事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

(1)主要な事業内容(2022年3月31日現在)

azbilグループは、人々の安心・快適・達成感と地球環境への貢献を目指す「人を中心としたオートメーション」を追求し、”計測と制御”の技術のもと、建物市場でビルディングオートメーション事業を、工場やプラント市場でアドバンスオートメーション事業を、ライフラインや健康等の生活に密着した市場でライフオートメーション事業を展開しております。

(2)事業の経過及びその成果

azbilグループを取り巻く事業環境は、国内大型建物向け空調制御機器・システムにつきましては、都市再開発計画に基づく需要等が継続し、換気・省エネ対策に対する関心が高まりを見せる中、改修案件の需要も着実に増加しております。製造業の生産設備向けの各種機器・システムにつきましても、リモートワークや5Gサービスの急速な普及により半導体関連市場で需要が高い水準で推移し、市場による差異はありますが、全般として設備投資の回復が継続いたしました。

当連結会計年度における業績につきましては、部品不足に起因するお客様の先行発注や長納期化による売上計上の遅れなどによる影響が下期以降拡大いたしましたが、前連結会計年度における新型コロナウイルス感染拡大に伴う市況悪化からの回復もあり、次のとおりとなりました。

受注高は、前連結会計年度における感染拡大に伴う受注面での減少から転じて、全体として前連結会計年度比15.8%増加と大きく伸び、2,869億5千万円(前連結会計年度は2,478億7千3百万円)となりました。これは主に、アドバンスオートメーション(AA)事業が市況の回復とともに、一部には部品不足に起因する先行発注の影響もあり増加したことに加え、ビルディングオートメーション(BA)事業が既設改修・サービス需要により、またライフオートメーション(LA)事業が製薬設備需要によりそれぞれ増加したことなどによるものです。また、売上高につきましては、AA事業が長納期化による影響が一部で見られたものの、製造装置市場等での需要回復により増加し、BA事業、LA事業もそれぞれ増加したことから、前連結会計年度比3.9%増加の2,565億5千1百万円(前連結会計年度は2,468億2千1百万円)となりました。

損益面につきましては、営業利益は、費用面で感染拡大における勤務対応関連費用の負担増や中期経営計画に基づく施策からの研究開発費等の増加があったものの、増収影響に加えて事業収益力強化施策の効果等も継続し、前連結会計年度比9.8%増加の282億3千1百万円(前連結会計年度は257億2千万円)となりました。また経常利益につきましては、営業利益の増加及び為替差益の計上等により前連結会計年度比12.1%増加の295億1千9百万円(前連結会計年度は263億3千8百万円)となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましても、前連結会計年度に投資有価証券売却益や国内の工場統合による固定資産売却益の計上があったことに加えて、当連結会計年度においては子会社の繰延税金資産の回収可能性の見直しなどによる税金費用の増加がありましたが、前連結会計年度比4.3%増加の207億8千4百万円(前連結会計年度は199億1千8百万円)となりました。

事業区分別の概況

BA ビルディングオートメーション事業

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あらゆる建物に求められる快適性や機能性、省エネルギーを独自の環境制御技術で実現。
建物のライフサイクルに応じたサービスによって、健康で生産性の高い働き方をサポートする執務・生産空間の創造と環境負荷低減に貢献します。

事業フィールド

オフィスビル ホテル ショッピングセンター 病院 
学校 研究所 データセンター 空港 など

※‌各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

BA事業を取り巻く事業環境は、国内市場においては、首都圏における都市再開発案件や工場向け空調の需要が継続しており、換気改善、省エネ・CO2削減や運用コスト低減に関するソリューションへの関心も拡大しております。また、国内市場においては新型コロナウイルス感染症の影響は限定的なものにとどまりましたが、部品調達難の影響が一部で見られました。海外市場においては、一部地域では感染症の長期化の影響により、建築計画順延・工事遅延等の影響が見られました。

こうした事業環境のもと、採算性に配慮しつつ着実な受注の獲得に取り組むとともに、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体に業務の遂行能力の強化と効率化を進めてまいりました。また、IoT等の技術活用を志向する国内外の顧客ニーズに対応するための製品・サービスの拡大を進めてまいりました。この結果、BA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高につきましては、新収益認識基準によるサービス分野への影響※1がありましたが、複数年サービス契約の更新に加えて、堅調な事業環境を背景に既設建物の改修に関する分野が増加、一部には部品不足によるお客様の先行発注の影響もあり、全体としては前連結会計年度比11.8%増加の1,325億1千1百万円(前連結会計年度は1,185億3百万円)となりました。売上高につきましては、新収益認識基準や部品調達難の影響によりサービス分野が減少いたしましたが、新築大型建物向けの分野及び既設建物の改修に関する分野が増加した結果、前連結会計年度比1.9%増加の1,197億6千4百万円(前連結会計年度は1,175億2千1百万円)となりました。セグメント利益につきましては、収益性の改善効果はありましたが、中期経営計画に基づく研究開発費と受注活動増に伴う人件費の増加及び上期に計上した感染拡大に関連した勤務対応関連費用により、前連結会計年度と同水準の138億6千2百万円(前連結会計年度は140億2千3百万円)となりました。

