事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)

当社グループ(企業集団)の現況に関する事項

事業の経過および成果

2020年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響の長期化を背景に、世界的に消費や投資が落ち込みました。各国の経済対策や株価の回復はあるものの、政治・金融情勢、貿易停滞のリスクなどの不確実性が高く、日本もこうした影響を少なからず受け、景気の先行きが見通しにくい状況が続きました。

このような経営環境のもと、当社は、事業の状況に応じて固定費削減等の対応策を実施しながら、新型コロナウイルス感染症がもたらす社会の変化を捉え、その課題解決に向けた取り組みを推進しました。また、2019年度からスタートした中期戦略をベースに、「基幹事業」「共創事業」「再挑戦事業」のポートフォリオマネジメントと経営体質強化を継続してきました。

具体的には、成長に向けた投資として、現場プロセス事業において、2020年7月に米国のサプライチェーン(注)1・ソフトウェアの専門企業であるBlue Yonder Holding, Inc.に対し、議決権比率20%の戦略的株式投資を実施しました(注)2。同社がグローバルに提供する先進的なソリューションとビジネスモデル(注)3を習得することで、当社のソリューション能力強化を図り、ビジネスモデル変革を加速させてまいります。

他社との連携・共創による競争力強化に向けては、車載用角形電池事業において、トヨタ自動車(株)との合弁会社であるプライム プラネット エナジー&ソリューションズ(株)が2020年4月1日より事業を開始しました。優れた品質・性能とコスト等を実現する高い競争力のある電池の開発、また安定的な電池の供給に取り組んでいます。

加えて、収益性の改善に向けては、半導体事業について、台湾の半導体メーカーNuvoton Technology Corporationへの事業譲渡を2020年9月に完了しました。また、ソーラー事業について、開発・生産体制の最適化を目的として、2020年6月にバッファロー工場(米ニューヨーク州)における太陽電池のセル、モジュールの生産を停止し、9月に撤退を完了しました。さらに2021年2月に、住宅用、公共・産業用太陽電池の自社生産から2021年度中に撤退することを公表しました(注)4

なお、2020年11月には、より中長期的な視点での当社事業の競争力強化のため、2022年4月(予定)に持株会社制へ移行することを決定しました。各事業会社は、外部環境の変化に応じた迅速な意思決定や事業特性に応じた柔軟な制度設計などを通じて、競争力の大幅な強化に取り組む一方、持株会社は、各事業会社の競争力強化を積極的に支援するほか、グループ全社視点での成長戦略を推進し、グループとしての企業価値向上に努めてまいります。

当年度の連結売上高は、6兆6,988億円(前年度比11%減)となりました。国内売上は、空気清浄機などの増収はあったものの、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、住宅関連事業の非連結化影響もあり、減収となりました。海外売上は、プロセスオートメーションの実装機や、情報通信インフラ向けの蓄電システム、産業モータなどが増収となったものの、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、減収となりました。

営業利益は、2,586億円(前年度比12%減)となりました。経営体質強化に向けた固定費削減や、空調空質・車載電池・情報通信インフラ向けなどの中長期的な社会変化を捉えた事業の増益がありましたが、減販損に加え、前年の事業譲渡益の反動もあり、減益となりました。また、税引前利益は、2,608億円(前年度比10%減)、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、1,651億円(前年度比27%減)となりました。

(注)

    サプライチェーン:製品や商品などが消費者に届くまでの調達、製造、在庫管理、配送、販売などの一連の流れ

    2021年4月23日の取締役会において、Blue Yonder Holding, Inc.の80%分の株式追加取得を行い、同社を完全子会社化することを決定しました。

    ビジネスモデル:売上や利益を生み出す仕組み

    今後も、国内では、太陽電池の生産委託などによるパナソニックブランドでの販売を継続し、海外では、北米などで実施している太陽電池の外部調達による販売を継続します。

セグメント別の状況

当社グループは、経営管理上、7つのカンパニーがそれぞれの担当領域において事業部の自主責任経営を支えグローバルに事業推進を行っており、その成果を「アプライアンス」「ライフソリューションズ」「コネクティッドソリューションズ」「オートモーティブ」「インダストリアルソリューションズ」の5つの報告セグメントに区分して評価、開示しております。

