事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

(1)主要な事業内容(2020年3月31日現在)

azbilグループは、人々の安心・快適・達成感と地球環境への貢献を目指す「人を中心としたオートメーション」を追求し、"計測と制御"の技術のもと、建物市場でビルディングオートメーション事業を、工場やプラント市場でアドバンスオートメーション事業を、ライフラインや健康等の生活に密着した市場において、ライフオートメーション事業を展開しています。

(2)事業の経過及びその成果

azbilグループを取り巻く事業環境は、国内の活発な都市再開発投資を背景に、大型建物向けの機器・システムの需要が引き続き堅調に推移いたしました。生産設備に対する設備投資につきましては、人手不足等を背景とした合理化・省力化等への需要は底堅いものの、市況は地域・市場により差異が見られ、全体としては需要の低迷が継続いたしました。第3四半期から一部の製造装置の市場では回復が見られ始めておりましたが、当連結会計年度終盤に発生した新型コロナウイルス感染拡大の影響により世界的な消費の落ち込み、経済活動・生産活動の停滞や設備投資の低迷等が深刻化し、今後の事業環境につきましては不透明感が大きく増しております。

当連結会計年度における当社グループ業績につきましては、中期経営計画(2017年度~2019年度)の仕上げの最終年度として、収益力強化施策がさらに進展し、売上高は若干の減少となりましたが、営業利益が前連結会計年度を超過する着実な実績を上げることができました。なお、新型コロナウイルス感染拡大により、第4四半期以降の景況感は悪化したものの、業績への影響は一部にとどまりました。

受注高につきましては、ビルディングオートメーション(BA)事業が前連結会計年度に複数年の大型サービス案件を計上した影響から減少し、また、アドバンスオートメーション(AA)事業が、工作機械も含めた製造装置市場全般で低調に推移したことから、2,580億7千9百万円(前連結会計年度は2,642億5千2百万円)と、前連結会計年度比2.3%の減少となりました。

売上高につきましては、BA事業では積み上がった受注案件の施工を着実に進めたことで増加いたしましたが、AA事業では市況低迷の影響により減少したことなどから、全体としては前連結会計年度比1.0%減少の2,594億1千1百万円(前連結会計年度は2,620億5千4百万円)となりました。

損益面につきましては、営業利益は、事業収益力強化策の効果等により利益率が改善し、前連結会計年度比2.1%増加の272億5千5百万円(前連結会計年度は266億9千万円)となりました。経常利益につきましては、円高を背景とした為替差損の計上等により、前年度同水準の277億1千2百万円(前連結会計年度は276億6千4百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、前連結会計年度においては確定給付企業年金制度の会計上の終了処理による損失※1を計上していた影響もあり、前連結会計年度比4.4%増加の197億9千3百万円(前連結会計年度は189億5千1百万円)となりました。

※1 確定給付企業年金制度の会計上の終了処理による損失:
当社及び一部の国内連結子会社の受給権者を対象とする確定給付企業年金制度(いわゆる閉鎖型年金)について、「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」(企業会計基準適用指針第1号)及び「退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第2号)に基づく退職給付制度の終了の会計処理を行い、その損失(3,210百万円)を退職給付制度終了損として特別損失に計上しております。
なお、確定給付企業年金制度自体は終了しておらず、受給権者への給付は継続しております。

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事業区分別の概況

BA ビルディングオートメーション事業

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あらゆる建物に求められる快適性や機能性、省エネルギーを独自の環境制御技術で実現。
快適で効率の良い執務・生産空間の創造と環境負荷低減に貢献します。

制御システム

建物全体の室内環境やセキュリティ、エネルギーの状態等を監視・管理するBAシステム

自動制御機器

建物を流れる冷温水や蒸気の流量を最適に調整するための高機能バルブやセンサ、調節器等を提供

サービス

遠隔監視によりビルの運転管理を代行する総合管理サービスを提供

※各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

BA事業を取り巻く環境は、国内市場では、首都圏における都市再開発案件に加え、省エネルギーや運用コスト低減に関するソリューション需要も高く、引き続き堅調に推移いたしました。海外市場においては、アジアで大型建物に対する国内外資本による投資が継続しておりましたが、米中貿易摩擦等の影響から投資を控える動きも見られました。