中長期的には、堅調な国内での当期の受注動向に加えて、今後も大型の再開発案件や多数の大型建物の改修が計画されており、納入実績を基にこれらの需要を確実に獲得してまいります。さらに、脱炭素化の動きを受けての省エネ・CO2削減に向けたニーズや、感染拡大に起因する換気・入退室管理等の安全・安心に対するニューノーマル時代のオフィス需要等に対し、リモートメンテナンス、クラウドサービスや新空調システムといったソリューションを提供することで、持続的な成長を目指してまいります。あわせて、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や事業プロセス変革を含めた取組みを進め、更なる高収益体質を実現してまいります。

※1 新収益認識基準によるサービス分野への影響:
新収益認識基準の影響は主にサービス分野において発生しており、受注高では約32億円の減少影響がありましたが、売上高及びセグメント利益への影響は軽微であります。

AA アドバンスオートメーション事業

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製造現場における課題解決に向け、装置や設備の最適運用をライフサイクルで支援する製品やソリューション、計装・エンジニアリング、保守サービスを提供。
さらに、IoT・AIやビッグデータを活用し、省エネルギーの実現や安全な操業をサポートします。

事業フィールド

石油化学・化学 石油精製 電力・ガス 鉄鋼 ごみ処理・上下水道 紙パルプ 
船舶 食品 薬品 自動車 電気・電子 半導体 など

※‌各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

AA事業を取り巻く国内外の市場の動向につきましては、5G関連投資の広がりなどを受けた半導体製造装置市場での需要が高い水準で推移しております。新型コロナウイルス感染症は未だ収束していませんが、製造装置市場を中心に市場全般で設備投資が回復いたしました。

こうした事業環境のもと、これまで注力してきた海外での成長戦略が成果として現れるとともに、継続して取り組んでいる収益力強化に関わる各種施策の進展により、収益体質が一段と強化されました。一方、部品調達難に伴い一部製品においては納期が長期化するなどの影響がありました。この結果、AA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高につきましては、世界的な半導体投資の拡大等を背景とした製造装置市場での需要の継続と海外での事業成長を主因に、一部には部品不足に起因するお客様の先行発注の影響もあり、全体として大きく増加し、前連結会計年度比25.2%増加の1,095億6千2百万円(前連結会計年度は875億2千3百万円)となり、受注残も大きく積み上がりました。売上高につきましては、製造装置市場向け及び海外事業を中心に増加しましたが、部品調達難の影響で一部製品の売上計上が遅れたこともあり、前連結会計年度比7.4%増加の942億7千6百万円(前連結会計年度は877億7千8百万円)にとどまりました。セグメント利益につきましては、営業強化に伴う経費や中期経営計画に基づく研究開発費の増加があるものの、増収及びこれまで取り組んできた収益力強化施策の効果により、セグメント利益率の改善が継続し、前連結会計年度比29.1%増加の132億3千6百万円(前連結会計年度は102億5千1百万円)となりました。

中長期的には、人手不足、脱炭素への対応、新技術の導入による生産性向上等を目的とした継続的な製造装置・生産ラインの自動化に係る投資の拡大が見込まれます。引き続き3つの事業単位※2(CP事業、IAP事業、SS事業)を軸に、海外事業をはじめとした成長領域への展開を推し進め、AIやクラウド、MEMS※3等の技術を取り入れた製品・サービスの開発、市場投入を加速させ、アズビルならではの新しいオートメーション領域を創出していくことで、高い競争力を持った事業成長を目指してまいります。

※2 3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント):

CP事業:‌コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)

IAP事業:‌インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)

SS事業:‌ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリングサービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業)

※3 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):‌センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基盤の上に微細加工技術によって集積した機器。

LA ライフオートメーション事業

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高齢化や環境問題への対応、安全・安心な暮らしの実現、生活の充実等、人々の毎日の生活に関わるニーズに対して、オートメーション技術を活用して応えています。
ガス・水道等のライフライン、家庭の空調システムをはじめとした生活空間の質の向上、人の健康に貢献する研究、製薬・医療に至るまで幅広い分野で一層の安心と快適、省エネルギーを実現します。

事業フィールド

ライフサイエンスエンジニアリング分野

製薬工場 研究所 など

ライフライン分野

都市ガス(一般向け・産業向け) LPガス 水道(自治体) など

住宅用全館空調システム分野

住宅メーカ など

※‌各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

LA事業は、ガス・水道等のライフライン、製薬・研究所向けのライフサイエンスエンジニアリング、そして住宅用全館空調システムの生活関連の3つの分野で事業を展開しており、事業環境はそれぞれ異なります。

