獲得
  • ③ESG基盤強化(経営基盤Drive)
    • ・持続経営力の強化に向けたKPIとして、ROICを導入
    • ・資本効率向上と長期的な調達コスト低減により、持続経営力を高める

<投資・財務戦略>

中期経営計画「Drive 2022」の3年間に獲得するキャッシュに加え、適切かつ機動的な資金調達を行うため、投資枠5,000億円を設定します。戦略投資は前中期経営計画比2倍以上となる4,000億円に引き上げ、うち3,000億円をM&A投資枠として設定し、技術やノウハウ、グローバルの販路獲得などに活用します。また、環境負荷低減、働き方改革、デジタル変革など長期的に資本コストを抑制し、企業価値向上に寄与するESG投資枠400億円を設定しています。

*ESG投資:長期的に資本コストを抑え込み、企業価値向上に寄与する先行投資(環境、働き方改革、DXなど)

<株主還元>

中期経営計画「Drive 2022」では、株主の皆様への「剰余金の配当等に関する基本方針」の内容を見直し、株主還元のコミットを強化・明確化しました。連結配当性向35%以上、総還元性向50%以上(D/Eレシオ(負債資本倍率)が0.5以下の場合)としつつ、DOE(自己資本配当率)3%以上を確保し、業績に応じ、かつ安定的な配当政策を実施いたします。

(3) サステナビリティ貢献製品による持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

気候変動などの社会課題が深刻化し、持続可能な社会の実現に貢献することを企業に求める声が高まってきていることを背景に、グループビジョンの中で「世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献する」ことを掲げる企業として、積水化学グループはさまざまな製品や事業を通じて、持続可能な社会の実現のために2030年までに世界が成し遂げるべき「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた企業活動を推進しています。

中でも、自動車向け遮音・遮熱中間膜や太陽光発電システム搭載住宅、管路更生SPR工法といった、地球および社会環境における課題解決への貢献度が高い製品をサステナビリティ貢献製品と認定し、連結売上高に占めるサステナビリティ貢献製品比率を高めています。

TOPICS

「世界で最も持続可能性の高い100社」に5年連続選出

2022年1月、当社は、カナダのコーポレートナイツ社が選定する2022年版「世界で最も持続可能性の高い100社(2022 Global 100 Most Sustainable Corporations in theWorld Index(以下Global 100))」に選出されました。選出は5年連続7度目となります。日本企業は当社を含め3社が選出され、当社は22位にランクされました。

2022 Global 100では、世界の大企業6,914社が対象となり、財務状況、環境、人事、安全などの項目が評価されました。当社は「クリーンレベニュー」「環境貢献投資」「サステナビリティと報酬の連動」「従業員の定着率」などで高い評価を受けています。

「社外からの主な評価」(2021年度)

(4) ダイバーシティ経営の取り組み

積水化学グループは、長期ビジョンの実現に向け「全員が挑戦したくなる活力あふれる会社」を目指しています。上司自らが各組織の長期ビジョンを部下に伝える活動を、当社グループの全組織で継続して展開し、ビジョンの浸透を図っています。また全てのグループ会社でプロジェクトを構成し、ダイバーシティ、働き方改革、健康経営といった共通の課題の解決を目指しています。

①ダイバーシティ

女性活躍推進、両立活躍支援、シニア活躍支援に注力しています。当社および社会の課題に対応するため、2021年10月に当社およびグループ会社8社が定年延長(60歳から65歳)を実施しました。年齢によらない活躍を支えるために、2025年度中に全グループ会社で定年延長を実施する予定です。

②働き方改革

生産性向上や柔軟な働き方(リモートワーク、ペーパーレス等)の推進を通じ、グループ従業員の労働時間削減を図っています。また新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、各種インフラや在宅勤務制度等の整備を推進しています。これらを通じ、時間や場所に捉われない働き方を実践しています。

③健康経営

健康管理(従業員のからだとこころの健康、組織の健康)を通じ、働きがい・やりがい・生産性の向上を図っています。2019年度に策定した「健康経営基本方針」に基づき、健康アプリの活用による「7つの健康習慣」応援プログラムや、全従業員対象のメンタルヘルス研修(管理職は必須参加)を展開しています。

