事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当期の経営成績

業績全般に関する分析

当期における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の大流行の影響による厳しい状況から経済活動が回復する中で、持ち直しの動きが継続しました。一方、世界的な金融引き締めは、景気下振れのリスクとなっています。また、中国における新型コロナウイルス感染症の感染拡大、ウクライナにおける戦争および世界的なインフレーション等の影響により、原材料価格の上昇、サプライチェーンの制約、半導体およびその他の部品不足が発生しました。わが国経済においても、経済活動が回復する中、景気は緩やかに持ち直している一方、為替の変動に加えて、世界経済と同様に原材料価格の上昇、サプライチェーンの制約、半導体およびその他の部品不足が発生しました。

このような環境の中、当社グループは、真のグローバル・メドテックカンパニーへの飛躍を目指し、内視鏡事業および治療機器事業を中心とした医療分野に経営資源を投入することで、持続的な成長を実現するための経営基盤の強化に努めました。その一環として、当社は、吸収分割により当社の科学事業を承継した当社の完全子会社である株式会社エビデントの全株式を譲渡する契約を締結しました。なお、当社は、当該契約に基づき、2023年4月3日に本株式の譲渡を完了しました。

研究開発費および設備投資

当期においては、当社グループ全体で768億66百万円の研究開発費を投じるとともに、720億23百万円の設備投資を実施しました。

為替影響

為替相場は前期に対して、対米ドル、ユーロおよび人民元は円安で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=135.47円(前期は112.38円)、1ユーロ=140.97円(前期は130.56円)、1人民元=19.75円(前期は17.51円)となり、売上高では前期比で983億81百万円の増収要因、営業利益では前期比で443億45百万円の増益要因となりました。

なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比4.5%の増収、連結営業利益は前期比2.7%の減益となります。

事業別の状況

売上高
前期比 %増
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事業別売上高構成比 %

(単位:

主要製品および事業内容

消化器内視鏡および外科手術用内視鏡の製造販売、消化器内視鏡および外科内視鏡の一般修理・サービス契約

内視鏡事業の連結売上高は、5,518億23百万円(前期比19.6%増)、営業利益は1,527億69百万円(前期比14.7%増)となりました。

消化器内視鏡分野では、上海をはじめとする各都市でのロックダウンの影響を受けていた中国において売上が回復し、また北米や欧州においても売上が増加した結果、すべての地域で前期比プラス成長となりました。製品別では、消化器内視鏡システム「EVIS X1(イ―ヴィス・エックスワン)」シリーズの販売が好調に推移していることに加えて、一世代前の上部消化管ビデオスコープや大腸ビデオスコープに対するニーズも底堅く、増収に寄与しました。なお、全体の売上に占める「EVIS X1」シリーズの割合は徐々に上昇しています。

外科内視鏡分野では、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅢ(ビセラ・エリート・スリー)」を発売したアジア・オセアニアや、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅡ(ビセラ・エリート・ツー)」と硬性鏡および外科用ビデオスコープの組み合わせでの販売が堅調に推移した北米における売上が寄与し、前期比プラス成長となりました。

医療サービス分野では、保守サービスを含む既存のサービス契約による安定的な売上に加えて、新規契約の増加もあり、全ての地域で前期比プラス成長となりました。

内視鏡事業の営業損益は、増益となりました。当期は、「EVIS X1」をはじめとした製品の販売等の費用や、品質保証および法規制対応等における事業運営基盤強化に係る費用等が増加した一方、増収による売上利益の増加に加えて、前期に計上した開発資産に係る減損損失約16億円の影響がなくなりました。また、2020年3月期に計上した十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金について、当初の想定よりも必要と認められる費用が減少し、一部引当額の取り崩しを行ったことから、売上原価の減額約42億円の影響がなくなりました。

なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比6.0%の増収、営業利益は前期比11.8%の減益となります。

売上高
前期比 %増
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事業別売上高構成比 %

(単位:

主要製品および事業内容

消化器科関連処置具、呼吸器科製品、泌尿器科および婦人科製品、呼吸器科製品の製造販売

治療機器事業の連結売上高は、3,182億7百万円(前期比15.5%増)、営業利益は636億92百万円(前期比4.7%増)となりました。

消化器科(処置具)分野では、症例数が増加している北米や欧州で好調に推移し、プラス成長となりました。膵管や胆管などの内視鏡診断および治療に使用するERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影術)用の製品群や、スクリーニング検査における組織採取に用いられる生検鉗子等のサンプリングの製品群で売上が増加しました。

泌尿器科分野では、症例数の回復が進み、北米と欧州を中心に好調に推移しました。BPH(前立腺肥大症)用の切除用電極と尿路結石用破砕装置「SOLTIVE SuperPulsed Laser System(ソルティブ スーパーパルスド レーザー システム)」の販売が順調に拡大しました。なお、当期より、治療機器事業のその他の治療領域に分類していた婦人科製品については、治療機器事業の泌尿器科に含めています。

