事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

当社グループの現況に関する事項

事業の経過及びその成果

当期の経済環境

当期における世界経済を概観すると、欧米では新型コロナウイルスのワクチン接種進展や人の移動制限の緩和により一旦は力強い回復となったものの、新たな変異株が蔓延し、サプライチェーンの混乱やロシア・ウクライナ情勢等に伴い物価上昇圧力も強まる中で、その後の回復ペースは鈍化しました。新興国では、中国経済が内需を中心に伸悩む等、感染再拡大の中で次第に減速感が強まりました。原油価格(WTIベース/1バレルあたり)は、世界の産油量が需要を下回り続ける中で、期初の60ドル前後から次第に上昇傾向を強め、2月下旬以降は、各国の対露経済制裁や需給への影響を巡る先行き不透明感から90ドル台から130ドル台で乱高下し、期末は100ドル台で終えました。

日本経済は、新型コロナウイルスの感染が一旦収束した秋から年末にかけて個人消費が活発になる局面もありましたが、総じてみれば、感染拡大と緊急事態宣言等の発令が繰返される中で足踏み状態が続きました。ドル・円相場は、期初の110円台から4月に107円台まで一旦円高が進みましたが、その後は米国の早期利上げ観測を背景に円安基調が強まりました。米国で利上げが開始された3月には利上げ加速観測等により114円台から一時125円台まで円安が進行、期末は122円台で終えました。日経平均株価は、緊急事態宣言の発令等を背景に期初の29,000円台から8月に一時27,000円割れまで下落、その後景気回復期待等から一時30,000円台まで反騰する局面はあったものの、変異株の蔓延や原油価格の上昇、ロシア・ウクライナ情勢等に伴い再び下落傾向をたどり、3月には一時25,000円割れし、期末は27,000円台で終えました。10年物国債利回りは、日銀の潤沢な資金供給の継続と米国長期金利の低下により、期初の0.12%から8月初めには0.01%まで低下しましたが、その後3月下旬にかけては米国長期金利に連れて0.26%まで上昇し、期末は0.22%で終えました。

当社グループの当期の業績

当期の収益は、エネルギー・化学品はエネルギー関連事業や化学品関連事業での市況価格上昇及び取引増加等により増収、金属は鉄鉱石価格及び石炭価格の上昇等により増収、食料は(株)日本アクセスでの取扱数量の増加及び食糧関連取引での市況価格上昇等により増収、住生活は新型コロナウイルスの影響軽減によるEuropean Tyre Enterprise Limited(欧州タイヤ関連事業)の販売数量回復に加え、建材関連事業の好調な推移等により増収となり、全体としては前期比1兆9,307億円(18.6%)増収の12兆2,933億円となりました。

売上総利益は、金属は鉄鉱石価格及び石炭価格の上昇等により増益、住生活は新型コロナウイルスの影響軽減によるEuropean Tyre Enterprise Limitedの販売数量回復に加え、建材関連事業の好調な推移等により増益、機械は(株)ヤナセの販売好調及び新型コロナウイルスの影響軽減による自動車関連ビジネス全般の回復並びに船舶関連事業や北米IPP事業等の各分野が総じて好調に推移したことにより増益、エネルギー・化学品は前期の電力取引好調の反動はあったものの、市況価格上昇に伴うエネルギートレーディング取引及びITOCHU Oil Exploration (Azerbaijan) Inc.(原油開発生産事業)の採算改善に加え、化学品関連事業の堅調な推移等により増益となり、全体としては前期比1,564億円(8.8%)増益の1兆9,372億円となりました。

販売費及び一般管理費は、堅調な収益拡大や円安による経費増加はあったものの、当第1四半期に全家便利商店股份有限公司(以下、「台湾FM」という。)を子会社から関連会社に区分変更したことによる減少等により、前期比198億円(1.4%)減少の1兆3,467億円となりました。

貸倒損失は、一般債権に対する貸倒損失の減少等により、前期比29億円減少の79億円(損失)となりました。

有価証券損益は、台湾FMの一部売却、(株)Paidyの連結除外及び日伯紙パルプ資源開発(株)の売却に伴う利益並びにITOCHU Coal Americas Inc.の連結除外に伴う為替差益の実現等により、前期比2,077億円増加の2,119億円(利益)となりました。

固定資産に係る損益は、前期の(株)ファミリーマート及び豪州石炭事業での減損損失並びに機械の海外事業に係る減損損失の反動等により、前期比1,399億円改善の176億円(損失)となりました。

