事業報告(2020年4月1日~2021年3月31日)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過及び成果

当連結会計年度における販売の状況といたしましては、国の医療費抑制策の下、2020年4月に保険償還価格の改定が行われ、当社が取り扱う医療機器の全般において価格が引下げられました。また、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医療機関において緊急性の低い待機的症例が延期されたこと等により、症例数が減少いたしました。

リズムディバイスにおきましては、ボストン・サイエンティフィック社(以下、「BSC社」という。)製のCRM関連商品の販売が堅調に推移し、徐脈治療及び頻脈治療の商品の売上高はともに伸長いたしました。一方、EP/アブレーションにおきましては、心房細動のアブレーション治療の症例数は、2020年6月以降、新型コロナウイルスの影響から回復基調にあったものの、2021年1月以降の感染再拡大により通期としては概ね前期並みの水準となり、売上高は保険償還価格の引下げの影響もあったことから微減となりました。また、外科関連におきましては、オンリーワン製品であるオープンステントグラフトの売上高が大きく伸長いたしました。コロナ禍において治療時間の短縮が求められる中、手技の簡便さや患者様の負担が少ない等の特長が評価され一層の浸透が進みました。インターベンションにおきましては、消化器領域の自社製品が堅調に推移したものの、PCI関連の商品につきましては、保険償還価格の引下げ幅が大きかったことに加え、症例数が減少したため前期に比べて減収となりました。以上により、当期の売上高は51,286百万円(前期比0.9%減)となりました。

利益の状況といたしましては、2020年6月以降、症例数の回復に伴い、自社製品の売上高の増加により売上総利益率が改善傾向であったものの、当第4四半期連結会計期間における感染再拡大を受け、EP/アブレーション及びインターベンションを中心に症例数が減少し、自社製品比率の改善が進まなかったことから、売上総利益率は、前期に比べて0.5ポイント低下いたしました。

販売費及び一般管理費におきましては、新型コロナウイルスの影響により、営業活動等が抑制されたことを受けて、旅費交通費や広告宣伝費をはじめとする販売関連の費用が大幅に減少いたしました。これにより、ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社に対する営業支援金の支払や独占販売契約に基づく契約金の償却費用等の増加があったものの、販売費及び一般管理費は前期に比べ減少いたしました。

以上により、当期の営業利益は10,367百万円(前期比0.6%減)となりました。

また、受取利息325百万円、投資有価証券評価益388百万円等を営業外収益として1,031百万円計上した一方、支払利息183百万円、腹部用ステントグラフトの仕入先への貸付金等に対する貸倒損失448百万円等を営業外費用として879百万円計上したことから、当期の経常利益は、10,519百万円(前期比0.9%増)となりました。

さらに、固定資産売却益3百万円を特別利益として計上いたしました。一方で、2021年1月29日付「特別損失の発生及び業績予想の修正に関するお知らせ」にて開示いたしましたとおり、当社取引先2社に対する貸付金等について、第3四半期連結会計期間において貸倒引当金繰入額5,728百万円を計上いたしました。当該貸倒引当金の対象となった貸付金等について、当第4四半期連結会計期間において、債権放棄及びデット・エクイティ・スワップを実行したことにより、当期は債権放棄損2,347百万円、デット・エクイティ・スワップ損失2,389百万円、及び、残存する貸付金等に対する貸倒引当金繰入額1,226百万円等を特別損失として5,982百万円計上いたしました。

以上により当期の親会社株主に帰属する当期純利益は2,000百万円(前期比74.2%減)となりました。

品目別の販売状況は以下のとおりです。

事業区分別の概況

リズムディバイス

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徐脈の治療に用いられるペースメーカ関連におきましては、心臓ペースメーカ「ACCOLADE(アコレード)」が、長い電池寿命により評価され、前期に比べ売上高が増加いたしました。また、当社が過去に販売し患者様に植え込まれているペースメーカリードの一部について、「ACCOLADE」との組み合わせにおいても条件付MRI対応となる薬事承認を2021年1月に取得したことから、交換症例においても一層の拡販に努めてまいります。

