事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

(1)主要な事業内容(2021年3月31日現在)

azbilグループは、人々の安心・快適・達成感と地球環境への貢献を目指す「人を中心としたオートメーション」を追求し、“計測と制御”の技術のもと、建物市場でビルディングオートメーション事業を、工場やプラント市場でアドバンスオートメーション事業を、ライフラインや健康等の生活に密着した市場において、ライフオートメーション事業を展開しています。

(2)事業の経過及びその成果

azbilグループを取り巻く事業環境は、大型建物向け空調制御機器・システムにつきましては、都市再開発計画に基づく需要が継続し、換気・省エネ対策に対する関心が高まりを見せており、新型コロナウイルス感染拡大の影響による改修案件等の一部計画の延期が見られましたが、その影響は限定的なものにとどまりました。生産設備につきましては、既存設備の維持・安全の確保等の需要が底堅く推移し、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済活動の停滞から、年間での需要は低調となりましたが、リモートワークや5Gサービスの急速な普及により半導体関連市場で回復が見られ、これを牽引役として、年度後半からは、コロナ禍で落ち込んだ受注が回復してきております。この結果、新型コロナウイルス感染拡大による業績への影響は一定の範囲に収まり、当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高につきましては、市況の低迷の影響を受けたアドバンスオートメーション(AA)事業が減少したことに加え、当連結会計年度は更新時期を迎える複数年契約のサービス案件が少ない端境期に当たるなどの理由からビルディングオートメーション(BA)事業が減少し、また、ライフオートメーション(LA)事業もLPガスメータ等の需要が減少したことにより、全体として前連結会計年度比4.0%減少の2,478億7千3百万円(前連結会計年度は2,580億7千9百万円)となりました。

売上高につきましては、BA事業が、前連結会計年度において新築大型建物向けに空調制御機器・システムを販売・施工する分野が高水準であったことの反動等により減少し、またAA事業及びLA事業が、受注同様、市況の低迷の影響を受けたことから、前連結会計年度比4.9%減少の2,468億2千1百万円(前連結会計年度は2,594億1千1百万円)となりました。

損益面につきましては、営業利益は、経費の抑制及び事業収益力強化策の効果等もありましたが、減収の影響により前連結会計年度比5.6%減少の257億2千万円(前連結会計年度は272億5千5百万円)となり、経常利益につきましても、営業利益の減少を主因に前連結会計年度比5.0%減少の263億3千8百万円(前連結会計年度は277億1千2百万円)となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、投資有価証券売却益に加え、国内の工場統合を通じた固定資産売却益の計上等によりほぼ前連結会計年度並みの199億1千8百万円(前連結会計年度は197億9千3百万円)となりました。

事業区分別の概況

BA ビルディングオートメーション事業

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あらゆる建物に求められる快適性や機能性、省エネルギーを独自の環境制御技術で実現。
建物のライフサイクルに応じたサービスによって、快適で効率の良い執務・生産空間の創造と環境負荷低減に貢献するとともに、健康で生産性の高い働き方をサポートします。

事業フィールド

オフィスビル ホテル ショッピングセンター 病院 
学校 研究所 工場 データセンター 空港  など

※‌各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

BA事業を取り巻く事業環境は、国内市場においては、一部計画の延期等が見られましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響は限定的なものにとどまりました。首都圏における都市再開発案件の需要は継続しており、換気改善、省エネ・CO2削減や運用コスト低減に関するソリューションへの関心も拡大しております。一方、海外市場においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により需要の低迷・工事遅延等の影響等が見られました。

