事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)

当社グループの事業活動の状況

当社グループ(注)は、グループの企業価値の向上を目指し、証券業を中核とした事業活動を行っております。当社グループの当期(2020年度)の事業の概況は以下のとおりであります。

(注) 本事業報告において、「当社グループ」とは、当社及びその関係会社から成る企業集団を指します。

経済・市場環境

当期のわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、様々な経済活動が抑制されたことで厳しい状況に直面しました。2020年4月には緊急事態宣言が発出され、飲食店や小売店、娯楽施設などが休業し、不要不急の外出も控えられたことで、個人消費を中心に内需が大幅に縮小しました。感染拡大の抑え込みにいち早く成功した中国向けの輸出は増勢を維持しましたが、ロックダウン(都市封鎖)が実施された欧米向けの輸出は激減しました。その結果、4-6月期の実質GDP成長率は季節調整済みの年率換算で前期比△29.3%と、戦後最悪ともいえる大幅なマイナス成長を記録しました。宣言解除後の6月以降は国内外で経済活動の再開が進み、「Go To キャンペーン」が旅行や外食などの需要回復を後押ししました。日本銀行は民間企業の資金繰りを支援するための特別オペを実施し、政府も雇用調整助成金の拡充や持続化給付金の創設、実質無利子・無担保の融資などを実施したことで、倒産件数は減少傾向が続き、失業率はわずかな上昇にとどまりました。個人消費や輸出は10-12月期に緊急事態宣言前の水準近くまで回復した一方、設備投資や住宅投資は先行きの不透明感の強さもあり低水準となりました。2021年1-3月期は輸出などが底堅く推移し景気を下支えしましたが、二度目の緊急事態宣言が発出されたことにより、個人消費が大きく落ち込みました。

株式市場においては、日米欧で大規模な金融緩和や財政支出が相次ぎ実施され、企業業績の回復期待が高まったこともあり、当期初に18,000円台から始まった日経平均株価は、11月には1991年11月以来の25,000円超えとなりました。2021年に入っても株価の上昇基調は続き、2月には30年振りに30,000円の大台を一時回復しました。当期末の日経平均株価は29,178円80銭となりました。

債券市場においては、極めて緩和的な金融環境が維持される一方、景気の緩やかな回復や巨額の財政支出に伴う国債需給の悪化などを受けて、当期の10年国債利回りは概ね小幅なプラス圏で推移しました。当期末の10年国債利回りは0.120%となりました。

連結業績の概況

(1)当社グループの損益の状況
(2)当社グループの資産・負債・純資産の状況

当社グループの事業活動の成果(各セグメントの実績)

リテール部門

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【主な商品・サービス】

株式、債券、投資信託、ラップ口座サービス、保険、預金、ローン、相続関連サービスなど

大和証券株式会社では、「クオリティNo.1」の実現に向け、「お客様の最善の利益追求」、「商品・サービスのクオリティ向上」、「お客様との接点拡大」に注力したプリンシプルベースの営業体制の確立により、お客様からの信頼の更なる向上を目指しています。

当期は、お客様の声を起点とする商品・サービスの向上を目的に「お客様満足度協議会」を半期毎に開催し、ラップ口座サービスにおける投資対象ファンドの見直しや口座開設手続きのペーパレス化などに取り組みました。その結果、外部のNPS調査(注1)において、対面証券部門で2年連続第1位を獲得しました。

お客様のあらゆるニーズに応える魅力的な商品・サービスの提供に努めており、2020年10月には、投資信託の購入時手数料を無料とし、評価額や保有期間に応じた手数料とする新プラン「投信残高フィー(愛称:投信フレックスプラン)」を導入し、お客様の投資スタイルに合わせた手数料体系が選択できるようなりました。同プランの当期末残高は1,890億円を突破しています。

また、お客様の夢の実現に向けたお手伝いをする「ダイワのフューチャー・デザイナー ~未来のカルテ~」(注2)に「資産運用プランニング」(注3)が加わりました。機関投資家が利用するサービスを個人のお客様にも提供することで、資産運用のあらゆるシーンで最適なソリューションを提供することが可能となりました。

さらに、当社グループの顧客基盤の拡大や資産形成分野におけるサービス拡充のため、日本郵政グループ、信金中央金庫、株式会社クレディセゾンなど、強固な顧客基盤を有する企業と協業について検討を進めました。