TOPICS

「健康経営銘柄2022」に2年連続で選定

「健康経営銘柄2022」に2年連続で選定

2022年3月、当社は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業として経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄2022」に2年連続で選定されました。

今後もすべての従業員が心身ともに、そして社会的にも良好な状態であるWell-Beingを目指して健康経営を推進し、事業を通じて地域・社会へ貢献していきます。

「2021年度準なでしこ」に選定

「2021年度準なでしこ」に選定

2022年3月、当社は、女性の活躍を中長期的な企業価値向上につなげている企業として経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「2021年度準なでしこ」に選定されました。

積水化学グループの現況に関する事項

事業の経過およびその成果、対処すべき課題

積水化学グループ2021年度の業績

積水化学グループの長期ビジョン「VISION 2030」に基づき策定した、中期経営計画「Drive 2022」の2年目となる2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、半導体不足や物流の停滞による生産遅延などの影響がありましたが、国内外の自動車・エレクトロニクス・建築市況、国内の新設住宅着工数などで一定の回復があり、増収となりました。

また、原材料・部材価格は想定を大きく上回って高騰しているものの、販売数量の拡大、売値の改善、コスト削減により挽回し営業増益となり、経常利益は過去最高益を更新しました。

その結果、売上高は前年度比9.6%増の1兆1,579億円、営業利益は32.1%増の888億円、経常利益は54.8%増の970億円、親会社株主に帰属する当期純利益は米国の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等複合材成型品を手掛ける連結子会社について減損損失を計上したことにより、前年度比10.8%減の370億円となりました。

なお、ロシア・ウクライナ情勢につきましては、対象地域内に事業拠点を設置しておらず、対象地域向けの売上も少ないため、業績への影響は軽微でした。

2022年度の計画概要

2022年度は、中期経営計画「Drive 2022」の最終年度となります。ESG経営の強化により持続経営力を高め、成長施策を着実に推進したいと考えています。

ロシア・ウクライナ情勢については、業績への直接的な影響は軽微ですが、それに起因する資源不足、原材料価格の高騰長期化、欧州の自動車市況低迷などの影響を注視していきます。事業環境には不透明な要素があるものの、新型コロナウイルス感染症の影響減少に伴い、グローバルの自動車・スマートフォンなどの市況、住宅着工をはじめ内需は緩やかに回復していくと見込んでいます。社会課題解決に資する高付加価値事業・製品販売の拡大を図るとともに、着実な売値の改善、固定費削減、生産最適化、事業構造改革など収益体質強化策を推進します。

これらの取り組みにより、売上高は前年度を836億円上回る1兆2,416億円、営業利益は前年度を111億円上回る1,000億円、経常利益は前年度を29億円上回る1,000億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度を294億円上回る665億円を目指し、すべてのセグメントで営業増益、全社として各段階利益の最高益更新を狙います。

また、「ごみ」を「エタノール」に変換する技術のバイオリファイナリーの事業化、DX推進、研究開発強化など、次期中期経営計画以降のための仕込みや成長投資なども一段と加速します。

当社は2022年3月に創立75周年を迎えることとなりました。これもひとえに皆様の温かい御厚情の賜物と心より深く御礼申し上げます。株主の皆様におかれましては、持続的な成長を目指す積水化学グループに、引き続き、厚いご支援を賜りますようお願いいたします。

事業区分別の概況

住宅カンパニー

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住宅カンパニー2021年度の業績

新築住宅、リフォームの受注が回復したほか、まちづくり事業や不動産事業が寄与し、売上高は前年度比6.2%増の5,151億円となりました。営業利益は部材価格高騰の影響を受けましたが、販売数量の拡大とコスト削減が寄与し、前年度比15.6%増の353億円となり、増収増益となりました。

