第57期 事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)

1 経営の基本方針等

経営の基本方針

オリックス(当社およびその子会社から成る企業集団をいう。以下同じとする。)はグループとして後記の企業理念および経営方針を定めています。

目標とする経営指標

オリックスは持続的な成長に向けて、収益力の観点から当社株主に帰属する当期純利益を、資本効率の観点からROE(株主資本/当社株主に帰属する当期純利益率)を、健全性の観点から信用格付を経営指標としています。

2019年10月に、2019年3月期から2021年3月期までの3ヵ年の目標(当期純利益の年間成長率4~8%、ほか)を変更し、当期純利益の目標は「2020年3月期に3,000億円」、ROEの目標は「中期的に11%以上」とすることに致しました。当期の実績は以下のとおりです。

剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、事業活動で得られた利益を主に内部留保として確保し、事業基盤の強化や成長のための投資に活用することにより株主価値の増大に努めてまいります。同時に、業績を反映した安定的かつ継続的な配当を実施致します。また、自己株式取得につきましては、必要な内部留保の水準を考慮しつつ、経営環境の変化、株価の動向、財務状況および目標とする経営指標等を勘案の上、弾力的・機動的に対処してまいります。

これらの基本方針の下、当期の1株当たりの年間配当金につきましては、前期の76円と同額の76円と致します。配当性向は32%となります(中間配当金は支払済みの35円、期末配当金は41円)。なお、配当の決定につきましては、会社法第459条第1項に基づき、取締役会の決議により剰余金の配当をすることができる旨を定款に定めています。

また、当期は、2019年11月から2020年3月までの間に、合計457億円の自己株式取得を行いました。

1株当たりの配当金の過去5年間の推移は以下のとおりです。

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2 オリックスの現況に関する事項

「2.オリックスの現況に関する事項」における記載は、米国預託証券の発行等に関して要請されている用語、様式および作成方法(以下、「米国会計基準」)に基づいています。

当期の事業の経過およびその成果

経営環境

当期における世界経済は、米中貿易摩擦の激化を主因に減速したものの、米国金融政策が積極的な金融緩和に転じたことに加え、2019年末にかけ米中貿易摩擦緩和の期待が高まり景気持ち直しの兆しが見られました。しかし、2020年初めからは、新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大し、その防止策として各国政府が人の移動制限等の措置を取ったことから需要消失やサプライチェーン寸断に直面し、景気後退懸念からグローバルにリスク資産の価格は大幅調整しました。一方、雇用の急激な悪化や企業の資金繰り悪化に対し、各国金融当局による金融緩和ならびに各国政府が大胆な財政政策を打ち出した結果、リスク資産の価格は年度末にかけやや落ち着きを見せました。

新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済は大きく下振れし、収束時期を巡り予断を許さない状況が続くと予想しています。

連結業績等の概況

当期の営業収益は、主に企業投資の一環として投資している連結子会社の売上の減少により、商品および不動産売上高が減少したことで、前期に比べて6%減の2兆2,803億円になりました。

営業費用は、上述の収益と同様に、商品および不動産売上原価が減少したため、前期に比べて5%減の2兆106億円になりました。

税引前当期純利益は、持分法投資損益および、子会社・関連会社株式売却損益および清算損が増加したことで、前期に比べて4%増の4,126億円になりました。一方で、当社株主に帰属する当期純利益は、前期において株式会社大京(以下、「大京」)の未分配利益に対して計上していた繰延税金負債の取崩しによる法人税等の減少があったことから、前期に比べて7%減の3,027億円になりました。

なお、当期の業績において、新型コロナウイルスの感染拡大による特筆すべき影響はありませんでした。

財産および損益の状況(米国会計基準)

ご参考2020年3月期 セグメント利益・セグメント資産
(1億円未満を四捨五入して表示)

主要な事業内容および主要な営業所ならびに使用人の状況

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セグメント情報

セグメント利益

法人金融サービス事業部門

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グループ営業の中核的な役割を担い、全国の営業網を通じて、法人向けにリースや融資を行っています。また、グループの商品・サービス情報を集約し、ワンストップで、事業承継や海外進出などお客様のあらゆるニーズに対応しています。

主要な事業内容

金融、各種手数料ビジネス

業績等の概況

セグメント収益は、前期に買収した企業の売上高が通年で計上されたことや、会計基準書アップデート第2016-02号(会計基準編纂書842(リース))(以下、「新リース基準」)の適用によりファイナンス・リース収益が増加したこと、および弥生(株)の売上高が増加したことにより、前期に比べて2%増の970億円になりました。

セグメント利益は、生命保険関連の手数料収入の減少や、新リース基準の適用に伴う販売費および一般管理費の増加により、前期に比べて43%減の146億円になりました。

セグメント利益

メンテナンスリース事業部門

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自動車事業では、「リース」「レンタカー」「カーシェアリング」から「中古車販売」「車両管理サービス」まで、自動車のトータルサービスを展開しています。レンタル事業では、多種多様なレンタル商材を取り揃え、お客様が必要とする機器をタイムリーに提供しています。

主要な事業内容

自動車リース・レンタカー・カーシェアリング、電子計測器・IT関連機器などのレンタルおよびリース

業績等の概況

セグメント収益は、新リース基準の適用によりオペレーティング・リース収益およびファイナンス・リース収益が増加したため、前期に比べて17%増の3,364億円になりました。

セグメント利益は、新リース基準の適用に伴い、販売費および一般管理費が増加したことから、前期に比べて13%減の337億円になりました。

セグメント利益

不動産事業部門

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オフィスビル・商業施設・物流施設などの開発・賃貸や、不動産の資産運用などの事業を展開しています。また、ホテル・旅館、水族館など様々な施設を運営し、質の高いサービスを提供しています。

