事業報告(2021年4月1日~2022年3月31日)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過及び成果

当連結会計年度における販売の状況といたしましては、新型コロナウイルスの感染拡大や競合他社との競争が激化したことから、売上高は前期と比べ概ね横ばいで推移いたしました。新型コロナウイルスに関しては、感染状況の悪化に伴い、一部の医療機関において病床確保の必要性や医療従事者の人員不足を背景に、緊急性の低い待機的症例を延期する等の対応がなされたことから、当社製品の販売にも一定の影響がありました。また、事業環境の変化に関しては、一部の主力製品における競合他社の新規参入があったことから、収益の伸びを抑制する要因となりました。

リズムディバイスにおいては、新型コロナウイルスの感染拡大の影響や競合他社の新製品の影響により、前期に比べやや減収となりました。EP/アブレーションにおいては、心房細動のアブレーション治療の症例数の回復を背景に、主力の自社製品の販売が堅調に推移したほか、2021年7月に発売した内視鏡レーザーアブレーションカテーテルの次世代品が寄与したことで、前期に比べ増収となりました。外科関連においては、人工血管やオープンステントグラフト等の自社製品が伸長したものの、2021年4月に血液浄化事業を譲渡した影響をカバーするには至らず、減収となりました。インターベンションにおいては、消化器領域の自社製品が大きく伸長したものの、PI(経皮的インターベンション)関連においては症例数の回復の遅れと競合他社との競争激化を背景に、前期と比べ減収となりました。以上により、当期の売上高は51,469百万円(前期比0.4%増)となりました。

利益の状況に関して、売上総利益率については、一部の仕入商品の競争激化による販売価格面への影響や薬剤溶出型冠動脈ステントの販売不振による商品評価損等の計上が、マイナス要因となりました。しかしながら、自社製品が大半を占めるEP/アブレーションや外科関連が堅調に推移し、売上高に占める自社製品比率が上昇したことから、マイナス要因は吸収され、売上総利益率は前期に比べて0.1ポイント上昇いたしました。販売費及び一般管理費においては、前期に比べ新商品の導入に係る治験費用や研究開発費が増加したほか、営業活動等の制約の緩和に伴い、旅費交通費や広告宣伝費等の販売関連の費用が増加いたしました。以上により、当期の営業利益は9,973百万円(前期比3.8%減)となりました。

また、営業外損益については、受取利息及び受取配当金のほか、血液浄化事業の譲渡に係る事業譲渡益等を営業外収益として316百万円、支払利息のほか、投資有価証券評価損等を営業外費用として285百万円計上いたしました。以上により、当期の経常利益は10,005百万円(前期比4.9%減)となりました。

特別損益については、投資有価証券売却益等を特別利益として44百万円、固定資産売却損等を特別損失として8百万円計上いたしました。以上により、当期の親会社株主に帰属する当期純利益は7,484百万円(前期比274.1%増)となりました。

品目別の販売状況は以下のとおりです。

事業区分別の概況

リズムディバイス

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ペースメーカ関連においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う待機的症例の延期や競合他社の新製品発売の影響等により、販売は伸び悩み、前期に比べやや減収となりました。

ICD関連においては、ペースメーカ関連と同様に新型コロナウイルスの影響がありましたが、ICD(植込み型除細動器)については、交換症例を多く獲得できたことから、前期に比べ増収となりました。しかしながら、S-ICD(完全皮下植込み型除細動器)及びCRT-D(除細動機能付き両心室ペースメーカ)については前期に比べ減収となりました。

その他の品目においては、AED(自動体外式除細動器)のレンタルによる売上が伸長いたしました。また、閉塞性睡眠時無呼吸症の治療に用いられる舌下神経電気刺激装置「Inspire UAS(インスパイア・ユーエーエス)」の国内初症例を2022年2月に実施いたしました。睡眠呼吸障害の治療は当社にとって新しい治療領域でありますが、本商品は患者様に対する新たな治療の選択肢の提供につながるものであり、また、睡眠呼吸障害と心不全等の循環器疾患には高い関連性が指摘されており、既存の不整脈事業とのシナジーも期待されることから、今後普及に努めてまいります。

以上により、リズムディバイスの売上高は、12,977百万円(前期比2.0%減)となりました。

EP/アブレーション

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EPカテーテルにおいては、心房細動のアブレーション治療の症例数が回復したことを受け、オンリーワン製品である心腔内除細動カテーテル「BeeAT(ビート)」の販売が堅調に推移し、前期に比べ増収となりました。また、食道温モニタリングカテーテル「Esophastar(エソファスター)」についても、堅調に推移し増収となりました。

アブレーションカテーテルにおいては、高周波を用いる一般的なアブレーションカテーテルは、競合製品の影響等により、売上高は前期に比べやや減収となりました。一方、当社が新しいアブレーション技術として注目し、2018年より販売している内視鏡レーザーアブレーションカテーテルについては、2021年7月に次世代品である「HeartLight X3(ハートライト・エックススリー)」を発売いたしました。次世代品は、従来品と比べて手技時間が大幅に短縮される点が高く評価され、当期の販売は好調に推移いたしました。

その他の品目においては、スティーラブルシースの自社製品「Leftee(レフティー)」について、医療現場において高い操作性が評価されたことから、前期に比べ大きく増収となりました。一方、心房中隔穿刺針「RF Needle(アールエフニードル)」については、競合他社の新規参入による影響を受け、やや減収となりました。

