事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

経営の基本方針

経営理念および行動準則

積水化学グループは、経営に対する理念を体系化しています。企業活動の根底にある考え方や方針を示す「社是」、社是をうけて中長期で当社グループが目指す姿を示した「グループビジョン」、グループビジョンを実現していくための具体的な「経営戦略」により構成されています。

(1) 社是「3S精神」

当社の社章は、創業当時の社名「積水産業」の頭文字の「S」3つを化学記号ベンゼン環の中に配置して、「水」という文字をかたどったものです。1959年11月、当社は、このマークに「3S精神」という明確な定義づけを行い、社是として制定しました。

「企業活動を通じて社会的価値を創造する(Service)」「積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する(Speed)」「際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する(Superiority)」の3S精神は、積水化学グループの理念体系の根幹をなすものであり、約2万7千名の全社員の間で、しっかりと共有されています。

<社是「3S精神」>
・Service
:企業活動を通じて社会的価値を創造する
・Speed
:積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する
・Superiority
:際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する
(2) グループビジョン

積水化学グループは、ステークホルダーの期待に応え、社会的価値を創造し、事業を通して社会に貢献することを目指しています。

地球規模での人口増加や気候変動、先進国を中心とする高齢化、都市基盤の老朽化などに加え、これらすべてに関連する資源エネルギー問題がこれまで以上に喫緊な社会的課題になりつつある中、グループがこれまで蓄積してきた「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」の分野に関する経験・知見を活用して、これらの社会課題の解決に資する価値を創造し続けることを目指しています。

<グループビジョン>

積水化学グループは、際立つ技術と品質により、「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献します。

(3) 積水化学グループ 企業行動指針

積水化学グループは、グループの役員・従業員が従うべき行動指針である「積水化学グループ企業行動指針」を定め、日々の事業活動を通じて社会的信頼を高め、より一層魅力ある会社を目指しています。

<企業行動指針>

1 社会の発展に役立つ事業活動を行う。

2 個人の能力を最大限に発揮し、活力ある組織をつくる。

3 お客様・取引先・株主・地域など広く社会から信頼される企業をめざす。

4 あらゆる企業活動において法およびその精神を遵守し、誠実に行動する。

5 よき企業市民として、サステナブルな視点で地球環境問題と社会貢献に取り組む。

グループビジョンを実現するための経営戦略

積水化学グループは、社是「3S精神」の下、グループビジョンに掲げる「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」を両輪として成長していくため、長期ビジョン「VISION 2030」、ならびに2023年度から2025年度までの3か年を対象期間とした中期経営計画「Drive 2.0」を策定し、以下の取り組みを推進しています。

(1) 長期ビジョン「VISION 2030」

長期ビジョン「VISION 2030」では、積水化学グループがイノベーションを起こし続けることにより、「サステナブルな社会の実現に向けてLIFEの基盤を支え『未来につづく安心』を創造していく」という強い意志を込めたビジョンステートメント「Innovation for the Earth」を掲げています。レジデンシャル(住まい)、アドバンストライフライン(社会インフラ)、イノベーティブモビリティ(エレキ/移動体)、ライフサイエンス(健康・医療)の4つの事業領域を設定し、「ESG経営を中心においた革新と創造」を戦略の軸にして現有事業の拡大と新領域への挑戦に取り組み、2030年の業容倍増を狙います。

<長期ビジョンの全体像>

<ESG経営>

積水化学グループは、「サステナブルな社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立の実現を目指し、その鍵となる以下の3つのステップをステークホルダーとともに取り組んでいます。

①環境・CS品質・人材の「3つの際立ち」と「ガバナンス」の磨き上げ

②3つのアプローチ(量を増やす・質を高める・持続的に提供する)で社会課題解決を加速

③4つの事業領域で「未来につづく安心」の創出・拡大

このESG経営を加速するため、当社グループ主要施策について中長期目標を定めるとともに、今中期経営計画ではESG強化費550億円(設備投資+費用)を設定し、重大インシデントにつながるリスク軽減に向けた取り組みやDX(デジタル変革)・人材・環境など経営基盤の強化を進めています。