売上の大半を占めるガス・水道等のライフライン分野は、法定によるメータの交換需要を主体としており、基本的には安定した需要が見込まれますが、LPガスメータが循環的な不需要期にあるなど、一部市場では変化が見られます。またライフサイエンスエンジニアリング分野では、製薬プラント設備への投資増加が続いております。こうした事業環境や取組みを背景に、LA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高につきましては、製薬市場での製薬設備需要の増加を背景にライフサイエンスエンジニアリング分野が増加したことを主因に、前連結会計年度比8.1%増加の468億4千5百万円(前連結会計年度は433億5千万円)となりました。売上高につきましては、ライフライン分野が市況変化、感染拡大及び部品調達難の影響もあり減少した一方、ライフサイエンスエンジニアリング分野では感染拡大等により売上進捗に影響が見られたものの、前連結会計年度における受注増加を背景に増加したことから、前連結会計年度比3.0%増加の442億3千8百万円(前連結会計年度は429億4千2百万円)となりました。セグメント利益につきましては、ライフライン分野の減収に伴う減益を主な要因として、ライフサイエンスエンジニアリング分野においても増収ながら事業伸長に伴う経費増加や素材価格高騰、エネルギーコスト/輸送費等が増加したことにより前連結会計年度比19.7%減少の11億5千1百万円(前連結会計年度は14億3千4百万円)となりました。

LA事業では今後も引き続き、同事業を構成する各事業分野の収益の安定化・向上に取り組んでまいります。また、これと並行して、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、従来からの製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メータからのデータを活用したサービスプロバイダとしての新たな事業を創出し、売上高拡大、利益の向上に取り組んでまいります。

対処すべき課題

azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」の理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、自らの中長期的な発展を確実なものとし、企業価値の持続的な向上を実現することで、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。

このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。具体的には、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の3事業において、計測と制御の技術を核に、「人を中心としたオートメーション」の発想に基づく製品・サービスを提供し、お客様のニーズや社会課題の解決に貢献することで、お客様・社会とともに自らの持続的成長を目指しております。

当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標※1として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、2024年度を最終年度とする4ヵ年の中期経営計画※1においては、最終年度の売上高3,000億円、営業利益を360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としております。

このように2030年度に向けた長期目標を掲げる当社グループは、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献とサステナビリティの観点から、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)を経営の重要な道標と位置付け、事業として取り組む領域として「環境・エネルギー」、「新オートメーション」の2つを、企業活動全体で取り組む領域では「サプライチェーン、社会的責任」、「健幸経営※2、学習する企業体」の2つを「azbilグループのSDGs目標」として定め、達成に向けた取組みを進めております。

「持続可能な社会」に向けて、我々を取り巻く環境では、気候変動・脱炭素への対応から社会構造や価値観の変化、ウイルス共生時代における安全・安心の確保に至るまで、様々な社会課題やお客様の課題が生まれております。こうした大きな変化に対応し、解決策を提供できるオートメーションの価値は益々向上しており、需要の増加が期待されます。当社グループといたしましては、アズビルならではの技術・製品・サービスを活かすことのできる「新オートメーション」「環境・エネルギー分野」「ライフサイクル型事業」という3つの事業領域に注力し、新たな課題の解決策を提供することにより、BA、AA、LAの3事業での成長を実現してまいります。

中期経営計画(2021~2024年度)におきましては、上述の3つの事業領域での成長を確実なものとするために、新製品やサービス開発力の強化に向けた投資の拡大、お客様との接点の拡大等の施策を推進しております。中期経営計画初年度である2021年度においては、先進的なシステムソリューション、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力強化に向けた研究開発拠点である藤沢テクノセンターの整備が進みました。また、生産面においても、中国大連生産子会社の新工場棟が竣工するなどグローバルでの生産基盤の強化が進みました。

収益力という観点では、これまで取り組んできた受注時の採算性改善、海外生産・調達の拡大といった収益力強化施策に加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を通じた業務効率化をグローバルに展開することにより、一層の収益力強化を行ってまいります。加えて、資本コストを意識した経営の観点から投下資本利益率(ROIC)を導入し、投下資本からの収益性に基づく経営資源活用の最大効率化と事業ポートフォリオ管理を実践することで、当社グループ全体の企業価値向上(ROEの向上)に繋げてまいります。

当社グループは、持続的な企業価値向上の基盤としてのコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題として、取締役会の監督・監査機能強化、経営の透明性や健全性の強化、執行の責任体制の明確化等に取り組んでまいりました。

