株主のみなさまにお伝えしたいこと

平素よりご支援を賜りまして、心より御礼申し上げます。また、新型コロナウイルス感染症に罹患されている方々や、困難な状況におられるみなさまに心よりお見舞いを申し上げます。

2020年、このパンデミックにより、世界全体がこれまでに経験したことのない困難に直面する中、全社一丸となり日々取り組んでまいりました。生活者のライフスタイルや意識が大きく変化する中、迅速に生活者の実態を捉え、手指にやさしい消毒液をはじめとした商品開発や、新たなハンドケア習慣の定着を通じて医療従事者の方々の力になることを目指す“資生堂 Hand in Hand Project”、店頭とEコマースを融合させた新しい購入体験など、デジタル技術も活用しながら、本業を通じた取り組みを行っています。

想定外と言わない経営を目指し、8月には、新中期経営戦略WIN 2023として、スキンビューティー領域への注力、デジタル変革・構造改革を打ち出し、迅速に実行に移してきました。結果として、コロナ影響により売上が減少する中でも、コスト管理の徹底、機動的な生産調整による在庫の適正化等を通じて、営業利益は黒字を確保した一方、コロナ関連の特別損失計上もあり、当期純利益は赤字となりました。なお1株当たりの配当は、経営状況を反映し、誠に心苦しいのですが、減配となる年間40円とさせていただく予定です。

本年2月には、パーソナルケア事業のさらなる成長と発展を目的として、当事業の譲渡および合弁事業化を決定いたしました。グローバル企業との厳しい競争環境の中で、当事業の可能性を最大化するには、十分な投資を行い、市場への即応性を高め、競合に勝つための戦略と体制をさらに強化していくことが必要です。その一方で、当社の基本戦略においては同事業の優先順位を高めることができず、経営陣の間でも、どの選択肢が最適なのか議論を重ね、今回の決定に至りました。合弁事業化を通じて成長投資の強化を可能にする事業環境を整えることで、事業・ブランドおよび社員のさらなる成長・発展、ひいてはお客さまやお取引先さまへの貢献を実現していきます。一方、今回の構造転換により、資生堂は、“プレステージファースト”戦略のもと、強みであるスキンケアを中心とする化粧品事業のグローバル展開の強化に向け、その経営資源を集中させてまいります。[パーソナルケア事業の合弁事業化に関するCEOメッセージはhttps://bit.ly/3az2zEY(短縮URL)を参照ください。]

2021年は、WIN 2023の実現に向けた“変革と次への準備”の年です。デジタライゼーションを加速し、コア事業であるプレミアムスキンビューティー領域に注力していきます。そして、ジェンダーや国籍、従来の組織の枠にとらわれることなく、適材適所で全業務執行に責任を持つエグゼクティブオフィサー体制を導入するとともに、世界のすべての社員が参画し変革を進めるダイバーシティ&インクルージョンを中心に据えた経営を進化させます。

2022年には再び成長軌道へ回帰、2023年には、事業構造・ブランド体系の再構築を経てより強くなった資生堂として完全復活を遂げ、売上高1兆円程度、営業利益率15%を目指します。

そして、2030年には、スキンビューティー領域での世界No.1を実現します。同時に、生涯を通じて一人ひとりの健康美を実現する“PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY(パーソナルビューティーウェルネスカンパニー)”、そして“美の力を通じて、『人々が幸福を実感できる』サステナブルな社会の実現”を目指します。

引き続き、みなさまのご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

WIN 2023 and Beyond 概要

目標と目指す姿

当社は、プレミアムスキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を実行します。外部環境が急激に変化する中、2021年~2023年の3年間は、これまでの売上拡大による成長重視から、収益性とキャッシュフロー重視の戦略へと転換し、“スキンビューティーカンパニー”としての基盤を構築します。そして、2023年には完全復活し、売上高1兆円程度、営業利益率15%を実現します。同時に長期的な視点から、ブランド・イノベーション・サプライチェーン・DX・人材組織へは引き続き積極的に投資を強化します。そして、2030年には “パーソナルビューティーウェルネスカンパニー” として、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現する企業となることを目指し、スキンビューティー領域における世界No.1となり、売上高2兆円、営業利益率18%の達成を目指します。

