事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)

SUBARUグループの現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の影響によって厳しい状況が続きました。経済活動の段階的な再開とともに一部では持ち直しの動きがみられるものの、自動車業界では第4四半期以降の世界的な半導体の供給不足などにより、依然として先行きの見通せない不透明な状況が続いています。

このような環境のなか、当社グループではお客様やお取引先様、従業員の健康と安全を第一に新型コロナウイルス感染症の予防と拡大防止にグループ一丸となって取り組むとともに、中期経営ビジョン「STEP」を推進してまいりました。最重要テーマの一つである「組織風土改革」では、「意識を変え、行動を変え、会社を変える」を行動指針として掲げ、コロナ禍による働き方改革などの環境変化を従業員一人ひとりの意識変革につなげています。また、ブランドの根幹である信頼をより強固にするための「品質改革」では、品質最優先の意識の徹底と体制強化を土台として、開発・生産の各段階においてプロセスの変更や新たな仕組みの構築などの取り組みを進めています。「SUBARUづくりの刷新」では、「安心と愉しさ」を支える安心・安全性能のさらなる進化や環境対応などへの取り組みを進め、2020年の秋に発売した新型「レヴォーグ」に安全機能をさらに高度化した新世代の「アイサイトX」を搭載しました。

当期の連結決算は、重点市場である北米の販売を中心に第2四半期以降は新型コロナウイルス感染症の影響から回復傾向となり、第3四半期には前年同期を上回る水準で推移しました。しかし、第4四半期には半導体の供給不足により生産が減少しました。この結果、自動車売上台数の減少により売上収益は2兆8,302億円と前期に比べ5,139億円(15.4%)の減収となりました。

利益面につきましては、販管費の圧縮や保証修理費の減少により諸経費等が減少したものの、自動車売上台数の減少により、営業利益は1,025億円と前期に比べ1,079億円(51.3%)の減益、税引前利益は1,140億円と前期に比べ937億円(45.1%)の減益、親会社の所有者に帰属する当期利益も765億円と前期に比べ761億円(49.9%)の減益となりました。

事業別の概況

売上高
前期比 %減
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事業別
売上高構成比
%

重点市場である米国の自動車全体需要は、約1,500万台と前期を10%弱下回りました。また、国内の自動車全体需要は、約470万台と前期を8%弱下回る結果となりました。

このような事業環境のなか、第1四半期に受けた新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は大きいものの、海外では重点市場である北米で「クロストレック(日本名:SUBARU XV)」などを中心に小売販売は堅調に推移しております。また、国内においては「2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した新型「レヴォーグ」が販売に寄与しました。

クロストレック
レヴォーグ

以上の結果、売上台数につきましては、海外は75.8万台と前期比15.0万台(16.5%)の減少、国内は10.2万台と前期比2.4万台(19.1%)の減少、海外と国内の合計は86.0万台と前期比17.4万台(16.8%)の減少となりました。

売上収益は2兆7,375億円と前期に比べ4,564億円(14.3%)の減収となりました。また、セグメント利益は1,091億円と前期に比べ912億円(45.5%)の減益となりました。

売上高
前期比 %減
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事業別
売上高構成比
%

新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受け、「ボーイング787」および「ボーイング777」などの引き渡しが減少したため、売上収益は877億円と前期に比べ544億円(38.3%)の減収となりました。また、セグメント損失につきましては、98億円と前期に比べ149億円の減益となりました。

このような事業環境を踏まえ、事業構造のダウンサイジングや経費削減、事業部門をまたいだ一時的な配置転換をはじめとする体質強化活動に航空宇宙事業部門一丸となって取り組み、着実に成果も出てきております。必ず回復する航空機需要に備えつつ、ヘリコプター事業の拡大など事業構造の立て直しを図ってまいります。

SUBARU BELL 412EPX(イメージ)

売上高
前期比 %減
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事業別
売上高構成比
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売上収益は50億円と前期に比べ30億円(37.5%)の減収となりました。また、セグメント利益は、31億円と前期に比べ5億円(14.2%)の減益となりました。

対処すべき課題

①コロナ禍での事業継続計画(BCP)への対応

当社は新型コロナウイルス感染症発生の初期から、CEOをトップとした「新型肺炎特別対策本部」を設置し、CRMOの全体統括のもと、お客様やお取引先様、当社グループの従業員の感染防止と安全確保に努めつつ、事業活動の継続への対応も行っております。

従業員の感染予防については、業務出張など往来の禁止および抑制、大人数が集まるイベントへの参加の自粛ならびに従業員とその家族に対しての健康状態の把握や支援など、健康と安全確保を最優先に取り組んでおります。また、リスクマネジメント・コンプライアンス室、人事部、総務部、IT戦略本部など関係部門が連携し、ITインフラの強化やコアタイムの廃止を含む就労規則の変更などニューノーマルの執務体制への移行を進め、東京地区を中心に在宅勤務を積極的に導入し、安全確保と働き方改革の両立を行ってまいりました。