当社におけるコーポレート・ガバナンスの更なる改革を進めることを目的として、2022年2月25日開催の取締役会におきまして、過半数の社外取締役によって構成される3つの委員会※3を有し、かつ過半数を社外取締役が占める取締役会から法的に明確な責任を負う執行役に大幅に業務執行権限を委譲可能とする「指名委員会等設置会社」へ移行する方針を決議いたしました。また、当社は、指名委員会等設置会社への移行を条件として、信託を活用した役員向け株式報酬制度を導入する予定です。これに伴い、本定時株主総会以降に開催される取締役会及び報酬委員会での決議をもって新たな役員報酬方針の策定を予定しております。

新型コロナウイルス感染症の蔓延は未だ収束を見ず、グローバルにサプライチェーンや部品調達難等の混乱が続いております。さらに欧州等の地政学的リスクの高まりやエネルギー価格の高騰、インフレ懸念等は世界経済に影響を及ぼし、事業の見通しを不透明なものとしております。こうした社会情勢・事業環境の変化は、当社グループの事業にも影響が想定されるため、これら様々な事業環境の変化に対して、株主の皆様はもとより、お客様やお取引先様等、ステークホルダーの皆様との対話を重ねつつ、迅速、適切に対応してまいります。

新型コロナウイルス感染症に対しては、引き続きお客様と社員の安全を第一に、生産、エンジニアリングやサービス等の現場業務を継続することで、感染防止と社会インフラやお客様の重要施設の維持という両面で社会の要請に応えるとともに、危機管理対応としての防疫強化、BCP(Business Continuity Plan-事業継続計画)整備、強固な財務体質の強化、さらに資金調達力の強化・多様化といった点にも引き続き取り組んでまいります。また、グローバルな部材調達等における混乱につきましては、生産のオペレーション改善やサプライチェーン各社との連携を通じて影響の軽減を図ってまいります。なお、こうした環境変化に即した働き方の対応として、当社グループにおきましては、在宅勤務の拡大等に取り組むことで感染防止に貢献するとともに、さらにDXによる働き方の改革・創造を推進し、ABW(Activity Based Working)※4の考え方も取り入れた、リモートワーク・在宅勤務とかけ合わせた新しい働き方・生産性の向上を図ってまいります。

※1 ‌2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。

※2 ‌健幸経営:健康で幸せ、活き活きとした“働きの場と人”を創るためのアズビル独自の取組み。

※3 ‌3つの委員会:指名委員会、監査委員会、報酬委員会。なお、指名委員会等設置会社への移行は、本定時株主総会で必要な定款変更のご承認をいただくことを条件としております。

※4 ‌ABW(Activity Based Working):働く人が仕事をするために最適な環境(場所・時間等)を選ぶことができるワークスタイル。

当社グループでは、中期経営計画におきましても、戦略的に経営資源を配分し、上述の様々な取組みの加速・定着を図ってまいりますが、その具体的な内容は次のとおりです。

1[国内事業]

3事業とも国内では成熟産業に位置しますが、それぞれが置かれている環境は事業毎に大きく異なります。

BA事業は、引き続き高水準で推移する首都圏での需要を着実に捉えるため、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体にDX推進により、ジョブ遂行能力の強化と効率化を進めてまいります。またIoT、クラウド等の新しい技術活用も含めた商品力強化を推進することによりビジネスモデルの再構築も引き続き進めるとともに、拡大する省エネルギー・CO2削減等に関するソリューションへの関心へも対応してまいります。

具体的には、カーボンニュートラル※5実現に向け大きく貢献するため、新築・既存を問わずあらゆるビルにスムーズに導入できる空調制御分野におけるGX(グリーントランスフォーメーション)※6ソリューションを確立するため、NTTアーバンソリューションズ株式会社・株式会社NTTファシリティーズ・NTT都市開発株式会社・NTTコミュニケーションズ株式会社・ダイキン工業株式会社と、空調制御に関する協業を開始いたしました。

また、働き方改革や感染症対策等による居住空間の価値や要件の大きな変化に対応し、空間の質向上による付加価値提供を目指してまいります。ニューノーマル時代の働き方やオフィス利用の多様化に対応する新空調システム等を導入し、お客様にご提案、体感いただける事業所を国内にもオープンいたしました。

これらの取組みにより、お客様の事業展開にあわせて継続的な価値を提供・提案してまいります。

AA事業では、感染症拡大や部品調達難の製造業設備投資への影響は予断を許さないところではありますが、中長期的にはグローバルな経済成長の継続や更なる生産性の改善要求、生産現場での人手不足、設備老朽化対応等を背景に生産設備の自動化投資は引き続き拡大基調にあり、製造装置市場の回復を牽引役とする設備投資の回復継続など堅調な市場環境にあります。

