事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

(1) 当連結会計年度の事業の状況

事業の経過及びその成果

当連結会計年度における世界経済は、各国の新型コロナウイルス対策の進展や行動制限の緩和により、経済活動が徐々に持ち直し、国・地域によって差があるものの、回復基調となりました。他方、経済再開による供給制約、資源エネルギー価格の急騰や労働力不足などからインフレが高進しています。米国を中心に金融政策が引締めに転換し、ウクライナ侵攻の影響など、先行き不透明な状況が続いています。

自動車業界は、世界的な需要回復により生産販売活動が持ち直していましたが、半導体等の部品不足により、サプライチェーン・リスクが顕在化し、主要得意先において生産停止や生産調整が行われました。当社は足元の生産変動に対応しつつ、自動車業界の大変革期にあって、サプライヤーとして得意先の戦略や市場の変化を的確に捉え、生き残りをかけて次の4つの新経営戦略を掲げ、重点項目に取り組んでまいりました。

  • (1) 地球環境への対応
  • (2) EV関連事業の確立
  • (3) 人財の多様性向上
  • (4) 既存事業の変革

地球環境への対応として、当社は「2050年度にCO2排出量実質ゼロ」を宣言しました。当社のCO2排出量の大半は、製造過程の電力消費によるもので、再生可能エネルギーを使用した電力に移行してまいります。さらに、工場の省エネ投資、LED化等を進めております。

コロナ禍・ウクライナ危機を契機に、完成車メーカーは一斉に電気自動車(EV)化に舵を切りました。得意先のホンダ様も、2030年までにグローバルでEVを年間200万台以上生産し、2040年に販売車種を全てEV・FCVとすることを発表しました。当社はEV化を成長の機会と捉え、モーターコア、バッテリーハウジング、EV車体専用部品の開発・量産化を進めております。今後10年でこのEV関連事業の研究開発及び設備投資に700億円、事業規模として売上高1,000億円の目標を掲げました。

このような変革を推進するため、多様な人財への投資に注力してまいります。新規事業を推し進めるため、必要なスキル・経験を持つ人財の獲得と働きやすい組織・人事施策を進めていきます。

また、既存の車体部品等の事業変革を進め、DXによる品質と原価領域の変革を推進しております。

当連結会計年度の業績は、売上高は236,503百万円(前期比12.9%増)、営業利益は10,931百万円(前期比35.8%増)となりました。経常利益は12,532百万円(前期比44.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、8,878百万円(前期比35.9%増)となりました。

当期は、コロナ禍で展開の遅れていた新機種が、続々とグローバルに立ち上がりました。主な機種では、ホンダ様のグローバル機種のシビックが、日本、北米、アジア、中国で立ち上がりました。また、EVでは、ホンダ様の中国のe:Nシリーズ、トヨタ様のbZ4XとSUBARU様のソルテラなどが立ち上がりました。今後の量産売上拡大を期待しています。

地域のセグメント別業績は、次のとおりであります。

【日本及び北米】

半導体や部品調達難から得意先が減産となり、車体部品売上が減少しました。急激な生産変動に対し、固定費をカバーできず、減収減益となりました。特に、米国は労働市場の逼迫やインフレにより労務費や製造コストの高騰が収益を圧迫しました。子会社の抜本的な経営改革を進め、早期の業績改善を図り、北米のEV関連事業の拡大に備えてまいります。

【欧州及び南米】

半導体供給不足の影響が比較的少なく、新規受注の量産が寄与したことにより、大幅な増収増益となりました。欧州では、EV化の潮流を捉え、営業展開を強力に推進してまいります。

【中国】

半導体供給不足から減産となり、得意先の生産台数が減少しましたが、他社向けの受注拡大が寄与し、材料単価の改定が行われたこともあり、増収となりました。利益面では、労務費等のコスト要因もあり、減益となりました。

【アジア】

ロックダウンが緩和され、生産活動が回復し、大幅な増収増益(前期は営業損失)となりました。

◆ 報告セグメント別売上高及び営業利益又は損失(△)(億円)

(注) 上記数値は億円未満を四捨五入して表示しています。構成比及び増減率は百万円単位まで計算しています。

◆ 製品別売上高(億円)

(注) 上記数値は億円未満を四捨五入して表示しています。構成比及び増減率は百万円単位まで計算しています。

(2) 対処すべき課題

自動車業界の大変革や気候変動問題等、外部環境はこの数年で大きく変化しています。当社は今後に向けた新たな道筋を示すべく、2021年5月に新経営戦略を掲げました。EV領域の取り組みの加速と気候変動問題に積極的に取り組み、さらなる成長を図るため、以下の活動を加速させてまいります。

① 地球環境への対応

脱炭素社会の実現に貢献するため、温室効果ガスの削減に取り組んでまいります。

当社の事業活動における主たる温室効果ガスの排出(Scope1+2)は、化石燃料由来の電力利用に伴うCO₂の排出です。

CO₂排出量削減については、Scope1+2で2030年度に50%削減(2013年比)、2040年度に100%削減を掲げ、再生可能エネルギー由来の電力への利用切り替えや、より省電力な設備への更新に取り組んでいます。Scope3では、2050年度のCO₂排出量実質ゼロを目指すため、物流におけるCO₂排出削減施策に取り組んでいます。

また、気候変動に伴う事業活動に与えるリスクと機会を抽出するなど、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みに沿った情報開示を進めております。

② EV関連事業の確立

世界的なEV化の潮流を当社の事業拡大の機会と捉え、EVに用いられるバッテリーハウジングとモーターコアを主軸としたEV関連事業の確立に取り組んでまいります。

バッテリーハウジングについては、当社がこれまで培ってきた車体一台解析技術を駆使して、車体とバッテリーハウジングの一括開発による、無駄のない最適プラットフォームの提案に向けた取り組みを進めています。

モーターコアについては、試作金型を用いた量産技術の開発に着手するとともに、モーターコア技術開発及び得意先に対する品質・量産性の実証のためのラインを社内に構築する計画を推進しています。

③ 人財の多様性向上

変化の激しい事業環境に対応するために、多様な知識と経験を持つ人財の育成・確保に取り組んでまいります。

従業員の一人一人の多様性向上の観点で社内人財の育成・登用に取り組むとともに、専門人財の確保が急務である新規事業領域等では、有能な社外人財の活用も強化しています。また、推進中である女性活躍促進の領域では、女性リーダーの創出に加え、国内工場の現場での女性採用を本格化するために、誰もが働きやすい工場づくりにも取り組んでいます。

これらの活動を支えるため、人事制度の見直し・拡充によって、より魅力的な職場を作り、従業員が安心して働き続けることができる体制を構築してまいります。

④ 既存事業の変革

社長直轄のDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトの下、主に品質保証領域と原価領域において、デジタル技術を活用した業務のあり方を含めた組織の変革に取り組んでまいります。

品質保証領域については、2021年に東京にジーテクト品質保証センター(GQC)を設立し、グローバルでグループの品質情報を可視化し、モニタリングすることで、予知予防機能を強化した体制を構築します。また、新たな事業領域にふさわしい品質保証体制の確立に早急に取り組んでまいります。

原価領域については、原価企画の精度を高め、開発段階から収益性の高い製品設計を可能とするために、これまで以上に詳細かつリアルタイムに製造原価を把握することに取り組んでいます。

連結計算書類