こうした事業環境を背景に、採算性にも配慮しつつ着実な受注の獲得に取り組むとともに、働き方改革への対応も踏まえ、施工現場を主体に業務の遂行能力の強化と効率化を進めてまいりました。また、IoT等の技術活用を志向する国内外の顧客ニーズに対応するための製品・サービスの開発・強化も進めてまいりました。この結果、BA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高につきましては、堅調な事業環境を背景に新築大型建物向けに機器・システムを販売・施工する分野が引き続き伸長しましたが、前連結会計年度に複数年の大型サービス案件を計上した影響等により、前連結会計年度比0.7%減少の1,229億5百万円(前連結会計年度は1,237億6千6百万円)となりました。売上高につきましては、新築大型建物向けの分野が増加し、前連結会計年度比3.6%増加の1,237億9千4百万円(前連結会計年度は1,195億円)となりました。セグメント利益は、増収及び採算性改善の取組み成果を主因として増加し、さらに前年上期に一時的な引当費用を計上した影響もあり前連結会計年度比19.9%増加の148億9千万円(前連結会計年度は124億2千1百万円)となりました。

BA事業の中長期的な事業環境としましては、2020年以降も大型の再開発案件や多数の大型建物の改修が計画されており、納入実績を基にこれらの需要を確実に獲得し、業務を着実に遂行することで増収を図るとともに、更なる高利益体質確保に向け、事業プロセス変革を含めた取組みを進めてまいります。

AA アドバンスオートメーション事業

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工場・プラント等において先進的な計測制御技術を発展させ、安全で人の能力を発揮できる生産現場の実現を支援。お客様との協働を通じ、新たな価値を創造します。

プロセスオートメーション分野

気体や液体の流量を調節する調節弁や流量・圧力を計測するプロセスセンサ、安全・安定した生産を実現する監視制御システム等を、化学、鉄網、電力・ガス等の様々なプラントに提供

ファクトリーオートメーション分野

各種製造装置を最適に制御する調節計やセンサ・スイッチ類を提供

※各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

AA事業を取り巻く市場の動向につきましては、国内外の製造装置市場で投資が低迷した状況が続きました。下期におきましては、半導体製造装置市場等で回復の兆しが見られましたが、第4四半期に入ると新型コロナウイルス感染拡大の影響が徐々に表れ始め、足元では市場全体において不透明感が高まっております。一方、中長期的には、人手不足対応、環境対応、更なる生産性向上等を目的とした自動化に対しては、需要の継続が見込まれております。こうした事業環境の変化に対応し、グローバルでの競争力獲得を目指して、3つの事業単位※2(CP事業、IAP事業、SS事業)によるマーケティングから販売・サービスに至る一貫体制でのオペレーションを徹底し、これら3つの事業単位を軸とした成長戦略と収益力強化を進めてまいりました。この結果、AA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高・売上高につきましては、プロセスオートメーション市場を主な対象とするIAP事業・SS事業が比較的順調に推移いたしましたが、国内外における製造装置市場の市況低迷により、CP事業が大きく減少し、受注高は前連結会計年度比6.5%減少の919億1千5百万円(前連結会計年度は983億3千1百万円)となり、売上高も前連結会計年度比6.3%減少の931億5千6百万円(前連結会計年度は993億8千9百万円)となりました。セグメント利益につきましては、減収の影響から前連結会計年度比14.1%減少の104億8千6百万円(前連結会計年度は122億1千1百万円)となりましたが、収益力強化施策の効果が継続し、収益性を示すセグメント利益率は引き続き10%超を確保いたしました。

AA事業では、引き続き3つの事業単位を軸に、これまでに実績を上げてきた収益力強化策を深化、徹底することで事業収益の維持に取り組んでまいります。併せて、将来の成長に向けて、海外事業の拡大をはじめとした成長戦略の展開を推し進めてまいります。また、製品開発力の強化に注力し、昨今の技術潮流の変化を捉えた新しいオートメーション領域を創出、アズビルならではの付加価値の高い製品・サービスを国内外のお客様に提供することで、高い収益力と成長力のある事業領域の開拓・拡大を進め、事業全体としての成長・収益力向上を目指してまいります。

※2 3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント):

CP事業:コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)

IAP事業:インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)

SS事業:ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリングサービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業)

LA ライフオートメーション事業

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建物、工場・プラントや生活インフラの領域で永年培った計測・制御の技術やサービスを、ガス・水道等のライフライン、住宅用全館空調、ライフサイエンス研究、製薬分野等に展開、「人々のいきいきとした暮らし」に貢献します。