・ESG経営概念図

(2) 中期経営計画「Drive 2.0」

長期ビジョンの第2フェーズとなる中期経営計画「Drive 2.0」では、積水化学グループの業容倍増に向け、“持続的成長”と“仕込み充実”により、長期ビジョンの実現を目指すことを基本方針とし、①戦略的創造、②現有事業強化、③ESG経営基盤強化の3つの基本戦略に取り組み、企業価値の向上を推進します。

<中期経営計画「Drive 2.0」の全体像>

<中期経営計画の数値目標>

(注)
  • 「純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」を表しています。
  • 上記数値目標から新規M&A等は除きます。
  • 2023年度の計画については招集ご通知の53ページに記載のとおりです。

<基本戦略>

中期経営計画「Drive 2.0」の基本戦略は、ESG経営を実践し持続的に企業価値を向上させていくために、長期ビジョンの第2フェーズとして①戦略的創造、②現有事業強化、③ESG経営基盤強化の3つに取り組むこと、それらを牽引するドライバーとしてサステナビリティ貢献製品の創出と拡大を加速させることにあります。

  • ①戦略的創造(Strategic Innovation)
    新事業領域の創出を目指した仕込みの具体化
  • ②現有事業強化(Organic Growth)
    現有事業の着実な成長とポートフォリオの磨き上げ
  • ③ESG経営基盤強化(Strengthen Sustainability)
    持続的成長と仕込み充実に資するESGマネジメント強化

<投資・財務戦略>

中期経営計画「Drive 2.0」の3年間に獲得するキャッシュに加え、適切かつ機動的な資金調達を行うため、投資枠6,000億円を設定します。設備投資枠(戦略投資+通常投資)、M&A投資枠としてそれぞれ3,000億円を設定し、市場開拓に伴う増産投資や、M&Aによる技術やノウハウ、グローバルの販路獲得などに活用します。また、環境負荷低減、人的資本投資、デジタル変革など長期的に資本コストを抑制し、企業価値向上に寄与する取り組みを実行するために、ESG強化費550億円(設備投資+費用)を設定しています。

<株主還元>

中期経営計画「Drive 2.0」では、株主の皆様への「剰余金の配当等に関する基本方針」の内容を見直し、株主還元のコミットを強化・明確化しました。連結配当性向40%以上、総還元性向50%以上(D/Eレシオ(負債資本倍率)が0.5以下の場合)としつつ、DOE(自己資本配当率)3%以上を確保し、業績に応じ、かつ安定的な配当政策を実施いたします。

(3) 気候変動課題への取り組み

当社グループは、気候変動は大きな社会課題であると同時に、当社グループにとって大きなリスクであると認識し、その解決に積極的に取り組んできました。2018年、化学業界初となるSBT認証(注)を取得し、2030年にGHG(Greenhouse Gas:二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス)排出量削減率を2013年度比で26%とする目標を掲げ、2017年度~2019年度は老朽設備更新の促進などの「エネルギー消費革新」、2020年度~2022年度は購入電力の再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)転換や自家消費型太陽光発電設備の導入などの「エネルギー調達革新」を進めてきました。

(注)SBT(Science Based Targets)認証:企業が定めた温室効果ガス削減目標が、長期的な気候変動対策への貢献と科学的に整合していると、国連グローバル コンパクトをはじめとする共同イニシアチブにより認証されたもの。

2022年度もエネルギー調達革新を進めた結果、購入電力を100%再エネに切り替えた事業所は国内外31拠点、自家消費型太陽光発電設備の導入事業所は同15拠点となり、グループ全体における購入電力の再エネ比率は36%に達する見込み(2023年4月時点)です。これは当初計画の1.8倍に相当します。

