第58期 事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)

1 経営の基本方針等

経営の基本方針

オリックス(当社およびその子会社から成る企業集団をいう。以下同じとする。)はグループとして次の企業理念および経営方針を定めています。

目標とする経営指標

オリックスは、持続的な成長に向けて、収益力の観点から当社株主に帰属する当期純利益を、資本効率の観点からROE(株主資本・当社株主に帰属する当期純利益率)を、健全性の観点から信用格付を目標とする経営指標としています。

当期は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けましたが、オリックスの強みである多角的な事業展開によりその影響は限定的であったため、当社株主に帰属する当期純利益は1,924億円となりました。ROEは、当期純利益の減少と株主資本の増加により前期の10.3%から低下し、当期は6.4%となりました。中長期的には11%以上を目指します。また、信用格付はA格以上を引き続き維持しております。

剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、事業活動で得られた利益を事業基盤の強化や成長のための投資に活用することにより、株主価値の増大に努めています。同時に、業績を反映した安定的かつ継続的な配当を実施致します。また、自己株式取得につきましては、経営環境、株価の動向、財務状況および目標とする経営指標等を勘案のうえ、弾力的・機動的に実施します。

当期につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、期初の時点でオリックスの業績を見通すことが困難で、環境次第では業績が大幅に下振れる可能性もございましたが、そのような環境下でも安定的な株主還元を行う姿勢を示すため、当期に限り、配当性向を50%とすることと致しました。したがいまして、当期の1株当たりの年間配当金につきましては、78円となります。なお、配当の決定につきましては、会社法第459条第1項に基づき、取締役会の決議により剰余金の配当をすることができる旨を定款に定めています。また、当期は、合計543億円の自己株式取得を行いました。

1株当たりの配当金の過去5年間の推移は以下のとおりです。

2 オリックスの現況に関する事項

「2.オリックスの現況に関する事項」における記載は、米国預託証券の発行等に関して要請されている用語、様式および作成方法(以下、「米国会計基準」)に基づいています。

当期の事業の経過およびその成果

経営環境

2020年初めから、新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大し、その防止策として各国政府が人の移動制限等の措置を執ったことから需要消失やサプライチェーン寸断に直面した結果、世界経済は大きく下振れしました。当期において、オリックスでは、不動産セグメントの施設運営事業、事業投資・コンセッションセグメントの空港運営事業、輸送機器セグメントの航空機リース事業において事業環境が悪化し、大幅な減益を余儀なくされました。

連結業績等の概況

当期の営業収益は、サービス収入やオペレーティング・リース収益が減少したものの、生命保険料収入および運用益や有価証券売却・評価損益および受取配当金が増加したため、前期に比べて1%増の2兆2,927億円になりました。

営業費用は、支払利息やサービス費用が減少したものの、生命保険費用が増加したため、前期に比べて1%増の2兆339億円になりました。

一方で、持分法投資損益は前期に比べて99%減の5億円、子会社・関連会社株式売却損益および清算損は前期に比べて69%減の233億円になりました。

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、税引前当期純利益は、前期に比べて30%減の2,876億円、当社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べて36%減の1,924億円になりました。

財産および損益の状況(米国会計基準)

ご参考2021年3月期 セグメント利益・セグメント資産
(1億円未満を四捨五入して表示)

主要な事業内容および主要な営業所ならびに使用人の状況

セグメント情報

セグメント利益

法人営業・メンテナンスリース

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法人営業では、グループ営業の中核的な役割を担い、全国の営業網を通じて、法人向けにリースや融資に加え、生命保険、環境エネルギーなどの商品・サービスを幅広く提供しています。メンテナンスリース事業では、専門性を強みに、自動車のトータルサービスおよび電子計測器やIT関連機器など多種多様なレンタル商材を提供しています。

主要な事業内容

金融・各種手数料ビジネス、自動車およびIT関連機器などのリースおよびレンタル、弥生

業績等の概況

セグメント収益は、IT関連機器のレンタルにおいてオペレーティング・リース収益が増加したものの、金融資産の減少に伴う金融収益の減少や商品売上高の減少により、前期に比べて横ばいの4,298億円になりました。

セグメント利益は、オペレーティング・リース原価およびサービス費用が増加したことにより、前期に比べて6%減の591億円になりました。

セグメント利益

不動産

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オフィスビル・商業施設・物流施設・分譲マンションなどの開発・賃貸・管理や、不動産の資産運用などの事業を展開しています。また、ホテル・旅館、水族館など様々な施設を運営し、質の高いサービスを提供しています。