ライフライン分野

一般向け都市・LPガスメータ、水道メータのほか、安全保安機器、レギュレータ等の産業向け製品を販売

ライフサイエンスエンジニアリング分野

製薬企業・研究所に凍結乾燥装置・減菌装置等の医薬品製造装置を提供

住宅用全館空調システム分野

戸建住宅向けに家全体を快適にする全館空調システムを提供

※各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

LA事業は、ガス・水道等のライフライン、製薬・研究所向けのライフサイエンスエンジニアリング(LSE)、そして住宅用全館空調システムの生活関連(ライフ)の3つの分野で事業を展開しており、事業環境はそれぞれ異なります。

売上の大半を占めるガス・水道等のライフライン分野は、法定によるメータの交換需要を主体としており、ガス販売の自由化による事業環境の変化は見られますが、引き続き安定した需要が見込まれております。LSE分野及び住宅用全館空調システムの生活関連分野におきましては、需要の増減がある中でも、事業構造改革による安定的な収益の実現と向上に継続して取り組み、成果を上げてまいりました。こうした事業環境や取組みを背景に、LA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高につきましては、LSE分野における受注増加を要因として前連結会計年度比2.1%増加の448億6百万円(前連結会計年度は438億6千7百万円)となりましたが、売上高は前連結会計年度に受注の水準が低かったLSE分野での減収を主因に、前連結会計年度比1.8%減少の440億3千3百万円(前連結会計年度は448億4千万円)となりました。セグメント利益は、減収の影響により、前連結会計年度比9.4%減少の18億6千6百万円(前連結会計年度は20億6千万円)となりました。

LA事業では今後も引き続き、各事業分野における収益力の向上に取り組んでまいります。またこれと並行して、ガス販売自由化等、エネルギー供給市場における需要の変化を捉えた新たな事業機会の創出に取り組み、IoT等の技術革新の動きを捉えた新製品・高付加価値サービスの開発・投入を推し進めることにより、今後の事業成長を実現してまいります。

対処すべき課題

1) 基本方針

azbilグループは、創業100周年の2006年に理念を「人を中心としたオートメーションで、人々の安心、快適、達成感を実現するとともに、地球環境に貢献する」と定め、2012年には社名をアズビル株式会社と変更し、グループを挙げて、理念の実践を通して、当社グループならではのユニークな企業集団として存続・発展することを目指してまいりました。

2012年より、次の「3つの基本方針」

  • ・技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ
  • ・地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」
  • ・体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す

を定め、事業構造・業務構造の変革を進め、営業利益が2012年度の134億円から2019年度の272億円へと事業収益力の強化を着実に実現し、自己資本当期純利益率(ROE)についても10.9%と伸長いたしました。

業績推移~事業の収益力が着実に向上

事業構造・業務構造の変革を進め、事業収益力が大きく向上。
中長期的な成長を支える事業基盤の整備も進み、
事業環境の変化に対応し、持続的な成長を可能とする企業体質強化が進展。

当社グループは、人を中心としたオートメーションの発想に基づく製品、サービスの強化を進め、BA(ビルディングオートメーション)、AA(アドバンスオートメーション)及びLA(ライフオートメーション)の3つの事業を、顧客・社会とのライフサイクル型事業として進化させることで、顧客提供価値及び事業の利益性を高めてまいりました。

また、成長エンジンとしてのグローバルな事業基盤の整備を推進し、営業・サービス面では、世界23カ国での事業展開を拡大し、先進的な成長のための地域戦略組織の第1弾を、2018年よりシンガポールにて立ち上げております。生産面においても、中国、タイ、日本の3つの拠点を整備し、商品生産の効率化とともにBCP(Business Continuity Plan-事業継続計画)等の対応整備も進めました。特に2019年度は、新たに湘南工場を整備しグローバル生産におけるマザー工場としてスタートいたしました。

技術開発においても、グループの開発拠点における整備・設備投資を進め、計量・計測の基本となるセンサ開発を含む設備投資をスタートし、新たなAI、IT、クラウドを活用した商品開発や販売が、BA、AA、LAの全ての事業で進捗するなど、次の成長のエンジンとして整備が進みました。

人材面では、事業環境の変化、少子高齢化やグローバル化の進展に対応した「学習する企業体」への取組みも進み、アズビル・アカデミーによる社内スキル整備・配置や、各種人事施策の整備と実践により、630人規模の戦力強化と再配置を実践しております。

将来に向けて、理念、経営戦略を社員の一人ひとりに展開し、当社グループが強みを持つ事業領域の開拓・拡大の取組みを進めるための新たな行動指針や基準を制定し、今後の持続可能な社会へ直結する事業、長期にわたる持続的事業成長の基盤としてまいります。