そして、気候変動がさらに喫緊の社会課題となる中、燃料使用設備の電化や低炭素燃料への転換、さらに「生産プロセス革新」による燃料由来GHG排出量の削減という技術的難易度の高い取り組みを前倒しで行い、2030年のGHG排出量削減率を以下のとおり引き上げるという意思決定を2022年10月にしました。また、これらの目標値はSBT認証を再取得しています(2023年3月)。

・新たなGHG排出量削減目標

(注)
1.Scope1:
事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
(燃料の燃焼、工業プロセス)
2.Scope2:
他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
3.Scope3:
Scope1、Scope2以外の間接排出
(事業者の活動に関連する他社の排出)
(4) サステナビリティ貢献製品による持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

気候変動などの社会課題が深刻化し、持続可能な社会の実現に貢献することを企業に求める声が高まってきていることを背景に、グループビジョンの中で「世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献する」ことを掲げる企業として、積水化学グループはさまざまな製品や事業を通じて、持続可能な社会の実現のために2030年までに世界が成し遂げるべき「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた企業活動を推進しています。

中でも、自動車向け遮音・遮熱中間膜や太陽光発電システム搭載住宅、管路更生SPR工法といった、地球および社会環境における課題解決への貢献度が高い製品をサステナビリティ貢献製品と認定し、連結売上高に占めるサステナビリティ貢献製品比率を高めています。

TOPICS

「世界で最も持続可能性の高い100社」に6年連続選出

2023年1月、当社は、カナダのコーポレートナイツ社が選定する「2023年 世界で最も持続可能性の高い100社(2023 Global 100 Most Sustainable Corporations in theWorld Index(以下Global 100))」に選出されました。選出は6年連続8度目となります。日本企業は当社を含め4社が選出され、当社は84位にランクされました。

2023 Global 100では、世界の大企業約6,700社が対象となり、財務状況、環境、人事、安全などの項目が評価されました。当社は「サステナブルレベニュー」「サステナブル投資(設備投資や研究開発)」、「サステナビリティと報酬の連動」などの項目で高い評価を受けています。

「社外からの主な評価」(2022年度)

(5) ダイバーシティ経営の取り組み

積水化学グループは、長期ビジョンの実現に向け「全員が挑戦したくなる活力あふれる会社」を目指しています。上司自らが各組織の長期ビジョンを部下に伝える活動を、当社グループの全組織で継続して展開し、ビジョンの浸透を図っています。また全てのグループ会社でプロジェクトを構成し、ダイバーシティ、働き方改革、健康経営といった共通の課題の解決を目指しています。

①ダイバーシティ

当社は社会課題に対応するべく、多様な人材(女性、両立支援、シニア等)の活躍を推進しています。2022年度には取締役会直轄の諮問機関として、ダイバーシティ推進委員会を立ち上げ、各種審議を重ねています。核となる女性活躍推進については、2022年度は、管理職候補者に向けた育成プログラムや、若手・中堅層向けのキャリア研修などを実施しました。またシニア層の活躍機会を増やすべく、2023年3月までに当社およびグループ会社28社にて定年延長(60歳から65歳)を実施しました。2025年度中に全グループ会社で定年延長を実施する予定です。

②働き方改革

生産性向上や柔軟な働き方(リモートワーク、ペーパーレス等)の推進を通じ、グループ従業員の労働時間削減を図ってきました。各種制度やツールを活用し、時間や場所に捉われない働き方を実践しています。2022年度からは、労働の質の改善を図るべく、従業員一人ひとりが自律的に働くことで、生産性を向上させる取り組みを進めています。

③健康経営

健康管理(従業員のからだとこころの健康、組織の健康)を通じ、働きがい・やりがい・生産性の向上を図っています。2019年度に策定した「健康経営基本方針」に基づき、健康アプリの活用による「7つの健康習慣」応援プログラムに加え、全従業員対象・管理職対象・人事総務担当者対象のメンタルヘルス研修を実施しています。