こうした事業環境のもと、採算性に配慮しつつ着実な受注の獲得に取り組むとともに、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体に業務の遂行能力の強化と効率化を進めてまいりました。また、IoT等の技術活用を志向する国内外の顧客ニーズに対応するための製品・サービスの拡大を進めてまいりました。この結果、BA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高につきましては、新築大型建物向け空調制御機器・システムの販売・施工分野の需要が継続し、換気改善、省エネ・CO2削減等のソリューションに向けた既設改修・サービス需要も堅調ですが、当連結会計年度において更新時期を迎える複数年契約の案件が少ないことによりサービス事業の分野が減少し、加えて、当連結会計年度上期において、一部の案件で採算性を考慮した結果、既設建物向けの分野も一時的に減少したことなどから、全体としては前連結会計年度比3.6%減少の1,185億3百万円(前連結会計年度は1,229億5百万円)となりました。売上高につきましては、竣工が集中した前連結会計年度の反動で、引き続き高水準ながら、新築大型建物向けの分野が減少したことに加え、前述の要因から既設建物向けの分野が減少し、さらに海外事業も新型コロナウイルス感染拡大による工事遅延等の影響から減少したため、全体としては前連結会計年度比5.1%減少の1,175億2千1百万円(前連結会計年度は1,237億9千4百万円)となりました。セグメント利益につきましては、経費抑制及び採算性改善策の効果もありましたが、減収の影響により、前連結会計年度比5.8%減少の140億2千3百万円(前連結会計年度は148億9千万円)となりました。

中長期的には、2021年度以降も大型の再開発案件や多数の大型建物の改修が計画されており、納入実績を基にこれらの需要を確実に獲得してまいります。さらに、脱炭素化の動きを受けての省エネ・CO2削減に向けたニーズや、新型コロナウイルス感染拡大に起因する換気・入退室管理等の安全・安心に対するニューノーマル時代のオフィス需要等に対し、リモートメンテナンス、クラウドサービスや新空調システムといったソリューションを提供することで、持続的な成長を目指してまいります。あわせて、事業プロセス変革を含めた取組みを進め、更なる高利益体質を実現してまいります。

AA アドバンスオートメーション事業

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製造現場における課題解決に向け、装置や設備の最適運用をライフサイクルで支援する製品やソリューション、計装・エンジニアリング、保守サービスを提供。
さらに、IoT・AIやビッグデータを活用し、省エネルギーの実現や安全な操業をサポートします。

事業フィールド

石油化学・化学 石油精製 電力・ガス 鉄綱 ごみ処理・上下水道 紙パルプ 
船舶 食品 薬品 自動車 電気・電子 半導体  など

※‌各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

AA事業を取り巻く国内外の市場の動向につきましては、5G関連投資の広がりなどを受け半導体製造装置市場では需要が拡大するなど、製造装置市場を中心にコロナ禍からの回復傾向が見られております。新型コロナウイルス感染拡大の影響は予断を許さないところではありますが、今後も国内外の製造装置市場等の需要増加は続く見通しにあります。

こうした事業環境のもと、今後の更なる需要回復と将来の成長へ向けて、顧客開拓や海外での拠点・体制整備等の施策を着実に推し進め、さらに、これまで実績を上げてきた各種の収益力強化施策の徹底と拡大に取り組んでまいりました。この結果、AA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高につきましては、第4四半期において前年同期比で増加いたしましたが、通期では新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界経済低迷の影響を受け、前連結会計年度比4.8%減少の875億2千3百万円(前連結会計年度は919億1千5百万円)となりました。売上高につきましても、海外事業の拡大や製造装置市場での市況の好転等がありましたが、全般では市況低迷による設備投資減少の影響を受け、前連結会計年度比5.8%減少の877億7千8百万円(前連結会計年度は931億5千6百万円)となりました。セグメント利益につきましては、減収の影響により、前連結会計年度比2.2%減少の102億5千1百万円(前連結会計年度は104億8千6百万円)となりましたが、成長戦略と収益力強化施策の更なる進展により、厳しい環境でも更なる利益率の改善を実現いたしました。

中長期的には、人手不足、脱炭素社会への対応、リモートワーク等のニューノーマルへの対応、新技術の導入による生産性向上等を目的とした継続的な製造装置・生産ラインの自動化に係る投資需要の拡大が見込まれます。引き続き3つの事業単位※1(CP事業、IAP事業、SS事業)を軸に、海外事業をはじめとした成長領域への展開を推し進め、AIやクラウド、MEMS※2等の技術を取り入れた製品・サービスの開発、市場投入を加速し、アズビルならではの新しいオートメーション領域を創出していくことで、高い競争力を持った事業成長を目指してまいります。