多岐にわたる市場から、技術の潮流変化を捉え、今後の成長と付加価値提供が見込める領域を選択・創出・集中することにより成長を図るとともに、グローバルな共通事業モデルに経営資源を集中することにより競争力を強化いたします。これら成長戦略と収益力強化策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションにより着実に実行してまいります。具体的には国内外での顧客カバレッジ拡大のための営業DX導入を含めた営業体制強化、新たなお客様を継続的なリピート顧客にすることによる受注拡大、新しいオートメーションの創造に資する製品開発の加速等に取り組んでおります。また、各種プラントにおいてプラント安定稼働のため重要な役割を担うバルブの稼働データをクラウドで解析し、バルブの“健康診断結果”を可視化することで生産設備の安定化・保安力強化を実現する「Dx Valve Cloud Service」の運用技術の拡張、AIを活用したプラント設備の異常予兆検知システム「BiG EYESTM」に関して、火力発電設備を対象とした共同開発等に取り組むなど、適用範囲を拡げることで、お客様の事業展開にあわせた継続的な価値を提供・提案してまいります。

LA事業では、ライフライン分野にて水道・各種ガスメータのIoT対応を引き続き進めております。スマートメータで計測・計量し、クラウドで収集、様々なデータを掛け合わせ脱炭素等、企業の環境経営や生活品質の向上への新たな価値提供の検討等、SMaaS(Smart Metering as a Service)時代を見据えた新たなオートメーション領域への事業展開を進めております。また、戸建て住宅向け全館空調分野でも空気質にこだわった住環境の快適さを追求したソリューションを強化し、生活関連分野の収益改善を継続してまいります。

以上のような3つの事業軸への取組みと同時に、国内外で大きく変化していくことが見込まれるエネルギーマネジメント領域においては、東光高岳グループとともに、事業コンセプトである「DX-EGA」のもとで、エネルギーデータ(電力:Electricity、ガス:Gas、水道:Aqua)等様々なデータを利用して、生活品質向上や企業の環境経営に新たな価値を提供してまいります。温室効果ガス排出量の算定や可視化に向けて、クラウドサービス上で様々な排出量削減施策や知見を提供する試みは、その好事例となります。

また、「新オートメーション事業領域」「環境・エネルギー事業領域」という成長領域の目標を定め、展開施策を強化・加速し、社会の脱炭素化への貢献、持続可能な社会への「直列」に繋がる貢献を明確に進めるために、2022年4月に全社組織として新たに「GX推進部」を設置し、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進してまいります。

※5 カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。

※6 ‌GX(グリーントランスフォーメーション):カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会システムの変革。

2[海外事業]

海外市場におきましては、事業成長と収益拡大を支えるための更なる事業基盤強化策の一つとして、各国や地域の市場環境に対応し、付加価値の高い特長ある新製品・ソリューションの提案を継続的に強化し、グローバルでの事業拡大を目指します。東南アジア地域においては、シンガポールを拠点とする東南アジア戦略企画推進室により、同地域での横断的な事業推進・戦略企画・経営管理を加速させております。

BA事業では、海外市場でのシェア拡大に向け、次世代ビルディングオートメーションシステムを軸に、国内事業モデルでの強み(省エネルギーのアプリケーション、エンジニアリング・サービス力)を展開し、各国の事業環境・事業基盤に応じた施策を実施するとともに、ライフサイクル型ビジネスモデルの段階的な強化に努めております。また、海外向け統合型ビルディングマネジメントシステム(IBMS)※7に向けた新たなデジタルソリューションの開発をシンガポールで開始いたしました。

AA事業では、海外での戦略地域の人員増強や管理システムの導入等による営業体制強化や営業活動の質の改善を継続し対象顧客を拡大しております。また、主要製品のリニューアルや戦略製品の投入、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断等、新しいオートメーション領域の開拓を進めてまいります。

LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域で事業展開する欧州のアズビルテルスター有限会社において、製薬市場での製薬設備需要の増加を背景に、ワクチン等の医薬品製造関連ソリューションの提供を継続してまいります。

以上に加えて、azbilグループの海外子会社における経営管理面におきましても、リモート管理体制の強化に加えて、現地法人の評価体制を拡充するなど、引き続きグループ・ガバナンスを強化し、各社の堅確な体制構築を進めてまいります。

※7 ‌IBMS(Intelligent Building Management System):大規模複合施設の各種設備管理システムを一括管理し、効率的で高品質な設備管理やエネルギー管理、テナント情報の管理等を実現するシステム。

3[生産・開発]

azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内では、生産機能の湘南工場への一拠点化を完了し、藤沢テクノセンターにおける技術開発機能との連携を強化したグループ内のマザー工場として機能整備を推進中です。また、藤沢テクノセンターにつきましてはクラウドやAIを活用した先進的なシステムソリューションやMEMS技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力を一層強化するための中核研究開発拠点として、センター内に新棟を建設、本年竣工予定です。海外では、異常予兆検知や調節弁の診断サービス等、IoT・AI技術を活用した次世代インテリジェントサービス提供を目的に、タイにてSolution and Technology Centerが稼働中です。また、グローバルでの需要拡大に対応した生産能力拡大、生産工程の高度化と更なる自動化の推進を目的に、中国大連生産子会社に新工場棟を新設し、日本、タイ、中国を3極とした生産体制を強化しました。