その他の損益は、為替損益の悪化はあったものの、前期のエネルギー長期契約に係る損失の反動等により、前期比158億円好転の96億円(利益)となりました。

受取利息、支払利息の合計である金利収支は、USドル金利低下による支払利息の減少等により前期比45億円改善の86億円(費用)となり、受取配当金は、鉄鉱石関連投資からの配当の増加等により、前期比276億円(51.9%)増加の807億円となりました。その結果、金利収支に受取配当金を加えた金融収支は、前期比321億円増加の722億円(利益)となりました。

持分法による投資損益は、住生活はパルプ市況上昇等によるITOCHU FIBRE LIMITED(欧州パルプ事業)及び建材関連事業の取込損益増加等により増加、金属は北米薄板建材事業の好調及び鋼材市況の上昇に伴う事業全般の順調な推移並びに北米鋼管事業の好転による伊藤忠丸紅鉄鋼(株)の増益に加え、価格上昇による鉄鉱石事業の取込損益増加等により増加、機械はI-ENVIRONMENT INVESTMENTS LIMITED(欧州水・環境事業)での水道事業売却に伴う利益及び船舶関連事業の取込損益増加等により増加となり、一方、その他及び修正消去(注)は総合金融分野を中心とした堅調な推移等によるCITIC Limitedの増益はあったものの、豚肉市況の下落に伴う採算悪化及び前期の一過性利益の反動によるC.P. Pokphand Co. Ltd.の取込損益悪化により減少となりましたが、全体としては前期比628億円(27.5%)増加の2,914億円(利益)となりました。

(注)「その他及び修正消去」は、各事業セグメントに帰属しない損益及びセグメント間の内部取引消去が含まれております。

以上の結果、税引前利益は、前期比6,376億円(124.4%)増益の1兆1,500億円となりました。法人所得税費用は、堅調な利益拡大及び前期の(株)ファミリーマートに係る税金費用減少の反動等により、前期比1,995億円(278.6%)増加の2,711億円となり、税引前利益1兆1,500億円から法人所得税費用2,711億円を控除した当期純利益は、前期比4,381億円(99.4%)増益の8,790億円となりました。このうち、非支配持分に帰属する当期純利益587億円(利益)を控除した当社株主に帰属する当期純利益は、前期比4,188億円(104.3%)増益の8,203億円となりました。

(ご参考)

日本の会計慣行に基づく営業利益(売上総利益、販売費及び一般管理費、貸倒損失の合計)は、金属は鉄鉱石価格及び石炭価格の上昇等により増益、機械は(株)ヤナセの販売好調及び新型コロナウイルスの影響軽減による自動車関連ビジネス全般の回復並びに船舶関連事業や北米IPP事業等の各分野が総じて好調に推移したことにより増益、住生活は新型コロナウイルスの影響軽減によるEuropean Tyre Enterprise Limitedの販売数量回復に加え、建材関連事業の好調な推移等により増益、エネルギー・化学品は前期の電力取引好調の反動はあったものの、市況価格上昇に伴うエネルギートレーディング取引及びITOCHU Oil Exploration (Azerbaijan) Inc.の採算改善に加え、化学品関連事業の堅調な推移等により増益となり、全体としては前期比1,791億円(44.4%)増益の5,825億円となりました。

見通しに関する注意事項

本事業報告に記載されているデータや将来予測は、現在入手可能な情報に基づくもので、種々の要因により影響を受けることがありますので、実際の業績は見通しから大きく異なる可能性があります。従って、これらの将来予測に関する記述に全面的に依拠することは差し控えるようお願いいたします。また、当社は新しい情報、将来の出来事等に基づきこれらの将来予測を更新する義務を負うものではありません。

主要な事業内容

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、国内及び海外におけるネットワークを通じて、繊維、機械、情報・通信関連、金属、石油等エネルギー関連、生活資材、化学品、食糧・食品等の各種商品の国内、輸出入及び海外取引、更には損害保険代理業、金融業、建設業、不動産の売買、倉庫業並びにそれらに付帯または関連する業務及び事業への投資を多角的に行っています。

セグメント別業績
  • (注1) 当社は、連結計算書類を国際会計基準(IFRS)に準拠して作成しております。
  • (注2) 「その他及び修正消去」には、各事業セグメントに帰属しない損益及びセグメント間の内部取引消去が含まれております。CITIC Limited及びC.P. Pokphand Co. Ltd.に対する投資及び損益は当該セグメントに含まれております。
連結財政状態