セグメント別の事業部および主要な事業内容、当年度の売上高および営業利益をセグメント別に示しております。事業再編に伴い、売上高および営業利益の前年度比較は、前年度のセグメント情報を当年度の形態に合わせて組み替えして算出しております。

報告セグメント別の事業部および
主要な事業内容

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売上高構成比 %

当セグメントの売上高は、前年度比で4%減少し、2兆4,944億円となりました。

当年度は、国内や中国でルームエアコン・冷蔵庫・洗濯機などが堅調に推移し、その他の地域も回復傾向にありましたが、上期における市況悪化の影響に加え、テレビやデジタルカメラの販売絞込みなども影響し、全体では減収となりました。

主な事業部の状況では、空調冷熱ソリューションズ事業部では、中国・北東アジアでのルームエアコンや欧州のヒートポンプ式温水暖房機は堅調に推移したものの、アジアやインドのルームエアコン等が苦戦し、減収となりました。

キッチン空間事業部では、国内や中国・北東アジアで冷蔵庫や調理家電が堅調に推移し、増収となりました。

ランドリー・クリーナー事業部では、国内や中国・北東アジアでドラム式洗濯機の販売が堅調に推移し、増収となりました。

スマートライフネットワーク事業部では、欧州を中心としたテレビやデジタルカメラの販売絞込みにより、減収となりました。

当セグメントの営業利益は、1,043億円となりました。家電事業を中心に堅調に推移した国内に加え、海外での収益改善や固定費・拡売費削減などの効果により、前年度から486億円の増益となりました。

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売上高構成比 %

当セグメントの売上高は、前年度比で21%減少し、1兆5,073億円となりました。

当年度は、IAQ(室内空気質)事業は好調だったものの、住宅関連事業の非連結化影響に加え、国内の非住宅市場における配線器具や照明機器が減収となり、海外でもインド・マレーシアなどのロックダウンの影響により、減収となりました。

主な事業部の状況では、ライティング事業部では、需要低迷に加え、欧州事業の売却影響もあり、減収となりました。

エナジーシステム事業部では、電材事業において、海外はインドを中心に販売が回復したものの、国内は非住宅やリニューアル件名の遅延などの影響で配線器具などが減販、太陽電池事業における国内外の減販や北米拠点の撤退などもあり、減収となりました。

パナソニック エコシステムズ(株)では、IAQ事業で、空間除菌脱臭機「ジアイーノ」が大きく販売を伸ばし、また、国内・中国での空気清浄機も好調だったことから、増収となりました。

ハウジングシステム事業部では、新型コロナウイルス感染症拡大による市況の悪化や採用機会の損失などにより、減収となりました。

当セグメントの営業利益は、692億円となりました。IAQ事業の増販益や固定費削減の効果はありましたが、全体的な需要低迷による減販損や構造改革費用の計上に加え、前年度に住宅関連事業の譲渡益を計上した反動もあり、前年度から1,109億円の減益となりました。

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売上高構成比 %

当セグメントの売上高は、前年度比で21%減少し、8,182億円となりました。

当年度は、プロセスオートメーション事業の販売が好調だったものの、他事業への新型コロナウイルス感染症拡大による市況低迷の影響をカバーできず、全体では減収となりました。

主な事業部の状況では、パナソニック アビオニクス(株)では、航空機の大幅減産や運航便数の激減により、機内エンターテインメント・通信システムやメンテナンス・リペアサービスの販売が大幅に減少し、減収となりました。

プロセスオートメーション事業部では、溶接機は需要低迷により減収となりましたが、実装機は5G機器やICT(情報通信技術)端末向けなどの販売が好調に推移したことにより、全体では増収となりました。

メディアエンターテインメント事業部では、リモートカメラが需要拡大により好調でしたが、世界的なイベント中止の影響を受け、プロジェクター等の販売が減少したことにより、全体では減収となりました。

モバイルソリューションズ事業部では、前年度のWindows7(注)サポート終了特需の反動減や企業の投資抑制などの影響により、減収となりました。

パナソニック システムソリューションズ ジャパン(株)では、東京2020の延期や、大手法人の投資延期等が影響し、減収となりました。

当セグメントの営業利益は、200億円の損失となりました。アビオニクス事業などの減販影響に加え、前年度にセキュリティシステム事業の譲渡益を計上した反動や減損損失の計上などもあり、前年度から1,120億円の減益となりました。

