事業報告(2021年4月1日から2022年3月31日まで)

伊藤忠エネクスグループの現況に関する事項

事業の経過及びその成果

当連結会計年度(2021年4月1日から2022年3月31日)における日本経済は、ウクライナ情勢などの地政学的リスクによる原油価格の高騰や国内の震災発生による電力逼迫など、注視が必要な状況が継続しております。また新型コロナウイルス感染症の影響は、前連結会計年度と比較し、外出自粛や各自治体からの営業自粛要請等の緩和により、やや回復傾向であるものの、繰り返される変異株の出現により再び感染者数が増加するなど、将来の見通しについては極めて不透明な状況が続いております。

国内エネルギー業界では、業界の垣根を超えた連携が進み、また気候変動への世界的な環境意識が高まるなど、当社を取り巻く状況は大きく変化しております。

このような環境の中、当社では2021年4月に策定した中期経営計画『SHIFT!2022』に基づき、事業を推進してまいりました。

本中期経営計画を着実に実行した結果、当社株主に帰属する当期純利益は過去最高益となり、7期連続の過去最高益更新となりました。

事業区分別の概況

ホームライフ事業

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主な取扱商品・サービス

LPガス、灯油、都市ガス(大分県中津市・関東)、産業用ガス、電力、生活関連機器、スマートエネルギー機器、リフォーム、家庭用リチウムイオン蓄電システム、ガス容器耐圧検査サービス、溶接用資材

当期の概況

LPガス事業においては、当期末の直売顧客軒数は約557千軒となりました。家庭向け電力販売事業においては、LPガスとのセット販売を中心に顧客基盤の拡大を推進し、当期末の顧客軒数は約118千軒となりました。

産業ガス事業においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により需要が減少したものの、ガス供給先の飲食店や工場等の稼働率復調に伴い、販売数量は前期を上回りました。

損益面では経済活動再開に伴う産業ガス関連事業の復調とLPガス輸入価格上昇に伴う在庫影響などにより前期を上回る結果となりました。

対処すべき課題

2022年度の事業方針キーワードは「基盤価値」とし、当社グループの持つ顧客・社員・知見・システム等の事業基盤を改めて見直し「磨き」、「創る」ことを主眼とした事業活動を行ってまいります。中長期の人材育成、デジタイゼーション等を通じて、DX推進により、事業基盤を整備、強化拡大し、持続的な成長に資する体制とすることが主な目的です。LPガス事業では、将来予測される労働力不足への対応に向けて業務効率化を進め、デジタル技術を活用し、生産性を向上させることや、事業活動を通じて得たデータを活用したお客さまとの良質なコミュニケーションを図ることで更なる付加価値を生み出すよう尽力してまいります。産業ガス事業では、サプライチェーンの強化やECサイトの構築を通じ、受発注業務の効率化や、取引先へのサービス向上を図ってまいります。海外事業では、出資を行ったタイWPEnergy社へ日本式の小売販売・管理手法を導入することで、タイ国内のLPガス事業を推進してまいります。

カーライフ事業

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主な取扱商品・サービス

ガソリン、灯油、軽油、電力、自動車、生活・車関連商品サービス

当期の概況

CS事業においては、石油製品の販売数量は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響及び夏期の天候不良、暖冬の影響があったものの、大幅に落ち込んだ前期と比べガソリンや軽油の販売数量は持ち直し、前期を僅かに上回りました。

自動車関連事業においては、自動車ディーラー事業を行っている子会社の大阪カーライフグループ(株)では新型コロナウイルス感染症の拡大、及び半導体不足による生産台数の減少によって販売台数は前期を下回りました。

損益面では、自動車ディーラー事業の台当たりの収益率向上が貢献した一方で、CS事業の小売利幅が縮小したことにより、前期並みとなりました。

対処すべき課題

CS事業においては、脱炭素化が進み国内需要の減少が予想されます。その中でこれまで培ってきたネットワークの更なる強化とCSの新たな領域を創造し、時代の変化に対応してまいります。またCSを地域のインフラ、防災対応拠点として活用し、地域のくらしに貢献してまいります。