総資産は、台湾FMの一部売却に伴う減少はあったものの、円安に伴う為替影響に加え、取引増加や市況価格上昇等による営業債権及び棚卸資産の増加並びに持分法で会計処理されている投資の増加等により、前期末比9,752億円(8.7%)増加の12兆1,537億円となりました。

有利子負債から現預金を控除したネット有利子負債は、配当金の支払及び自己株式の取得はあったものの、堅調な営業取引収入及び投資の売却等により、前期末比3,184億円(12.2%)減少の2兆2,830億円となりました。有利子負債は、前期末比2,494億円(7.9%)減少の2兆9,059億円となりました。

株主資本は、配当金の支払及び自己株式の取得はあったものの、当社株主に帰属する当期純利益の積上げ及び円安に伴う為替影響等により、前期末比8,830億円(26.6%)増加の4兆1,993億円となりました。

株主資本比率は、前期末比4.9ポイント上昇の34.6%となり、NET DER(ネット有利子負債対株主資本倍率)は、前期末比0.24改善の0.54倍となりました。

連結キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、第8、金属、エネルギー・化学品及び食料での営業取引収入の堅調な推移等により、8,012億円のネット入金となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、食料、第8及び機械での固定資産の取得に加え、台湾FMの一部売却に伴い子会社から関連会社に区分変更したことによる現金の減少等があったものの、(株)パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの一部売却、日伯紙パルプ資源開発(株)及び(株)Paidyの売却等により、386億円のネット入金となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金及びリース負債の返済に加え、配当金の支払及び自己株式の取得等により、8,467億円のネット支払となりました。

現金及び現金同等物の当期末残高は、円安に伴う為替影響等もあり、前期末比677億円増加の6,117億円となりました。

2021年度の定性的成果

当社グループは、中期経営計画「Brand-new Deal 2023」(2021年度から2023年度までの3ヵ年計画)において、「『マーケットイン』による事業変革」と「『SDGs』への貢献・取組強化」を基本方針として掲げています。「Brand-new Deal 2023」初年度である2021年度の具体的成果は、次のとおりです。

繊維カンパニー

米国アンダーアーマーの日本総代理店(株)ドームの株式取得

機能的で革新的なアイテムでアスリートのパフォーマンスを最大限に引出す、世界有数のスポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店である、(株)ドームの発行済株式の過半数を取得することに合意しました。米国Under Armour Inc.との協業を通じ、同社の更なる業容拡大と企業価値の向上を図ります。

今後も「マーケットイン」の発想で、多様化するライフスタイルや消費行動の変化を捉え、成長市場であるスポーツ関連ビジネスを拡大していきます。

(アスリートに支持される「アンダーアーマー」ブランドの展開を開始)

サーキュラーエコノミー実現に向けた繊維製品回収サービスの展開

繊維業界が抱える廃棄問題の解決を目指す「RENUプロジェクト」は、日本市場における繊維製品の回収サービスを開始しました。不要となった繊維製品を回収・選別し、リユースやポリエステル原材料へのリサイクル等による再利用を促進、繊維製品の廃棄を減らし、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現を目指します。

今後も、消費者・社会ニーズを汲上げ、ビジネスモデルの進化や新たなサービスの提供を通じて、「SDGs」実現へ貢献していきます。

(「RENUプロジェクト」による繊維製品回収サービス)

機械カンパニー

日立建機(株)との資本提携を通じた建設機械ビジネスの拡大

当社は、日本産業パートナーズ(株)と共同で設立する特別目的会社を通じ、日立建機(株)の総議決権数の26%にあたる株式を取得し、持分法適用会社化します。同社は新車販売に加え、レンタル・中古車・アフターサービス等のバリューチェーン事業の強化と、デジタル技術活用による顧客接点の深化を推進しています。

今後、当社グループが持つ物流・金融機能及び顧客群の活用による販売網の構築と販売機会の拡大等、今回の資本提携を通じて両社グループの総合力を最大限に発揮したサービスの提供を実現していきます。

(日立建機(株)が販売する油圧ショベル)

ドバイにて世界最大級の廃棄物処理発電プラントの建設開始

当社は、ドバイ首長国において世界最大規模の廃棄物処理発電プラントの建設を進めており、2024年に予定する商業運転開始後、35年間にわたる運営を担っていきます。本プラント完成後は、同首長国内で発生する一般廃棄物の約45%(年間190万トン)を焼却処理し、焼却時に発生する熱を利用した発電を行います。