以上により、EP/アブレーションの売上高は、25,099百万円(前期比5.2%増)となりました。

外科関連

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人工血管関連においては、コロナ禍で様々な制約がある中においても、対面重視の営業活動を積極的に推進したことが奏功し、自社製品の人工血管「J-Graft(ジェイグラフト)」シリーズの販売は好調に推移いたしました。また、オンリーワン製品であるオープンステントグラフト「FROZENIX(フローゼニクス)」についても、コロナ禍で治療時間を短縮できるメリットが評価されたほか、「J-Graft」シリーズと併用する手技が医師に評価されたことから、販売は前期に比べ伸長いたしました。一方、腹部用ステントグラフト「AFX2ステントグラフトシステム」については、販売は底堅く推移し、2021年10月に発売した腹部用ステントグラフトの新商品「Alto(アルト)」の寄与もあったことから、前期並みの水準となりました。

その他の品目においては、血管内塞栓用コイル「Avenir(アベニア)」を、2021年12月より当社が既に強みを確立している腹部領域において、先行して販売を開始し2022年4月以降は、脳血管領域での販売も開始いたしました。当社は脳血管領域を新たな成長分野と位置づけ、同領域の開拓を進めてまいります。

また、2021年4月に血液浄化事業を譲渡しており、これが当期においては減収要因となりました。

以上により、外科関連の売上高は、9,657百万円(前期比3.1%減)となりました。

インターベンション

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PI関連においては、全体として症例数の回復が遅れたことに加え、競合他社との競争が激化したことから、総じて厳しい状況で推移いたしました。薬剤溶出型冠動脈ステント「Orsiro(オシロ)」については、前期に比べ減収となり、販売単価の下落により収益性も低下していたことから、2022年2月25日付のプレスリリース「薬剤溶出型冠動脈ステントの独占販売契約の終了に関するお知らせ」にありますとおり、2022年6月末をもって独占販売契約を前倒しして終了することを決定いたしました。また、自社製品のガイドワイヤーやバルーンカテーテルについても、競合他社の影響等により、減収となりました。

消化器関連においては、後継モデルを発売した大腸ステント「Jentlly Neo Colonic Stent(ジェントリー・ネオ・コロニックステント)」の販売が好調に推移したほか、2021年9月に発売した胃・十二指腸ステント「Jentlly Neo Duodenal Stent(ジェントリー・ネオ・デュオディナルステント)」の寄与もあり、前期に比べ大幅な増収となりました。また、肝癌治療用ラジオ波焼灼電極針「arfa(アルファ)」についても、預託施設の拡大が奏功し、売上高は伸長いたしました。

以上により、インターベンションの売上高は、3,733百万円(前期比11.2%減)となりました。

企業集団の財産及び損益の状況の推移

(注) 1株当たり当期純利益は期中平均株式数により算出しております。

対処すべき課題

当社は、商社とメーカーという2つの機能を併せ持つ業界内でもユニークなビジネスモデルを確立しております。このビジネスモデルをさらに強化することで、真に価値のある医療機器をタイムリーに医療現場に提供し続けることが可能となり、当社の理念である「健康社会の実現」に貢献することができると考えております。

当社は2020年11月に中期経営計画を策定し、2021年3月期から2025年3月期の5年間にわたる業績目標として、「売上高年平均成長率10%」、「営業利益年平均成長率15%」、「売上高に占める自社製品比率50%以上」を掲げるとともに、業績目標を達成するための重点課題として次の3点を設定しております。

1.既存領域の基盤強化、安定成長の実現

2.コストコントロール、業務再構築による収益改善

3.消化器領域への展開、さらなる飛躍に向けた準備

「1.既存領域の基盤強化、安定成長の実現」については、リズムディバイスにおいて、2019年9月にすべてのCRM関連商品の仕入先をボストン・サイエンティフィック社に切り替えた後、拡販に努めてまいりました。同社の日本法人であるボストン・サイエンティフィックジャパン社(以下、「BSJ社」)と営業支援契約を締結し、BSJ社から営業人員を出向という形で受け入れ、販売体制を大幅に強化いたしました。その結果、特に頻脈領域においては大幅なシェア増加となりました。BSJ社からの出向者については、営業支援契約の終了を5か月前倒しして2022年4月に当社への転籍を完了させ、早期に販売体制を一本化したことから、販売戦略の求心力をさらに高めてまいります。

「2.コストコントロール、業務再構築による収益改善」については、前連結会計年度に引き続き、業務改革の一環として、基幹システムの刷新プロジェクトを推進しております。また、事業の再構築という観点では、外科関連において、当社の主力事業とのシナジーが見込まれなかった血液浄化事業を2021年4月に譲渡いたしました。また、インターベンションにおいては、販売価格の下落等により、採算が悪化していた薬剤溶出型冠動脈ステントについて、独占販売契約を2022年6月までに前倒しして終了することを決定いたしました。当社は、より長期的に成長が見込まれる消化器領域に経営リソースを集中することで、企業価値の向上に取り組んでまいります。

「3.消化器領域への展開、さらなる飛躍に向けた準備」については、消化器領域を第2の成長分野として位置づけ、現在の主力分野である心臓血管領域で培った自社技術を消化器領域にも応用し、新製品の研究開発を推進しております。当連結会計年度は、既存製品である大腸ステントや肝癌治療用ラジオ波焼灼電極針等の販売を強化する一方、2023年3月期には胆膵関連の自社製品群の発売を予定していることから、新製品導入に向けてセールスチームの教育やプロモーションの準備等を進めました。

連結計算書類