店舗戦略については、大型店舗の統合・効率化を進める一方、小規模・低コストの営業所を増やし、効率的な営業店ネットワークの構築を進め、当期末時点の国内店舗数は64営業所を含め、177店舗となりました。また、コロナ禍の中、ウェビナーやオンライン面談などのデジタルツールを積極的に活用することで、お客様との接点の拡充に努めました。

(注1) NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が2020年9月に利用者を対象に実施した業界別のNPSベンチマーク調査結果です。

(注2) 2018年7月に導入したダイワの資産運用コンサルティングサービス。ライフプランの実現に向けた最適な資産運用プランを提案する「ライフプランニング」や、お客様のご意向に沿った最適な財産承継プランを提案する「財産承継プランニング」などを展開。

(注3) 世界のウェルス・マネジメント分野で高い評価と実績を持つMSCI Inc.が提供するポートフォリオ・リスク分析ソリューションサービス「WealthBench」をカスタマイズしたもの。「WealthBench」を活用して個人のお客様に提供するのは、国内で大和証券株式会社が初めて。

ホールセール部門

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【主な商品・サービス】

グローバル・マーケッツ:株式、債券・為替、デリバティブ

グローバル・インベストメント・バンキング:株式の引受け、 債券の引受け、M&Aアドバイザリー、上場コンサルティングなど

ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されています。

グローバル・マーケッツでは、主に機関投資家や事業法人を対象とした株式、債券・為替及びそれらの金融派生商品のセールス及びトレーディング、並びにリテール部門への商品供給、販売サポートを行っています。

当期は、良好なマーケット環境の中、リテール部門との連携によるタイムリーな商品提供、金利動向の変化を適切に捉えた債券などのトレーディング、及び市場環境の変化に対応した株式トレーディングが、収益に大きく貢献しました。

また、「クオリティNo.1」の実現に努めた結果、日経ヴェリタスにおける会社別株式アナリストランキングにおいて3年連続第1位を獲得しました。

グローバル・インベストメント・バンキングでは、有価証券の引受業務及びM&Aアドバイザリー業務などを行っています。

引受業務では、ソフトバンク株式会社や日本航空株式会社など複数の大型ファイナンスにおいてジョイント・グローバル・コーディネーターを務めたほか、株式会社ポピンズホールディングスによるSDGs-IPO(注1)、株式会社学研ホールディングスによるソーシャルPO(注2)及び国立大学法人東京大学によるソーシャルボンド(注3)などの本邦初となる案件をはじめ、多くの主幹事を務めました。

M&Aアドバイザリー業務では、グローバルなM&Aアドバイザリー体制を活かし、多くの国内外のM&A案件に関与しました。株式会社ニトリホールディングスと株式会社島忠の経営統合案件においては、株式会社ニトリホールディングスのフィナンシャル・アドバイザーを務めました。また、inspiratiaにおける2020年のグローバル・インフラセクター・リーグテーブルにおいては、第1位を獲得しました。

(注1) SDGs-IPO(Initial Public Offering):新規株式公開時の株式公募において、その資金使途及び発行体について、SDGsへの貢献、ソーシャルボンド原則への準拠性についての評価を第三者評価機関から取得したもの。

(注2) ソーシャルPO(Public Offering):ソーシャルボンド原則などに適合しているとの評価を第三者評価機関から取得したソーシャルエクイティ・ファイナンス・フレームワークに則って実施する公募による資金調達。

(注3) ソーシャルボンド:特定の社会的課題への対処や軽減、あるいは、ポジティブな社会的成果の達成を目指す新規又は既存のプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券。

アセット・マネジメント部門

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【主な商品・サービス】

各種投資信託商品(組成・運用)、投資顧問、お客様・販売会社支援、不動産投資信託(組成・運用)など

大和アセットマネジメント株式会社は、幅広い販売チャネルを通じた商品の提供や運用力の強化により、運用資産残高の拡大に取り組みました。

2020年7月に設定した「ダイワSociety5.0関連株ファンド」の販売が好調で1,165億円の資金増加となりました。上場投資信託への資金流入を主因として、公募株式投資信託全体で当期の資金増加額は1兆522億円、当期末の運用資産残高は19.4兆円となりました。

また、日本・中国両政府間の日中証券市場協力を背景とし、ETFを日本及び中国の証券取引所に相互に上場する「日中ETFコネクティビティ」に関して、中国株ETF2銘柄の上場に向けた準備を行いました。

