株主のみなさまにお伝えしたいこと

平素よりご支援を賜りまして、心より御礼申し上げます。また、新たな変異株の感染拡大など不透明な環境が続く中、新型コロナウイルス感染症に罹患されている方々や、困難な状況におられるみなさまに心よりお見舞いを申し上げます。

「私たちができることはなにか。」 社員一丸となって実行

2021年も、このパンデミックが世界中の人々や私たちのビジネスに厳しい影響をもたらす中、全世界の社員が「Solidarity(連帯)」を合言葉に一丸となり、本業を通じたさまざまな活動を行いました。生活者ニーズ変化に迅速に対応した商品開発、デジタルを活用した新たなお客さま接点の拡大、医療従事者への敬意と感謝の意を伝えることを目的に実施した「資生堂 Hand in Hand Project」等、2020年から継続した取り組みをより一層強化しました。また、“セカンドスキン”の上市や、新インナービューティーブランド「INRYU(インリュー)」の誕生など、新たな技術・領域に果敢にチャレンジし、イノベーションを形にしてきました。

構造的転換を迅速に推進、利益回復を実現

中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」において、当社は、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指し、スキンビューティー領域をコア事業とする経営改革を実行し、2030年までにこの領域における世界 No.1の企業になることを掲げています。その中で2021年は「変革と次への準備」の年と定め、パーソナルケア事業のさらなる成長と発展を目指すための事業譲渡や、化粧品の3つのブランドとフレグランスブランド等の事業ポートフォリオの再構築を進めました。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるため、合弁会社を設立しました。さらに、市場回復に合わせた適切なマーケティング投資・コスト管理を徹底したことで、当社にとって大きな事業基盤である日本市場の回復が遅れる中でも、営業利益を確実に回復させました。1株当たり配当金も10円増配の年間50円とさせていただく予定です。

150周年、新たなはじまりへ

2022年は、「再び成長軌道へ」の年と位置づけ、当社の強みであるスキンケア領域のブランド革新とマーケティングの集中強化を行い、グローバルな成長を目指します。創業150周年を迎える今年、新たな未来を切り開くための一歩を踏み出す「希望」の年とするために、全世界約4.2万人の社員とともに経営ビジョンを考えるプロジェクトを発足しました。ボトムアップアプローチで、社員一人ひとりから事業の成長と発展のための提案・アイデアを収集し、それらを完全復活への起爆剤としていきます。社員と力を合わせて未来の資生堂を創ります。

また、創業150周年を記念して、これまで資生堂を支え、育ててくださった株主のみなさまへ感謝の意を表し、1株当たり50円の記念配当を実施させていただく予定です。

資生堂グループは、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」のもと、環境問題やダイバーシティの実現という社会課題解決に向けたイノベーションに積極的に取り組み、世界中の人々を美しく、笑顔に溢れ、希望に満ちた日々を創出してまいります。そして、生涯を通じて一人ひとりの健康美を実現する「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」を掲げ、美の力を通じて「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会を実現します。

次の100年、150年も輝き続ける資生堂を創るため、引き続き、みなさまのご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」概要

目標と目指すべき姿

当社は、スキンビューティー領域をコア事業とする事業構造へと転換しながら、抜本的な経営改革を実行し、2030年までにこの領域における世界No.1の企業になることを目指しています。2021年~2023年の3年間は、これまでの売上拡大による成長重視から、収益性とキャッシュフロー重視の経営へと転換し、ブランド・イノベーション・サプライチェーン・DX・人財への積極的な投資を継続・強化し、“スキンビューティーカンパニー”としての基盤を構築します。

主要な戦略

主な取り組み

事業構造の転換・トランスフォーメーションの確実な実行

2021年は、「変革と次への準備」の年と位置付け、事業・ブランドの譲渡などの困難な判断も先送りをすることなく実行しました。2月にパーソナルケア事業の譲渡・合弁事業化、4月に「Dolce&Gabbana」グローバルライセンス契約の解消、8月にプレステージメイクアップブランド「bareMinerals」、「BUXOM」、「Laura Mercier」の譲渡、そして本年2月にプロフェッショナル事業の譲渡を発表しました。構造改革は、各地域本社がそれぞれの責任とオーナーシップのもと、主導的な実行力とスピード感を持って実現してきました。これら事業構造転換を経て、2022年以降の再成長に向けた経営基盤を構築しました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進

DXは「WIN 2023 and Beyond」の重要な戦略の1つです。2021年にEコマース売上が前年比20%超の成長、売上全体に占める比率は34%まで拡大し、グローバルでの成長ドライバーになっているほか、全社を挙げた業務改革プロジェクトである“FOCUS”の導入も計画どおり進んでいます。

また、2021年7月にアクセンチュア株式会社との戦略パートナーシップのもとに設立した資生堂インタラクティブビューティー株式会社では、デジタルでのコミュニケーションに特化したビューティーコンサルタントであるオムニBCを本格始動し、お客さまとのエンゲージメントを強化しています。さらに、美容に関する最新テクノロジーを活用し、お客さま一人ひとりのニーズや期待に応えるパーソナライズされたビューティー体験・サービスをさまざまな機会で提供していきます。