新築住宅事業では、分譲・建売住宅が好調に推移し、受注が前年度を上回りました。施策面では、セキスイハイム誕生50周年記念プロジェクトの発信により、ブランド強化を図りました。体験・体感型施設の展開や、WEB集客、オンラインセミナー・商談の強化に加え、引き続き需要が堅調な分譲・建売住宅の拡販に注力しました。商品面では、当社製セルを採用した大容量蓄電池搭載の新商品「新スマートパワーステーションFR GREENMODEL」の発売や、抗ウイルス対応フィルターを採用した換気・空調システム導入など、スマート&レジリエンスやニューノーマル対応を進めました。

リフォーム事業は、お客様との接触機会が回復したことで、受注が前年度を上回りました。定期診断の拡充に加え、体感型ショールームの展開および活用により、外壁塗装・バスなど提案型商材の拡販に努めました。

まちづくり事業では4件の新規プロジェクトの販売を開始しました。

不動産事業では買取再販ブランド「Beハイム」の事業拡大に注力しました。

2022年度の計画概要

2022年度は、部材価格高騰影響の拡大など厳しい事業環境が見込まれるなか、新築住宅事業やリフォーム事業などの売上増大やコスト削減により、増収増益を目指します。

新築住宅事業は、WEBマーケティングの強化により集客増を図るとともに、体験・体感型施設の展開・活用を推進するなど、創・育客手法の磨き上げに取り組みます。加えて、スマート&レジリエンスやニューノーマルへの対応を強化した商品の投入や、分譲・建売住宅の拡販に取り組み、売上の増大を図ります。また、施工の平準化などの体質強化を推進します。

リフォーム事業は、定期診断の拡充やショールーム・WEBの活用など、営業体制強化に取り組むほか、スマート&レジリエンスやニューノーマルに対応した商材の拡販、生産性の改善により、収益の増大を図ります。

また、まちづくり、買取再販ブランド「Beハイム」などフロンティア事業の拡大に引き続き注力していきます。

TOPICS

買取再販ブランド『Beハイム』の全国展開を加速

『Beハイム』実邸例

当社はセキスイハイム誕生50周年記念プロジェクトの一つとして、既存住宅流通における買取再販ブランド『Beハイム』の全国展開を加速しています。

『Beハイム』は、既存の自社建築物件を直接買い取り、スマート性能など、ニューノーマルなリノベーションで「新しい価値」を付加し、アップサイクル住宅として循環させる取り組みです。2020年12月にブランドを立ち上げ、首都圏、中部、近畿の3エリアで展開。子育て世代を中心に大きな反響をいただいており、順調に成長しています。

この3エリアで培った知見を全国に展開し取り組みを拡大することで、2030年には500棟の売上を目指しています。循環型社会への貢献とESG経営の推進をさらに加速し、サステナブルな社会の実現に貢献します。

環境・ライフラインカンパニー

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環境・ライフラインカンパニー2021年度の業績

新型コロナウイルス感染症の影響により国内の非住宅建築市況が低調であったことに加え、海外での物件遅延の影響を受けました。また原材料価格は想定を上回って高騰しましたが、堅調な国内住宅市況、国内外の旺盛な半導体などの設備投資需要を受け、販売数量を拡大するとともに売値改善を着実に進め、売上高は前年度比3.5%増の2,117億円、営業利益は前年度比25.0%増の140億円となり、増収増益となりました。

配管・インフラ分野は、新型コロナウイルス感染症の影響による物件遅延や、国内非住宅(建築関連)向けの需要低迷の影響を受けましたが、国内住宅市況、国内外プラント(半導体・液晶)向け販売が堅調に推移し、売上高は前年度を上回りました。また原材料価格の高騰に対応した着実な売値改善を実施しました。

建築・住環境分野は、戸建・集合住宅、リフォーム向け販売が順調に推移し、売上高は前年度を上回りました。

機能材料分野は、まくらぎ向け合成木材の販売において、国内の需要低迷や海外での物件遅延などの影響を大きく受けました。米国の成形用プラスチックシートは、医療機器・鉄道向けを中心とした用途への展開が進捗しました。液体輸送用容器は、医療向けなどの販売が堅調に推移しました。これらにより構造改革(事業譲渡)影響を除いた分野全体の売上高は前年度を上回りました。