主要な戦略

プレミアムスキンビューティー事業への注力

当社が強みを持つプレミアムスキンビューティー事業は、肌だけでなく身体の内側からアプローチして美を実現する“インナービューティー”を強化することによってさらに拡大し、当社グループ全体の売上高に占める同事業の構成を、2019年の60%から、2023年には、80%にまで高めることを目指します。

「SHISEIDO」は、革新的な技術“セカンドスキン”の応用や、高まる男性用化粧品へのニーズに対応する新製品の発売などによって、多様な美を実現するとともに、環境に配慮した活動に積極的に取り組むなどサステナビリティの対応も強化します。

将来の成長を支える新たな領域にも注力します。“樹木との共生”をテーマに掲げたプレステージ・スキンケアブランド「バウム」は、2021年9月には、中国で販売を開始する予定です。さらに、美容機器ビジネスの知見・技術を有するヤーマン株式会社と昨年設立した合弁会社より、ヤーマン社の高機能な美容機器技術と、当社の最先端の皮膚科学技術を組み合わせた革新的なブランド「エフェクティム」を2021年春より、日本、中国で発売します。

WIN 2023 財務戦略

財務目標

2023年までの3年間は、構造改革により筋肉質な財務状況を確立し、安定的なキャッシュを生み出すための基盤再構築の期間と位置づけています。その中で、コア事業であるプレミアムスキンビューティー領域の強化、構造改革等を通じて、営業利益・EBITDAを改善し、事業そのものの収益性を引き上げます。具体的な目標は右図のとおりです。

地域別では、中国を中心にアジアが成長をけん引し、全地域で収益性を向上させます。売上高は、2023年には、日本、中国、アジアパシフィック、トラベルリテールで8割を超える構造にしていく考えです。地域ごとに収益性を改善する具体的なアクションプランを策定し、既にスタートしています。今後も、ロードマップに沿って、確実に進めてまいります。

株主還元

株主への利益還元については、直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」 を目指しています。WIN 2023においては、不透明な経営環境においても、安定的な増配を目指します。その後、中長期的には事業自体の稼ぐ力を土台にしたEPS成長に合わせた配当を実施していきます。

グローバルでのDX化加速

事業を再構築し、デジタルを中心とした事業モデルへの転換に向けた基盤構築、組織体制強化にも取り組みます。他のグローバル企業でのDX(デジタルトランスフォーメーション)化に豊富な経験を持つプロフェッショナルをチーフデジタルオフィサーとして選任し、グローバル規模で、店頭とオンラインを融合した体験やデジタルマーケティングの加速、データを活用した顧客対応などを強化し、2023年には、グローバルでのEコマース売上比率を35%※まで引き上げます。

主な地域における今後の戦略

日本

高収益事業基盤の再構築に向けて、日本事業ではローカル・インバウンド別の事業管理を徹底したうえで、日本ブランド専門の研究開発部門を設立します。また、当社の強みを活かし、スキンケアを中心にブランド価値を抜本的に強化します。デジタル化も加速し、主要取引先との協働やEコマース拡大、専門店との取り組みにも注力するほか、店頭とオンラインが融合した体験による事業モデルを構築することで、長期愛用者の拡大につなげていきます。

中国、アジアパシフィック、トラベルリテール

グローバルでコロナ禍から最も早く成長性を回復している中国では、日本発ブランドの導入・育成を強化します。デジタル変革をさらに進め、Eコマース売上比率50%超を目指します。アジアパシフィックでは、スキンビューティーブランドを集中強化します。また、顧客管理システム(CRM)の構築・活用や越境Eコマースへの積極的な取り組みなどにより、日本、中国、トラベルリテール(空港・市中免税店等)を一つの市場と捉え、主に中国のお客さまを対象にしたクロスボーダーマーケティングを進化させ、成長を実現していきます。

2030年に向けたサステナビリティアクション

私たちは、美は人を勇気づけ、美の力が、より豊かで喜びや幸せを実感できる世界をつくると信じています。本業であるビューティービジネスをさらに成長させると同時に、“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現を目指し、この度当社は、2030年に向けたサステナビリティアクションを設定しました。

環境、社会、文化の領域における取り組み事例
環境
地域と環境との共生を目指す最新鋭の那須工場

国内外向け中高価格帯のスキンケア製品の製造工場として2019年12月に本稼働を開始した栃木県の那須工場は、メイド・イン・ジャパンを体現する「高品質」はもちろんのこと、地域社会や那須の豊かな自然との共存も重視しています。

