事業報告(2019年4月1日から2020年3月31日まで)

当社グループの事業活動の状況

当社グループ(注)は、グループの企業価値の向上を目指し、証券業を中核とした事業活動を行っております。当社グループの当期(2019年度)の事業の概況は以下のとおりであります。

(注) 本事業報告において、「当社グループ」とは、当社及びその関係会社から成る企業集団を指します。

経済・市場環境

当期のわが国の経済は、2019年5月の貿易などを巡る米中協議の決裂、それを受けた両国による追加関税の再度の引き上げによって世界貿易の停滞色が強まるなど外部環境が悪化する中、輸出の減少、能力増強を目的とした設備投資の先送りなどの動きがみられました。一方、高水準の企業収益や超低金利、労働需給の逼迫などを背景に、合理化・省人化投資や研究開発投資などの増勢は維持されました。2019年10月には消費税率が10%に引き上げられました。住宅や耐久財などにおいては政府の需要平準化策が一定の効果を発揮したものの、駆け込み需要の反動に大型台風による甚大な被害、さらに暖冬の影響などが重なり、2019年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率換算△7.1%と大幅なマイナスを記録しました。また当期のわが国経済の一つの特徴は、米中貿易摩擦などの影響を受けやすい製造業の収益環境が悪化する一方で、非製造業の業況は高水準が維持されたことです。その結果、10-12月期の大幅マイナス成長などを経験しながらも雇用・所得環境は緩やかな改善を続けました。2020年1月には米中両国政府が貿易交渉で「第一段階の合意」に署名したことを受け、製造業を含めた世界経済が回復に転じ、その恩恵を日本も受けるという期待が高まる局面もありました。しかしながら、新型コロナウイルスの発生と感染拡大によって状況は一変しました。新型コロナウイルスの感染は欧米諸国をはじめとして世界各国に広く拡大し、3月にはWHO(世界保健機関)が世界的な大流行を意味する「パンデミック」を表明しました。日米欧などでは強力な財政・金融政策が実施され、企業の資金繰りや雇用の維持を支援しているものの、不要不急の外出や飲食店等の営業の自粛・制限などの感染拡大抑止策の経済への悪影響は極めて大きく、日本及び世界経済の大幅な落ち込みは不可避の情勢となっています。

株式市場においては、貿易をはじめとした米中間の対立、新型コロナウイルスの感染拡大などの外部環境に左右される展開となりました。日経平均株価は2019年4月から8月にかけて21,000円前後で推移しましたが、その後は米中両国政府が再交渉を開始したことや米国の金融緩和を受けて上昇基調が強まり、12月には約1年2カ月ぶりに24,000円台を一時回復しました。しかし、新型コロナウイルスによる日本及び世界経済の悪化懸念が強まった2020年2月末以降は記録的な下落となり、3月半ばには一時、2016年以来の16,000円台まで急落しました。その後は追加の金融緩和や大型経済対策への期待から株価がやや持ち直した結果、当期末の日経平均株価は18,917円01銭となりました。前期末比では△10.8%の大幅下落となりました。

債券市場においては、極めて緩和的な金融環境や世界経済の減速懸念を受けて、当期中の10年国債利回りは概ねマイナス圏で推移しました。当期末の10年国債利回りは0.005%となりました。

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連結業績の概況

(1)当社グループの損益の状況
(2)当社グループの資産・負債・純資産の状況

当社グループの事業活動の成果(各セグメントの実績)

リテール部門

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【主な商品・サービス】

株式、債券、投資信託、ラップ口座サービス、保険、預金、ローン、相続関連サービスなど

大和証券株式会社では、「クオリティNo.1」の実現に向け、「商品・サービスのクオリティ向上」、「お客様担当の最適化」、「お客様との接点拡大」に注力した営業推進体制改革により、お客様からの信頼の飛躍的向上を目指しています。

当期は、「お客様の最善の利益を追求」する企業文化の醸成と営業スタイルの確立を目指すため、大和版NPS®(注1)の行動指針を策定し、お客様満足度向上のため営業推進体制の刷新や評価制度の見直しなどに取り組みました。その結果、外部のNPS調査(注2)において、対面証券部門で第一位を獲得しました。

お客様のあらゆるニーズに応える魅力的な商品・サービスの提供に努めており、2019年11月には、最先端のシステム運用と24時間モニタリングにより、収益機会の追求とリスク管理を徹底する「マンAHLスマート・レバレッジ戦略ファンド」の取扱いを開始し、残高1,000億円を突破し順調に拡大しています。

