事業報告(2019年4月1日~2020年3月31日)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過及び成果

当連結会計年度におきましては、高齢化等を背景として当社が扱う医療機器に関する症例数の増加が継続している一方、国による医療費の抑制策の下で、2019年10月には消費税増税に伴う保険償還価格の改定が行われ、当社が取り扱う医療機器の全般において価格が引下げられました。こうした事業環境の中で、当社といたしましては、2019年5月に中期経営計画を更新し、中期的な成長に向けた基本方針として「自社製品のさらなる拡充」、「仕入商品のパイプライン確保」、「研究開発・生産体制の強化」、「循環器以外の新領域の開拓」、「海外展開」という5項目を設定し、取り組んでまいりました。

本基本方針に基づく取り組みの状況といたしましては、EP/アブレーションを中心とする市場の拡大を受け「自社製品のさらなる拡充」が安定的に進捗しております。また、「仕入商品のパイプライン確保」につきましては、リズムディバイスにおいて、CRM(Cardiac Rhythm Management:心調律管理)関連商品に関して、2019年9月からボストン・サイエンティフィック社(以下、「BSC社」という。)製品の全面的な販売を開始し、長らく課題であった頻脈治療領域の強化が実現いたしました。また、「研究開発・生産体制の強化」につきましても、自社で用地取得から手掛けた海外工場としては初となるマレーシア工場が2019年11月に竣工したことに加え、国内でも小山ファクトリーの第2棟が2020年2月に竣工し、生産体制の一層の拡充が進展しております。

さらに「循環器以外の新領域の開拓」として、2019年12月より肝癌治療用ラジオ波焼灼システムの販売を開始し、消化器領域の市場開拓に注力しております。また、「海外展開」につきましても北米市場への第一歩として、一部の限定的なモデルではあるものの、EPカテーテルの半完成品の輸出を開始したほか、韓国における販売拠点として新たにJLL Korea Co.,Ltd.を設立し、海外における販売体制の構築を図っております。

販売状況といたしましては、リズムディバイスにおいて、2019年9月より、ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社(以下、「BSJ社」という。)との独占販売契約に基づき、BSC社製のCRM関連商品の全面的な販売を開始し、早期に頻脈治療領域における販売体制を構築したことにより、売上高が前期に比べ倍増いたしました。また、EP/アブレーションにおきましては、心房細動のアブレーション治療の症例数の増加を受けて、当社の自社製品でありオンリーワン製品である心腔内除細動カテーテルをはじめとする心房細動治療の関連商品が伸長したほか、治療用の医療機器の強化を図るために2018年に導入した内視鏡レーザーアブレーションカテーテルの普及に努めてまいりました。

一方、外科関連におきましては、オンリーワン製品であるオープンステントグラフト等の販売が堅調であったものの、2019年3月の胸部用ステントグラフトの販売終了および、2019年5月の人工心臓弁関連商品の販売終了による影響を吸収するまでには至らず、減収となりました。また、インターベンションにおきましては、保険償還価格引下げによる影響等があったものの、薬剤溶出型冠動脈ステントの拡販が奏功したことにより売上高が増加いたしました。以上により、当期の売上高は、517億6千1百万円(前期比13.7%増)となりました。

利益面におきましては、2019年10月の保険償還価格の引下げによる影響に加え、BSC社製のCRM関連商品の販売開始により、売上規模が大幅に拡大した一方、仕入商品と比べ利益率の高い自社製品の売上構成比は低下いたしました。また、他のBSC社製品に先行して販売した期間におけるS-ICDは、一時的に利益面への寄与度が低かったこともあり、売上総利益率は前期に比べ4.7ポイント低下いたしました。

販売費及び一般管理費におきましては、自社製品の一層の拡充のための研究開発費や、BSJ社に対する営業支援金の支払や契約金の償却費用が増加したことから、当期の営業利益は104億3千4百万円(前期比0.9%減)となりました。