2022年度の計画概要

2022年度は、引き続き社会課題解決に資する重点拡大製品の拡販と海外事業の拡大に注力するとともに、原材料価格高騰に対応した売値改善を着実に推進し、増収増益を目指します。また、DXによる生産性向上、生産の自動化などによる効果の早期発現を推進します。

配管・インフラ分野は、引き続き人手不足やインフラ老朽化などの社会課題解決に資する重点拡大製品の拡販を図るとともに、遅延物件やプラント向け設備投資需要を確実に取り込み、売上拡大を図ります。

建築・住環境分野は、災害対応製品や介護向け製品のさらなる拡販を推進します。

機能材料分野は、鉄道まくらぎ向け合成木材の海外での採用加速、成形用プラスチックシートの用途開拓、液体輸送用容器の製品拡充により、売上拡大を図ります。また、合成木材については、オランダの生産工場の2022 年度完工に向けた準備を着実に進めていきます。

TOPICS

東日本エリアに製品性能と易施工性を体感できる施設、総合研究所「千葉ソリューションセンター」が完成

外観

1階

2階

総合研究所「千葉ソリューションセンター」は、東日本エリアの実験・実演拠点として、千葉積水工業内に2021年6月に完成しました。

1階の配管実験スペースは、最近お客様に求められることが多い個別の評価試験や実際の建築施工に合わせた配管モデルを組んだ検証を行うことができ、当社製品の性能や易施工性を直に“触れて”“試して”“確かめて”いただける体感型の施設です。

2階の映像体感プレゼンルームは、専用光回線接続により、マザー工場である滋賀栗東工場で行う実演見学を臨場感のある映像で見られるとともに、コロナ禍において、お客様とのオンラインでの説明会や、実演見学を実施することもできました。仕様化・採用化を促進し、販売を加速させていきます。

高機能プラスチックスカンパニー

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高機能プラスチックスカンパニー2021年度の業績

半導体不足や輸送コンテナ不足の影響を受けましたが、自動車、エレクトロニクスなどの市況が新型コロナウイルス感染症の影響から一定程度回復し、売上高は前年度比15.8%増の3,588億円となりました。営業利益は想定を上回る著しい原材料価格の高騰の影響を受けましたが、高機能品を中心とした販売数量の拡大、売値の改善およびコスト削減により挽回し、前年度比46.4%増の423億円となり、増収増益となりました。

エレクトロニクス分野は、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の市況回復に伴い液晶パネル向け製品の販売が堅調であったことに加え、非液晶分野(5G、半導体関連など)向けの拡販も順調に進捗し、売上高は前年度を上回りました。

モビリティ分野は、半導体不足の影響などにより自動車減産が想定より長期化しましたが、ヘッドアップディスプレイ向け中間膜を中心に高機能品の販売が伸長し、売上高は前年度を大幅に上回りました。なお、第2四半期連結会計期間に減損損失を計上したSEKISUI AEROSPACE社については、航空機需要の早期回復は見込めないため、事業構造改革を進め、医療機器向けなどへの用途拡大を引き続き推進中です。

住インフラ材分野は、塩素化塩ビ(CPVC)樹脂のグローバル需要がインド・中東を中心に堅調に推移し、建築市況の回復により耐火・不燃材料の販売も堅調だったため、売上高は前年度を大幅に上回りました。

2022年度の計画概要

2022年度は、引き続き原材料価格が高騰し事業環境も不透明な中、戦略分野においてさらなる成長施策へのシフトを推進するとともに売値の改善を徹底し、増収増益を目指します。

エレクトロニクス分野は、堅調なスマートフォン市況の中、基板・半導体関連をはじめとする非液晶分野での拡販についても加速させ、引き続き増収を図ります。

モビリティ分野は、リスク要因はあるものの、引き続きヘッドアップディスプレイ用を中心とした高機能中間膜の拡販を推進し、増収を図ります。

住インフラ材分野は、海外需要は堅調に推移し、国内も回復基調にあることから、海外でのCPVC樹脂の拡販を推進するとともに不燃性ウレタン製品を中心に耐火材料事業の拡大を進めます。また、売値改善の継続により増収を図ります。