主要な事業内容

不動産開発・賃貸・管理、施設運営、不動産の資産運用

業績等の概況

セグメント収益は、新型コロナウイルス感染症の影響により運営施設の休館や稼働率低下のため運営事業のサービス収入が減少したこと、および賃貸不動産の売却益が減少したことにより、前期に比べて23%減の3,598億円になりました。

セグメント利益は、運営事業のサービス費用が減少したものの、前記理由により、前期に比べて69%減の247億円になりました。

セグメント利益

事業投資・コンセッション

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事業投資事業では、国内外で企業投資を行い、グループの専門性を活用して投資先の企業価値向上を図っています。コンセッション事業では、関西の3ヵ所の空港および下水処理場を運営しています。

主要な事業内容

企業投資、コンセッション

業績等の概況

セグメント収益は、前期に投資先を売却したことによりサービス収入が減少したものの、既存投資先の商品売上高が増加したことにより、前期に比べて12%増の3,312億円になりました。

セグメント利益は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、関西3空港における旅客数や発着回数が著しく減少したこと、および企業投資において投資先の売却益を前期に計上したことの反動により、前期に比べて92%減の34億円になりました。

セグメント利益

環境エネルギー

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再生可能エネルギー事業をグローバルに展開しています。また、電力小売、省エネルギーサービス、廃棄物の再資源化や処理など、総合的な環境エネルギー事業のトップランナーとして、幅広い領域で事業を行っています。

主要な事業内容

国内外の再生可能エネルギー、電力小売、省エネルギーサービス、ソーラーパネル・蓄電池販売、廃棄物処理

業績等の概況

セグメント収益は、電力販売の減少によりサービス収入が減少したため、前期に比べて4%減の1,432億円になりました。

セグメント利益は、インドで風力発電事業を行う投資先の売却益などを計上したことにより、前期に比べて146%増の286億円になりました。

セグメント利益

保険

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「シンプルで分かりやすいこと」「合理的な保障をお手頃な価格でご提供すること」をコンセプトに、豊富な保険商品を取り揃え、保険代理店による販売、金融機関による販売、通信販売、当社社員による対面販売を行っています。

主要な事業内容

医療保険や死亡保険などの生命保険

業績等の概況

セグメント収益は、保有契約の増加に伴う生命保険料収入の増加および変額保険にかかる資産運用益が増加したため、前期に比べて32%増の4,919億円になりました。

セグメント利益は、前記に加え、変額保険に関連する責任準備金の戻入などを計上したことにより、前期に比べて23%増の551億円になりました。

セグメント利益

銀行・クレジット

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銀行事業では、投資用不動産ローンを中心に取り扱っています。また、インターネットを通じた取引を中心にすることで運営費を抑え、お客様に高水準の預金金利を提供しています。クレジット事業では、カードローンに加え、他の金融機関が取り扱う無担保ローンの保証や住宅ローン(フラット35)も展開しています。

主要な事業内容

投資用不動産ローンを中心とした銀行業務、カードローン、信用保証、住宅ローン

業績等の概況

セグメント収益は、銀行における投資用不動産ローンからの金融収益が増加したものの、クレジットにおける営業貸付金の減少に伴う金融収益の減少により、前期に比べて1%減の837億円になりました。

セグメント利益は、クレジットにおいて新規実行件数の減少や事故発生率の低水準での推移等の影響から、当期の信用損失費用が減少したことにより、前期に比べて23%増の480億円になりました。

セグメント利益

輸送機器

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航空機事業では、当社保有機体を航空会社にリースしています。また、国内外の投資家に対して航空機投資のアレンジメントや、機体の売却・再リースを含むアセットマネジメントサービスを提供しています。船舶事業では船舶のファイナンス、船舶の売買・仲介を行っています。

主要な事業内容

航空機のリース・管理、船舶関連投融資

業績等の概況

セグメント収益は、航空機リース事業において自社保有機数および売却機数の減少に伴いオペレーティング・リース収益が減少したことや投資家への売却機数の減少に伴う手数料収入が減少したことにより、前期に比べて51%減の316億円になりました。

セグメント利益は、前記に加え、Avolon Holdings Limited(以下、「Avolon」)の持分法投資損益が減少したことにより、前期に比べて92%減の38億円になりました。

セグメント利益

ORIX USA

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コーポレートローン事業、有価証券投資、不動産ファイナンス事業、企業投資事業を展開するとともに、これらの資産を対象としたアセットマネジメントサービス事業などを提供・展開しています。

主要な事業内容

米国における金融、投資、アセットマネジメント

業績等の概況

セグメント収益は、不動産ローン組成・サービシング事業において新規案件数の増加により金融収益が増加したこと、および投資事業において有価証券売却・評価損益および受取配当金が増加したことにより、前期に比べて2%増の1,380億円になりました。