これに受取利息や人工心臓弁関連商品の取り扱い終了に伴う独占販売契約終了益等を営業外収益として8億9千1百万円、支払利息及び通貨スワップ取引に関するデリバティブ評価損等を営業外費用として9億円計上したことから、当期の経常利益は104億2千5百万円(前期比3.5%減)となりました。

さらに固定資産売却益を特別利益として3百万円、また、固定資産売却損等を特別損失として4百万円計上したことから、当期の親会社株主に帰属する当期純利益は77億4千8百万円(前期比0.3%増)となりました。

品目別の販売状況は以下のとおりです。

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事業区分別の概況

リズムディバイス

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リズムディバイスにおきましては、2019年9月にCRM領域の全取扱商品に関して、旧取引先製品からBSC社製品への全面的な切り替えが完了したことで、当社の不整脈治療領域における事業基盤の強化が大きく進展いたしました。

徐脈の治療に用いられるペースメーカ関連におきましては、BSC社製品の販売開始後、同社製品の有する長い電池寿命やMRI撮像条件の拡大等の特長を訴求し拡販に努めたことにより、大幅に売上高が増加いたしました。

また、頻脈の治療に用いられるICD関連につきましては、2019年4月より先行販売を開始したオンリーワン商品であるS-ICD「EMBLEM MRI S-ICD(エンブレム MRI S-ICD)」が引き続き順調に推移いたしました。さらに、BSC社製の一般的なICD(植込み型除細動器)及びCRT-D(除細動機能付き両心室ペースメーカ)につきましても、頻脈関連商品の販売体制を迅速に構築したことにより、「RESONATE EL ICD(レゾネート EL ICD)」、「RESONATE X4 CRT-D(レゾネート X4 CRT-D)」を中心に大幅に売上高が増加いたしました。

以上により、リズムディバイスの売上高は、118億6千6百万円(前期比102.4%増)となりました。

EP/アブレーション

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EPカテーテルにおきましては、心房細動のアブレーション治療の症例数の増加を背景に自社製品でありオンリーワン製品でもある心腔内除細動カテーテル「BeeAT(ビート)」の販売が堅調に推移いたしました。その一方で一般的なEPカテーテルにつきましては、競合製品の影響等により前期に比べ販売数量が微減となりました。また、食道温モニタリングカテーテルにつきましては、競合製品等による影響があったものの、通期では概ね前期の水準を維持いたしました。また、仕入商品であり、国内では当社のみが販売している高周波心房中隔穿刺針「RFニードル」につきましても、症例数の増加を背景として販売数量が増加いたしました。

アブレーションカテーテルにおきましては、従来からの高周波を用いるアブレーションカテーテルの販売数量が前期に比べ減少いたしました。その一方、内視鏡レーザーアブレーションカテーテル「HeartLight(ハートライト)」につきましては、医療現場への浸透が一層進み、前期に比べ販売数量が増加いたしました。本商品は、焼灼部位を内視鏡で確認することができ、症例に合わせたきめ細かな治療が可能であるという特長を有しており、引き続き医療現場への普及を図ってまいります。

以上により、EP/アブレーションの売上高は、246億9千6百万円(前期比7.1%増)となりました。

外科関連

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人工血管関連におきましては、胸部大動脈疾患の開胸手術に用いられる医療機器であり、当社のオンリーワン製品であるオープンステントグラフト「FROZENIX(フローゼニクス)」が、開胸手術の低侵襲化に寄与する医療機器として医療現場へ普及し、緊急性の高い手術においても積極的に使用されていることから販売数量が前期に比べ増加いたしました。また、同じく自社製品である人工血管につきましても、オープンステントグラフトと併用されることによる相乗効果のほか、腹部用製品における拡販等により、前期に比べ販売数量が増加いたしました。

大動脈疾患の経皮的な治療に用いるステントグラフトにつきましては、腹部領域を対象とした商品である「AFX2ステントグラフトシステム」の販売が堅調に推移したものの、胸部領域を対象とした商品の取り扱いを2019年3月に終了したことにより、前期に比べ売上高が減少いたしました。