(注) Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標です。

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売上高構成比 %

当セグメントの売上高は、前年度比で10%減少し、1兆3,394億円となりました。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響による上期の自動車生産台数の減少が大きく、急速に需要は回復したものの、車載機器事業、車載電池事業とも、年間では減収となりました。

車載機器事業では、注力領域であるコックピットシステムの売上は伸長し、商品ポートフォリオの入れ替えは着実に進んでいます。

車載電池事業では、円筒形リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上した高容量新製品を導入し、さらなる技術革新を進め、顧客要望に応えています。本技術導入により、北米電池工場では目標としていた35GWh相当の生産能力に到達しました。

当セグメントの営業利益は、109億円となりました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、減販損がありました。

一方、車載機器事業では、経営体質強化施策を加速し、固定費を大きく削減したことに加えて、前年度に計上したのれん減損の反動もあり、前年度から大幅な増益となりました。

車載電池事業でも、円筒形リチウムイオン電池の材料合理化や高容量新製品の導入効果などに加え、角形リチウムイオン電池の合弁会社化に伴う利益計上などにより、増益となりました。なお、北米電池工場設立後、円筒形車載電池事業として、初めて年間で黒字を計上しました。

セグメント全体では、前年度から575億円の増益となりました。

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売上高構成比 %

当セグメントの売上高は、前年度比で2%減少し、1兆2,555億円となりました。

当年度は、上期の新型コロナウイルス感染症拡大による影響を下期の市況回復で補いつつも、半導体事業譲渡等の影響により、減収となりました。

主な事業の状況では、システム事業は、半導体製造装置市場の好況や中国での生産設備の需要回復を受けて産業用モーターが拡大しました。また、情報化のさらなる進展に伴う通信量の増大を受けてデータセンター向け蓄電システムが堅調に推移するとともに、下期にはリレーやスイッチ等の車載部品も回復したことにより、増収となりました。

デバイス事業では、環境対応車向けコンデンサーが早期に回復し、データセンター向けコンデンサーの販売も好調に推移しました。一方、米中貿易摩擦の影響を受けて基地局向け基板材料が苦戦したほか、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による産業活動の停滞を受けマイクロ電池が低調に推移するなど、全体では減収となりました。

その他、半導体や液晶パネル事業は、事業譲渡や事業縮小などの影響により、減収となりました。

当セグメントの営業利益は、662億円となりました。産業用モーターやデータセンター向けを中心とするコンデンサー・蓄電システムなどの増販益、固定費削減や材料合理化への取り組みに加え、前年度に計上した構造改革費用の反動などもあり、前年度から616億円の増益となりました。

対処すべき課題

当社は、創業者 松下幸之助の定めた綱領で謳っているとおり、長きに亘り、「社会生活の改善と向上」と「世界文化の進展」に寄与することを社会に対してお約束してまいりました。今後も、この理念を不変の存在意義として継承し、優れた商品やサービスを、より早く、より多くのお客様にお届けすることを通じて、理想的なくらしや社会の実現、地球環境保護といったグローバルでの社会課題の解決に、大きな貢献を生み出すことを目指してまいります。

2021年度の経営環境は、各国の政治・金融情勢、貿易停滞のリスク、またワクチンの接種や普及次第ではあるものの、新型コロナウイルス感染症の状況などにおいて不確実性が依然として高く、世界経済の先行きも見通しにくい状況が続きます。日本でも、こうした国際経済の影響を少なからず受けるとみられます。

このような経営環境のもと、当社は、事業の状況に応じた固定費管理と、新型コロナウイルス感染症による社会変化を捉えた新たな事業機会への取り組みを進めながら、2019年度からスタートした中期戦略の最終年度として、事業ポートフォリオマネジメントと経営体質強化を継続していきます。あわせて、全ての事業において、攻めるべき領域を定め、そこでの競争力を徹底的に高めてまいります。