※1 3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント):

CP事業:‌コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)

IAP事業:‌インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)

SS事業:‌ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリングサービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業)

※2 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):‌センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基盤の上に微細加工技術によって集積した機器。

LA ライフオートメーション事業

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高齢化や環境問題への対応、安全・安心な暮らしの実現、生活の充実等、人々の毎日の生活に関わるニーズに対して、オートメーション技術を活用して応えています。
ガス・水道等のライフライン、家庭の空調システムをはじめとした生活空間の質の向上、人の健康に貢献する研究、製薬・医療に至るまで幅広い分野で一層の安心と快適、省エネルギーを実現します。

事業フィールド

ライフサイエンスエンジニアリング分野

製薬工場 研究所 など

ライフライン分野

都市ガス(一般向け・産業向け) LPガス 水道(自治体) など

住宅用全館空調システム分野

住宅メーカ など

※‌各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

LA事業は、ガス・水道等のライフライン、製薬・研究所向けのライフサイエンスエンジニアリング、そして住宅用全館空調システムの生活関連(ライフ)の3つの分野で事業を展開しており、事業環境はそれぞれ異なります。

売上の大半を占めるガス・水道等のライフライン分野は、法定によるメータ交換の需要を主体としており、基本的には安定した需要が見込まれますが、売上の一部を占めるLPガスメータが不需要期に入り、また、水道メータ市場において新型コロナウイルス感染拡大の影響により検定満期の延長が行われ、需要が先送りされるなどの変化が見られました。ライフサイエンスエンジニアリング分野及び住宅用全館空調システムの生活関連分野におきましては、需要の増減がある中でも、引き続き事業構造改革による安定的な収益の実現と向上に取り組み、成果を上げております。こうした事業環境や取組みを背景に、LA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高につきましては、新型コロナウイルス感染拡大の影響による製薬市場での研究開発設備需要増によりライフサイエンスエンジニアリング分野は増加いたしましたが、LPガスメータの循環的な需要の減少等によりライフライン分野が減少したことを主因に、全体として前連結会計年度比3.2%減少の433億5千万円(前連結会計年度は448億6百万円)となりました。売上高につきましても、前連結会計年度における受注増加等を背景にライフサイエンスエンジニアリング分野は増加いたしましたが、ライフライン分野が減少したことにより、前連結会計年度比2.5%減少の429億4千2百万円(前連結会計年度は440億3千3百万円)となりました。セグメント利益につきましては、ライフライン分野での減収による減益の影響により、前連結会計年度比23.1%減少の14億3千4百万円(前連結会計年度は18億6千6百万円)となりました。

LA事業では今後も引き続き、同事業を構成する各事業分野の収益の安定化・向上に取り組んでまいります。また、これと並行して、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、従来からの製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メータからのデータを活用したサービスプロバイダとしての新たな事業を創出し、売上高拡大、利益の向上に取り組んでまいります。

対処すべき課題

azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」の理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、自らの中長期的な発展を確実なものとし、企業価値の持続的な向上を実現することで、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。

このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。具体的には、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の3事業において、計測と制御の技術を核に、「人を中心としたオートメーション」の発想に基づく製品・サービスを提供し、お客様のニーズや社会課題の解決に貢献することで、お客様・社会とともに自らの持続的成長を目指しております。

当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする新長期目標※1として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、2024年度を最終年度とする4ヵ年の新中期経営計画※1においては、最終年度の売上高3,000億円、営業利益を360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としております。

このように2030年度に向けた長期目標を掲げる当社グループは、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を目指し、グループ理念から経営戦略までが持続可能な社会に対して「直列」に繋がるよう行動指針・行動基準を改定いたしました。さらに、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)を経営の重要な道標と位置付け、事業として取り組む領域として「環境・エネルギー」、「新オートメーション」の2つを、また企業活動全体で取り組む領域では「サプライチェーン、社会的責任」、「健幸経営※2、学習する企業体」の2つを「azbilグループSDGs目標」と定め、様々な取組みを進めております。