TOPICS

「健康経営ホワイト500」に7年連続グループ会社32社で選定

「健康経営ホワイト500」に7年連続グループ会社32社で選定

2023年3月、当社グループは健康経営推進をグループ一体で取り組み、積水化学工業株式会社および国内関係会社32社が「健康経営優良法人2023大規模法人部門(ホワイト500)」に認定されました。認定は7年連続となります。

積水化学グループの現況に関する事項

事業の経過およびその成果、対処すべき課題

積水化学グループ2022年度の業績

積水化学グループの長期ビジョン「VISION 2030」に基づき策定した、中期経営計画「Drive 2022」の最終年度となる2022年度の事業環境として、自動車生産は半導体不足による減産の影響があったものの、前期を上回る水準で推移しました。スマートフォン出荷台数は第2四半期以降の中国を中心とした在庫調整の影響により、前期を大幅に下回って推移しました。国内の住宅着工数は前期を下回って推移しました。

そのような環境のもと、高付加価値品の販売拡大に加えて売値改善が進捗、為替の効果もあり、売上高は過去最高となりました。

また、原燃料・部材価格の高騰の影響を大きく受けましたが、売値の改善、高付加価値品の販売拡大、コストダウンなどにより挽回し、営業利益は増益となりました。経常利益は為替の効果もあり増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に減損損失の計上があった影響で大幅な増益となりました。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、過去最高益を更新しました。

その結果、売上高は前年度比7.3%増の1兆2,425億円、営業利益は3.1%増の916億円、経常利益は7.5%増の1,042億円、親会社株主に帰属する当期純利益は86.9%増の692億円となりました。

2023年度の計画概要

2023年度は、中期経営計画「Drive 2.0」の初年度として、持続的な成長に向けた施策とESG経営基盤の強化を推進していきます。

事業環境には不透明な要素があるものの、グローバルの自動車・スマートフォンなどの市況、住宅着工数は、下期に向けて徐々に回復していくと見込んでいます。環境変化を着実にとらえ、社会課題解決に資する高付加価値事業・製品販売の拡大を図るとともに、固定費削減・生産最適化・事業構造改革など収益体質強化策を推進し、全てのセグメントで増収・増益、全社の売上高の過去最高更新、営業利益および親会社株主に帰属する当期純利益の過去最高益を更新の見通しです。

これらの取り組みにより、売上高は前年度を694億円上回る1兆3,120億円、営業利益は前年度を83億円上回る1,000億円、経常利益は前年度を12億円下回る1,030億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度を7億円上回る700億円を目指します。

また、長期ビジョン達成のための仕込み、ペロブスカイト太陽電池やバイオリファイナリーの事業化、DX推進、研究開発強化などの取り組みや賃上げなども含めた人的資本投資などの成長投資も加速していきます。

株主の皆様におかれましては、持続的な成長を目指す積水化学グループに、引き続き、厚いご支援を賜りますようお願いいたします。

事業区分別の概況

住宅カンパニー

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住宅カンパニー2022年度の業績

新築住宅、リフォーム、不動産、まちづくりの各事業が増収となり、売上高は前年度比4.3%増の5,373億円となり、カンパニーとして過去最高となりました。一方、営業利益は特に新築住宅事業において部材価格高騰の影響を受け、前年度比7.0%減の328億円となり、増収減益となりました。

施策面については、自然災害の深刻化などを背景にエネルギー不安が高まる中、新築住宅、リフォーム、まちづくりの各事業でスマート&レジリエンス訴求を図りました。

新築住宅事業では、新型コロナウイルス感染症や物価上昇による購買意欲低下の影響などにより、受注棟数は前期を下回りました。2022年10月に新分譲地ブランド「ユナイテッドハイムパーク」を立ち上げました。また、自社サイトを活用したウェブマーケティングの強化に加え、分譲・建売住宅の拡販に注力しました。

リフォーム事業は、蓄電池などの拡販により受注が前期を上回りました。定期診断の拡充や提案力強化に努めました。

2023年度の計画概要

2023年度は、物価高騰影響の継続など厳しい事業環境が見込まれるなか、新築住宅やリフォーム、不動産など各事業の売上増大やコスト削減により、増収・増益を目指します。