セグメント利益は、前期に計上した株式売却益の反動により、前期に比べて23%減の436億円になりました。

セグメント利益

ORIX Europe

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株式から債券まで幅広いアクティブ運用の投資ソリューションを提供しています。年金、銀行、保険、公的機関など多くの機関投資家を顧客としています。

主要な事業内容

株式・債券のアセットマネジメント

業績等の概況

セグメント収益は、有価証券売却・評価損益および受取配当金が増加したことにより、前期に比べて8%増の1,608億円になりました。

セグメント利益は、販売費および一般管理費が減少したものの、前期に計上した一部の事業部門の売却益の反動により、前期に比べて13%減の379億円になりました。

セグメント利益

アジア・豪州

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現地のお客様に対して機械・設備リース、自動車リース、割賦、融資、レンタルなどを提供しています。中華圏では、企業投資も行っています。各現地法人では、オリックスの国内事業で培ったノウハウを活用し、事業の多角化を図っています。

主要な事業内容

アジア・豪州における金融、投資

業績等の概況

セグメント収益は、サービス収入や金融収益が減少したことにより、前期に比べて7%減の1,283億円になりました。

セグメント利益は、前記に加え、アジアにおいて子会社・関連会社株式売却益を計上したものの、関連会社投資の減損を計上したことにより持分法投資損益が減少したため、前期に比べて横ばいの147億円になりました。

セグメント利益

資金調達等についての状況(重要なもの)

① 資金調達の状況

オリックスの長短借入債務および預金の受け入れによる資金調達は当期末で7兆419億円になっています。そのうち金融機関からの調達については大手銀行、地方銀行、外資系銀行、生損保会社等、調達先は多岐にわたり、その数は約200社です。資本市場での調達については、社債、ミディアム・ターム・ノート(MTN)、コマーシャル・ペーパー(CP)、資産の証券化に伴う支払債務などで構成されています。

当期は借入債務の長期化、返済額の集中緩和などの施策を実施しました。また、利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)(ハイブリッド債)を発行しました。今後も調達のバランスを考慮しながら、財務の安定化を図っていきます。

② 設備投資の状況

当期中に、主に法人営業・メンテナンスリースセグメント、アジア・豪州セグメントおよび輸送機器セグメントにおいて、オペレーティング・リース事業用の賃貸設備として総額3,028億円の投資を行いました。また、不動産セグメントのホテル・旅館などを中心に、社用設備や賃貸目的以外の事業用設備として総額406億円の投資を行いました。

③ 事業の譲渡・譲受け、合併・分割、株式等の取得・処分等の状況

該当事項はありません。

④ 主要な借入先およびその借入額(2021年3月31日現在)

オリックスの金融機関借入は当社を中心に行っており、当期末におけるオリックスの主な借入先は以下のとおりです。

対処すべき課題

オリックスは、社会に新しい価値を提供し社会に必要とされる存在となることが、企業の持続的な成長を可能にすると考えています。そのためには以下のような取組により経営基盤を強化することが課題であると考えています。

サステナビリティの推進

サステナビリティを推進し、その取組状況に関する開示を拡充する目的で、2019年7月に経営計画部サステナビリティ推進チーム(現IR・サステナビリティ推進部サステナビリティチーム)を設置しました。「サステナビリティポリシー」「人権ポリシー」「サステナブル投融資ポリシー」を制定し、投融資案件の検討過程において、サステナブル投融資ポリシーに基づき、サステナビリティの観点での精査を行っています。また、2020年10月に、気候変動がもたらすリスクおよび機会の財務的影響を把握し開示することを狙いとした提言であるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しました。

統合リスク管理の強化

2017年6月にERM本部を設置。オリックスの経営戦略実現のために必要な全社的リスク管理の方針や基準を策定し、それを実現するための体制づくりおよび内部統制システムの実効性を不断に向上させる仕組みづくりを進めています。さらに、2020年8月には同本部内にリスク管理統括部を設置し、リスクを適切に特定・評価、コントロール、マネジメントできる体制の整備とその運用強化に継続的に取り組んでいます。

情報セキュリティの強化とデジタルトランスフォーメーション(情報化推進)

2018年6月に情報セキュリティ統括部を設置したほか、2020年1月に経営情報化企画管理部を設置し、オリックス全体のITの基盤を固め、業務のデジタル化とデジタル化された経営情報のセキュリティ強化を推進しています。また、その次のステップとして、蓄積した膨大な取引データの有効利用に加え、ITを駆使した事業拡大と新規事業の開発を視野に入れています。

連結計算書類