以上のほか、人工心臓弁関連商品につきまして、2019年5月末の仕入先との独占販売契約の終了による影響もあり、外科関連の売上高は101億6千6百万円(前期比13.3%減)となりました。

インターベンション

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バルーンカテーテルにおきましては、競合製品の影響により既存品の売上高が前期に比べ減少したものの、2019年10月より販売を開始した新製品「ignis(イグニス)」につきましては堅調に販売数量を伸ばしました。また、ガイドワイヤーにつきましては高い操作性を特長とする「Amati(アマティ)」が医療現場で高く評価されたことにより、前期に比べ売上高が増加いたしました。

その他の品目におきましては、薬剤溶出型冠動脈ステント「Orsiro(オシロ)」につきまして、海外の臨床試験で示された優れた性能を訴求するとともに、国内臨床研究等の取り組みを通じて、さらなる拡販に努めたことにより、前期に比べ販売数量が増加いたしました。また、同じくPCI(経皮的冠動脈形成術)治療の関連商品である、血管内圧測定用センサ付ガイドワイヤー「OptoWire(オプトワイヤ)」も売上高の増加に寄与いたしました。その一方で、貫通用カテーテルにつきましては競争環境の激化に伴い、前期に比べ売上高が減少いたしました。

消化器領域におきましては、不整脈治療における自社技術を応用し開発した肝癌治療用ラジオ波焼灼システム「arfa(アルファ)」の販売を2019年12月より開始しており、優れた性能を有する唯一の国産製品として市場の開拓に注力しております。

以上により、インターベンションの売上高は、50億3千2百万円(前期比3.3%増)となりました。

企業集団の財産及び損益の状況の推移

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対処すべき課題

1.経営方針

当社は最新最適な医療機器を提供することを通じて社会へ貢献することを経営理念としております。心臓循環器領域を主要な事業領域として、患者様や医療現場が求める優れた医療機器について、メーカーとして自ら開発・製造するとともに、専門商社として、海外メーカー等の先進的な医療機器をいち早く国内へ導入することにより、経営理念の実現に向けて取り組んでおります。

2.経営環境

当社が主に事業を行う国内の医療機器市場におきましては、高齢化によってその需要は高まっており、特に心臓循環器領域の治療については症例数の増加傾向が続いております。

その一方で、増加する医療費の抑制を目的とする国の施策の一環として、医療機器の公定価格である保険償還価格は継続的に引下げられており、当社が取り扱う医療機器の価格も低下傾向にあります。また、国内の医療機器業界には多くのグローバルメーカーが参入しており、新製品の開発競争も激しく、厳しい競争環境となっております。

3.経営戦略及び対処すべき課題
経営戦略

前述の経営環境の下、当社は国内で他に類を見ない、メーカー機能と商社機能を兼ね備えた独自のビジネスモデルを追求することにより、事業を拡大してまいりました。

医療の最前線で活躍する医師のニーズを、自社製品の開発に的確かつ迅速に反映し、海外メーカーにはないオンリーワン製品等を提供することにより、マーケットシェアを高めております。また、当社が中長期的に一層の成長を図るうえでは、海外市場の開拓が不可欠であると考えており、自社製品の海外輸出にも取り組んでおります。なお、自社製品は仕入商品と比較して収益性が高いことから、経営効率のさらなる改善を図る面においても重要であり、より一層の拡充に注力してまいります。

一方、仕入商品につきましては、主に海外の先端的な医療機器を導入し、最新の治療が受けられるようにすることは、心臓循環器領域を専門とする商社としての当社の役割であるとともに、自社製品だけでは実現が難しい専門領域における存在感を高めることにも重要な役割を果たしております。当社では仕入商品については原則的に海外メーカーと独占販売契約を締結しており、国内導入を行う上での薬事承認の取得に要する費用や、臨床研究及びマーケティング活動等の費用負担が生じる場合があるものの、国内における流通のみを担う二次代理店と比較し、仕入商品においても高い利益率を確保しております。