新築住宅事業は、スマート&レジリエンス性能やデザインを改善した商品の投入など競争力の強化に取り組み、受注棟数増大や棟単価上昇による売上高の増大を図ります。また、施工の平準化など生産性改善や生産体制最適化などの収益性改善に取り組み、経営体質強化に注力します。

リフォーム事業は、営業人員増員や定期診断の拡充、スマート&レジリエンスに対応した商材の拡販により、収益の増大を図ります。また、セキスイハイムオーナー以外の一般リフォーム市場における需要の獲得に向けた取り組みに注力します。

不動産事業では、買取再販住宅「Beハイム」などの拡大に注力します。

TOPICS

『戸建スマート&レジリエンスまちづくり』
2022年度グッドデザイン賞を受賞

『戸建スマート&レジリエンスまちづくり』のまちなみイメージ

当社が取り組んでいる『戸建スマート&レジリエンスまちづくり』が、2022年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。

本まちづくりは、私たちの身近に迫る社会課題の解決への貢献拡大に向けて、「全国一斉まちづくりプロジェクト」として始動した取り組みです。高品質でスピーディな量産展開ができる工業化住宅の特長を生かし、全ての分譲地で環境や防災対応を共通化することに加え、地域特性に応じた「まちなみデザインガイドライン」によるきめ細やかな対応を組み合わせた“まちづくりの仕組み”が高く評価されました。

今回受賞した『戸建スマート&レジリエンスまちづくり』の展開をさらに加速するため、戸建分譲地の新ブランド「ユナイテッドハイムパーク」を立ち上げ、環境貢献・社会貢献を全国規模で拡大しています。

環境・ライフラインカンパニー

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環境・ライフラインカンパニー2022年度の業績

国内の非住宅建築市況が低調であったことに加え、第3四半期以降の住宅需要減少の影響を受けましたが、売値改善によるスプレッドの確保、国内外の半導体向け設備投資需要が堅調であったことなどにより、売上高は前年度比8.5%増の2,342億円、営業利益は前年度比39.2%増の211億円と過去最高益更新となり、増収増益となりました。

パイプ・システムズ分野では、国内の住宅向け、非住宅向けとも需要が想定を下回るも、国内外で半導体向け設備投資需要が増加しているプラント用管材、インドを中心とした海外での塩素化塩ビ(CPVC)樹脂の販売が堅調だったことを受け、売上高は前期を上回りました。

住・インフラ複合材分野では、住宅向け需要が想定を下回るも、耐火・不燃材料、大型高排水システムなどの重点拡大製品や欧米を中心とした海外でのまくらぎ向け合成木材の販売拡大により、売上高は前期を上回りました。

インフラ・リニューアル分野では、管路更生の海外での需要回復、国内外での売値改善、パネルタンクの需要の緩やかな回復などに支えられ、売上高は前期を上回りました。

(注)2021年度の業績以降、2022年10月実施の環境・ライフラインと高機能プラスチックスの一部事業の管轄変更を反映しています。管轄変更の詳細は招集ご通知P.62に記載しています。

2023年度の計画概要

2023年度は、国内非住宅、住宅市況の低迷が継続すると想定しますが、社会課題解決に資する重点拡大製品の拡販と海外事業の拡大に注力するとともに、原燃料価格高騰に対応した売値改善によりスプレッドを確保し、増収、過去最高益更新を目指します。

パイプ・システムズ分野では、引き続き人手不足やインフラ老朽化などの社会課題解決に資する重点拡大製品の拡販を図るとともに、好調が見込まれる半導体向けプラント設備投資需要、CPVC樹脂需要を確実に取り込み、売上拡大を図ります。

住・インフラ複合材分野では、不燃性ウレタン製品を中心に耐火材料事業の拡大、大型高排水システムや介護用製品のさらなる拡販を推進します。また合成木材については、海外での鉄道まくらぎ用途の採用を加速させるとともに、建設中である欧州生産工場の2023年下期からの稼働開始に向けた準備を着実に進めます。