主要な事業内容

不動産開発・賃貸・管理、施設運営、不動産の資産運用

業績等の概況

セグメント収益は、オリックス・ゴルフ・マネジメント(株)の売却に伴うサービス収入の減少や大京の分譲事業における引渡戸数の減少に伴う不動産売上高の減少により、前期に比べて12%減の4,666億円になりました。

セグメント利益は、高齢者向け住宅の運営子会社の売却益を計上したものの、前記理由により、前期に比べて14%減の769億円になりました。

セグメント利益

事業投資事業部門

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再生可能エネルギー事業や電力小売事業を推進しています。事業投資事業では、国内外でプライベートエクイティ投資を行い、グループの専門性を活用して投資先の企業価値向上を図っています。コンセッション事業では、関西の3ヵ所の空港および下水処理場を運営しています。

主要な事業内容

環境エネルギー、企業投資、コンセッション

業績等の概況

セグメント収益は、企業投資の一環として投資している連結子会社の商品売上高が減少したため、前期に比べて27%減の4,512億円になりました。

セグメント利益は、投資先株式の売却益を計上したことにより、前期に比べて46%増の557億円になりました。

セグメント利益

リテール事業部門

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生命保険事業では、代理店販売と通信販売を中心に、シンプルでわかりやすい商品を提供しています。銀行事業では投資用不動産ローンに特化しています。カードローン事業では与信ノウハウを生かし、他の金融機関への無担保ローン保証も展開しています。

主要な事業内容

生命保険、銀行、カードローン

業績等の概況

セグメント収益は、保有契約の増加に伴う生命保険料収入の増加および銀行における投資用不動産ローンの利息収入の増加により、前期に比べて6%増の4,548億円になりました。

セグメント利益は、生命保険にかかる前期の大口の不動産売却益計上に伴う資産運用収益の減少により、前期に比べて5%減の804億円になりました。

セグメント利益

海外事業部門

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米国では、金融サービス事業、有価証券投資、企業投資を行っています。アジアでは、現地に根づいた金融サービス事業を展開しています。アセットマネジメント、航空機・船舶関連では、専門性を生かし、グローバルに事業を展開しています。

主要な事業内容

アセットマネジメント、航空機・船舶関連、企業投資、金融

業績等の概況

セグメント収益は、米国での金融収益、およびアジアにおける投資先株式の売却益は増加したものの、為替の影響により、前期に比べて1%減の4,863億円になりました。

セグメント利益は、前期に出資した大手航空機リース会社であるAvolon Holdings Limited(以下、「Avolon」)の貢献により持分法投資損益が増加したこと、米国および欧州で子会社・関連会社株式売却益が増加したことにより、前期に比べて25%増の1,564億円になりました。

セグメント利益

資金調達等についての状況(重要なもの)

① 資金調達の状況

オリックスの長短借入債務および預金の受け入れによる資金調達は当期末で6兆8,479億円になっています。そのうち金融機関からの調達については大手銀行、地方銀行、外資系銀行、生損保会社等、調達先は多岐にわたり、その数は200社超です。資本市場での調達については、社債、ミディアム・ターム・ノート(MTN)、コマーシャル・ペーパー(CP)、資産の証券化に伴う支払債務などで構成されています。

当期は借入債務の長期化、返済額の集中緩和などの施策を実施しました。また、利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)(ハイブリッド債)を発行しました。今後も調達のバランスを考慮しながら、財務の安定化を図っていきます。

② 設備投資の状況

当期中に、主に「海外事業部門」、「メンテナンスリース事業部門」および「不動産事業部門」において、オペレーティング・リース事業用の賃貸設備として総額4,937億円の投資を行いました。また、「事業投資事業部門」の太陽光発電設備などを中心に、社用設備や賃貸目的以外の事業用設備として総額480億円の投資を行いました。

③ 事業の譲渡・譲受け、合併・分割、株式等の取得・処分等の状況

該当事項はありません。

④ 主要な借入先およびその借入額(2020年3月31日現在)

オリックスの金融機関借入は当社を中心に行っており、当期末における当社の主な借入先は以下のとおりです。

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対処すべき課題

オリックスは、経営環境に柔軟かつ迅速に適応していく企業体質を、常に維持し進化させていくことが重要だと考えています。持続可能な成長に向けて、以下のような取り組みを進めています。

サステナビリティの推進

サステナビリティ推進チームを設置し、「サステナビリティポリシー」「人権ポリシー」「サステナブル投融資ポリシー」を制定しました。投融資案件の選定や事業部門の目標(KPI)にサステナビリティの要素を加え、定着化を図っています。

統合リスク管理の強化

2017年6月に設置したERM本部では、内部統制に加え主に非財務リスクの管理の高度化を推進してきました。2020年3月期は投資案件の審査・モニタリングのプロセスに非財務リスクチェックを組み込み、リスク管理対象を広げました。

情報セキュリティの強化とデジタルトランスフォーメーション(情報化推進)

深刻な経営リスクとなりつつあるサイバー攻撃リスクに対応するため、2018年6月に情報セキュリティ統括部を設置し、セキュリティ対策を高度化しました。また、ビジネス環境の変化や、世の中の新技術が既存事業の脅威となるような状況に対応するため、2019年8月にデータ改革部とデジタルイノベーション促進部を設置しました。これまでに蓄積した膨大な取引データの有効利用、AIの活用による課題解決を進め、新規事業開発や既存事業の収益性向上を図っています。

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連結計算書類