事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

当社グループの事業活動の状況

当社グループ(注)は、グループの企業価値の向上を目指し、証券業を中核とした事業活動を行っております。当社グループの当期(2022年度)の事業の概況は以下のとおりであります。

(注)
本事業報告において、「当社グループ」とは、当社及びその関係会社から成る企業集団を指します。

連結業績の概況

(1)当社グループの損益の状況
(2)当社グループの資産・負債・純資産の状況

当社グループの事業活動の成果(各セグメントの実績)

リテール部門

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【主な商品・サービス】

株式、債券、投資信託、ラップ口座サービス、保険、預金、ローン、相続関連サービスなど

大和証券株式会社では、「クライアントファーストとクオリティNo.1の実現」に向け、「資産管理型ビジネスモデルの実現」、「お客様のニーズを捉えた商品・サービスの提供」、「総資産アプローチによるソリューションビジネスの拡大」、「外部チャネルとの業務提携を活用したニュービジネスの展開」により、お客様の最善の利益を追求しています。

同社は、お客様のあらゆるニーズに応える魅力的な商品・サービスの提供に努めており、2022年5月には、「ダイワ・WiL3号ベンチャーキャピタル・ファンド」の販売を行い、幅広いお客様にオルタナティブ資産(注1)への新たな投資機会の提供をしました。また、2022年10月には、資産運用に加え、相続・事業承継など富裕層のお客様の多様なニーズにお応えする「プラチナウェルスラップサービス」の取扱いを開始し、2023年3月には、オンライントレードのリニューアルを行い、お客様の利便性向上などに取り組みました。

当期は、前期に引き続き、お客様の声を起点とする商品・サービスの向上を目的に「お客様満足度協議会」を継続的に開催しており、外部のNPS調査(注2)では、対面証券部門において、引き続き高い水準を維持しております。

さらに、当社グループのお客様基盤の拡大や資産形成分野におけるサービス拡充のため、2022年5月には、国内に強固なお客様基盤を有する株式会社ゆうちょ銀行において「ゆうちょファンドラップ」の取扱いを開始し、また同月には、信金中央金庫と連携し開発した「しんきんファンドラップ」の取扱いを多摩信用金庫で開始しました。上記に加え、株式会社四国銀行との包括的業務提携においては、2023年4月の提携業務の開始に向け、準備を進めました。

店舗戦略については、大阪支店と梅田支店の統合などにより、当期末時点の国内店舗数は73営業所を含め、182店舗となりました。

(注1)
オルタナティブ資産:伝統的な投資対象である上場株式や債券に代わる新たな投資資産。
(注2)
NPS調査:NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が2022年11月に利用者を対象に実施した業界別のNPS(お客様のロイヤルティを数値化する指標)ベンチマーク調査結果。

ホールセール部門

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【主な商品・サービス】

グローバル・マーケッツ:株式、債券・為替、デリバティブ

グローバル・インベストメント・バンキング:株式の引受け、債券の引受け、M&Aアドバイザリー、上場コンサルティングなど

ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングで構成されています。

グローバル・マーケッツでは、主に機関投資家や事業法人を対象とした株式、債券・為替及びそれらの金融派生商品のセールス及びトレーディング、並びにリテール向けの商品供給及び販売サポートを行っています。

当期は、不透明な市場環境の中、投資家心理が悪化し、株式や債券のトレーディング収益が減少したことから、収益改善に向け、収益拡大とコスト削減の施策を検討しました。

また、「クオリティNo.1」の実現に努めた結果、日経ヴェリタスにおける会社別アナリストランキングでは、株式部門で5年連続第1位、金融市場部門では初の第1位を獲得しました。

グローバル・インベストメント・バンキングでは、有価証券の引受業務及びM&Aアドバイザリー業務などを行っています。

引受業務では、株式会社ゆうちょ銀行の売出し及びスカイマーク株式会社の新規上場においてグローバル・コーディネーター(注1)を務めたほか、富士フイルムホールディングス株式会社によるソーシャルボンド(注2)、国立大学法人東京工業大学によるサステナビリティボンド(注3)などの発行において事務主幹事及びStructuring Agent(注4)を務めました。