なお、サプライチェーンや部材調達等の混乱が続き、世界的なインフレーションの影響も高まりつつあり、それらの影響の長期化の可能性もあると認識しております。生産のオペレーションを改善しながらBCP向けの部品在庫の活用、市場流通品の確保、代替部品への切り替えや設計変更等の対応を行い、サプライチェーン各社と連携して、生産の継続及び製品の納期への影響軽減のための取組みを継続してまいります。

4[経営管理]

グループ経営の推進とガバナンス体制の充実を図るとともに、リスク管理(品質・PL、防災・防疫・BCP、情報)、コンプライアンス(企業倫理・法令遵守)、人を重視した経営、地球環境への貢献及び社会貢献を重点取組み領域として、azbilグループを挙げてCSR経営の推進に継続して取り組んでおります。

経営管理面では、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用も視野に入れた会計水準の向上と、それに伴う内部統制の強化を進めてまいります。また、経営の公正性、中立性及び透明性を高めるべく、コーポレートガバナンス・コードへの対応を継続しながら、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するよう、全てのステークホルダーの皆様との間で建設的な対話を進めるための体制整備を積極的に進めております。

サステナビリティに向けて、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対しても積極的に取組みを進めております。E(環境)に関しては、TCFDの国際的な枠組みに賛同表明し、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標について有価証券報告書等で開示するほか、自らの事業活動に伴う温室効果ガス排出量(スコープ1+2)に加えてサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(スコープ3)削減目標を設定し、その実現に取り組んでおります。S(社会)については、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」に係わる「国連グローバル・コンパクト」に署名し、中期経営計画において人的資本・知的財産への戦略的検討を行っております。コーポレート・ガバナンスについては前述のとおり「指名委員会等設置会社」へ移行する方針を取締役会において決議しております。この他、実効的な統合リスク管理の構築を目的として、サステイナビリティ推進本部内に、「CSR・リスク管理部」を設置いたしました。

これらの取組みの結果、2021年度も年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が選定した4つのESG指数※8の構成銘柄に選定されております。また国際環境非営利団体であるCDP※9により、「気候変動」に対する取組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価されAリスト(最高評価)に選定されました。

※8 ‌ESG指数:FTSE Blossom Japan Index、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)、S&P/JPXカーボンエフィシェント指数。

※9 ‌CDP:企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。2000年に英国に設立され、110兆米ドルを超える資産を保有する590強の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を介して、企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護を働きかけている。

(ご参考) 当社のコーポレート・ガバナンスの取組みについて

当社は、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応えるため、法令・定款の遵守のみならず、企業倫理に基づく社会的責任の遂行と社会貢献責任を全うしつつ、効率的で透明性の高い経営によって企業価値の継続的な向上を果たすことが、当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方であり、経営上の最重要課題と位置付けております。

<企業統治の体制>

経営の基本方針の決定、法令で定められた事項及び重要事項の決定、業務執行状況の監督を行う取締役会と、業務執行を担う執行役員制度を設けて機能分離を行うことにより、迅速な業務執行体制を構築するとともに業務執行状況の監督機能をより強化しております。

取締役会は原則月1回開催し、業務執行を担う執行役員制度におきましては、役付執行役員と監査役会の代表で構成する経営会議を月2回開催し、迅速な意思決定と執行の徹底により事業推進力の強化を図っております。

2022年3月31日現在で取締役は11名が選任されており、当社事業及び経営に経験を積んだ業務執行に携わる取締役6名と、独立性があり、幅広い経験や優れた専門性・知見を有し、国際性やジェンダー等の多様性に富む独立社外取締役を5名選任しており、取締役会における独立社外取締役の割合は3分の1を超えております。これらの独立社外取締役は、取締役会にて意思決定を行う際、適切な監督・助言を通じ当社の企業価値の向上に尽くしているほか、代表取締役社長とも定期的に意見交換を行っております。また、取締役及び監査役を対象に取締役会の実効性に関する自己評価・意見を収集したうえで、取締役会において現状の評価と課題の共有を行い、更なる実効性の向上を図っております。なお、2021年度の評価にあたっては第三者機関を活用し、取締役会実効性評価のプロセスのより客観的な検証を実施いたしました。また、当社は、2021年5月14日開催の取締役会において、当社の中期経営計画の実現等、経営戦略に照らして、取締役に期待するスキル等を定め、現在の取締役会における独立性・多様性・期待するスキルを確認しております。