「持続可能な社会」に向けて、我々を取り巻く環境では、気候変動・脱炭素への対応から社会構造や価値観の変化、ウイルス共生時代における安全・安心の確保に至るまで、様々な社会課題やお客様の課題が生まれております。こうした大きな変化に対応し、解決策を提供できるオートメーションの価値は益々向上しており、需要の増加が期待されます。当社グループといたしましては、アズビルならではの技術・製品・サービスを活かすことのできる「新オートメーション」「環境・エネルギー分野」「ライフサイクル型事業」という3つの事業領域に注力し、新たな課題の解決策を提供することにより、BA、AA、LAの3事業での成長を実現してまいります。

新中期経営計画におきましては、上述の3つの事業領域での成長を確実なものとするために、研究開発拠点(藤沢テクノセンター)の機能強化に向けた設備投資や研究開発費の増加等、必要な投資を積極的に行い、MEMS技術を活用した高度なセンサやシステムソリューション開発力の強化を進め、新製品開発・市場投入を加速いたします。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を通じて、事業・業務の効率化や製品・サービスの高付加価値化を行ってまいります。さらに、これまでに成果を上げてきた収益力強化施策の徹底と新たな施策の導入により、一層の事業収益性強化を行ってまいります。加えて、こうした事業成長施策、事業基盤強化の実践に向けて、経営資源を有効かつ戦略的に配分してまいります。また、これまで経営の最も重要な位置付けとしてまいりました、当社ならではのCSR経営をさらに推し進め、社会の要請でもあるESG(環境・社会・ガバナンス)にも積極的に取り組んでまいります。

未だ収束を見ず、新型コロナウイルス感染の蔓延が続く状況は、2021年度においても世界経済や生産活動に影響を及ぼし、事業の見通しを不透明なものとしており、当社グループの事業にも影響を及ぼすものと思われます。当社グループといたしましては、お客様と社員の安全確保と感染防止策の実施を最優先に、事業継続に必要な取組みを引き続き行っております。生産、エンジニアリングやサービス等の現場業務につきましては、お客様と社員の安全を第一に業務を継続することで、感染防止と社会インフラやお客様の重要施設の維持という両面で社会の要請に応えてまいります。また、営業・管理業務等につきましては、DXによる働き方の改革を推進し、在宅勤務の拡大等に取り組むことで感染拡大防止に貢献するとともに、リモートワーク等を通して生産性向上等も図ってまいります。あわせて、危機管理対応としての防疫強化、BCP(Business Continuity Plan-事業継続計画)整備、強固な財務体質の強化、さらに資金調達力の強化・多様化といった点にも引き続き取り組んでまいります。

※1 ‌2021年5月14日、当社グループは新長期目標、新中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。

※2 ‌健幸経営:健康で幸せ、活き活きとした“働きの場と人”を創るためのアズビル独自の取組み。

当社グループでは、新中期経営計画におきましても、戦略的に経営資源を配分し、上述の様々な取組みの加速・定着を図ってまいりますが、その具体的な内容は次のとおりです。

1[国内事業]

3事業とも国内では成熟産業に位置しますが、それぞれが置かれている環境は事業毎に大きく異なります。

BA事業は、引き続き高水準で推移する首都圏での需要を着実に捉えるため、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体にDX推進により、ジョブ遂行能力の強化と効率化を進めてまいります。またIoT、クラウド等の新しい技術活用も含めた商品力強化を推進することによりビジネスモデルの再構築を進めます。具体的には、次世代ビルディングオートメーションシステム「savic-net™ G5」を軸に、センサ・アクチュエータ領域の拡充、先進のビル向けクラウドサービスの拡張、ファシリティマネジメントサービスの変革等を継続して進めております。また、働き方改革や感染症対策等による居住空間の価値や要件の大きな変化に対応し、空間の質向上による付加価値提供を目指してまいります。パーソナルな執務環境や可変性の高いレイアウトに適応し、快適で使い勝手の良いオフィス空間を実現する新空調システム「ネクスフォート™DD」はその一例です。これらの取組みにより、お客様の事業展開にあわせて継続的な価値を提供・提案してまいります。