また、あらゆる世代のお客様ごとにきめ細やかな対応ができるよう、相続関連業務を専門とし、お客様の個別のニーズに対応する「相続コンサルタント」及び主にシニア層のお客様を担当し、資産運用に留まらず幅広くシニアライフをサポートする「あんしんプランナー」を全店配置し、相続・贈与に関するコンサルティングを強化しています。「ダイワファンドラップ プレミアム」の付帯サービスである「相続時受取人指定サービス」、「暦年贈与サービス」は、お客様の“資産をのこしたい”というニーズに訴求し、ラップ口座サービスの契約残高の拡大に寄与しています。

さらに、お客様との更なる接点拡充を目指し、低コスト・小規模な営業所を増やし、当期末に国内店舗の合計は54営業所を含め、168店舗となりました。

(注1) NPS®:Net Promoter Scoreの略であり、お客様のロイヤルティを数値化する指標。なお、NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

(注2) NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が2019年10月に公表した利用者を対象に実施した業界別のNPSベンチマーク調査結果です。

ホールセール部門

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【主な商品・サービス】

グローバル・マーケッツ:株式、債券・為替、デリバティブ

グローバル・インベストメント・バンキング:株式の引受け、債券の引受け、M&Aアドバイザリー、上場コンサルティングなど

ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されています。

グローバル・マーケッツでは、主に機関投資家や事業法人を対象とした株式、債券・為替及びそれらの金融派生商品のセールス及びトレーディング、並びにリテール部門への商品供給、販売サポートを行っています。

当期は、変動の激しい経済・市場環境の中、リテール部門とホールセール部門との連携によるタイムリーな商品提供や、市場環境の変化に対応した機動的なトレーディングが、収益に貢献しました。

グローバル・インベストメント・バンキングでは、有価証券の引受業務及びM&Aアドバイザリー業務などを行っています。

引受業務では、freee株式会社のグローバルIPO(注1)においてジョイント・グローバル・コーディネーターを務めたほか、上場市場変更に伴う株式の公募売出しの主幹事を複数務めました。また、債券においては事業会社による初めての個人向けサステナビリティボンド(注2)となった株式会社商船三井社債等のSDGs債(注3)を含む普通社債及び劣後債で主幹事を複数務めました。

M&Aアドバイザリー業務では、京セラ株式会社による米国上場子会社AVX Corporationの完全子会社化など、当社グループ各社の連携により多くのM&A案件に関与しました。

また、日本、アジア、欧州及び米州の各拠点の連携促進のため、2019年4月より、当社グループのM&Aアドバイザリー業務のブランド名を「DC Advisory」に統一しました。さらに、2019年9月に、イタリアのミラノ市に、欧州7拠点目となる、Daiwa Corporate Advisory S.r.lを設立し、同10月には、風力及び太陽光等の再生可能エネルギー分野に強みを持つ、オランダのフィナンシャル・アドバイザリー事業を行うGreen Giraffe Advisory B.V.へ50%出資するなど、グローバルで質の高いM&Aアドバイザリー業務を提供すべく体制強化を行いました。

(注1) IPO(Initial Public Offering):新規株式公開を実施するときに株式の公募・売出しを行うこと。

(注2) サステナビリティボンド:企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクト双方に要する資金を調達するために発行する債券。

(注3) SDGs債:日本証券業協会が提唱する、調達資金がSDGsに貢献する事業に充当されるソーシャルボンド、グリーンボンド、サステナビリティボンドなどを含む債券の総称。

アセット・マネジメント部門

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【主な商品・サービス】

各種投資信託商品(組成・運用)、投資顧問、お客様・販売会社支援、不動産投資信託(組成・運用)など

大和証券投資信託委託株式会社(注1)は、幅広い販売チャネルを通じた商品の提供や運用力の強化により、運用資産額の拡大に取り組みました。

2019年11月に設定した「マンAHLスマート・レバレッジ・ファンド」の販売が好調で1,139億円の資金増加となりました。また、上場投資信託への資金流入を主因として、公募株式投資信託全体で当期の資金増加額は7,297億円、当期末の純資産残高は13兆4,783億円となりました。

当社と大和証券投資信託委託株式会社は、Global X Management Company Inc.とアセット・マネジメント分野において協業し、テーマ型・スマートベータ(注2)を中心とした先進的なETFの提供などを目的として、2019年9月に合弁会社Global X Japan 株式会社を設立しました。

不動産アセット・マネジメント分野では、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社において、物流施設特化型REITである大和証券ロジスティクス・プライベート投資法人の運用を開始しました。また、2019年9月に、住宅特化型上場REITであるサムティ・レジデンシャル投資法人の投資口を追加取得し、同投資法人を連結子会社としました。更に、新規物件の取得や資産の入替によるポートフォリオ利回りの向上、既存物件の価値向上に努め、当期末の運用資産規模は1兆693億円となりました。なお、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社運用の日本賃貸住宅投資法人及び日本ヘルスケア投資法人は、2020年4月1日付で合併し、大和証券リビング投資法人となりました。合併と同時に一部保有物件の売却、第三者割当増資及びそれに伴う物件取得を行い、資産の入替及び運用資産規模拡大を実現しました。