販売体制におきましては、当社は、独立系の医療機器商社としての長年の経験を通じて、医療現場との独自の緊密なネットワークを既に構築しております。さらに、外資系企業の多くが国内の事業拠点を集約する中、当社は国内事業拠点の拡充を行い、全国をきめ細かく網羅する販売網を通じて、迅速な商品の供給ときめ細かなサービス提供を行っております。

こうした医療機器を迅速に国内へ導入するための充実した薬事体制や、専門領域における豊富な知識と経験を有する販売体制といった、医療機器を扱うための強固な事業基盤を当社が既に構築していることは、日本市場へ進出を望む海外メーカーにとっても、当社が有用なパートナーとなりえることを示しており、当社が中長期的に商品パイプラインを確保するうえで重要な要素となっております。

対処すべき課題

前述の経営戦略に基づき、当社といたしましては2019年5月に中期経営計画を更新し、中期的な成長に向けた基本方針として「自社製品のさらなる拡充」、「仕入商品のパイプライン確保」、「研究開発・生産体制の強化」、「循環器以外の新領域の開拓」、「海外展開」という5項目を設定しております。各項目に対する取り組み状況は、以下のとおりです。

① 自社製品のさらなる拡充

医療現場とのネットワークを活用し、医師のニーズを迅速かつ的確に製品開発へ反映することにより、優れた医療機器を提供してまいります。また、自社製品は収益性が高く、経営効率を高めるうえでも重要性が高いことから、一層の拡充を図ってまいります。

当期におきましては、症例数の増加に伴いEP/アブレーションや外科関連を中心として自社製品が伸長したほか、海外への輸出、消化器領域の開拓にも注力することで、自社製品の販売規模拡大に取り組んでおります。

② 仕入商品のパイプライン確保

新規性が高く優れた医療機器を国内へ早期に導入することは競争優位性を高めるうえで不可欠でありますが、医療機器の国内導入には薬事承認が必要となり、長い期間を要す場合も多いことから、常に中長期的な視野に立ち、新規取引先の開拓を進めております。

当期におきましては、リズムディバイスにおいて、CRM関連商品に関して、2019年9月からBSC社製品の全面的な販売を開始し、長らく課題であった頻脈治療領域の強化が実現いたしました。

③ 研究開発・生産体制の強化

医療機器メーカーとしての競争優位性をさらに高めるため、自社製品の研究開発及び生産体制の一層の強化を図ってまいります。

既に2018年4月には研究開発拠点の拡充が完了しておりますが、当期におきましては、自社で用地取得から手掛けた海外工場としては初となるマレーシア工場が2019年11月に竣工したことに加え、国内でも小山ファクトリーの第2棟が2020年2月に竣工し、生産体制の一層の拡充が進展いたしました。

④ 循環器以外の新領域の開拓

循環器領域の医療機器の開発を通じて培ってきた独自技術を応用することにより他の治療領域の開拓を行ってまいります。既に2017年6月には大腸ステントの販売を開始することで消化器領域への進出を果たしております。

当期におきましては、2019年12月より肝癌治療用ラジオ波焼灼システムの販売を開始し、消化器領域の市場開拓に注力しております。今後もさらに新製品の開発・導入を行うことにより、循環器領域以外の新たな収益源の開拓を進めてまいります。

⑤ 海外展開

現在、EP/アブレーションや血液浄化関連製品等の一部について海外販売を行っておりますが、業績への寄与は限定的な規模に留まっております。自社製品は既に日本国内において高く評価され、市場シェアを獲得していることから、海外における流通体制の整備に取り組み、本格的な海外販売に向けた準備を進めてまいります。

当期におきましては、北米市場への第一歩として、一部の限定的なモデルではあるものの、EPカテーテルの半完成品の輸出を開始したほか、韓国における販売拠点として新たにJLL Korea Co.,Ltd.を設立し、海外における販売体制の構築を図っております。

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連結計算書類