当社は本プロジェクトを通じ、同首長国の廃棄物の「埋立処分量の削減」、「持続可能な環境に配慮した廃棄物管理」、「化石燃料に頼らない代替エネルギーの開発促進」といった環境・衛生面における政策目標の達成に貢献していきます。

(ドバイ廃棄物処理発電プラントの建設状況)

金属カンパニー

西豪州鉄鉱石事業の更なる強化を実現

当社がBHP Group Limited(BHP社)他と保有する西豪州鉄鉱石事業では、2018年に開発決定を行ったサウス・フランク鉄鉱山が2021年5月より計画通り操業を開始しました。同鉱山は、隣接するマック鉱山と合わせて年産1億4,500万トンを誇る世界最大の鉄鉱石生産ハブとなり、西豪州鉄鉱石事業の安定化に大きく貢献していきます。

また、2021年に、新たにBHP社よりウェスタン・リッジ鉄鉱床の一部権益を取得しました。広大な4つの鉱床を有する同鉄鉱床は、既存の鉄道・港湾インフラを活用できる低コストの露天掘り鉱山として生産を開始しています。

西豪州鉄鉱石事業の強化と安定操業により、世界の需要家に対する長期的な優良資源の安定供給に貢献していきます。

(操業を開始したサウス・フランク鉄鉱山)

エネルギー・化学品カンパニー

太陽光発電の「余剰電力循環モデル」取組開始

当社関連会社(株)アイ・グリッド・ソリューションズは、太陽光発電の余剰電力買取りサービスを新たに開始しました。本サービスの導入により、電力需給の観点から設置困難であった物流・商業施設においても太陽光発電の導入が可能となり、これまでに全国350ヵ所以上のオンサイト型太陽光発電所を稼働させています。第三者保有型の再エネ分散電源事業では国内最大の実績を誇り、電力需給がひっ迫し電気代が高騰している中、安価な電力を安定的にお客様に供給しています。同社は、買取った余剰電力をCO2フリー電力として周辺地域に供給を行うことで、「余剰電力循環モデル」を構築し、各地域での再生可能エネルギーの最大化を推進しています。従来から取組んできた蓄電池等の分散型電源の統合制御に加え、各地域を再エネ電力によりネットワーク化することで次世代型エネルギープラットフォームサービスを提供し、2050年のカーボンニュートラル社会実現に向け貢献していきます。

((株)日本アクセス 春日井物流センターのオンサイト型太陽光発電所)

リニューアブル燃料ビジネス

当社は2020年より開始したフィンランドのNESTE OYJ(NESTE社)が生産する石油代替航空燃料(SAF)の国内航空会社向け輸入販売をきっかけとし、2022年2月にNESTE社と日本向けSAF販売に関する独占契約を締結しました。また、NESTE社が生産するリニューアブルディーゼル(RD)の輸入販売も拡大しており、国内初となる給油拠点の運用を開始しています。NESTE社が生産するリニューアブル燃料は廃食油等を原料とし、ライフサイクルアセスメントベースの温室効果ガス排出量を石油由来燃料比、SAFで最大8割、RDで約9割削減します。

当社は今後とも当社グループの総合力を活かしたリニューアブル燃料への取組を通じて脱炭素化社会の実現を目指します。

(国内初リニューアブルディーゼル給油拠点)

食料カンパニー

CGB Enterprises, Inc.(CGB社)による大豆搾油・精製工場への投資

当社関連会社CGB社は、米国ノースダコタ州で大豆搾油・精製工場の新設を決定しました。CGB社は、北米で穀物集荷事業、搾油事業、物流事業等を展開し、食の安定供給を支えています。

搾油事業により生産される大豆油は、食用に加え、再生可能エネルギーであるバイオ燃料の原料としての活用も広がっており、今後、更なる需要の増大が見込まれます。

CGB社は、大豆油の生産拡大を通じて、米国エネルギー分野の成長も取込みながら、地球環境に優しいクリーンエネルギーの普及にも貢献していきます。

(米国インディアナ州のCGB社大豆搾油・精製工場)

上海威銘食品有限公司(威銘社)との資本業務提携

当社は、中国におけるコーヒー大手企業である威銘社と2021年10月に資本業務提携契約を締結しました。中国では、ライフスタイルの変化に伴いコーヒーの消費量が急拡大していますが、高品質で美味しいコーヒーを求める消費者を中心に、レギュラーコーヒーの需要増加が見込まれています。威銘社は、カフェ、飲食店、オンライン市場で多様なコーヒー製品や関連機器等を提供している他、レギュラーコーヒーや、豆の栽培・輸送・焙煎等すべての過程において高い品質管理を求められるスペシャルティコーヒーの取扱も進めています。