さらに、これまで当社グループでは、危機管理対応としてのBCPに関する整備に加え、強固な財務体質の確保を図り、持続的事業成長に向けた経営基盤を構築しており、資金調達力の強化・多様化も含めまして、今後の対応力は着実に強化されてきております。

なお、足元においては当面、新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な消費の落ち込み、経済活動・生産活動の停滞は、建物やプラント・工場における設備投資の減少や工事の遅延・停止を引き起こし、当社グループのBA、AA、LA各事業の活動に影響を与えることが見込まれます。当社グループでは、これまでの着実な成果を基に、この感染拡大の影響に対して、危機管理を徹底し、事業環境の変化に応じた迅速な施策展開を進めることで事業継続を確かなものとしてまいります。また、現状、お客様の重要設備の維持に不可欠なエンジニアリング、サービスの提供や社会インフラの安全維持に必要な事業の継続要請への対応に伴い、お客様・社員の安全に十分配慮しつつ、適切な対応を進めております。当社グループは、このような不透明な経済・事業環境においても、これまでに成果を上げてきた収益力強化施策をさらに推し進めるとともに、安定的な需要が見込めるサービス分野等の高付加価値化、事業の成長に向けて尽力してまいります。

2) 新型コロナウイルス感染拡大に対する取組み

azbilグループは、新型コロナウイルス感染症の発生後、当社で準備してきたBCP対応を発動し、速やかに対策本部を立ち上げ、代表取締役社長を本部長として、国内外当社グループ各社と連携し、社員の安全確保と感染拡大防止策の実施を最優先に、事業継続に向けた取組みを進めております。

具体的には、感染拡大防止に向け日本政府より4月に発令された緊急事態宣言を受け、国内グループ各社の事業所の活動形態を見直し、社員の在宅勤務等を推し進め、自治体の措置に応じて事業所の活動の休止又は縮小を進める一方、医療機関や社会インフラの維持等に必要とされる施設や設備に関するエンジニアリング、サービスや機器の提供等の事業活動につきましては、お客様・社員の安全に十分配慮しつつ継続しております。海外グループ各社におきましても、所在国における状況に合わせ、対策本部による状況把握、対策の展開等、同様の措置を取り、企業としての社会的責任を果たすことに取り組んでおります。

財務面の備えにおいても、当社グループの当連結会計年度末の自己資本比率は66.7%であり、747億円の現金及び現金同等物を保有しております。また、複数の金融機関との間で締結しているコミットメントライン契約額は未使用のまま総額100億円を維持しており、さらには、長期発行体格付けとして格付投資情報センターより「シングルA(安定的)」を獲得して、社債発行登録済枠200億円を設定するなど、将来の必要に応じた高い資金調達力を維持しております。

当社グループは、引き続き社員と地域社会の安全・安心への配慮を優先しつつ、建物や生産設備、エネルギー供給インフラといった社会の維持に不可欠なお客様への供給責任と社会的責任を果たすことに取り組んでまいります。

3) 持続可能な成長に向けての取組みの推進

azbilグループは、2012年に3つの基本方針を制定し、2021年度をゴールとする長期目標達成に向けて、事業面、グローバル展開、人材育成等の基盤づくりを進めてまいりました。その成果として、事業収益力は向上し、また、グローバル事業基盤、生産、人財、財務体質といった基盤も強化されました。これまでの成果を起点に、2020年度より新たな成長を目指します。併せて、2030年をターゲットに全世界的に取組みが本格化するSDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)への「直列」に繋がる貢献の取組みをスタートします。現時点で、新型コロナウイルス感染症が事業に及ぼす影響を見通すことは困難でありますが、今後、社会が大きく変化する中、オートメーションに求められる価値は高まると認識しております。事業継続に向けた対応施策を新たな経営体制の下で着実に実施し、お客様への供給責任と社員の安全・安心の確保を含めた企業としての社会的責任を全うするとともに、次世代の成長に向けた取組みを進めてまいります。

当社グループでは、これまで事業構造の変革、利益体質の改善を推し進め、持続的成長を実現するための基盤強化として、研究開発及び生産体制の整備・拡充等に取り組み、併せて、中長期で需要の継続・拡大が期待できる3つの事業領域、すなわち「ライフサイクル型事業の強化」、「新オートメーション領域の開拓」、「環境・エネルギー分野の拡大」を推進してまいりました。