呼吸器科分野では、北米と中国を中心にプラス成長となりました。EBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)で主に使われる処置具が好調に推移しました。

その他の治療領域では、エネルギーデバイスを中心に売上が増加しました。特に「POWERSEAL(パワーシール)」の売上が寄与しました。

治療機器事業の営業損益は、増益となりました。当期は、品質保証および法規制対応等の費用が発生したことに加え、事業活動の回復に伴い販売等の費用が増加した一方、前期にその他の収益として計上したMedi-Tate Ltd.(イスラエル)の段階取得に係る差益約28億円の影響がなくなりました。また、2021年3月期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金について、当初の想定よりも必要と認められる費用が減少し、一部引当額の取り崩しを行ったことから、売上原価の減額約27億円の影響がなくなりました。

なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比2.7%の増収、営業利益は前期比13.8%の減益となります。

売上高
前期比 %減
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事業別売上高構成比 %

(単位:

主要製品および事業内容

生体材料および整形外科用器具等の開発・製造・販売、新規事業の研究開発ほか

その他事業の連結売上高は、118億93百万円(前期比8.4%減)、営業損失は9億14百万円(前期は20億18百万円の営業損失)となりました。

売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いてきたことにより、FH ORTHO SAS(フランス)の売上が増加しましたが、動物市場向けの医療機器の販売を終了したことにより、減収となりました。その他事業の営業損益は、減収となったものの、前期に計上していた株式会社AVS(動物市場向けの医療機器の販売を行っていた当社の子会社)の清算に伴う費用がなくなったこと等の要因により、改善しました。

対処すべき課題

当社グループは、経営理念である「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」を図るための指針として、「患者さまの安全と持続可能性」、「成長のためのイノベーション」そして「生産性の向上」の3つの優先すべき事項を掲げています。

誠実で透明性のある企業であり続けるために、ステークホルダーや規制当局と協力して、強固で持続的な組織の構築に努めるとともに、ヘルスケア業界およびESG(環境、社会、ガバナンス)分野を主導する企業となるべく、あらゆる取り組みにおいて顧客体験価値を中心に据えていきます。また、患者さまの安全を第一に掲げ、長期的な戦略に沿った高品質な製品をさまざまな分野で提供します。

【基本的な指針】

当社グループは、医療分野において、2022年11月から2023年3月にかけて、コンプレイント対応、医療機器報告(MDR)、是正予防処置、リスクアセスメントならびにプロセスおよび設計の検証に関連し、日本の施設に対して米国食品医薬品局(FDA)より3件のWarning Letterを受領しました。当社グループは、患者さまの安全が最も重要であると考えており、当該Warning Letterに確実に対応するとともに、品質保証および法規制の組織体制、製造プロセス、品質マネジメントシステムならびに医療事業のクオリティカルチャーに存在すると考えられる根本原因(脆弱性)の改善を推進します。

当社グループは、2023年5月に新たな経営戦略「変革のその先へ ~グローバル・メドテックカンパニーとしての成長~」を公表しました。この経営戦略の策定にあたっては、長期的かつ持続可能な成長を支える価値の源泉として、患者さまのエクスペリエンスと治療成果(アウトカム)の改善に資する以下の4つをキードライバーとしました。

【4つのキードライバー】

当社グループは、2019年に公表した企業変革プラン「Transform Olympus」およびこれに基づく経営戦略のもと変革に取り組んできた結果、当期において営業利益率20%超の目標を達成しました。
今後は成長と収益性の両面に注力し、売上高はCAGR(年平均成長率)約5%、営業利益率は毎年約20%、EPS成長率はCAGR約8%の達成を目指します。

当社グループは、経営の基盤を強化しつつ成長と収益性を維持し、厳密かつ徹底した財務マネジメントに加えて長期的なアプローチによって目標を達成していきます。これにより、人材や製品の質、提供する価値、イノベーションなどのあらゆる面で患者さま、医療従事者および規制当局をはじめとするすべてのステークホルダーから評価される企業となることを目指します。

株主の皆さまにおかれましては、一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。

剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、当社グループの持続的な成長を実現させるため、手元資金を成長ドライバーへの投資に優先的に配分していく方針であり、収益性の高い既存事業への投資や成長機会への戦略的な投資を実施していきます。配当については、安定的かつ継続的に増配する方針で、当社株式の取得については、投資機会と資金状況に応じて機動的に実施する方針です。

上記方針に基づき、当期の期末配当金につきましては、2023年5月12日開催の取締役会決議により、前期より2円増配の1株当たり16円としました。効力発生日および支払開始日は、2023年6月6日です。

連結計算書類