今後は、水素ステーションの実証を進め、長期的には多様な燃料とサービスを取り扱うとともに、人、地域、異業種などをつなぐプラットフォームとしての新たなCSのカタチ「マルチ・ステーション」を目指してまいります。自動車関連事業においては、大阪カーライフグループ(株)を中心に顧客基盤の拡大、エネクスフリート(株)を中心に大型車両のバリューチェーン構築を図ってまいります。

産業ビジネス事業

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主な取扱商品・サービス

ガソリン、灯油、軽油、重油、LPガス、AdBlue®、GTL燃料、リニューアブル燃料、法人向け給油カード、アスファルト、船舶用燃料、石炭灰リサイクル、スロップ回収・リサイクル、石油製品輸出入、ターミナルタンク賃貸

当期の概況

アスファルト販売事業においては、収益性を意識した営業活動を行った結果、販売数量が前期を下回りました。船舶燃料販売事業においては、内航船向けの販売は前期を上回ったものの、外航船向けの販売の減少から、販売数量は前期を下回りました。法人向け自動車用燃料給油カード事業においては、新規顧客開拓を積み重ね、販売数量は前期を上回りました。環境商材であるGTL燃料※1は、建機向けの引き合いに対応するため、供給体制を強化したことから、販売数量は前期を上回りました。損益面では、前期における石油製品の輸出入事業における原油価格の変動を捉えたオペレーションによる一過性収益の反動等の影響により、前期を下回りました。なお、新たな低・脱炭素需要を捉え、九州・瀬戸内地域での舶用LNG燃料供給の事業化を決定し、九州電力(株)、日本郵船(株)、西部ガス(株)とともに、合弁会社を設立いたしました。

※1 Gas to Liquidsの略称。天然ガス由来の製品で、環境負荷の少ないクリーンな軽油代替燃料。

対処すべき課題

気候変動問題への対応から、世界的にカーボンニュートラルを目指し、低・脱炭素エネルギーへの転換が進み、燃料油需要の減少スピードは加速することが予想されます。一方、それらの代替となる次世代燃料や、CO2削減に寄与する技術やサービスは急速に増加することが見込まれます。

このような環境のもと、既存の燃料油販売事業については、競争力を維持・強化するため、効率化を図ってまいります。また、顧客の低・脱炭素ニーズに対応すべく、GTL燃料、リニューアブル燃料、舶用LNG燃料などの次世代燃料や、AdBlue®、フライアッシュリサイクルなどの環境商材、GHG※2排出量可視化サービスなど、成長性のある事業に積極的に投資し、事業基盤の拡大を図ってまいります。

※2 Greenhouse Gasの略称。温室効果ガスのこと。

電力・ユーティリティ事業

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主な取扱商品・サービス

電力(風力発電所、水力発電所、太陽光発電所、石炭火力発電所、天然ガス火力発電所)、蒸気、地域熱供給サービス、総合エネルギーサービス、電熱供給サービス、電力需給管理サービス、アセットマネジメント事業、レンタカー

当期の概況

電力販売分野においては、法人向け高圧電力の大型案件受注により高圧電力販売量が増加したこと、家庭向け低圧電力契約の件数増加により、全体での小売電力販売量は前期を上回りました。

損益面では、電力取引市場の価格高騰や国外情勢の不安定化に伴う資源価格の高騰により、一部の調達価格が上昇し損益面でマイナス影響を受けました。しかしながら、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の子会社化に伴う評価益の計上により、電力・ユーティリティ事業全体としては、前期を上回りました。

対処すべき課題

卸電力取引市場の価格の高騰や資源価格の高騰により、当社グループの電力事業の一部においても調達価格が上昇しました。大手電力会社とのアライアンスや電力先物取引市場等のデリバティブ活用により、卸電力取引市場の価格変動リスクを抑えると同時に、中小規模太陽光ビジネス、蓄電池ビジネスへも注力することで、当社グループの電力調達ポートフォリオの更なる改善を目指してまいります。

先述の電力調達価格変動リスクへの対処と並行し、持続可能な社会の実現を目指すために、引き続き再生可能エネルギー発電設備等の開発投資を進め、脱炭素社会の推進にも貢献してまいります。

直前3事業年度の財産及び損益の状況

    (注)

  • 当社グループの連結計算書類は、会社計算規則第120条第1項の規定に基づきIFRSに準拠して作成しております。
  • 金額は百万円未満を四捨五入して表示しております。

連結計算書類