Global X Japan 株式会社は、テーマ型ETFやスマートベータ型ETF(注)などの6銘柄を上場させ、当期末の運用資産残高は319億円となりました。

不動産アセット・マネジメント分野では、新規物件の取得や資産の入替による不動産ポートフォリオの質の向上、既存物件の価値向上に努め、当期末の運用資産規模は1兆2,129億円となりました。

大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社が運用する大和証券リビング投資法人は、2020年12月に、合併後初となる公募増資を行い、新規物件の取得を行いました。

(注) スマートベータ型ETF:財務指標や配当などの要素に着目して定量的に銘柄選定し、市場全体や業種別の平均よりも高いリターンを目指す指数に連動するETF。

投資部門

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【主な商品・サービス】

ベンチャー投資、プライベート・エクイティ投資、金銭債権投資、エネルギー・インフラストラクチャー投資など

大和企業投資株式会社は、国内外の様々なステージのベンチャー企業への投資を実行するとともに、投資先の上場などを通じた既存投資案件の回収を進めました。また、2020年10月に中国節能環保集団有限公司及び湖北国翼投資管理有限公司と共同で中国の省エネ・環境・循環型経済などの分野の優良企業に投資するファンドを組成し、2020年12月に日本と台湾の創薬分野を中心とした未上場のバイオベンチャーに投資する後続ファンドを組成しました。

大和PIパートナーズ株式会社は、国内外で金銭債権、不動産ローンや企業向け投融資を実行しました。

大和エナジー・インフラ株式会社は、太陽光発電などの再生可能エネルギー事業や海外配電などのインフラ事業に対する投資を実行しました。また、2020年5月に、再生可能エネルギー事業を開発・運用するドイツのAquila Capital Holding GmbHへ出資しました。

その他(注)

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【主な商品・サービス】

システムコンサルティング、システムインテグレーション、経済・社会に関する調査・研究、コンサルティングなど

(注)連結会計上の調整等を含みます。

株式会社大和総研及び株式会社大和総研ビジネス・イノベーション(注)は、リモートワーク環境を構築するなど、当社グループのDXの推進を支援しました。また、企業の健康経営を評価するガイドラインを策定・公表するなど、シンクタンクとして幅広い情報発信を行いました。

株式会社大和ネクスト銀行は、全国の大和証券株式会社の店舗網を通じて、魅力ある好金利の円預金や外貨預金、利便性の高いサービスを幅広いお客様に提供しています。2020年10月に応援定期預金の残高は1,000億円を突破し、2020年12月に外貨預金の残高は6,000億円を突破しました。

株式会社CONNECTは、資産形成層及び若年層のお客様をメインターゲットに、口座開設から株式取引、資産管理までをスマートフォンで利用できるサービスを2020年7月より開始しました。

(注) 株式会社大和総研及び株式会社大和総研ビジネス・イノベーションは、株式会社大和総研ホールディングスと2021年4月1日に合併しました。

(3)当社グループの設備投資の状況

当社グループでは、お客様本位の営業体制の構築やお客様ニーズを捉えた商品・サービスの提供、付加価値の高い業務に従事するための既存業務の効率化とビジネス革新・業務プロセス改革を目指すDXの推進、事業継続に不可欠なインフラ基盤の整備や法制度への対応、リスク管理態勢の強化などを目的とする設備投資を行っております。

当期は、大和証券株式会社が提供する「資産運用プランニング」、「投信フレックスプラン」及び「制度商品WEBサービス」(注)の導入に向けて取り組みました。また、モバイル型業務端末を活用して、お客様のお手続きに関する一連のプロセスのデジタル化に取り組むとともに、サイバーセキュリティ対策やコンプライアンス強化などのリスク管理高度化に取り組みました。これらの取り組みなどにより、総額約295億円のIT関連投資を行いました。

また、大和証券株式会社は、泉ヶ丘営業所、学園前営業所、武蔵小金井営業所、東大阪営業所、豊田営業所、秦野営業所、北野田営業所、知立営業所、大和八木営業所、草津営業所を新たに開設しました。

(注) 制度商品WEBサービス:株式報酬制度や株式などを利用した福利厚生制度(持株会・職場つみたてNISA・企業型確定拠出年金など)をインターネット上で管理するサービス。

(4)当社グループの資金調達の状況

当社は、以下のとおり総額で750億円の社債(愛称:大和証券グループ未来応援ボンド)を発行しました。

連結計算書類