また、2021年10月には、2022年度からの持株会社制への移行に向けて、現行のカンパニー制を廃止し、新体制へ再編する予定です。新体制において、中期戦略を着実に推進するとともに、2022年4月1日からの新事業会社での円滑な事業運営に向けた準備を進めていきます。

持株会社制への移行により分社化される各事業会社は、自主責任経営を徹底し、外部環境変化に応じた迅速な意思決定や、事業特性に応じた柔軟な制度設計などを通じて、事業競争力の大幅な強化に取り組んでいきます。持株会社は、各事業会社の競争力強化を積極的に支援するほか、グループ全社視点での成長戦略を推進し、グループとしての企業価値向上に努めていきます。

なお、当社は、世界トップクラスのサプライチェーン・ソフトウェアの専門企業である米国Blue Yonder Holding, Inc.(Blue Yonder)の80%分の株式を追加取得し、同社を完全子会社化することについて、2021年4月23日の当社取締役会で決定し、Blue Yonderおよび同社の実質的な株主との間で最終合意に至りました。これにより、2020年7月取得済の20%分の株式と合わせて全株式を取得することになります。

注力事業の一つであるサプライチェーン分野の「現場プロセス事業」の領域においては、コロナ禍での極端な需要変動、物流の負担増、消費者ニーズの変化対応、働き手不足や省資源、脱炭素といった課題が山積しています。当社は、自身の100年にわたる製造業としての知見やノウハウを通じ、現場の人・モノ・機器の動きをデジタルデータとして可視化し、サイバー空間で分析。それらの情報を経営判断につなげ、グローバルでのリードタイム短縮や在庫削減、ボトルネック解消などにより、お客様の経営課題を解決するとともに、エネルギーの削減、資源の有効活用を通じて、地球環境の保全やサスティナブルな社会の実現を目指します。

お客様にとって、より付加価値の高いサービスを提供するために、ハードウェアの深化、ソリューションビジネスへのシフト、リカーリング(注)ビジネスの拡大、そしてソフトウェアによる変革が喫緊の課題となっています。本出資により、当社は、世界トップクラスのサプライチェーン・ソフトウェアの専門企業であるBlue Yonderから、AI(人工知能)、ML(機械学習)の最新技術や、サプライチェーンのパッケージソフトウェアビジネス、リカーリングビジネスのノウハウを獲得し、「現場プロセス事業」の進化をより一層加速させます。加えて、自社のサプライチェーンにおけるオペレーション力強化(コスト競争力の向上等)を図るとともに、アジャイル(俊敏)な企業文化を取り入れ、融合することにより、自社の変革を加速していきます。

(注) リカーリング:継続的に収益をあげる仕組み

<報告セグメントにおける取り組みの方向性>

アプライアンス

環境・省エネや健康・衛生意識の高まり、生活・価値観の変化により、空調や白物家電などの領域は引き続き成長が見込まれています。一方、テレビ・オーディオなどのAV領域は、技術進化の停滞やコモディティ化の進展により、成長性の悪化が見込まれています。

成長領域である空調事業では、強い「商品×地域」への注力や、ナノイーなどの当社技術・商材を活用した差別化で、優位性を築いていきます。テレビなどの事業環境が厳しいスマートライフネットワーク事業は、構造改革を継続し、収益改善を目指していきます。また、白物家電を中心とするホームアプライアンス事業では、お客様の行動・活動を起点とした商品・サービス開発や、日本・中国連携の深化による設計・商品の共通化、開発リソースの効率化を通じて新たなお客様価値を創出し、グローバルに展開していきます。

ライフソリューションズ

世界的に、生活習慣や働き方への考え方が変化し、健康・衛生意識、特に空質(注)への関心の高まりや、ワークプレイスの分散化が進展していきます。日本では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた新築着工減の影響は残るものの、海外では、インドや東南アジアを中心に需要の回復・拡大が期待されています。

日本では、主に非住宅分野において、複数の商材が連携したシステムでの販売・施工に加え、お客様の課題を解決するためのデータ解析やそれに基づくコンサルティング、納入後の保守・サービスまでをご提供し、お役立ちの幅を広げていくことに取り組んでいきます。海外では、インドやトルコ、ベトナムを中心にマーケティング・生産体制を強化し、電設資材の拡大を図るとともに、お客様ごとのご要望にお応えする件名事業の体制強化・新規事業の取り組みを進め、事業拡大を図っていきます。お客様視点でくらしをより良く、快適にする事業をグローバルで実現していきます。