AA事業では、感染症拡大による影響は予断を許さないところではありますが、中長期的にはグローバルな経済成長の継続や更なる生産性の改善要求、生産現場での人手不足、設備老朽化対応等を背景に生産設備の自動化投資は引き続き拡大基調にあります。多岐にわたる市場から、技術の潮流変化を捉え、今後の成長と付加価値提供が見込める領域を選択・創出・集中することにより成長を図るとともに、グローバルな共通事業モデルに経営資源を集中することにより競争力を強化します。これら成長戦略と収益力強化策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションにより着実に実行してまいります。具体的には国内外での顧客カバレッジ拡大のための営業DX導入を含めた営業体制強化、新規客先を継続的なリピート顧客にすることによる受注拡大、新しいオートメーションの創造に資する製品開発の加速等に取り組みます。バルブの稼働データをクラウドで解析して“健康診断結果”を可視化することで生産設備の安定化・保安力強化を実現する「Dx Valve Cloud Service」等は、こうしたソリューションの事例となります。

LA事業では、水道・各種ガスメータのIoT対応を引き続き進めております。各種検針・アラームデータのスマート化実証実験、電気・ガス・水道のデータを利用して新たな価値を創造するサービスの検討等、SMaaS(Smart Metering as a Service)時代を見据えた新たなオートメーション領域への事業展開を加速しております。また商品力強化に加えてサービス関連事業を拡大し、ライフサイエンスエンジニアリング分野、戸建て住宅向け全館空調の生活関連分野の収益改善を図ります。

以上のような3つの事業軸への取組みと同時に、国内外で大きく変化していくことが見込まれるエネルギーマネジメント領域における、製品面、事業インフラ面、サービス面といった多方面において東光高岳グループと協業を進め、事業コンセプトを「DX-EGA」と定めエネルギーデータ(電力:Electricity、ガス:Gas、水道:Aqua)等様々なデータを利用して、生活品質向上や企業の環境経営に新たな価値提供の可能性を確認しております。さらに、IoT、AI等の最新技術の応用、商品のサービス化・クラウド化等、IT関連の事業環境変化に対応し、2020年4月に立ち上げた「ITソリューション推進部」を中心にクラウド運用体制を強化し、商品企画・開発・運用を強力に推進しております。

2[海外事業]

海外市場におきましては、事業成長と収益拡大を支えるための更なる事業基盤強化策の一つとして、各国や地域の市場環境に対応し、付加価値の高い特長ある新製品・ソリューションの提案を継続的に強化し、グローバルでの事業拡大を目指します。東南アジア地域においては、シンガポールを拠点とする東南アジア戦略企画推進室により、同地域での横断的な事業推進・戦略企画・経営管理を加速させております。

BA事業では、海外市場でのシェア拡大に向け、次世代ビルディングオートメーションシステムを軸に、国内事業モデルでの強み(省エネルギーのアプリケーション、エンジニアリング・サービス力)を展開し、各国の事業環境・事業基盤に応じた施策を実施するとともに、ライフサイクル型ビジネスモデルの段階的な強化に努めております。また、シンガポールではCapitaLand社主導のイノベーションラボに参加し、空気感染リスクを軽減し安全なオフィスの実現を目指すなど、オープンイノベーション推進を含めて製品力強化とサービスの組合せによる高付加価値化を図り、新オートメーション領域の開拓と環境負荷低減に努めてまいります。

AA事業では、海外での戦略地域の営業体制強化や営業活動の質の改善を図るとともに、主要製品のリニューアルや戦略製品の投入、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断等、新しいオートメーション領域の開拓を進めてまいります。

LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域を担当する欧州のアズビルテルスター有限会社において、今後の成長に向けて、ワクチン等の医薬品製造関連ソリューション等に取り組んでまいります。