当社は、グループの調達網を利用したコーヒー生豆の安定供給と、顧客ネットワークを利用した威銘社製品の販売を通じて、中国のコーヒー市場の成長を取込んでいきます。

今後は同じく当社の資本業務提携先でコーヒー豆のトレーサビリティプラットフォームを運営するFarmer Connect SAと連携し、安心安全で美味しいコーヒーを日本・中国を含むアジア市場に供給し、コーヒー文化の発展にも貢献していきます。

(威銘社のレギュラーコーヒーブランド“MingS”)

住生活カンパニー

英国タイヤバリューチェーンの拡大

英国にてタイヤ卸・小売事業を展開する当社子会社のEuropean Tyre Enterprise Limited(ETEL社)は、2021年12月にMurfitts Group Limited(Murfitts社)を買収し、廃タイヤの回収・リサイクル事業に進出しました。これにより、世界でも類を見ない卸・小売・回収事業を一貫して提供する企業として、循環型社会への貢献を目指します。同社は英国で廃棄されるタイヤを、年間約20百万本相当回収し、アスファルト代替の再生建設資材等へ加工しています。ETEL社は英国全土に広がる既存物流網を活用して本事業の更なる効率化、収益力強化を図ります。

(Murfitts社の加工拠点及び再生建設資材を敷いた遊戯場)

西松建設(株)との資本業務提携

2021年12月に西松建設(株)と資本業務提携契約を締結し、同社の発行済株式10%を取得しました。同社とはこれまで、共同での不動産開発事業や工事発注・資機材調達等を通じて良好な協業関係を築いてきました。両社が有する経営資源・ノウハウを結集し、より一層の連携を深めていくことが、新たなシナジーの創出・企業価値向上に資するとの共通の見解から、この度の資本業務提携に至りました。本資本業務提携により、施工機能を加えた川上(建材)から川下(不動産)までのバリューチェーンを構築することで、建設・建材業界の優良企業群とのアライアンスを強化し、「SDGs」や国土強靭化等の社会課題対応に取組んでいきます。

(西松建設(株)と共同開発した、ホテルJALシティ富山)

情報・金融カンパニー

米国セキュリティ事業者SilverSky Inc.(SilverSky社)の持分法適用会社化

企業のデジタル化、DXによる事業変革が進む中で、システム環境も大きく変化し、多様化・複雑化しています。この変化の中で、システムの脆弱性を狙ったサイバー攻撃が急増しており、システム全体にわたる総合的な監視と攻撃への迅速な対応の重要性が高まっています。

今般、当社は米国の大手セキュリティ事業者であるSilverSky社へ出資しました。今後は、システム開発等に豊富な知見を持つ伊藤忠テクノソリューションズ(株)等との連携を通じ、米国のみならず日本を含むアジアでの事業展開を支援することで、顧客企業のサイバーセキュリティへの懸念を最小化し、デジタル時代の持続的な成長を支援していきます。

(企業をサイバーセキュリティの脅威から守るオペレーションセンター)

(株)Belongによる中古携帯端末販売の拡大

当社が100%出資する(株)Belongでは、高額化する端末価格や「SDGs」への関心の高まり等を背景とした市場の拡大を見据え、中古携帯端末を主にECを通じ販売しています。同社では、技術に詳しくない方にも安心してご購入頂けるよう、携帯表面の傷や電池の消耗具合等を丁寧に検査し、その結果を消費者へ分かり易く説明したうえで販売しています。検査・選別作業は、ノウハウを蓄積した同社独自の専用オペレーションセンターで実施しており、これにより高品質な端末をリーズナブルな価格で販売することを可能としています。その結果、同社でご購入頂いたお客様からは極めて高い顧客満足度評価を頂いており、2021年度は前年度比約4倍の販売台数を記録するに至っています。今後も同社の事業を通じ、成長市場でのシェア拡大・収益基盤強化とともに、循環型社会実現への貢献の両立を図っていきます。

(運営する中古携帯ECサイト「にこスマ」で消費者へ直接販売)