M&Aアドバイザリー業務では、株式会社ニトリホールディングスと株式会社エディオンの資本業務提携やJX金属株式会社によるタツタ電線株式会社の完全子会社化をはじめとする業界再編・グループ再編案件などの国内案件に加えて、様々な国・地域で多様な業種の案件に関与しました。

(注1)
グローバル・コーディネーター:株式の公募・売出しを国内外に対して実施するときに、全体の業務を統括する主幹事証券会社。
(注2)
ソーシャルボンド:特定の社会的課題への対処やその軽減、あるいは、ポジティブな社会的成果の達成を目指す新規又は既存のプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券。
(注3)
サステナビリティボンド:企業や地方自治体などが、国内外のグリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクト双方に要する資金を調達するために発行する債券。
(注4)
Structuring Agent:SDGs債などの発行にあたって、フレームワークの策定やセカンドオピニオン取得に関する助言などを通じて、SDGs債などの発行支援を行う者。

アセット・マネジメント部門

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【主な商品・サービス】

各種投資信託商品(組成・運用)、投資顧問、お客様・販売会社支援、不動産投資信託(組成・運用)など

大和アセットマネジメント株式会社は、運用力の強化や付加価値の高い新商品の開発により運用資産残高の拡大に取り組みました。その結果、地方金融機関などにおける資金流入増加を主因として、公募株式投資信託全体で当期の資金増加額は4,359億円、同社の当期末の運用資産残高は23.7兆円となりました。

また、「ダイワ・WiL3号ベンチャーキャピタル・ファンド」や「ダイワ・ブラックストーン・プライベート・クレジット・ファンド」といったオルタナティブ資産に投資するファンド、無形資産に着目した「ドラッカー研究所米国株ファンド」など、より付加価値の高い商品を開発しました。

Global X Japan 株式会社は、成長テーマ型ETF(注1)やインカム型ETF(注2)などの9銘柄を上場させ、同社の当期末の運用資産残高は1,094億円となりました。

大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社では、同社の運用する大和証券オフィス投資法人において、同投資法人として初のリート内開発プロジェクトとなるDaiwa日本橋馬喰町ビルを取得するなど、新規物件の取得や資産の入替による不動産ポートフォリオの質の向上、既存物件の価値向上に努め、当期末の運用資産規模は1兆2,069億円となりました。

また、開示資料の充実や環境認証取得などに努めた結果、同社の運用する大和証券オフィス投資法人、大和証券リビング投資法人のGRESB評価(注3)が向上しました。

(注1)
成長テーマ型ETF:先進的かつ成長性が見込めるテーマに着目し、構造的な変化から恩恵を受けることを目指すETF。
(注2)
インカム型ETF:配当利回りや配当の継続性などに着目し、高い分配金利回りを獲得することを目指すETF。
(注3)
GRESB評価:オランダに所在する評価機関GRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark)が行う不動産セクターの会社・ファンド単位での環境・社会・ガバナンス(ESG)への取組みの評価。

投資部門

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【主な商品・サービス】

ベンチャー投資、プライベート・エクイティ投資、金銭債権投資、エネルギー・インフラストラクチャー投資など

大和企業投資株式会社は、国内外の様々なステージのベンチャー企業への投資を実行するとともに、投資先の上場などを通じた既存投資案件の回収を進めました。また、2022年11月に中国の未上場ヘルスケア企業などに投資する湖北通瀛2号エクイティ投資ファンドを設立し、2023年1月に日本国内のベンチャー企業に投資するDCIベンチャー成長支援2号投資事業有限責任組合を設立しました。