以上に加えて、azbilグループの海外子会社における経営管理面におきましても、リモート管理体制の強化に加えて、現地法人の評価体制を拡充するなど、引き続きグループ・ガバナンスを強化し、各社の堅確な体制構築を進めてまいります。

3[生産・開発]

azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内では、生産機能の湘南工場への一拠点化を完了し、藤沢テクノセンターにおける技術開発機能との連携を強化したグループ内のマザー工場として機能整備を推進中です。また、藤沢テクノセンターにつきましてはクラウドやAIを活用した先進的なシステムソリューションや高機能・高精度なデバイスの開発力を一層強化するための中核研究開発拠点として、新棟が2022年に竣工予定です。海外では、異常予兆検知や調節弁の診断サービス等、IoT・AI技術を活用した次世代インテリジェントサービス提供を目的に、タイにSolution and Technology Centerを開設いたしました。グループで最大規模の調節弁整備施設を保有しており、自社・他社を問わず年間10,000台規模の整備が可能であり、将来的に東南アジア全体への事業展開を目指しております。

4[経営管理]

グループ経営の推進とガバナンス体制の充実を図るとともに、リスク管理(品質・PL、防災・防疫・BCP、情報)、コンプライアンス(企業倫理・法令遵守)、人を重視した経営、地球環境への貢献及び社会貢献を重点取組み領域として、azbilグループを挙げてCSR経営の推進に継続して取り組んでおります。経営管理面では、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用も視野に入れた会計水準の向上と、それに伴う内部統制の強化を進めてまいります。また、経営の公正性、中立性及び透明性を高めるべく、コーポレートガバナンス・コードへの対応を継続しながら、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するよう、全てのステークホルダーの皆様との間で建設的な対話を進めるための体制整備を積極的に進めております。前述のとおりESG(環境・社会・ガバナンス)に対しても積極的に取組みを進めており、この結果、2020年度も年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が選定した4つのESG指数※3の構成銘柄に選定されております。また、独自のSDGs目標の着実な達成に向けて「サステイナビリティ推進本部」を設置し、取組みを推進しております。

※3 ‌ESG指数:FTSE Blossom Japan Index、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)、S&P/JPXカーボンエフィシェント指数。

(ご参考) 当社のコーポレート・ガバナンスの取組みについて

当社は、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応えるため、法令・定款の遵守のみならず、企業倫理に基づく社会的責任の遂行と社会貢献責任を全うしつつ、効率的で透明性の高い経営によって企業価値の継続的な向上を果たすことが、当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方であり、経営上の最重要課題と位置付けております。

<企業統治の体制>

経営の基本方針の決定、法令で定められた事項及び重要事項の決定、業務執行状況の監督を行う取締役会と、業務執行を担う執行役員制度を設けて機能分離を行うことにより、迅速な業務執行体制を構築するとともに業務執行状況の監督機能をより強化しております。

取締役会は原則月1回開催し、業務執行を担う執行役員制度におきましては、役付執行役員と監査役会の代表で構成する経営会議を月2回開催し、迅速な意思決定と執行の徹底により事業推進力の強化を図っております。

2021年3月31日現在で取締役は11名が選任されており、当社事業及び経営に経験を積んだ業務執行に携わる取締役6名と、独立性があり、幅広い経験や優れた専門性・知見を有し、国際性やジェンダー等の多様性に富む独立社外取締役を5名選任しており、取締役会における独立社外取締役の割合は3分の1を超えております。これらの独立社外取締役は、取締役会にて意思決定を行う際、適切な監督・助言を通じ当社の企業価値の向上に尽くしているほか、代表取締役社長とも定期的に意見交換を行っております。また、毎年、取締役及び監査役を対象に取締役会の実効性に関する自己評価・意見を収集したうえで、取締役会において現状の評価と課題の共有を行い、更なる実効性の向上を図っております。また、当社は、2021年5月14日開催の取締役会において、当社の中期経営計画の実現等、経営戦略に照らして、取締役に期待するスキル等を定め、現在の取締役会における独立性・多様性・期待するスキルを確認しております。