  • ※最先端のテクノロジーを活用して会社のシステムをグローバルに統合し、データの標準化、業務プロセスの最適化を目指す全社的なプロジェクト

資生堂の150年間は、美の力を信じ、美の可能性を広げてきた歴史。
今後も、人も地球も美しく健やかであり続ける未来に貢献していきます。

資⽣堂の歴史は、商品やサービスだけでは語ることができません。
⽂化や⽣き⽅まで⾒つめ、常に新しい価値を創造し続けてきた軌跡。
変わりゆくニーズを的確にとらえ、時には時代を先取りし、日本のビューティー産業をけん引してきました。
それが資⽣堂の歴史です。
1872年、⽇本初の民間洋風調剤薬局として創業した資⽣堂の、150年にわたる歩みをご紹介します。
創業以来継承されてきた先進性で、世界中の人々を美しく、笑顔にあふれ、希望に満ちた日々を創出してまいります。

私たちは、美には人を勇気づけ、より豊かで喜びや幸せを実感できる世界をつくる力があると信じています。

この考えに基づき、2021年度からは、サステナビリティを経営戦略の中核に据え、事業戦略とサステナビリティ戦略を一体化させた活動を推進しています。これにより、本業であるビューティビジネスをさらに成長させると同時に、“人々が幸福を実感できる”サステナブルな世界の実現を目指します。

環境面では、全バリューチェーンを通じて、環境負荷の軽減とサステナブルな製品開発などの取り組みを推進しました。社会面では、社内外のダイバーシティ&インクルージョン推進を重要な経営課題のひとつとして位置づけ、多様な美の価値観の啓発やジェンダー平等のための教育支援などを積極的に実践しました。また、ブランド・地域事業を通じて、環境・社会に対する活動を実行・発信することで、美を通じたサステナブルな世界の実現に貢献しています。

環境

サステナビリティに対応した新たなサプライチェーン拠点を設立

資生堂は、2030年までにスキンビューティー領域における世界No.1の企業になることを目指し、プレステージスキンケア製品の生産と物流を担う拠点として、大阪茨木工場を2020年12月に、西日本物流センターを2021年3月に稼働しました。当拠点はサステナビリティに対応した生産供給体制を備えています。具体的には、工場と物流センターが隣接することで、製品の輸送時にかかるCO2排出量の削減が期待され、その効果は年間60t以上を見込んでいます。また、工場では省エネ設計を採用し建物内の断熱性能を上げることにより、通常の設計に比べCO2排出量を約30%削減しました。製造時に使用する水については、循環水を再利用することにより、年間65,000tの消費量の削減効果を生み出しています。

社会

女性活躍に対する取り組み

当社では、性別を問わずすべての社員が個々の力を発揮できる環境づくりのため、女性活躍支援やジェンダー平等の取り組みに注力しており、その経験を社会に還元するべく活動範囲を広げています。

2019年に発足した、日本企業の役員に占める女性比率の向上を目指す「30% Club Japan」(会長:当社代表取締役 社長 CEO 魚谷雅彦)のワーキンググループである「TOPIX社長会」では、企業のトップ同士による議論を過去2年間で5回開催し、加盟する31社横断でのプロジェクトも稼働させるなど、業界の垣根を超えたけん引役を担っています。

2021年には、資生堂ジャパン株式会社は、広島県と「女性活躍の推進に関する協定」を締結しました。広島県でも、女性の就業継続・再就職支援や管理職登用促進など、女性活躍推進施策を積極的に展開していることから、今後は、女性活躍推進に向けた取り組みや普及啓発・情報発信、職場環境づくりの促進など、さまざまな側面で両者が連携していくことを目指して締結に至りました。協定締結後には、「オンライン ビューティーアップセミナー」を初開催し、再就職を希望する女性を対象にメイクや身だしなみの基本をレクチャーしました。

文化的なアプローチで資生堂のサステナビリティを国内外に発信

美の力でよりよい世界を実現するため、資生堂が目指すサステナビリティを文化的な活動でも体現し、新しい美意識として発信してきました。

企業文化誌『花椿』では、世界に存在するあらゆる境界を乗り越えられる美のパワー、今を生きる私たちが未来のためにできる「自然との共生」について特集しました。これらは中国語版やWeb版を通じてグローバルに発信されています。資生堂ギャラリーでは、写真表現を軸に活動する女性アーティスト5組による展覧会を開催し、2021年3月8日の国際女性デーに合わせて多角的にダイバーシティを捉える機会を創出しました。

資生堂のサステナビリティの詳細はこちら
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/

資生堂のコーポレートガバナンス

  • 「企業理念の達成を通じ、持続的な成長を実現するための基盤」と位置づけ
  • 取締役会による監督と監査役(会)の監査によるダブルチェック体制を選択(監査役会設置会社)
  • 取締役・監査役の多様性を確保

取締役・監査役のバックグラウンドの多様性

資生堂は、ジェンダー・国籍・従来の組織の枠にとらわれることなく適材適所を実現するため、資生堂グループの全社経営の視点から必要となる重要な職責や役割に対して、領域ごとに責任を持つ「エグゼクティブオフィサー」体制を導入しました。

それぞれが持つ専門性や経験を活かし、多様な価値観や発想により「WIN 2023 and Beyond」の目標達成と長期ビジョン「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」の実現に向けて、グローバル経営体制もさらに進化させてまいります。

エグゼクティブオフィサー(2022年3月1日時点)