(注1) 大和証券投資信託委託株式会社は、2020年4月1日に大和アセットマネジメント株式会社に商号を変更いたしました。

(注2) 「テーマ型」の投資とは、特定の株価指標や、環境、企業責任など絞り込まれたテーマに沿って投資を行うことを指し、「スマートベータ」とは、財務指標や配当などの要素に着目して定量的に銘柄選定をすることで、市場全体や業種別の平均よりも高いリターンを目指す指数をいいます。

投資部門

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【主な商品・サービス】

ベンチャー投資、プライベート・エクイティ投資、金銭債権投資、エネルギー・インフラストラクチャー投資など

大和企業投資株式会社は、国内外の様々なステージのベンチャー企業への投資を実行するとともに、投資先の上場などを通じた既存投資案件の回収を進めました。

大和PIパートナーズ株式会社は、国内外で不動産ローンや企業向け投融資を実行しました。また、不良債権投資や企業投資などの既存投資案件の回収を進めました。

さらに、大和企業投資株式会社と大和PIパートナーズ株式会社は、2019年7月に、主としてミャンマーで事業を行う未上場企業に対して投資するファンドである「DAIWA Myanmar Growth Fund」を共同で組成しました。

大和エナジー・インフラ株式会社は、太陽光発電などの再生可能エネルギー事業や海外配電などのインフラ事業に対する投資を実行しました。また、2019年12月に、再生可能エネルギー事業を開発・運用するドイツのAquila Capital Holding GmbHと戦略的提携を行うことを決定しました。

その他(注)

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【主な商品・サービス】

経済・社会に関する調査・研究、コンサルティング、システムインテグレーションなど

(注)連結会計上の調整等を含みます。

株式会社大和総研及び株式会社大和総研ビジネス・イノベーションは、同志社大学や立教大学との産学連携による共同研究や、AIを活用したお客様ごとの金融商品に対するニーズを予測するサービスの地域金融機関への提供など、先端技術の調査・研究及び活用に積極的に取り組みました。

株式会社大和ネクスト銀行は、全国の大和証券株式会社の店舗網を通じて、魅力ある好金利の円預金や外貨預金、利便性の高いサービスを幅広いお客様に提供しています。2019年12月に外貨預金残高は5,000億円を突破し、2020年2月には応援定期預金の累計預入額は1,000億円を突破いたしました。

2019年8月に、高齢者向け施設・住宅の運営会社であるグッドタイムリビング株式会社を子会社化しました。同社は、大和証券株式会社のお客様やそのご家族に対して同社の施設・住宅を提供するなど、大和証券グループのシニア層向けサービスの拡充に貢献しています。

(3)当社グループの設備投資の状況

当社グループでは、お客様本位の営業体制の構築やお客様ニーズを捉えた商品・サービスの提供、付加価値の高い業務に従事するための既存業務の効率化とビジネス革新・業務プロセス改革を目指すデジタル・トランスフォーメーション(注)の推進、事業継続に不可欠なインフラ基盤の整備や法制度への対応、リスク管理態勢の強化などを目的とする設備投資を行っております。

当期は、場所を問わず効率的な働き方を可能とするため、テレワークを前提とした業務端末やコミュニケーションツールの導入などを行い、お客様へのコンタクト頻度を高めるなど社員がお客様満足度の向上により一層取り組むことのできる環境を整備しました。また、口座開設をはじめとする各種事務手続きのペーパーレス化・自動化など業務プロセスの効率化、お客様が目的に応じ積立条件を設定・管理できる「つみたてサービス」の新設などお客様サービスの向上、サイバー攻撃やマネー・ローンダリングへの対策強化などのリスク管理高度化に取り組みました。これらの取り組みなどにより、総額約414億円のIT関連投資を行いました。

また、大和証券株式会社は、金沢文庫営業所、宝塚営業所、熊谷営業所、四日市営業所、大垣営業所、八千代緑が丘営業所、春日原営業所、福知山営業所、千里中央営業所、藤枝営業所、塚口営業所を新たに開設しました。

(注)デジタル・トランスフォーメーション:企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

(4)当社グループの資金調達の状況

当社は、以下のとおり総額で1,500億円の社債を発行しました。当社として初めてとなる任意償還条項付無担保永久社債(債務免除特約付及び劣後特約付)による資金調達となります。

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連結計算書類