さらに当社は、取締役会の諮問機関として、任意の「指名・報酬委員会」を設置しております。本委員会は、会社の永続的な発展と中長期的な収益性・生産性を高めることに資するため、役員の指名及び報酬の決定プロセスについて、より高い公正性・客観性・透明性を確保することを目的としております。本委員会では、取締役候補者、代表取締役候補者の選任及び社長/CEO候補者、取締役会議長候補者、役付執行役員候補者等の選任並びに役員報酬体系、報酬制度、役員報酬体系に基づく基本報酬額、個人業績評価、定性的な項目の進捗状況評価、個人の賞与支給額及び取締役報酬枠の改定等を審議するのみならず、社長/CEO、取締役、役付執行役員等の解任及び代表取締役、取締役会議長の解職並びに後継者の育成等に関する事項についても審議を行うこととしております。本委員会の委員長は、独立社外取締役の中から互選にて定め、委員の過半を独立社外取締役で構成する規定としており、現在、田辺 克彦氏(独立社外取締役)が委員長を、伊藤 武氏(独立社外取締役)、藤宗 和香氏(独立社外取締役)、曽禰 寛純氏(代表取締役)及び山本 清博氏(代表取締役)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。

2020年度は、指名・報酬委員会を5回開催し、2020年5月には、執行を兼務する取締役と執行役員の2019年度個人業績目標に対する結果の評価と個々の賞与支給額、並びに執行を兼務する取締役及び社外取締役の2020年度の基本報酬額の審議を行いました。2020年6月には、独立社外取締役の田辺 克彦氏を委員長とする新たな指名・報酬委員会体制にて、委員会の責務を再確認するとともに、後継者育成計画としての役員面談の結果について確認いたしました。2021年1月には、経営体制交代に関わる選任プロセスについての評価結果と後継者育成計画の進捗状況を確認いたしました。2021年2月には、2021年度の執行体制、グループ子会社の役員体制について審議のうえ取締役会に報告し、取締役会において2021年度の役員体制が決定されました。2021年3月には、海外グループ会社の役員体制及びグローバル人材制度の運用状況の確認、指名・報酬委員会規程の改定、常勤役員の他会社の役職兼任について審議いたしました。なお、2020年8月、2021年2月の取締役会において、指名・報酬委員会の活動状況について報告いたしました。

また、当社は、監査役会設置会社であり、2021年3月31日現在で当社の監査役は、常勤監査役2名と社外監査役3名で構成されております。このうち常勤監査役松安 知比古氏は、長年当社の経理業務に携わった経験があり、また、監査役藤本 欣哉氏は、公認会計士としての豊富な経験と高い見識を持っており、さらに監査役佐藤 文俊氏は他事業会社にて長年経理財務管掌役員として財務諸表等の作成の責任者等に従事した経験があり、財務及び会計に関する相当程度の知見を有するものであります。また、監査役の職務を補助する専任の組織として監査役室を設置し、3名の専任者により監査役の職務遂行を補助しております。

監査役会は原則月1回開催し、必要に応じて随時開催しております。当事業年度では合計14回開催いたしました。5名の監査役はいずれの監査役会にも出席し、監査役会では、期首の年間監査計画の審議、期中では月次・四半期の各監査役の活動報告、四半期毎の決算監査報告、期末の監査活動評価とまとめ、監査上の主要な検討事項(KAM)に関する検討、会計監査人の評価に関する審議等を行いました。また監査役会として代表取締役との意見交換会及び社外取締役との情報交換会を定期的に実施いたしました。加えて監査役会の実効性評価を期末に実施し、監査役会として当事業年度の監査活動の振り返りを行うとともに、評価結果を翌事業年度の監査計画に反映させ、監査役会の実効性を高めております。

