事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

1.当連結会計年度の事業の状況

事業の経過及び成果

はじめに、2020年10月1日に株式売買システム「arrowhead」で発生した障害により、投資家の方々をはじめとする関係者の皆様に多大な御迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。当該障害及びそれを契機として現物市場の全ての売買が終日停止したことを受けて、当社及び㈱東京証券取引所は、障害が発生した機器の自動切替え機能の設定に不備があったことや、売買再開に係る㈱東京証券取引所のルールが十分でなかったことなどが認められたとして、2020年11月に金融庁から業務改善命令を受けました。これまで「ネバーストップ」をスローガンとして、信頼性を高める施策に取り組んでまいりましたが、今後は、迅速かつ適切な回復策を拡充すべく、「レジリエンス(障害回復力)」も同様に重視して取り組むことで、当社グループ(本事業報告において、当社及びその子会社からなる企業集団を指しております。)全体として、市場の信頼回復に努めてまいります。

さて、当連結会計年度における日本の株式市場は、主要国や地域における強力な財政・金融政策の発動により、経済活動と企業金融が下支えされるとの期待が高まったことから、期初から上昇基調で推移しました。夏以降、主に欧米を中心に新型コロナウイルス感染者が増加し、また11月に米国大統領選挙を控えていたことから上値が重い展開となりましたが、その後は新型コロナウイルス感染症のワクチンの開発により世界経済が正常化するとの期待から再び上昇基調となりました。こうしたなか、TOPIXは、2021年3月18日に約30年ぶりに2,000ポイントを回復するなど、期初から大幅に上昇し、3月末時点で1,954.00ポイント(2020年3月末比+550.96ポイント)となりました。

このような状況の下、当社グループは、グローバルな環境変化や技術革新の中、ステークホルダーとの一層の協力や新たなパートナーシップを通じ、誰もがあらゆる商品を安心かつ容易に取引できる取引所<Total smart exchange >への進化を目指すとともに、責任あるインフラの運営者として「持続可能な社会の構築」に向けて、さらに積極的に貢献していくことを中長期的な将来像とし、第三次中期経営計画(2019年度-2021年度)の2年目として、4つの重点戦略として掲げたⅠ.次世代に向けた「市場のカタチ」の追求、Ⅱ.総合取引所の実現・活性化とその発展、Ⅲ.データサービスの多様化の実現と次世代化への挑戦、Ⅳ.事業と社会の未来を支えるための基盤作りについて、諸施策を進めてまいりました。

当社グループの当連結会計年度の連結業績は、営業収益は1,333億43百万円(前連結会計年度比7.8%増)、営業費用は613億94百万円(同4.9%増)、営業利益は745億65百万円(同8.8%増)となり、税引前利益は747億32百万円(同8.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は513億89百万円(同7.9%増)となりました。

事業区分別の概況

①取引関連収益

営業収益 53,171 百万円
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取引関連収益は、現物の売買代金並びに金融デリバティブ及び商品デリバティブの取引高等に応じた「取引料」、取引参加者の取引資格に応じた「基本料」、注文件数に応じた「アクセス料」、利用する売買システム施設の種類に応じた「売買システム施設利用料」等から構成されます。

当連結会計年度の現物市場における1日平均売買代金は3兆4,837億円(注1)、金融デリバティブ市場の取引高合計は3億6,331万単位、商品デリバティブ市場の取引高合計は1,951万単位(注2)となりました。

この結果、当連結会計年度の取引関連収益は、基本料が10億18百万円(前連結会計年度比0.2%減)、現物取引料が310億56百万円(同20.6%増)、金融デリバティブ取引料が103億93百万円(同15.2%減)、商品デリバティブ取引料が20億14百万円(82.3%増)、その他アクセス料・売買システム施設利用料等が86億88百万円(同2.8%増)となり、合計531億71百万円(同9.4%増)となりました。

(注1) 東証市場第一部、第二部、マザーズ、JASDAQ及びTOKYO PRO Marketにおける立会内、立会外の株券売買代金並びにETF・ETN、REIT・インフラファンド及びその他有価証券等の立会内、立会外の売買代金の合計を記載しております。

(注2) 現金決済高を含みます。

主な取組み内容

●arrowhead障害の再発防止策を実施するとともに、市場のレジリエンス向上に向けた取組みを推進

●㈱東京商品取引所に上場していた貴金属、ゴム及び農産物の先物・オプションを㈱大阪取引所へ移管(2020年7月)

●首都直下地震の発生に備えた、各システムの関西バックアップセンターへの構築予定時期を決定(2021年1月)

②清算関連収益

営業収益 27,939 百万円
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清算関連収益は、㈱日本証券クリアリング機構が行う金融商品債務引受業に関する清算手数料等から構成されます。

当連結会計年度の清算関連収益は、279億39百万円(前連結会計年度比5.7%増)となりました。

主な取組み内容

●㈱日本証券クリアリング機構と㈱日本商品清算機構を合併し清算機関を統合(2020年7月)

●ETFの設定・交換の決済に係る清算業務を開始(2021年1月)

(注)JPX:㈱日本取引所グループ、OSE:㈱大阪取引所、TOCOM:㈱東京商品取引所、JSCC:㈱日本証券クリアリング機構、JCCH:㈱日本商品清算機構

③上場関連収益

営業収益 16,660 百万円
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上場関連収益は、上場会社等から時価総額に応じて受領する「年間上場料」、新規上場や上場後の新株券の追加上場などの際に受領する「新規・追加上場料」から構成されます。

当連結会計年度の上場関連収益は、新規・追加上場料が増加したことなどから、166億60百万円(前連結会計年度比16.3%増)となりました。

主な取組み内容

●IPOのサポートを推進し、99件のIPOを実現

●ESG開示・ESG投資の情報を集約したサイトを開設(2020年11月)

●新市場区分の上場制度や移行プロセスを公表(2020年12月)

④情報関連収益

営業収益 24,128 百万円
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情報関連収益は、情報ベンダー等への相場情報の提供に係る収益である相場情報料のほか、指数ビジネスに係る収益及びコーポレートアクション情報等の各種情報の提供に係る収益から構成されます。

当連結会計年度の情報関連収益は、相場情報料が増加したことなどから、241億28百万円(前連結会計年度比9.8%増)となりました。

主な取組み内容

●TOPIXの段階的移行プロセスを公表(2020年12月)

●外部パートナーとの協業も活用し、新しいデータサービスを実現

⑤営業費用

営業費用 61,394 百万円
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当連結会計年度の営業費用は、人件費が192億55百万円、システム維持・運営費が135億24百万円、減価償却費及び償却費が167億61百万円となったこと等から613億94百万円(前連結会計年度比4.9%増)となりました。

2.直前3連結会計年度の財産及び損益の状況

連結計算書類