従来からの少子高齢化等による社会構造の変化、気候変動における課題への対応は、今後さらに重要性が高まると認識しております。特に、省力化やIT技術を活用した遠隔からのエンジニアリング、サービスの提供についてはさらにニーズが高まると認識しており、IoT、AI、クラウドといった技術潮流の変化を捉え、これら喫緊の課題に着実に対応してまいります。前述の3つの事業領域は、当社グループがこれまで培ってきたお客様との信頼関係や経験・知見をベースに、強みを発揮できる領域であり、先進技術(IoT、ビッグデータ、AI、ロボット等)を活用した安全と生産性、価値向上に貢献する新たなソリューション提供を拡大するとともに、新たなセンサ・デバイス開発等フィールド機器強化にも取り組んでまいります。

当社グループの事業は、建物、生産設備、エネルギー供給インフラ等の維持に不可欠な製品の供給、エンジニアリング、サービスの提供を担っており、新型コロナウイルス感染症の影響下でも需要が継続的に発生いたします。こうした需要に企業グループとして確実にお応えし、お客様の事業継続に貢献することで自らの事業継続も確かなものとしつつ、学習する企業体として自らの変化対応力を強化し、オートメーションに新たな価値を加えたソリューションをお届けすることで、収益力強化と持続可能な社会への「直列」に繋がる貢献を目指してまいります。

また、当社グループは、コーポレート・ガバナンス強化にも継続して取り組むとともに、上述の収益力強化と持続可能な成長に向けた取組みのため、グループの経営資源を有効かつ戦略的に配分し、これらの取組みの加速・定着を図ってまいります。その具体的な内容は次ページのとおりです。

事業環境認識と今後を見据えたアズビルの展開方向性
1[国内事業]

3事業とも国内では成熟産業に位置しますが、置かれている環境は事業毎に大きく異なります。

BA事業は、引き続き高水準で推移する首都圏での需要を着実に捉えるため、建物のライフサイクルにわたる付加価値提供に向けた、ジョブ遂行プロセスの再整備やIT化等により、人的リソースの効率的・計画的な活用を進めると同時に、商品力強化を推進することによりビジネスモデルの再構築を進めます。具体的には、次世代ビルディングオートメーションシステム「savic-netTM G5」を軸に、センサ・アクチュエータの拡充、先進のビル向けクラウドサービスの拡張、ファシリティマネジメントサービスの変革等を継続して進めております。また、在室者の増減や日射、OA機器の表面温度を計測し、室内空間の温度変化の兆しを捉えるビル向け赤外線アレイセンサシステムや、執務者固有の体感を空調に反映する温冷感空調システム等により快適性や生産性向上に貢献しております。これらの取組みにより、お客様の事業展開に合わせて継続的な価値を提供・提案してまいります。

AA事業は、多岐にわたる市場から、技術の潮流変化を捉え、今後の成長と付加価値提供が見込める領域を選択・創出・集中することにより成長を図るとともに、グローバルな共通事業モデルに経営資源を集中することにより競争力を強化します。これら成長戦略と収益力強化策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションにより着実に実行してまいります。具体的には国内外での顧客カバレッジ拡大のための営業体制強化や、新しいオートメーションの創造に資する製品開発の加速等に取り組みます。過酷な環境での長期使用が可能な耐環境光電スイッチ (形 H2B)や、センサ2台分の機能を内蔵し1台で最大4エリアの検出が可能なアジャスタブル近接センサ (形 H3C)、多品種少量生産のバッチプロセス向け機能強化を図ったオンライン異常予兆検知システム「BiG EYESTM R200」等は、こうした製品の事例となります。

LA事業では、水道・各種ガスメータのIoT対応を引き続き進めております。LPガス市場においては、IoT向け通信規格LTE-M※1を活用した、検針・保安・各種アラーム状況のデータをクラウドシステムで提供する新サービス「ガスミエールTM」の拡販、都市ガスや水道についても同様の検針・アラームデータのスマート化実証実験の開始、さらには電気・ガス・水道のデータをかけ合わせて新たな価値を創造するサービスの検討等、SMaaS(Smart Metering as a Service)時代を見据えた新たなオートメーション領域への事業展開を加速しております。