常勤監査役は、取締役会及び経営会議等への出席、主要事業所・子会社の調査及び主要部門のヒアリング、重要会議の議事録ほか重要書類の閲覧等の監査活動を行い、その内容を適時に社外監査役と共有いたしました。社外監査役は、取締役会に出席し独立役員の立場で意見を表明したほか、それぞれの知見と経験を活かし、常勤監査役による主要事業所・子会社の調査にも適宜参加しました。監査役は、会計監査人との定期的な会合に参加し、年度初めには監査計画、重点監査事項等について、期中・期末には相互の監査結果を共有し、監査上の主要な検討事項(KAM)に関して適宜協議を行うなどの連携をとっております。内部監査部門との定期的な会合においても、年度初めには監査計画、重点監査事項等について、期中・期末には相互の監査結果を共有するほか、グループ子会社監査役より子会社の監査結果を確認するなど連携を密にし、監査の実効性と効率の向上を図っております。

監査役は、取締役会や経営会議等を通じて、新型コロナウイルス感染症への対応状況のモニタリングを行いました。事業所、国内外子会社への往査は、監査の実効性を損なわないよう、往査することが難しい事業所と国内外子会社についてウェブ会議システムによるリモート調査に切り替え、また内部監査部門が実施したリモートによる内部監査結果のヒアリング等により代替的な手続を行いました。監査役間の情報共有については、対面での情報共有の代わりに電子的な回覧をもって遅滞なく共有手続を確保し、齟齬がないよう対応を図りました。

なお、社外取締役及び社外監査役の選任にあたっては、当社は独自の独立性判断基準を定めております。当社の社外取締役及び社外監査役はこの独立性判断基準を満たしており、一般株主と利益相反の生ずるおそれがなく、いずれも充分な独立性を有していることから、東京証券取引所に対し、独立役員として届け出ております。

当社と社外取締役及び社外監査役は、会社法第427条第1項の規定に基づき、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する契約を締結しております。当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、法令が定める最低責任限度額としております。なお、当該責任限定が認められるのは、当該社外取締役又は社外監査役が責任の原因となった職務の遂行において善意であって、かつ重大な過失がないときに限られます。

また、グループ一体となったコンプライアンス体制の整備について、当社では信頼される企業グループを目指し、法令遵守を含む、役員及び社員の行動指針として、「azbilグループ行動基準」を制定し、反社会的勢力との一切の関係の遮断をはじめとする企業の公共性、社会的責任の遂行や公正な取引の遵守、人間尊重の社会行動、会社財産の管理・運用及び環境保護の遂行を通して企業倫理の確立による健全な事業活動に取り組んでおります。この理念を実践するために「企業行動指針」を改定し、またSDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)に向けたazbilグループのSDGs目標(基本目標とターゲット)を定めております。2020年度は、こうした取組みを推進する組織としてサステイナビリティ推進本部を新設し、SDGs目標を踏まえた新たな定量的指標を決定し持続可能な社会への貢献を着実に進めてまいりました。SDGsを新たな道標とし、理念、行動指針、行動基準、経営戦略までを持続可能な社会に対して「直列」に繋げ、社会課題の解決と持続可能な成長の両立の実現を目指してまいります。また、業務運営を適正かつ効率的に遂行するために、会社業務の意思決定及び業務実施に関する各種社内規程の制定等により、職務権限の明確化と適切な牽制が機能する体制を整備しております。内部統制機能としては、社長直属部門であるグループ監査部が、本社部門、各カンパニー及びグループ各社の経営諸活動の全般にわたる管理・運営の制度及び業務遂行・事業リスク・コンプライアンス・内部統制システム等の内部監査を定期的に実施しており、監視と業務改善に向けて具体的な助言・提案を行っております。また、金融商品取引法における内部統制への対応を強化するとともに、当社グループ全体のコンプライアンス活動を推進するため、当社担当役員を総責任者に、各社のコンプライアンス担当役員をメンバーとしてCSR活動を推進するための恒常的な組織を設置し、グループ全体の活動計画の策定、進捗管理を行うとともに、子会社に対する指導を行っております。さらに、内部通報制度による不祥事の早期発見の体制も整えております。また、業務執行全般にわたり適宜、顧問弁護士、公認会計士等、社外の専門家の助言及び支援を受けております。

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