排水処理は、通常よりも厳しい自主基準を設けて24時間・自動監視しているほか、栃木県の水力発電によるCO2フリー電力「とちぎふるさと電気」を100%使用しており、地域に貢献しながら地球環境にやさしい工場を実現しています。

社会
女性が輝く先進企業表彰「内閣総理大臣表彰」および
WCD「2020 Visionary Awards」日本企業で初の受賞

当社は内閣府による「女性が輝く先進企業表彰」で「内閣総理大臣表彰」を受賞しました。これは、役員や管理職への女性登用に関する方針や取り組みおよび実績に顕著な功績があった企業を表彰するもので、当社が推進してきた、仕事と育児の両立支援制度の拡充、女性管理職育成研修のほか、日本企業の役員に占める女性比率の向上を目指す「30% Club Japan」の会長に当社代表取締役 社長 兼 CEOの魚谷雅彦が就任し、業界の垣根を超えて、女性活躍を推進していることなどが評価されました。

また、グローバルでは各国企業の取締役会で活躍する女性役員のネットワーク「Women CorporateDirectors Foundation(WCD)」による2020 Visionary Awardsにおいて、当社のガバナンスにおける多様性が評価され、「Leadership and Governance of a Public Company部門」を受賞しました。

今後も、女性に限らず外国人や中途採用者など多様なバックグラウンドを持った社員の活躍を促進し、ダイバーシティ経営をさらに加速させていきます。

文化
資生堂ギャラリーがメセナアワード特別賞「文化庁長官賞」を受賞

公益社団法人 企業メセナ協議会が主催する「メセナアワード2020」において、資生堂ギャラリーの企画・運営実績が評価され、特別賞「文化庁長官賞」を受賞しました。創業者精神を受け継ぎながら時代の変化を捉え、アートによる社会的価値創造にチャレンジしてきた実績と、経営に文化を取り込み、社内の統一認識を高め、社会課題にも取り組んでいる運営方針が高く評価されました。今回は、165件の対象案件の中から、大賞1件、優秀賞5件、特別賞1件が選出されました。

資生堂のサステナビリティの詳細はこちら
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/

コーポレートガバナンス
エグゼクティブオフィサー

2021年1月から、マトリクス型の経営執行体制をさらに進化させ、一層の収益性向上および全社にわたる構造改革の迅速な実行に向け、新たに「エグゼクティブオフィサー」体制(現行の執行役員を含む)を導入しました。これは、グローバルマトリクス組織における各担当領域のトップをエグゼクティブオフィサーと称し、業務執行に対してグローバルに責任を持つという考え方によるものです。グループ本社機能の強化に向け、性別・国籍・所属組織などにとらわれることなく、適材適所の体制を構築します。そして、多様な価値観や発想を経営体制に反映させ、WIN 2023の⽬標達成と⻑期ビジョン「世界で勝てる⽇本発のグローバルビューティーカンパニー」の実現を目指します。

エグゼクティブオフィサー(2021年1月1日付)

コーポレートガバナンス
取締役・監査役

資生堂のコーポレートガバナンス

  • 「企業理念の達成を通じ、持続的な成長を実現するための基盤」と位置づけ
  • 取締役会による監督と監査役(会)の監査によるダブルチェック体制を選択(監査役会設置会社)

取締役・監査役に求めるスキルセット(取締役会メンバーのスキルマトリクス)

TOPICS
「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2019
経済産業大臣賞」受賞

当社は、一般社団法人日本取締役協会が主催する「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2019 経済産業大臣賞」を受賞しました。「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」は、コーポレートガバナンスを活用して中長期的に健全な成長を続けている企業を後押しするため、同協会が経済産業省などの後援のもと、2015年から実施しています。「経済産業大臣賞」は、ガバナンスの根幹である社長・CEOの選任・後継者計画について、独立した指名委員会を中心とした実効的な監督を行い、成果を上げていると認められる企業が選定されるものです。当社は、社長 兼 CEOの指名・後継者計画の透明性や客観性、その実効的な運用、現社長 兼 CEO就任後の株主総利回り(TSR)や財務パフォーマンスが評価されました。