以上のような3つの事業軸への取組みと同時に、国内外で大きく変化していくことが見込まれるエネルギーマネジメント領域における、製品面、事業インフラ面、サービス面といった多方面における東光高岳グループとの協業や、データを活用した新たなソリューション事業の展開に向けた検討、事業軸を越えた取組みも推進してまいります。さらに、IoT、AI等の最新技術の応用、商品のサービス化・クラウド化等、IT関連の事業環境変化に対応して商品企画・開発・運用を強力に推進するための新たな組織「ITソリューション推進部」を2020年4月に立ち上げ、併せてクラウド運用体制を強化することを目的に「クラウド運用センター」を新設いたしました。

※1 LTE-M:省電力で広いエリアをカバーする無線通信技術LPWA(Low Power Wide Area)のうち、免許の必要な周波数帯域(ライセンスバンド)を利用するIoT向けの通信規格。

2[海外事業]

海外市場におきましては、事業成長と収益拡大を支える更なる事業基盤強化策の一つとして、各国や地域の市場環境に対応し、付加価値の高い特長ある新製品・ソリューションの提案を継続的に強化し、グローバルでの事業拡大を目指します。東南アジア地域においては、シンガポールを拠点とする「東南アジア戦略企画推進室」により、同地域での横断的な事業推進・戦略企画・経営管理を加速させております。

海外における事業毎の展開につきましては、BA事業は、アジア市場でのシェア拡大に向け、次世代ビルディングオートメーションシステム「savic-net G5」を軸に、国内事業モデルでの強み(省エネアプリケーション、エンジニアリング・サービス力)を展開し、各国の事業環境・事業基盤に応じた施策を実施するとともに、ライフサイクル型ビジネスモデルの段階的な強化を図ります。

AA事業は、成長余力の高い海外市場において、戦略地域での営業体制強化や営業活動の質の改善を図るとともに、主要製品のリニューアルや戦略製品の投入、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断など新しいオートメーションの創造により、更なる事業拡大を進めてまいります。

LA事業は、ライフサイエンスエンジニアリング領域を担当する欧州のアズビルテルスター有限会社における事業構造改革を着実に実施してまいりました。今後の成長に向け、新たな事業戦略に取り組んでまいります。

以上に加えて、azbilグループの海外子会社における経営管理面におきましても、現地法人の評価体制を拡充するなど、引き続き各社の堅確な体制構築とグループ・ガバナンスの強化を進めてまいります。

3[生産・開発]

azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内では、神奈川県下にある生産機能を湘南工場に集約し、グローバルでの事業展開をリードする当社グループのマザー工場として稼働を開始いたしました。また、今後は海外では、タイ工場や中国大連工場での生産体制やソフト面での強化(例えば、高度な生産技術の開発・展開)を図り、部材の海外調達の拡大と併せて、製品のコスト競争力をより高めるとともに、グローバルでのお客様対応や物流の最適化を進めてまいります。研究開発においては、モノと情報の融合による産業構造変革や、先進技術(IoT、ビッグデータ、AI、ロボット等)に対応した次世代商品・サービスや、微細加工技術を活用したセンサ等のフィールド機器群の研究開発投資を継続して行い、新たなオートメーション領域へ展開いたします。

4[経営管理]

グループ経営の推進とガバナンス体制の充実を図るとともに、リスク管理(品質・PL、防災・BCP、情報)、コンプライアンス(企業倫理・法令遵守)、人を重視した経営、地球環境への貢献及び社会貢献を重点取組み領域として、azbilグループを挙げてCSR経営の推進に継続して取り組んでおります。

経営管理面では、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用も視野に入れた会計水準の向上とそれに伴う内部統制の強化を進めてまいります。また経営の公正性、中立性及び透明性を高めるべく、コーポレートガバナンス・コードへの対応を継続しながら、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するよう、全てのステークホルダーの皆様との間で建設的な対話を進めるための体制整備を積極的に進めております。当社グループは、これまでも社会の持続的発展に貢献する取組みを継続しており、2019年度も、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が選定した4つのESG(環境・社会・ガバナンス)指数※2の構成銘柄に選定されております。

当社は、創業者の想いを進化させ「人を中心としたオートメーション」というグループ理念を制定しております。2019年度はこの理念を実践するための企業行動指針を改定するとともに、SDGsに向けた当社グループのSDGs目標(基本目標とターゲット)を定めました。これに基づき、サプライチェーン(販売・研究・開発・生産・調達)における社会的責任の遂行や、健幸経営※3と永続的な学習による社会課題解決力の強化を推進いたします。また、SDGsを新たな道標とし、これを推進する組織として「サステイナビリティ推進本部」を新設し、グループ理念、行動指針、行動基準、経営戦略までを持続可能な社会に対して「直列」に繋げ、社会課題の解決と持続可能な成長の両立の実現を目指してまいります。

