事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当期の経営成績

業績全般に関する分析

当期における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の影響による厳しい状況が徐々に緩和される中で、持ち直しの動きが見られました。ワクチン接種も進み、経済活動は持ち直していますが、新たな変異株により感染が再拡大するなど、依然として不確実性の高い状況が続いています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う一部の国や地域におけるサプライチェーンへの影響や、世界的な半導体不足等による影響も発生しています。わが国経済においても、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が緩和される中で、世界経済と同様に持ち直しの動きが見られました。

このような経営環境の中、当社グループは、真のグローバル・メドテックカンパニーへの飛躍を目指し、2019年11月に発表した中長期の経営戦略に沿って、持続的な成長に向けた取り組みを推し進めました。また、内視鏡事業および治療機器事業を中心とした医療分野に経営資源を投入し、長期的な成長と収益性の拡大に向けて経営基盤の強化を図りました。その一環として2021年10月には、当社グループにおける国内販売機能を強化するため、当社の完全子会社であるオリンパスマーケティング株式会社(2021年10月に「オリンパスメディカルサイエンス販売株式会社」から商号変更)に当社の医療事業の国内販売機能に関する権利義務を承継させる会社分割を実施しました。また、2022年4月には、科学事業の持続的な成長と収益性の向上に向けて、新たに設立した完全子会社である株式会社エビデントに当社の科学事業を承継させる会社分割を実施しました。さらに、物流ソリューションの提案力強化やグローバルでの調達・製造・販売機能との連携強化を図るため、当社の完全子会社であるオリンパスロジテックス株式会社を吸収合併しました。

研究開発費および設備投資

当期においては、当社グループ全体で852億72百万円の研究開発費を投じるとともに、755億3百万円の設備投資を実施しました。

為替影響

為替相場は前期に対して、対米ドル、ユーロおよび人民元は円安で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=112.38円(前期は106.06円)、1ユーロ=130.56円(前期は123.70円)、1人民元=17.51円(前期は15.67円)となり、売上高では前期比で487億84百万円の増収要因、営業利益では前期比で227億91百万円の増益要因となりました。

なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比12.3%の増収、連結営業利益は前期比59.9%の増益となります。

事業別の状況

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる
事業別売上高構成比 %

(単位:

主要製品および事業内容

消化器内視鏡、外科手術用内視鏡、手術用顕微鏡の製造販売

内視鏡事業の連結売上高は、4,615億47百万円(前期比17.2%増)、営業利益は1,332億4百万円(前期比34.9%増)となりました。

消化器内視鏡分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、全ての地域で前期比プラス成長となり、特に北米と欧州の売上が増加しました。製品別では、新製品である「EVIS X1(イーヴィス・エックスワン)」シリーズの販売が堅調に推移していることに加えて、一世代前の上部消化管用スコープや下部消化管用スコープに対するニーズも底堅く、増収に寄与しました。なお、全体の売上に占める「EVIS X1」シリーズの割合も徐々に上昇しています。

外科内視鏡分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、前期比プラス成長となりました。特に、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅡ(ビセラ・エリート・ツー)」の販売が好調に推移した北米と欧州で売上が増加しました。

医療サービス分野では、保守サービスを含む既存のサービス契約による安定的な売上や、新規契約の増加に加え、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により症例数が増加したことで修理件数も増加し、全ての地域で前期比プラス成長となりました。

内視鏡事業の営業損益は、開発資産の減損損失約16億円を計上したものの、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴う大幅な増収により、大幅増益となりました。

なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比10.5%の増収、営業利益は前期比20.3%の増益となります。

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる
事業別売上高構成比 %

(単位:

主要製品および事業内容

消化器科関連処置具、呼吸器科製品、泌尿器科婦人科製品の製造販売

治療機器事業の連結売上高は、2,755億86百万円(前期比18.9%増)、営業利益は608億26百万円(前期比99.0%増)となりました。

消化器科(処置具)分野では、症例数が回復傾向にあり、全ての地域・製品群でプラス成長となりました。特に、社会経済活動が正常化する中で、症例数が増加している欧州や北米で好調に推移しました。

泌尿器科分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復が進んでいる北米と欧州を中心に好調に推移し、前立腺肥大症用の切除用電極と尿路結石用破砕装置「SOLTIVE SuperPulsed Laser System(ソルティブ スーパーパルスド レーザーシステム)」の拡販が奏功しました。

呼吸器科分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復が進んでいる北米と欧州を中心に、大幅なプラス成長となりました。2020年12月に子会社化したVeran Medical Technologies, Inc.(米国)が売上に貢献したほか、超音波気管支鏡ガイド下針生検で主に使われる処置具や気管支鏡等も好調に推移しました。

その他の治療領域では、耳鼻科、エネルギーデバイスで売上が好調に推移しました。特に、耳鼻咽喉科向け内視鏡や外科手術用エネルギーデバイス「THUNDERBEAT(サンダービート)」の売上が寄与しました。

治療機器事業の営業損益は、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴い大幅な増収となり、Medi-Tate Ltd.(イスラエル)の段階取得に係る差益約28億円や、前期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約27億円、Veran Medical Technologies, Inc.の買収対価の一部である条件付対価の公正価値の変動に伴う利益約12億円を計上したことにより、大幅増益となりました。

なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比12.3%の増収、営業利益は前期比80.7%の増益となります。

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる
事業別売上高構成比 %

(単位:

主要製品および事業内容

生物顕微鏡、工業用顕微鏡、工業用内視鏡、非破壊検査機器の製造販売

科学事業の連結売上高は、1,191億5百万円(前期比24.2%増)、営業利益は175億26百万円(前期比254.1%増)となりました。

ライフサイエンス分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、前期比プラス成長となりました。研究所、大学での予算執行が進んだことに加え、販売活動の制限緩和により、市場環境の回復が顕著なアジアパシフィックや北米で生物顕微鏡の拡販等が寄与しました。

産業分野では、全体的な市況回復に伴い、顧客の設備投資状況に改善が見られ、全ての分野で前期比プラス成長となりました。特に、北米において、市場環境に回復が見られる非破壊検査機器が好調に推移したほか、中国において、5G関連の電子部品や半導体市場が活況であることから工業用顕微鏡が好調に推移し、売上増加に寄与しました。

科学事業の営業損益は、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴う大幅な増収により、大幅増益となりました。

なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比17.3%の増収、営業利益は前期比196.5%の増益となります。

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる
事業別売上高構成比 %

(単位:

主要製品および事業内容

生体材料および整形外科用器具等の開発・製造・販売、新規事業の研究開発ほか

その他事業の連結売上高は、126億29百万円(前期比37.6%増)、営業損失は20億24百万円(前期は6億82百万円の営業損失)となりました。

2020年11月に子会社化したFH ORTHO SAS(フランス)の売上約44億円が寄与し、大幅増収となりました。その他事業の営業損益は、増収だったものの、前期に当社子会社であったオリンパスRMS株式会社の発行済株式の全てを譲渡したことに伴う譲渡益17億70百万円を計上していたこともあり、損失幅が拡大しました。

対処すべき課題

当社グループは、2019年11月に公表した経営戦略において、2021年3月期から2023年3月期までの3年間で収益性を伴う成長に向けて最適な状態へ変革することを目標として掲げています。当期は、「グローバル・メドテックカンパニーとしての深化」をテーマに掲げ、企業変革の継続および定着のための施策に取り組んできました。

2023年3月期は、本経営戦略で目標に掲げた営業利益率20%超の達成を目指すとともに、「変革」から「成長」にフェーズをシフトしていきます。2019年1月に公表した企業変革プラン「Transform Olympus」のもと行ってきた効率性の追求、機能のグローバル化、健やかな企業文化の実現を目指した取り組みを続けるとともに、「成長」に舵を切ることにより、売上と収益性の持続的な向上を図ります。

また、2021年12月に公表した医療分野における戦略的な方針に基づき、当社が最大限の力を発揮できる消化器科、泌尿器科、呼吸器科の疾患への注力等により診療水準を向上させるイノベーションや価値の創造につなげていきます。

株主の皆さまにおかれましては、一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。

⑴ 経営戦略における戦略目標と業績指標

当社グループは、世界をリードするメドテックカンパニーへ成長し、革新的な価値によって全てのステークホルダーにベネフィットをもたらし、世界の人々の健康に貢献することを戦略目標としています。この考え方に基づき、年率5~6%の売上高成長率、20%を超える営業利益率を実現し、当社が注⼒する治療領域において、リーディングポジションを獲得することにより、持続的な成長を目指します。

⑵ 医療分野における戦略的な方針

当社グループは、当社が最大限の力を発揮できる診療分野・疾患領域を明確にし、対象疾患の診療水準を向上させ、患者さまのアウトカムを改善することを目標として掲げ、さらなる成長と収益性の向上を目指します。

  • 1.最大限の価値提供が期待できる疾患領域に注力
    患者さまの健康に対して貢献が期待できる診療、「消化器科」「泌尿器科」「呼吸器科」の3つの診療領域の疾患に注力します。
  • 2.診療水準の向上に貢献する新技術への投資
    患者さまにとっての一連の診療プロセスに寄り添ったアプローチ、各診療プロセスの最適化への貢献、次世代ソリューションの開発に注力します。
  • 3.グローバル競争力の強化
    グローバル・メドテックカンパニーとしてさらに市場競争力を強化すべく、研究開発体制の強化、メディカル&サイエンティフィックアフェアーズ機能※の強化による臨床に関する知見の拡大、品質保証・法規制対応機能の組織やプロセスの一元化を行っていきます。また、これまで積極的に進めてきたM&Aについても、本方針のもと引き続き推進していきます。

    ※ 医学・患者さまに対する医療機器の安全、臨床研究、医療専門知識、専門教育、医療経済、政策・マーケットアクセス、医療機関向け助成や関連する契約、感染防止・感染対策など多岐にわたる重要な分野を扱う専門機能

剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、当社グループの持続的な成長を実現させるため、事業成長等への投資を優先しつつ、安定的かつ継続的に増配していくことを基本方針としています。

上記方針に基づき、当期の期末配当金につきましては、2022年5月11日開催の取締役会決議により、前期より2円増配の1株当たり14円としました。効力発生日および支払開始日は、2022年6月3日です。

連結計算書類