さらに当社は、取締役会の諮問機関として、任意の「指名・報酬委員会」を設置しております。本委員会は、会社の永続的な発展と中長期的な収益性・生産性を高めることに資するため、役員の指名及び報酬の決定プロセスについて、より高い公正性・客観性・透明性を確保することを目的としております。本委員会では、取締役候補者、代表取締役候補者の選任及び社長/CEO候補者、取締役会議長候補者、役付執行役員候補者等の選任並びに役員報酬体系、報酬制度、役員報酬体系に基づく基本報酬額、個人業績評価、定性的な項目の進捗状況評価、個人の賞与支給額及び取締役報酬枠の改定等を審議するのみならず、社長/CEO、取締役、役付執行役員等の解任及び代表取締役、取締役会議長の解職並びに後継者の育成等に関する事項についても審議を行うこととしております。本委員会の委員長は、独立社外取締役の中から互選にて定め、委員の過半を独立社外取締役で構成する規定としており、現在、田辺克彦氏(独立社外取締役)が委員長を、伊藤武氏(独立社外取締役)、藤宗和香氏(独立社外取締役)、曽禰寛純氏(代表取締役)及び山本清博氏(代表取締役)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。

2021年度は、指名・報酬委員会を7回開催し、2021年5月には、執行を兼務する取締役と執行役員の2020年度個人業績目標に対する結果の評価と個々の賞与支給額、並びに執行を兼務する取締役及び社外取締役の2021年度の基本報酬額の審議を行いました。また、スキルマトリックスの事業報告への掲載、常勤役員の外部団体役職兼任についても審議いたしました。2021年8月、9月、11月には、指名・報酬委員会規程の改定、後継者育成計画の運用状況と育成状況、役員報酬制度改定について審議・確認いたしました。2021年12月には、2022年度の役員体制の検討状況・進め方について確認し、2022年2月には、指名委員会等設置会社への移行に伴う新役員体制案の検討・提案プロセスを確認したうえで、2022年度の役員体制及びグループ会社の役員体制について審議いたしました。また、あわせて株式報酬制度導入についても審議いたしました。2022年3月には、国内外グループ会社の役員体制及びグローバル人材制度の運用状況について審議・確認いたしました。なお、2021年6月、2022年2月の取締役会において、指名・報酬委員会の活動状況について報告いたしました。

また、当社は、監査役会設置会社であり、2022年3月31日現在で当社の監査役は、常勤監査役2名と社外監査役3名で構成されております。このうち常勤監査役松安知比古氏は、長年当社の経理業務に携わった経験があり、また、監査役藤本欣哉氏は、公認会計士としての豊富な経験と高い見識を持っており、さらに監査役佐藤文俊氏は他事業会社にて長年経理財務管掌役員として財務諸表等の作成の責任者等に従事した経験があり、財務及び会計に関する相当程度の知見を有するものであります。また、監査役の職務を補助する専任の組織として監査役室を設置し、3名の専任者により監査役の職務遂行を補助しております。

監査役会は原則月1回開催し、必要に応じて随時開催しております。当事業年度では合計14回開催し、5名の監査役はいずれの監査役会にも出席いたしました。監査役会の主な決議事項及び報告事項は次のとおりです。

決議事項:‌監査役会監査計画・監査方針・職務分担、会計監査人の報酬同意、会計監査人の評価及び再任・不再任、期末監査報告書等

報告事項:‌四半期の各監査役活動報告、四半期毎の決算監査報告、会計監査人からの監査報告(監査上の主要な検討事項に関する対応状況を含む)等

また、監査役会として代表取締役等との意見交換会及び社外取締役との連絡会を定期的に実施いたしました。加えて監査役会の実効性評価を期末に実施し、監査役会として当事業年度の監査活動の振り返りを行うとともに、社外取締役との連携方法やリモート調査方法、重点監査項目に関する評価内容を踏まえ、翌事業年度の監査計画における監査活動項目、重点監査項目に反映させ、監査役会の実効性を高めております。

常勤監査役は、取締役会及び経営会議等への出席、主要事業所・子会社の調査及び主要部門のヒアリング、重要会議の議事録ほか重要書類の閲覧等の監査活動を行い、その内容を適時に社外監査役と共有いたしました。社外監査役は、取締役会に出席し独立役員の立場で意見を表明したほか、それぞれの知見と経験を活かし、常勤監査役による部門・事業所・子会社の調査にも適宜参加いたしました。監査役は、会計監査人との定期的な会合に参加し、期初には監査計画、重点監査事項等について、期中・期末には相互の監査結果を共有し、監査上の主要な検討事項(KAM)の項目・内容等の検討状況の報告を受け、課題の共有化と情報交換を行っております。内部監査部門との定期的な会合においても、期初には監査計画、重点監査事項等について、期中・期末には相互の監査結果を共有するほか、グループ子会社監査役より子会社の監査結果を確認するなど連携を密にし、監査の実効性と効率の向上を図っております。

前事業年度に引き続き、監査役は、取締役会や経営会議等を通じて、新型コロナウイルス感染症への対応状況のモニタリングを行いました。国内の部門・事業所の調査は、新型コロナウイルス感染状況により往査とウェブ会議システムによるリモート調査を使い分け、また海外子会社についてはリモート調査を行ったほか、内部監査部門が実施したリモートによる内部監査結果のヒアリング等により補完的な手続を行いました。