※2 ESG指数:FTSE Blossom Japan Index、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)、S&P/JPXカーボンエフィシェント指数

※3 健幸経営:健康で幸せ、活き活きとした“働きの場と人”を創るためのアズビル独自の取組み

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(ご参考) 当社のコーポレート・ガバナンスの取組みについて

当社は、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応えるため、法令・定款の遵守のみならず、企業倫理に基づく社会的責任の遂行と社会貢献責任を全うしつつ、効率的で透明性の高い経営によって企業価値の継続的な向上を果たすことが、当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方であり、経営上の最重要課題と位置付けております。

<企業統治の体制>

経営の基本方針の決定、法令で定められた事項及び重要事項の決定、業務執行状況の監督を行う取締役会と、業務執行を担う執行役員制度を設けて機能分離を行うことにより、迅速な業務執行体制を構築するとともに業務執行状況の監督機能をより強化しております。

取締役会は原則月1回開催し、業務執行を担う執行役員制度におきましては、役付執行役員と監査役会の代表で構成する経営会議を月2回開催し、迅速な意思決定と執行の徹底により事業推進力の強化を図っております。

2020年3月31日現在で取締役は11名が選任されており、当社事業及び経営に経験を積んだ業務執行に携わる取締役5名と、取締役専任として執行を兼務しない取締役会議長を務める取締役1名、加えて、独立性があり、幅広い経験や優れた専門性・知見を有し、国際性やジェンダー等の多様性に富む独立社外取締役を5名選任しており、取締役会における独立社外取締役の割合は3分の1を超えております。これらの独立社外取締役は、取締役会にて意思決定を行う際、適切な監督・助言を通じ当社の企業価値の向上に尽くしているほか、代表取締役社長とも定期的に意見交換を行っております。また、毎年、取締役及び監査役を対象に取締役会の実効性に関する自己評価・意見を収集したうえで、取締役会において現状の評価と課題の共有を行い、更なる実効性の向上を図っております。

さらに当社は、取締役会の諮問機関として、任意の「指名・報酬委員会」を設置しております。本委員会は、会社の永続的な発展と中長期的な収益性・生産性を高めることに資するため、役員の指名及び報酬の決定プロセスについて、より高い公正性・客観性・透明性を確保することを目的としております。本委員会では、取締役候補者、代表取締役候補者の選任及び社長/CEO候補者、取締役会議長候補者、役付執行役員候補者等の選任並びに役員報酬体系、報酬制度、役員報酬体系に基づく基本報酬額、個人業績評価、定性的な項目の進捗状況評価、個人の賞与支給額及び取締役報酬枠の改定等を審議するのみならず、社長/CEO、取締役、役付執行役員等の解任及び代表取締役、取締役会議長の解職並びに後継者の育成等に関する事項についても審議を行うこととしております。本委員会の委員長は、独立社外取締役の中から互選にて定め、委員の過半を独立社外取締役で構成する規定としており、現在、ユージン リー氏(独立社外取締役)が委員長を、田辺 克彦氏(独立社外取締役)、伊藤 武氏(独立社外取締役)、曽禰 寛純氏(代表取締役)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。

2019年度の活動としては指名・報酬委員会を5回開催し、2019年5月には、執行を兼務する取締役の2018年度の個人業績目標に対する結果の評価と個々の賞与支給額、及び執行を兼務する取締役の2019年度の基本報酬額の審議と後継者育成計画の進捗状況についての確認を行いました。また、後継者育成計画の進捗については、以降の指名・報酬委員会においても都度確認し、2020年2月の指名・報酬委員会においては後継者計画に基づいて2020年度の役員体制を審議、これを取締役会に報告し、取締役会において2020年度の役員体制が決定されました。さらに、社外役員の独立性の観点からその在任期間(任期)についての審議に加えて、職位に応じた責任をより明確にした執行役員に関する規程変更についても審議し、取締役会にてそれぞれ決定されました。その他、後継者育成計画拡充の一環として、海外事業戦略の一端を担い、卓越した能力の発揮と活躍を行う新たなグローバル人材への制度対応に関する確認を行い、取締役会において報告いたしました。