(注) 空質:換気や調湿、除菌、気流など空間における空気の質

コネクティッドソリューションズ

労働力人口の減少や消費者嗜好の多様化、ニューノーマルへの対応などが進む中、製造・物流・流通における事業領域は継続的な市場拡大が見込まれています。特に、サプライチェーンにおける課題解決の需要は、世界的に増加しています。

現場プロセス事業では、製造・物流・流通を中心とした現場(つくる・運ぶ・売る)の業務プロセス革新によって、お客様の様々な経営課題解決に貢献していきます。物流・流通を中心としたサプライチェーン領域では、倉庫業務や輸配送効率化、在庫適正化などの高付加価値ソリューションをモデル化、展開し、お客様の販売拡大やコスト削減などでお役立ちを果たしていきます。また、戦略的資本参加によりパートナーシップを拡大したBlue Yonderとともに「オートノマス(自律的な)サプライチェーン™」の実現を加速していきます。ファインプロセス(製造)領域では、加工プロセスコントロールを軸に生産活動の価値を最大化し、開発から製造・販売・サービス一体でお客様に向き合い、全プロセスで継続的価値の提供に取り組むなど、ソリューション販売の拡大を進めていきます。

オートモーティブ

自動車業界は、新型コロナウイルス感染症の影響はあったものの、CASE(注)1の進展に対応する取り組みが活発化しています。移動空間の快適性や安全運転支援への要請は、さらに増しています。

車載機器事業では、強みを発揮できるコックピットシステム(注)2、HUD(注)3、ADAS(注)4を注力分野として、クルマの快適性・安全性の向上に貢献する取り組みを進めています。コックピットシステムは、高い操作性と最適な情報表示のノウハウや、急速に複雑化かつ大規模化するクルマの情報機器化を支えるソフトウェア開発力を強みに、競争優位性を確立していきます。小型化・低歪かつ明るく鮮明な表示を実現するHUDや、車載カメラなどの強いデバイスに加えて画像認識などの先端技術を連携させたADASの開発を強化し、操作性・視認性・安全性を高め、お客様価値の最大化に取り組みます。車載電池事業では、円筒形リチウムイオン電池がさらなる高容量化を実現、北米電池工場で新たな増産投資を進めています。新電池の開発や欧州事業展開の可能性を検討、また高コストなコバルトの使用量をゼロにした電池の商品化を2~3年以内に見込むなど、今後も成長を実現していきます。

(注)

    CASE:Connected(クルマが通信ネットワークに接続され、運転支援情報の受信やエンターテインメント等のサービスを享受)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(車を共有して使うサービス)、Electric(電動化)

    コックピットシステム:オーディオ/ビジュアルで安全(運転に必要な情報)・快適(エンターテインメント)なドライブをサポートする車載機器

    HUD:Head-Up Display(運転に必要な情報をドライバーの視線前方に表示し、視線移動を少なくすることでより安全運転に役立つディスプレイ機器)

    ADAS:先進運転支援システム(自動ブレーキ、自動駐車など、車両が危険を察知し、車両を自動制御することで交通事故を防止する安全運転支援システム)

インダストリアルソリューションズ

IoT社会の進展やモビリティの進化、労働人口の減少などを背景に、「情報通信インフラ」「車載CASE」「工場省人化」の領域では、安定性や安全性、自動化・ネットワーク化などへの要求が高まっており、継続的な進化を伴いながら、中長期的に需要が拡大することが見込まれています。

これらの高成長領域に経営資源を集中し、「強いデバイス」と「強いデバイスを核としたシステム」による価値提供を通じて、社会課題の解決に貢献していきます。具体的には、「情報通信インフラ」では5G基地局やデータセンター向けに低損失・長期保証可能なデバイスやシステム、「車載CASE」では電装化やxEV(注)向けに小型高効率・高信頼なデバイスやシステム、「工場省人化」では生産設備等向けにデバイスにソフトやサポートを組み合わせた導入容易なパッケージ商品を展開していきます。デバイスは源泉技術、システムはお客様との共創で商品力を強化し、中長期で業界を上回る成長を実現していきます。