頻脈の治療に用いられるICD関連におきましては、BSC社商品の販売を開始した2019年9月以降、ICD(植込み型除細動器)及びCRT-D(除細動機能付き両心室ペースメーカ)の販売数量が大幅に増加したことにより、売上高が伸長いたしました。なお、CRT-Dにつきましては、独自の患者モニタリング機能である「HeartLogic(ハートロジック)」を訴求することでシェア拡大を図ってまいります。

以上により、リズムディバイスの売上高は、13,248百万円(前期比11.7%増)となりました。

EP/アブレーション

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EPカテーテルにおきましては、当社のオンリーワン製品である心腔内除細動カテーテル「BeeAT(ビート)」の販売数量は2020年6月以降改善傾向であったものの、2021年1月以降の感染再拡大の影響により、概ね前期と同水準に留まりました。一方、一般的なEPカテーテルにつきましては、競合製品の影響に加えて保険償還価格引下げによる影響もあり、売上高は前期に比べ減少いたしました。

アブレーションカテーテルにおきましては、高周波を用いるアブレーションカテーテルが競合製品の影響等により前期に比べ売上高が減少いたしました。また、オンリーワン商品である内視鏡レーザーアブレーションカテーテル「HeartLight(ハートライト)」は新規施設の開拓が遅れていること等から、前期に比べ売上高が減少いたしました。2022年3月期第2四半期に発売予定の次世代品である「HeartLight X3(ハートライト・エックススリー)」は、手技時間の大幅な短縮が期待できることから、医療現場への浸透に向けた取り組みを進めてまいります。

その他の品目におきましては、スティーラブルシースの自社製品「Leftee(レフティー)」等が好調に推移いたしました。

以上により、EP/アブレーションの売上高は、23,863百万円(前期比3.4%減)となりました。

外科関連

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人工血管関連におきましては、コロナ禍において治療時間の短縮化が求められる中、当社のオンリーワン製品であるオープンステントグラフト「FROZENIX(フローゼニクス)」の評価が高まっていることから、前期に比べ販売数量が増加いたしました。また、腹部用ステントグラフト「AFX2ステントグラフトシステム」につきましても好調に推移いたしました。一方で、人工血管につきましては、販売数量は増加したものの、保険償還価格引下げの影響を受けたことから、売上高は前期に比べ僅かに減少いたしました。

なお、人工心臓弁関連商品につきましては2019年5月に販売を終了したほか、胸部用ステントグラフトにつきましても、一部施設で限定的に行っていた販売を2020年3月に終了いたしました。

また、血液浄化事業につきましては、当社が強みを持つ心臓血管領域等に経営資源を集中するため、事業譲渡を決定し、2021年4月に譲渡が完了いたしました。

以上により、外科関連の売上高は、9,969百万円(前期比1.9%減)となりました。

インターベンション

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PCI関連におきましては、薬剤溶出型冠動脈ステント「Orsiro(オシロ)」は、症例数の減少及び保険償還価格引下げの影響により、売上高が減少いたしました。一方、血管内圧測定用センサ付ガイドワイヤー「OptoWire(オプトワイヤ)」は新型モニターを導入し拡販に努め、前期に比べ売上高は増加いたしました。貫通用カテーテルにつきましては、2020年12月に契約期間満了により販売を終了いたしました。これらのことから、PCI関連の売上高は、前期に比べ減少いたしました。

その他の品目におきましては、消化器領域における自社製品であり、唯一の国産製品である肝癌治療用ラジオ波焼灼電極針「arfa(アルファ)」が2019年12月の販売開始以来、順調に販売数量を伸ばしており、売上高が増加いたしました。一方、大腸ステント「Jentlly(ジェントリー)」につきましては、新モデルを導入しサイズラインナップを拡充したことにより、採用施設数は増加したものの、症例数減少により売上高は減少いたしました。