また、当社は、監査役会設置会社であり、2020年3月31日現在で当社の監査役は、常勤監査役2名と社外監査役3名で構成されております。このうち常勤監査役松安 知比古氏は、長年当社の経理業務に携わった経験があり、また、監査役藤本 欣哉氏は、公認会計士としての豊富な経験と高い見識を持っており、さらに監査役佐藤 文俊氏は他事業会社にて経理財務管掌役員として財務諸表等の作成の責任者等に従事した経験があり、財務及び会計に関する相当程度の知見を有するものであります。また、監査役の職務を補助する専任の組織として監査役室を設置し、3名の専任者により監査役の職務遂行を補助しております。

監査役会は原則月1回開催し、必要に応じて随時開催しております。当事業年度では合計14回開催いたしました。5名の監査役はいずれの監査役会にも出席し、監査役会では、期首の年間監査計画の審議、期中の月次・四半期の各監査役の活動報告、四半期毎の決算監査報告、期末の監査活動評価とまとめ、会計監査人の評価に関する審議等を行いました。また監査役会として社外取締役との情報交換会を年4回開催し、主に監査結果の報告と経営課題に関する情報交換を行いました。加えて監査役会の実効性評価を期末に実施し、監査役会として当事業年度の監査活動の振り返りを行うとともに、評価結果を翌事業年度の監査計画に反映させ、監査役会の実効性を高めております。常勤監査役は、取締役会及び経営会議等への出席、主要事業所・子会社への往査及び主要部門へのヒアリング、重要会議の議事録ほか重要書類の閲覧等の監査活動を行い、その内容を適時に社外監査役と共有いたしました。社外監査役は、取締役会に出席し独立役員の立場で意見を表明したほか、それぞれの知見と経験を活かし、常勤監査役による主要事業所・子会社への往査にも適宜参加いたしました。全ての監査役は、会計監査人、内部監査部門(グループ監査部)との定期的な会合に参加し、年度初めには監査計画、重点監査事項等について、期中・期末には相互の監査結果を共有するほか、グループ子会社監査役より子会社の監査結果を確認する等連携を密にし、監査の実効性と効率の向上を図っております。

なお、社外取締役及び社外監査役の選任にあたっては、当社は独自の独立性判断基準を定めております。当社の社外取締役及び社外監査役はこの独立性判断基準を満たしており、一般株主と利益相反の生ずるおそれがなく、いずれも充分な独立性を有していることから、東京証券取引所に対し、独立役員として届け出ております。

当社と社外取締役及び社外監査役は、会社法第427条第1項の規定に基づき、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する契約を締結しております。当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、法令が定める最低責任限度額としております。なお、当該責任限定が認められるのは、当該社外取締役又は社外監査役が責任の原因となった職務の遂行において善意であって、かつ重大な過失がないときに限られます。

また、グループ一体となったコンプライアンス体制の整備について、当社では信頼される企業グループを目指し、法令遵守を含む、役員及び社員の行動指針として、「azbilグループ行動基準」を制定し、反社会的勢力との一切の関係の遮断をはじめとする企業の公共性、社会的責任の遂行や公正な取引の遵守、人間尊重の社会行動、会社財産の管理・運用及び環境保護の遂行を通して企業倫理の確立による健全な事業活動に取り組んでおります。2019年度はこの理念を実践するための「企業行動指針」を改定するとともに、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)に向けた当社グループのSDGs目標(基本目標とターゲット)を定めました。SDGsを新たな道標とし、理念、行動指針、行動基準、経営戦略までを持続可能な社会に対して「直列」に繋げ、社会課題の解決と持続可能な成長の両立の実現を目指してまいります。また、業務運営を適正かつ効率的に遂行するために、会社業務の意思決定及び業務実施に関する各種社内規程の制定等により、職務権限の明確化と適切な牽制が機能する体制を整備しております。内部統制機能としては、社長直属部門であるグループ監査部が、本社部門、各カンパニー及びグループ各社の経営諸活動の全般にわたる管理・運営の制度及び業務遂行・事業リスク・コンプライアンス・内部統制システム等の内部監査を定期的に実施しており、監視と業務改善に向けて具体的な助言・提案を行っております。また、金融商品取引法における内部統制への対応を強化するとともに、azbilグループ全体のコンプライアンス活動を推進するため、当社担当役員を総責任者に、各社のコンプライアンス担当役員をメンバーとしてCSR活動を推進するための恒常的な組織を設置し、グループ全体の活動計画の策定、進捗管理を行うとともに、子会社に対する指導を行っております。さらに、内部通報制度による不祥事の早期発見の体制も整えております。また、業務執行全般にわたり適宜、顧問弁護士、公認会計士等、社外の専門家の助言及び支援を受けております。

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