インフラ・リニューアル分野では、管路更生の海外での受注拡大、タンクリニューアルの販売強化などにより売上拡大を図ります。

TOPICS

「陸屋根高排水システム」2022年度グッドデザイン賞を受賞

「陸屋根高排水システム」サイフォン式の高排水システムが陸屋根(平面屋根)の幅広い建物にも対応を拡大

2022年5月に発売した「陸屋根高排水システム」は、2022年度グッドデザイン賞を受賞しました。

「陸屋根高排水システム」は、高排水マスに内蔵した「サイフォン誘発部材」が連続的にサイフォン現象を発生させ、満管状態で排水することにより排水能力を向上させるものです。

昨今の異常気象による大規模建築の被害は深刻であり、建材や設備は早急に改善を求められている中、本製品は排水システムに求められる安全性と機能性の向上をサイズダウンしながら実現したこと、既存部品に対応する対応能力の高さ、サイズダウンを行うことで製造や運搬時のコストダウンや環境負荷の軽減にも成功し、総合的に改善に成功している点が高い評価となりました。

また、自社の売り上げ追求だけではなく、環境や建築全体を改善しようとしている当社の企業姿勢についても評価をいただきました。

高機能プラスチックスカンパニー

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高機能プラスチックスカンパニー2022年度の業績

新型コロナウイルス感染症に伴う中国でのロックダウンやウクライナ情勢などに起因する自動車減産や、第2四半期以降のスマートフォンの在庫調整などによるエレクトロニクス市況の低迷の影響を受けたものの、高機能品の拡販、売値の改善、為替の効果などにより、売上高は前年度比12.1%増の3,963億円となりました。営業利益は原燃料価格の著しい高騰やエレクトロニクス市況の減退の影響が大きく、売値の改善、高機能品の拡販、コストダウンにより挽回を図りましたが、前年度比2.7%減の400億円となり、増収減益となりました。

エレクトロニクス分野は、第2四半期以降、中国におけるスマートフォンの在庫調整などによる想定を超えた著しい市況低迷の影響を受けるとともに、これまで堅調だった非液晶分野も市況が低迷し、売上高は前期を下回りました。

モビリティ分野は、新型コロナウイルス感染症の影響や部材供給不足などにより中国を中心に自動車市況は停滞したものの、ヘッドアップディスプレイ用中間膜を中心とした高機能品の販売が伸長、為替の効果もあり、売上高は前期を上回りました。

インダストリアル分野は、包装材市況減退の影響を受けたものの、フォーム材や長尺クラフトテープなどの省力化製品や環境対応製品の拡販推進、順調な売値改善、為替の効果もあり、売上高は前期を上回りました。

(注)2021年度の業績以降、2022年10月実施の環境・ライフラインと高機能プラスチックスの一部事業の管轄変更を反映しています。管轄変更の詳細は招集ご通知P.62に記載しています。

2023年度の計画概要

2023年度は、原燃料価格高騰については一服感がある中、戦略分野においてさらなる成長施策へのシフトを推進するとともに売値の改善効果を継続させることで、増収・増益を目指します。

エレクトロニクス分野は、低迷を続けるスマートフォン市況の下期に向けた回復を見込むとともに、基板・半導体関連をはじめとする非液晶分野での拡販を加速させ、増収を図ります。

モビリティ分野は、市況回復が見込まれる中、売値の維持を図り、ヘッドアップディスプレイ用を中心とした高機能中間膜の拡販を推進し、増収を図ります。また放熱材料の北米生産拠点の稼働本格化に向け着実に準備を進めます。

インダストリアル分野は、市況が徐々に回復すると見込み、成長領域に定めているフォーム材、長尺クラフトテープなどの施工省力化製品や環境対応製品の拡販を推進するとともに、売値改善の継続により増収を図ります。