当社は、会社法第430条の3第1項に規定する役員等賠償責任保険契約を保険会社との間で締結しており、その被保険者の範囲は当社及び子会社の取締役、監査役及び執行役員です。被保険者が職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生じることのある損害を当該保険契約により保険会社が填補することとしております。ただし、被保険者の職務の適正性が損なわれないようにするための措置として、被保険者の故意、違法な私的利益供与、犯罪行為等に起因する損害については、填補の対象外としております。なお、被保険者は保険料を負担しておりません。

社外取締役及び社外監査役の選任にあたっては、当社は独自の独立性判断基準を定めております。当社の社外取締役及び社外監査役はこの独立性判断基準を満たしており、一般株主と利益相反の生ずるおそれがなく、いずれも充分な独立性を有していることから、東京証券取引所に対し、独立役員として届け出ております。

当社と社外取締役及び社外監査役は、会社法第427条第1項の規定に基づき、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する契約を締結しております。当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、法令が定める最低責任限度額としております。なお、当該責任限定が認められるのは、当該社外取締役又は社外監査役が責任の原因となった職務の遂行において善意であって、かつ重大な過失がないときに限られます。

また、グループ一体となったコンプライアンス体制の整備について、当社では信頼される企業グループを目指し、法令遵守を含む、役員及び社員の行動指針として、「azbilグループ行動基準」を制定し、反社会的勢力との一切の関係の遮断をはじめとする企業の公共性、社会的責任の遂行や公正な取引の遵守、人間尊重の社会行動、会社財産の管理・運用及び環境保護の遂行を通して企業倫理の確立による健全な事業活動に取り組んでおります。この理念を実践するために「企業行動指針」を改定し、またSDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)に向けたazbilグループのSDGs目標(基本目標とターゲット)を定めております。SDGsを新たな道標とし、理念、行動指針、行動基準、経営戦略までを持続可能な社会に対して「直列」に繋げ、社会課題の解決と持続可能な成長の両立の実現を目指してまいります。また、業務運営を適正かつ効率的に遂行するために、会社業務の意思決定及び業務実施に関する各種社内規程の制定等により、職務権限の明確化と適切な牽制が機能する体制を整備しております。内部統制機能としては、社長直属部門であるグループ監査部が、本社部門、各カンパニー及びグループ各社の経営諸活動の全般にわたる管理・運営の制度及び業務遂行・事業リスク・コンプライアンス・内部統制システム等の内部監査を定期的に実施しており、監視と業務改善に向けて具体的な助言・提案を行っております。また、金融商品取引法における内部統制への対応を強化するとともに、当社グループ全体のコンプライアンス活動を推進するため、当社担当役員を総責任者に、各社のコンプライアンス担当役員をメンバーとしてCSR活動を推進するための恒常的な組織を設置し、グループ全体の活動計画の策定、進捗管理を行うとともに、子会社に対する指導を行っております。さらに、内部通報制度による不祥事の早期発見の体制も整えております。また、業務執行全般にわたり適宜、顧問弁護士、公認会計士等、社外の専門家の助言及び支援を受けております。

なお、当社は、前述のとおり、取締役会の監督・監査機能強化、経営の透明性や健全性の強化、執行の責任体制の明確化等に取り組んでまいりました。

今般、コーポレート・ガバナンスの更なる改革を進めることを目的として、2022年2月25日開催の取締役会におきまして、過半数の社外取締役によって構成される3つの委員会を有し、かつ過半数を社外取締役が占める取締役会から法的に明確な責任を負う執行役に大幅に業務執行権限を委譲可能とする「指名委員会等設置会社」へ移行する方針を決議いたしました。なお、当社は、指名委員会等設置会社への移行を条件として、信託を活用した役員向け株式報酬制度を導入する予定です。これに伴い、本定時株主総会以降に開催される取締役会及び報酬委員会での決議をもって新たな役員報酬方針の策定を予定しております。

  • ※‌3つの委員会:指名委員会、監査委員会、報酬委員会を指しており、それぞれの役割は以下のとおりです。なお、指名委員会等設置会社への移行は、本定時株主総会で必要な定款変更のご承認をいただくことを条件としております。
    • ・‌指名委員会:株主総会に提出する取締役の選解任案の決定、並びに法定委員会(指名・監査・報酬)の委員の選定・解職、執行役の選解任及び後継者計画に関する事項等の審議を行う。
    • ・‌監査委員会:執行役・取締役の職務執行に関する監査・監査報告の作成、会計監査人の選解任・不再任に関する議案内容の決定、及び組織的監査の推進等を行う。
    • ・‌報酬委員会:取締役・執行役の報酬制度の方針の決定及び個人別の報酬の決定、並びに報酬制度制定・改廃等その他役員報酬に関する審議を行う。

連結計算書類