TOPICS

「5G通信向け透明フレキシブル電波反射フィルム」を開発

本フィルムの構成

2021年12月、独自のフィルム、光学粘着材技術とMeta Materials社(カナダ)のメタマテリアル技術の活用により、今般、5G通信向けの透明フレキシブル電波反射フィルムを開発しました。

電波環境評価に関しては、DOCOMO Innovations社(米国)の協力の下で検証を進め、5Gから6Gまでの周波数帯域をカバーし、従来にはない高い透明性・電波拡散性を併せ持ったフィルムであることを確認しました。

これにより、基地局や中継機の設置に比べ、安価に短期間で通信環境の改善が可能となります。また、電源不要、透明、フレキシブルであるため、外観を損ねることなく、あらゆる形状の部位や場所に施工が可能となり、オフィス、工場、ショッピングモール、医療・介護施設や鉄道・道路等の各種インフラへの展開に加え、救急、工事現場といった一時的・緊急的な用途への対応も含め、用途開拓を進めていきます。

メディカル事業

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2021年度は、国内外で生活習慣病検査薬の需要が回復したこと、米国での新型コロナウイルス感染症検査キット拡販、および医療事業の新規原薬拡販が堅調に推移したことにより、売上高は前年度比22.4%増の885億円、営業利益は前年度比59.5%増の111億円となりました。

2022年度は、新型コロナウイルス感染症の検査需要減少により売上高は前年度比1.7%減の870億円となる見通しです。一方、検査事業での新血液凝固自動分析装置および高付加価値製品の拡販、医療事業での新規原薬の拡販を推進するとともに、創薬支援の新規受注獲得に努め、営業利益は前年度比11.8%増の125億円を目指します。

R&D(研究開発)の取り組み事例

「ごみ」を「エタノール」に変換する1/10スケールの実証プラントが岩手県久慈市に完成

当社と株式会社INCJ、積水バイオリファイナリー株式会社(SBR)は、当社と米国ランザテック社が共同開発した微生物を活用して可燃性ごみをエタノールに変換する技術(BRエタノール技術)の実証・技術検証および事業展開を目的として、岩手県久慈市にて実証プラントの建設を進めてきましたが、2022年4月に竣工しました。

当社およびSBRは、BRエタノール技術を核とした新しい「資源循環社会システム」の創生を目指しています。このシステムは、生活を便利に豊かにするために生まれ、その役割を全うして廃棄された「ごみ」を、新品の材料に繰り返し還して新しい生命を与え循環するもので、誰もが共同で参加することができるものです。

当社は、実証プラントにおける実証・技術検証と並行して、自治体や民間企業(廃棄物処理会社など)とのごみ原料供給に関する協議や、エタノール需要家(資源循環取組企業など)との協議を進め、2025年度頃のBRプラント商用初号機導入を目標に、事業化を目指します。

ペロブスカイト太陽電池への外部資金獲得による開発加速について

当社が開発中のペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト結晶構造を持つ半導体を発電材料に用いた太陽電池で、印刷するように塗布で製造でき、軽量そしてフレキシブルな太陽電池です。その製造に当社の封止、成膜などの独自技術が活かされています。他社に先駆けて屋外での実証実験を行うなど屋外耐久性を優先し開発を行ってまいりました。耐久性10年相当は確認でき、15年20年と向上させることを目標としています。また発電効率においても2022年2月に15%を達成することができました。これまでの実績が認められNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金を獲得し、官民連携での取り組みを開始しております。またロール・ツー・ロール製造プロセスにおいても、30cm幅での製造から汎用幅である1m幅の製造ライン開発に業界で初めて着手いたしました。今後実証などを経て2025年に事業化を目指します。

ロール・ツー・ロール製造プロセス

※太陽電池規格(IEC61215)準拠
主要耐久性試験 5項目クリア

連結計算書類