大和PIパートナーズ株式会社は、国内外で金銭債権、不動産ローンや企業向け投融資を実行しました。2022年5月には、アジアで活動する投資家のハブとなっているシンガポールにおいて同社の現地法人(Daiwa PI Partners Singapore Pte. Ltd.)が営業を開始し、東南アジアにおける投資活動を強化しました。また、ベンチャーデット(注)事業を営む大和ブルーフィナンシャル株式会社は、順調に融資残高を拡大しました。

大和エナジー・インフラ株式会社は、世界最大級の稼働済洋上風力発電所である英国Hornsea One洋上風力の持分を一部取得するなど、国内外で再生可能エネルギー資産やインフラストラクチャー資産に対する投融資を実行しました。

(注)
ベンチャーデット:ベンチャー企業に対する融資形態での資金提供を指し、株式の希薄化を抑えつつ成長資金を調達できる方法。

その他

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【主な商品・サービス】

システムコンサルティング、システムインテグレーション、経済・社会に関する調査・研究、コンサルティング、銀行業務など

株式会社大和総研は、当社グループ向けシステム開発の効率性を更に向上させ、ITコストの低減に貢献しました。このほか、2022年12月にAI・データサイエンスなど先端技術に特化した、新ソリューション創出の礎となる情報を提供するウェブサイト「WORLD」(ワード)を開設しました。また、シンクタンクとして経済・社会の時流を踏まえた情報発信を行いました。

株式会社大和ネクスト銀行は、更なるサービスの向上を目的として、2022年6月にスマートフォンアプリをリニューアルしました。

株式会社CONNECT(注1)は、2023年1月に株式会社クレディセゾンとの業務提携の取組みの一環として「クレカ積立」サービスを開始しました。

大和証券リアルティ株式会社は、ウェアハウジング機能(注2)の提供により大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社の運用する投資法人の運用資産規模拡大に貢献しました。

(注1)
株式会社CONNECT:2023年5月に大和コネクト証券株式会社に商号変更。
(注2)
ウェアハウジング機能:物件の取得時期調整などのため、投資法人が取得する前に一時的に物件を取得する機能。

当社グループの設備投資の状況

当社グループでは、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの提供、業務プロセスのデジタル化及びデータの分析・研究・活用を通じたデジタル・トランスフォーメーション(注1)の実現、事業の効率性・安全性を確保するためのインフラ整備、法令・制度への対応、リスク管理の高度化などを目的とする設備投資を行っています。

当期は、銀行や信用金庫などの他金融機関との提携を迅速かつ効率的に行うために、大和証券株式会社の社内向けシステムをWebやAPI(注2)を通じて提携先でも利用することが可能となるプラットフォームの構築に向けた取組みを進めました。また、同社のビジネスの高度化・効率化に向けた投資として、同社の全役職員がデータを起点とした意思決定を行えるようデータを保管・分析する基盤を構築し、次フェーズとして、分析に使用するデータの蓄積及び分析ツールの導入に取り組みました。また、ゼロトラスト(注3)型セキュリティ基盤の構築により、前期に行った社外向け通信のセキュリティ強化に加え、当期は新たに社内向け通信についてセキュリティを強化しました。これらの取組みなどにより、総額約323億円のIT投資を行いました。

また、大和証券株式会社は、鳳営業所を新たに開設しました。

(注1)
デジタル・トランスフォーメーション(DX):企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、お客様や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
(注2)
API(Application Programming Interface):システム間の接続を標準的な形式で提供する仕様・仕組み。
(注3)
ゼロトラスト:社内外を問わず、守るべきデータ・システムへのあらゆるアクセスを信用せずに安全性の検証を行うセキュリティの考え方。

当社グループの資金調達の状況

当社は、以下のとおり総額で600億円の社債を発行しました。

過去5年間の連結業績及び連結財産の状況の推移

(注)
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第85期の期首から適用しており、第85期以降に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。