(注) xEV:電動車(電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグイン・ハイブリッド(電気)自動車、
(水素)燃料電池自動車の総称)

<持続的成長を支える基盤>

コーポレート・ガバナンス

当社は、コーポレート・ガバナンスを中長期的な企業価値向上のための重要な基盤と位置付け、取締役会と監査役・監査役会体制のもと、実効性のあるコーポレート・ガバナンス体制の強化に継続して取り組んでいます。取締役会での持株会社制への移行に向けたグループのあり方に関する議論の展開、指名・報酬諮問委員会におけるトップ交代の決議に至る徹底した審議プロセスなどを通じて、監督機能、コーポレート戦略の意思決定機能としての実効性を高めています。また、指名・報酬諮問委員会や取締役会実効性評価の仕組みの活用などにより、経営の機動性や透明性を高める活動を進めています。

環境

当社グループは、より良いくらしと持続可能な地球環境の両立を目指した「パナソニック環境ビジョン2050」を策定し、創・蓄・省エネ、エネルギーマネジメントに関する商品、技術、ソリューション開発を通じて、使うエネルギーを削減するとともに、それを超えるクリーンなエネルギーの創出・活用に向けた取り組みを進めています。また、カーボンニュートラル実現に向けて、エネルギーとともに資源の有効活用も重要な課題と認識し、お客様のライフスタイルや価値観の変化に合わせた「サーキュラーエコノミー(注)1型事業」に挑戦しています。さらに、「TCFD(注)2」の提言を踏まえて、気候変動の影響を受けやすいと判断した事業を含めたリスクと機会を特定し、シナリオ分析と対応策の検討を行っています。

(注)

1. サーキュラーエコノミー:循環経済。資源消費に依存せず持続可能な成長を目指す経済戦略

2. TCFD:金融安定理事会により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース
(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

人材戦略

利益成長と収益性改善を目指す当社グループでは、一人ひとりがチャレンジでき、能力を十分に発揮できる組織風土づくりを進めています。変化が激しい事業環境に対して柔軟かつ強固な事業体制を実現するため、全社最適視点で事業構造改革を担う「執行役員」と、個別事業の強化・変革を担う「事業執行層」に分け、役割に応じたマネジメントで、事業変革に向けたモチベーション向上を図っています。さらに、当社の事業経営における中核として担当事業の収益性向上と将来の競争優位の実現を担う事業執行層に対しては、成果に対する信賞必罰と未来に向けた変革へのチャレンジを一層促進する人事処遇制度を2020年度より導入しています。

また、年齢・社歴・国籍にかかわらずグローバルに活躍できる人材づくりの仕組みとして、「グローバル人事プラットフォーム」を構築しています。人材マネジメント情報を可視化、可用化する「グローバルタレントデータベース」の活用などで、国・地域・会社を超えた配置・登用やキャリア・能力開発を実現し、人材マネジメントの高位平準化、組織能力向上を目指しています。

財産および損益の状況の推移

当社グループ

・2017年度は、車載・産業向け事業の成長などに加え、フィコサ社・ゼテス社の新規連結および為替の影響もあり、増収となりました。利益につきましては、原材料価格高騰や先行投資による固定費増加を増販益および合理化の取り組みなどによりカバーし、営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期純利益とも、増益となりました。

・2018年度は、国内はアプライアンスのコンシューマ向け販売が減収となりましたが、車載関連・パナソニック ホームズ(株)などの増販により、前年度と同水準、海外では車載関連、北米の食品流通等が好調で増収となりました。利益につきましては、資産売却益や年金制度の改定に伴う一時益などにより、営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期純利益とも、増益となりました。

・2019年度は、事業ポートフォリオ改革の影響や中国での投資需要低迷に加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減収となりました。利益につきましては、固定費削減や合理化に加え、事業譲渡益などがありましたが、減販損の影響が大きく、事業構造改革費用の計上もあり、営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期純利益とも、減益となりました。

・2020年度(当年度)の状況につきましては、前記「(1) 事業の経過および成果」に記載のとおりであります。

連結計算書類