TOPICS

米国におけるポリオレフィンフォームの生産能力と放熱材料事業の拡大について

ポリオレフィンフォームの新建屋と生産ラインの増設

放熱材のグリス状の製品

2022年11月、米国において、ポリオレフィンフォームの新建屋と生産ラインを増設し、生産能力を増強することを決定しました。フォーム事業部ではポリオレフィンフォーム事業をグローバルに展開しており、北米および南米市場においてシェアNo.1を獲得しています。継続的な市場伸長が見込まれていることから、安定的な供給体制と生産量を現状の2割程度向上させることを目指します。

また、2023年1月EV(電気自動車)等環境対応車向け放熱材料の生産拠点を米国に新設することを決定しました。米国の各車両メーカーや電気自動車に搭載されるリチウムイオンバッテリー・電装品メーカーからの放熱ニーズが急速に拡大しています。当社はモビリティ分野を戦略分野とし、米国、欧州でのマーケティング活動を強化・加速し、放熱材料事業のさらなる拡大やモビリティ向け新製品の開発に力を入れていきます。

メディカル事業

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2022年度は、国内外の生活習慣病の外来検査需要が回復したこと、および米国でのインフルエンザ検査キット拡販、医療事業の新規原薬販売が堅調に推移したことにより、売上高は前年度比1.3%増の896億円、営業利益は前年度比11.9%増の125億円と過去最高益更新となりました。

2023年度は、国内外の検査需要の回復を見込み、売上高は前年度比5.9%増の950億円、営業利益は前年度比7.9%増の135億円と3期連続の最高益更新を目指します。検査事業では、米国において新型コロナウイルス感染症の検査薬で一般用医薬品(OTC)市場参入を図るとともに、中国において血液凝固分析装置・試薬の拡販により血液凝固領域の拡大を図ります。医療事業では、引き続き新規原薬の拡販や新規受注獲得に注力します。

R&D(研究開発)の取り組み事例

資生堂、住友化学との協業によるプラスチック製化粧品 容器の新たな循環モデル構築に向けた取り組みを開始

2022年7月、当社と株式会社資生堂(資生堂)、住友化学株式会社(住友化学)は、プラスチック製化粧品容器を回収し、分別することなく資源化、原料化を経て、容器として再生する一連の循環モデル構築に向けた取り組みを開始しました。

化粧品容器は、中身の保護、使いやすさ、デザイン性が重視されるため、多様なプラスチックから作られていますが、それらの分別は難しく、プラスチック資源として循環利用する際の課題となっています。そこで、3社は互いの強みを生かして、新たな仕組みを構築することにしました。

資生堂は、店頭を通じたプラスチック製化粧品容器の回収スキームの構築と、化粧品容器への再生に取り組みます。当社は、使用済みプラスチックなどの可燃性ごみを分別することなくガス化し、微生物の力でエタノールに変換する技術を用いて、プラスチックの原料であるエタノールへの資源化を行います。住友化学は、資源化したエタノールを原料にエチレンを製造する技術を用いて、従来の化石資源を原料とした製品と同等の品質を持つ再生ポリオレフィンを提供します。

3社が企業の垣根を超えて連携するとともに、関連する業界や企業にも参加を働きかけ、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。

フィルム型ペロブスカイト太陽電池の共同研究を東京都と開始

フィルム型ペロブスカイト太陽電池

2022年12月、当社は、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の共同研究を東京都と開始することが決まりました。2023年春から森ヶ崎水再生センターにフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置して、発電量のモニタリング、腐食耐久性の確認などを行います。

世界全体で気候変動が問題視され、持続可能な再生可能エネルギーの拡大が求められているなかで、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟という特長を持ち、さまざまな場所に設置が可能な次世代太陽電池であり、再生可能エネルギーの普及拡大を加速させ、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献することが期待されています。

2023年度からは、本件の設置をはじめ、各種用途への設置を通して技術実証と設置・施工方法の確立を進めていきます。並行して、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金を活用し、1m幅での製造プロセスの確立、耐久性や発電効率のさらなる向上に向けた開発を進め、2025年の事業化を目指します。

連結計算書類