当社グループの対処すべき課題

2022年度は、ロシアによるウクライナ侵攻と世界の分断、インフレ圧力の高まりと金融引き締めなど、グローバル経済が大きな転換点を迎える中、証券・金融市場は激しい変動に見舞われました。そのような厳しい環境の中、当社グループにおいては、中期経営計画“Passion for the Best”2023に掲げた各種施策を推し進め、一定の成果を残すことができた1年となりました。具体的には、資産管理型ビジネスモデルへの移行とハイブリッドビジネスの拡大による新たな商品・サービスの創出を通じて、収益構造の多様化・安定化が着実に進展しており、当社グループが目指す方向性が正しいことを改めて示す結果となりました。

中期経営計画の最終年度となる2023年度は、未だ先行きの不透明感は払拭されていないものの、わが国においてもコロナ禍が節目を迎えるとともに約30年にわたり続いてきたデフレからの脱却への転換点を迎えています。また、NISAの抜本的拡充やiDeCoの利便性の向上など、資産所得倍増プランに掲げる政府の取組みは「貯蓄から投資へ」の流れを後押しするものとなります。当社グループとしては、環境変化にぶれることなく、「お客様の最善の利益」を追求した資産管理型ビジネスモデルへの移行を推し進めていきます。加えて、ハイブリッドビジネスの強化を通じて、幅広いお客様のニーズに適したオルタナティブ投資機会の拡充を図ります。さらに、揺るぎないサステナビリティの潮流を踏まえ、トランジション・ファイナンス(注)をはじめとした社会課題の解決に向けた取組みをサポートしていきます。

これらの取組みを同時並行で推進することで、マーケット環境に左右されにくい収益構造を構築するとともにサステナブルで豊かな社会の実現に貢献してまいります。

(注)
トランジション・ファイナンス:気候変動への対策を検討している企業が、脱炭素社会の実現に向けて、長期的な戦略に則った温室効果ガス削減の取組みを行っている場合にその取組みを支援することを目的とした金融手法。

各事業部門のアクションプラン

リテール部門
1
資産管理型ビジネスモデルの確立
2
多様なお客様のニーズに応える商品・サービスの提供、総資産アプローチによるソリューションビジネスの拡大
3
外部チャネルとの業務提携を活用したニュービジネス展開と収益化
4
マスマーケティング及びお客様対応のデジタルシフト、サステナビリティへの取組み
ホールセール部門
1
お客様のニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供
2
リテール部門との更なる連携強化によるビジネス基盤の拡大
3
収支構造の改善に向けたグローバルビジネスの再構築
4
サステナブルファイナンスの促進による企業支援
5
デジタル人材拡充とデータ駆動型ビジネスの推進
アセット・マネジメント部門
1
運用力・発掘力・商品アレンジ力強化による既存事業の拡大
2
オルタナティブ資産を投資対象とした商品の開発など、新ビジネスの研究開発・事業化
3
不動産アセット・マネジメント事業における資産運用力強化及び事業基盤の確立
4
グループ内連携による、不動産などオルタナティブ関連ビジネスの推進
投資部門
1
優良な投資機会の発掘、投資先のバリューアップ及びモニタリング体制の強化
2
再生可能エネルギー分野でのキャピタル・リサイクリングモデルの推進
3
継続的なVCファンド運用ビジネスの確立
4
サステナビリティを意識した社会的意義のある投資対象の開拓
その他(大和総研グループ)
1
ITサービスのプラットフォーム化やAI・データサイエンスによる新たな価値の創出
2
高品質で安定的なサービスの低コストでの提供による、大和証券グループのコストダウンへ貢献
3
お客様の企業特性に応じた営業体制の更なる強化、お客様のニーズに沿ったコンサルティングからシステムまでを含むトータルソリューションの提供、データサイエンスやサイバーセキュリティなどの高度な知見を要するソリューションによるビジネス基盤の拡大
4
情報発信と情報収集・意見交換との好循環によるリサーチクオリティの向上
その他(大和ネクスト銀行)
1
預金量の拡大と収益性の両立
2
グループ内連携の強化
3
国内外の金利環境に応じた運用残高の拡大や、運用対象の多様化
4
応援定期預金やESG投融資への継続的取組み

連結計算書類