さらに、新車発表イベントなどをオンライン化することにより、感染予防だけでなく、SUBARUの提供価値をより多くのお客様に直接触れていただく機会を創出してまいりました。

今後も新型コロナウイルス感染症の状況を注視し、ステークホルダーの安全確保とSUBARUブランドの発信の強化に努めてまいります。

また、当社の主力である海外市場を中心に、新型コロナウイルスによる自動車需要の減少が第2四半期以降、徐々に回復する一方で、自動車業界を含む世界的な半導体不足に直面しております。

当社においても、お取引先様から調達している部品の一部で供給に支障が出ており、一部の工場で1月には2日間、また、4月10日以降に操業を停止するなどの生産調整を行いました。

今後の部品の供給は不透明な状況ですが、生産する車種を柔軟に変更するなどの対応で、お客様への商品の提供に努めてまいります。

需要が激減した航空宇宙事業部門につきましては、事業部門を越えた一時的な人員の配置転換のほか、事業部門内における固定費の圧縮と雇用の確保の両立を強力に推進しております。今後、航空機需要が回復した際には速やかに対応いたします。

②中期経営ビジョン「STEP」の推進

当社は2018年7月に発表した中期経営ビジョン「STEP」の進捗報告を2021年5月に行いました。「STEP」の各取り組みのなかで重点取り組みとした「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUづくりの刷新」について、これまでの実績と今後の取り組みの方向性は以下のとおりです。

●組織風土改革

「意識を変え、行動を変え、会社を変える」を合言葉として、全社での活動を推進しております。具体的には「風通しの良いなんでも言える会社」を目指し、「役員講話リレー」「部長対話リレー」「職場対話」を2018年7月以来、継続して実施しております。「意識を変える」については、コロナ禍を契機としたITツールの急速な活用が追い風になった側面もあり、部門をまたいだコミュニケーションが自発的に活性化しております。経営課題の共有から、外を知るための勉強会など従業員が意識を変えるための気付きの場が急速に増えてまいりました。

今後は、個の成長を促し、業務のアウトプットの向上につなげることを通して、従業員一人ひとりに自らの成長や働き甲斐を実感させ、従業員とのエンゲージメントを高めるフェーズに移行してまいります。

Withコロナ時代の新たな働き方にも柔軟に対応しつつ、デジタル技術やスキルアップのための人財投資も積極的に実行してまいります。組織風土についても、単に「風通しの良い」だけでなく、「チャレンジする風土」に変えるべく、2021年度より新人事制度を導入いたしました。これらの活動をさらに加速させてまいります。

●品質改革

品質改革は3つの切り口にて活動を推進しております。1つ目は、品質改革の土台としての「品質最優先の意識の徹底と体制強化」。2つ目は、生産準備段階以降の領域において、不具合の流出防止を目指す「つくりの品質の改革」。この領域には市場で発生してしまった不具合に対して、いかに早く解決策を打つか、といったアフター領域での対応スピードも含まれます。3つ目は、初期の検討段階から開発・設計に至るプロセスを改革する「生まれの品質の改革」です。

これら3つの領域での品質改革は着実に進んでおりますが、まだ課題は残っており、お客様や販売店に対してその成果を十分に示すことができていない状況にあります。品質の高さはブランドの根幹であり、付加価値戦略の源泉でもあります。新技術への対応を含めてさらに活動を推し進め、必ず実績として示していく所存です。

●SUBARUづくりの刷新

当社は、2020年1月の技術ミーティングにおいて「2030年死亡交通事故ゼロを目指す」「個性と技術革新で脱炭素社会へ貢献していく」ことを発表いたしました。死亡交通事故ゼロに向けては予防安全、衝突安全を進化させるとともに、事故自動通報の高度化で「つながる安全」も強化し、一人でも多くの命を守ることに邁進してまいります。今後は知能化をさらに進め、高度なセンシング技術とAIの判断能力を融合し、あらゆる場面での安全性を高めてまいります。

また、脱炭素社会への貢献については、同ミーティングで設定したCO2削減に向けたロードマップをベースとしつつ、カーボンニュートラル実現への貢献を目指し、取り組みを加速させてまいります。併せて、モーター駆動が主流となる電動化の時代においても、AWD(全輪駆動)性能、動的質感をさらに進化させることで「SUBARUらしさ」を強化してまいります。

③アライアンスの深化

トヨタ自動車株式会社とは協業を通じて刺激を与えあい、切磋琢磨する関係を深化させています。

共同開発車の新型「SUBARU BRZ」および2022年の年央ごろに販売予定のSUBARU初のグローバルEV「SOLTERRA(ソルテラ)」は、両社の強みを持ち寄り、共通の想いである「もっといいクルマづくり」を具現化しております。

自動車業界を取り巻くイノベーションの進化が加速しており、いわゆる「CASE」領域での対応が求められております。電動化技術、コネクテッド領域、自動運転領域などでは協業を深化・拡大させ、変化への柔軟な対応を図ってまいります。

連結計算書類