以上により、インターベンションの売上高は、4,204百万円(前期比16.5%減)となりました。

企業集団の財産及び損益の状況の推移

対処すべき課題

当社が属する医療機器業界におきましては、急速に進む高齢化を背景として、医療に対する需要が増加する一方で、年々増加する国民医療費は医療保険制度の持続性にとって、大きな課題となっております。また、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、医療機関では感染対策が求められていること等から医療従事者の負担が増す一方で、外来及び入院患者数が減少していること等により、医療機関は厳しい経営環境に置かれております。

こうした中で医療機器メーカーには、治療効果に優れるとともに、患者様や医療関係者の負担の軽減といった医療課題の解決につながる医療機器の提供が求められております。このような社会的な要請に応えるため、医療機器メーカー各社は、新規性が高く優れた製品の開発を目指し研究開発に取り組むほか、新たな技術の獲得や新領域への参入などを目的として、M&Aや提携関係の構築等を活発に行っており、企業間の競争も厳しさを増しております。

当社はこうした事業環境に対応し、中長期における持続的な成長を果たすべく、2020年11月に新中期経営計画を策定し、2021年3月期から2025年3月期における業績目標として、売上高年平均成長率10%、営業利益年平均成長率15%、自社製品比率50%以上を掲げるとともに、目標達成のための重点課題として、次の3点を掲げております。

1.既存領域の基盤強化、安定成長の実現

2.コストコントロール、業務再構築による収益改善

3.消化器領域への展開、さらなる飛躍に向けた準備

これらの重点課題への取り組みの状況として、「1.既存領域の基盤強化、安定成長の実現」につきましては、リズムディバイスにおいて、2019年9月にCRM関連商品の取引先をBSC社に切り替え、商品ラインナップを拡充するとともに、販売体制を大幅に強化したことにより、長年の課題であった頻脈治療領域の成長を実現いたしました。これにより、同じく不整脈治療領域で自社製品に強みを持つEP/アブレーションと合わせて、不整脈疾患の全体を幅広くカバーする強固な事業ポートフォリオを構築いたしました。

2021年3月期におきましては、2021年1月からの新型コロナウイルスの感染再拡大による症例数の減少を受け、業績は目標とする水準に届いてはいないものの、依然として需要は底堅く、感染者数の減少により成長軌道へ回帰するものと考えております。今後は、リズムディバイス、EP/アブレーションの両領域において、より専門的なサービスの提供が可能な営業体制を確立するとともに、販売効率のさらなる向上に取り組んでまいります。

次に、「2.コストコントロール、業務再構築による収益改善」につきましては、従来の組織・業務のあり方を見直し一層の効率化を図るとともに、経営における情報技術のさらなる活用を目指して、基幹システムを刷新する取り組みを開始いたしました。また、コロナ禍で従来の営業活動が制限される中、医療従事者向けオンラインセミナーを積極的に取り入れる等、新たな営業スタイルの模索を進めております。さらに、外科関連におきましては、当社の他事業とのシナジー効果が見込めない血液浄化関連事業の事業譲渡を決定し、2021年4月に譲渡が完了いたしました。引き続き、当社の強みを発揮できる領域へ経営資源を集中し、資本効率の向上を目指してまいります。

さらに、「3.消化器領域への展開、さらなる飛躍に向けた準備」につきましては、消化器領域を心臓血管領域に次ぐ第2の成長分野として位置付け、循環器領域で培った独自の自社技術を消化器系製品に応用し、既存の他社製品と差別化可能な製品群の開発を進めております。当連結会計年度においては、消化器領域における初の自社製品である大腸ステントの新モデルを発売したほか、アブレーションカテーテルの技術を応用し開発した、肝癌治療用ラジオ波焼灼システムの拡販に取り組んでおり、採用施設数が着実に増加しております。2023年3月期には胆膵領域における新製品群を上市することで、消化器領域への本格参入を予定しており、販売体制の整備に取り組んでまいります。

連結計算書類