第8カンパニー

(株)ゲート・ワンの設立

当社と(株)ファミリーマートは、ファミリーマート店舗内に設置するデジタルサイネージ(電子看板)を活用したメディア事業の展開に向け、2021年9月に(株)ゲート・ワンを設立しました。レジカウンターの背後に大型サイネージ3台を連ね、音声と大画面による迫力ある広告に加え、テレビドラマ・映画番宣等の俳優のオリジナルインタビュー、アーティストのプロモーションビデオ等エンターテインメント関連の情報や、地域情報、ニュース、天気予報等魅力的なコンテンツを放映し、広告収益の獲得のみならず、ワクワクする店作りによる集客・日商向上を図ります。

2022年6月頃を目途に3,000店舗、3年以内を目途に設置可能な全店舗へデジタルサイネージを導入し、TV・インターネットに次ぐ第3のメディアとなることを目指します。

(視認性が高い大型デジタルサイネージ)

その他

「SDGs」発信拠点として「ITOCHU SDGs STUDIO」を開設

当社は、世の中のあらゆる「SDGs」に関する取組を後押しする発信拠点として、伊藤忠本社敷地内に「ITOCHU SDGs STUDIO」を開設しました。エバンジェリスト(伝道師)には世界的トップモデルの冨永愛さんを任命しています。タレントのSHELLYさんナビゲートによるJ-WAVEラジオでの当社冠番組や農林水産省・WWF等の展示を通じて「SDGs」の取組を発信してきた結果、来場者は約2万人を数え、著名な来場者のSNSフォロワー総数は1,500万人を超えています。

今後も、当STUDIOが世の中の「SDGs」のうねりを作り出す拠点として発信を続け、SDGsの実現に貢献していきます。

(「ITOCHU SDGs STUDIO」ラジオブースでのJ-WAVE収録)

対処すべき課題

来期の見通し

来期の経営環境を展望しますと、ロシアのウクライナ侵攻に係る高い不確実性がある中で、国際商品市況の高騰やサプライチェーンの混乱が長引き、物価上昇を通じて世界経済を下押しし続ける懸念があります。また、行動制限を解除する国が増えてはいるものの、新型コロナウイルスの感染収束には予断を許さず、むしろ再び感染拡大が加速し、経済活動を制約するリスクがあります。このように、経営環境の先行きには様々な不透明要因があると認識しています。

そのようなもとで、米国では利上げ継続が見込まれ、ドル・円相場は当面円安が続くと見込まれます。また、原油価格は、対露経済制裁下での需給不安定化を背景に当面高止まりが予想されます。

中期経営計画「Brand-new Deal 2023」の更なる推進

中期経営計画「Brand-new Deal 2023」(2021年度から2023年度までの3ヵ年計画)の2年目となる2022年度は、当該中期経営計画の基本方針である、『「マーケットイン」による事業変革』と『「SDGs」への貢献・取組強化』の更なる推進を通じて、引続き、多様化するマーケットニーズへの対応と、本業を通じた生活基盤の維持・環境改善等の「SDGs」実現への貢献を果たしていきます。

基本方針

<「マーケットイン」による事業変革>

多様化する売り手/買い手の顕在・潜在ニーズを捉えて、川下から川上までのバリューチェーン変革による事業成長を実現するため、現中期経営計画における主要施策への取組を継続します。

  • ・グループ最大の消費者基盤であるファミリーマート事業の進化
  • ・川下起点のバリューチェーン全体の変革
  • ・データ活用・DXによる収益機会拡大

グループ最大の消費者基盤であるファミリーマートを起点に、グループが保有する機能を最大限活用したファミリーマートのデジタル化、顧客接点・データ基盤を活用した広告・メディア・金融事業等の新たな収益基盤の創出、ファミリーマート以外での新たな消費者接点・データ基盤の獲得を通じた更なる収益の拡大を図ります。

<「SDGs」への貢献・取組強化>

大きく変化する経営環境をチャンスと捉え、「SDGs」実現に貢献していきます。

  • ・脱炭素社会を見据えた事業拡大
  • ・循環型ビジネスの主導的展開
  • ・バリューチェーン強靭化による持続的成長
株主還元方針

2022年5月10日公表のとおり、配当については、現中期経営計画期間中において累進配当を継続し、ステップアップ下限配当を実施します。また、現中期経営計画の最終年度となる2023年度までに配当性向30%を実現します。2022年度の1株当たり配当金は、当社史上最高を更新する130円を下限とします。

加えて、自己株式取得についても、市場環境を踏まえてキャッシュアロケーションの状況を都度見直し、機動的、継続的に実行してまいります。

株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。

連結計算書類