事業報告(2020年3月1日から2021年2月28日まで)

企業集団の現況に関する事項

⑴ 当事業年度の事業の状況

① 事業の経過及びその成果

当社は、経営理念の実現とさらなる事業成長を遂げるため、長期ビジョンである2026年2月期(2025年度)にめざす姿を定め、ESG視点に基づく経営による社会価値・環境価値・経済価値の創出を通して、地域社会とともに持続的な成長の実現に向けて取り組んでいます。

2021年2月期(2020年度)を初年度とする中期経営計画(2020~2022年度)では、「海外における高い利益成長の実現」「国内における安定的成長の実現」「成長を支えるファイナンスミックスとガバナンス体制構築」「ESG経営の推進」を成長施策として掲げています。

当連結会計年度は、第1四半期連結会計期間に新型コロナウイルス感染症が世界規模で拡大し、当社が出店している中国、アセアン、日本において、行政による要請や感染拡大防止への配慮からモールの営業時間短縮や臨時休業を実施しました。重要な事業パートナーである専門店企業に対しては、モール営業上の制約が出ていることを踏まえ、賃料の減免等の支援を実施する一方で、休業期間におけるモールの管理・運営コストの見直しを図り、コスト圧縮に努めました。

当連結会計年度における業績は、営業収益は2,806億8千8百万円(前期比86.6%)、営業利益は343億9千4百万円(同56.6%)、経常利益は284億3千7百万円(同50.7%)、親会社株主に帰属する当期純損失は18億6千4百万円(前連結会計年度は342億3千9百万円の利益)となりました。

なお、当連結会計年度における一時休業期間中の固定費等は、新型コロナウイルス感染症による損失として165億7千2百万円を特別損失に計上しました。

セグメント別経営成績

<海外>

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営業収益は435億9千4百万円(前期比88.7%)、営業利益は37億7千1百万円(同45.4%)となりました。

中国・アセアン各国における消費は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で一時的に落ち込みましたが、営業再開後は、出店国、出店エリアごとで回復状況に濃淡はあるものの海外全体で見れば改善が進んでおり、引き続き高い成長の実現をめざしていきます。

2025年に海外70モール体制を計画していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、新規物件地の交渉や街づくりに遅れが生じたことから出店計画を変更し、2025年に50モール体制の実現に向けた出店準備を進めていきます。2025年度末時点では、物件のパイプラインとして70モール体制となる仕込みを完了させるべく、中国・アセアンとも高い成長力が見込まれるエリアにおいて探索・確保を進めていきます。

なお、海外現地法人の決算期は12月末のため、当連結会計年度の業績は1月~12月となります。

(中国)

営業収益は313億5千3百万円(前期比87.5%)、営業利益は22億9千6百万円(同40.9%)となりました。

新型コロナウイルス感染症拡大による武漢市封鎖に伴い2020年1月24日より同市3モールにて専門店を臨時休業、以降2020年2月中旬にかけて、中国全土への感染拡大に伴い、中国で展開する全21モール中、最大11モールを臨時休業しました。2020年2月22日から3月にかけて段階的に営業を再開し、2020年4月1日には全21モールの専門店営業を再開しました。政府指示により休業を継続していたシネマについても、7月20日より順次営業を再開し、8月初旬には全モールで営業を再開しました。

安全・安心を第一に、当社モール主導でライブコマースのプラットフォームを立ち上げ、専門店におけるライブコマースの実施や飲食専門店に対するデリバリーキャンペーンの実施、大型平面駐車場を活用した夜市開催等、消費行動の変容や政府による景気刺激策に対応した施策を推し進めました。

11月には、ダブル11(毎年11月11日に開催される中国最大の電子商取引イベント)を皮切りに年末年始に向けた特別キャンペーン「ALIVE WINTER PLAN」を開催しました。各種イベントやセールを実施する他、オンライン販売サイトにおいて、ダブル11セールやデジタルお買物券企画、中国で人気の専門店約30店舗によるライブコマース開催等、最新デジタルプロモーションを展開しました。

既存モールでは、イオンモール武漢金橋(湖北省武漢市)において、6月に食物販ゾーンのリニューアル、イオンモール武漢金銀潭(湖北省武漢市)において、7月に増床リニューアルを実施しました。イオンモール武漢金銀潭では、本棟4階の駐車場を店舗化し、世界各国の飲食専門店を集結させたレストラン街に加え、フードコートとアミューズメントを新設する等、48店舗を導入しました。

当連結会計年度の中国既存19モールの専門店売上は、第1四半期連結会計期間における休業の影響もあり、前期比79.8%となりました。営業再開以降、上記の取り組みの効果等もあり、第4四半期連結会計期間(3ヶ月)では前期比102.9%と前年を上回るトレンドに回復しました。

(アセアン)

営業収益は122億4千1百万円(前期比92.1%)、営業利益は14億7千4百万円(同54.9%)となりました。

ベトナムでは、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う政府の規制により、2020年3月28日から4モールの専門店営業を臨時休業しましたが、2020年4月24日に営業を再開し、全5モールでの営業体制となりました。7月下旬に新型コロナウイルス感染者が拡大したことから一時的に各モールの来店客数、売上は落ち込みましたが、同国の厳格なウイルス封じ込め対策により客足の戻りが早く、第4四半期連結会計期間(3ヶ月の)ベトナム既存4モールの専門店売上は前期比101.4%と前年を上回るトレンドに回復しました。

カンボジアでは、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、既存2モールの営業時間を短縮していましたが、6月に通常の営業時間に戻し、8月には休業していたシネマも営業再開しました。新型コロナウイルス感染症の影響は軽微でしたが、同国内に居住する外国人等が帰国した影響があり、当連結会計年度の既存2モールの専門店売上は前期比75.1%となりました。

インドネシアでは、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う政府による大規模社会制限の実施により、2020年3月31日から既存2モールの専門店営業を臨時休業しましたが、6月15日に営業を再開しました。インドネシア国内では、新型コロナウイルス感染者の増加が止まらず、既存2モールの来店客数は前年比で半減という厳しい状況が続いていますが、地元企業と連携したフードデリバリー割引キャンペーンを実施する等、売上確保に努めました。

当連結会計年度における新規モールとして、10月にインドネシア3号店となるイオンモール セントゥールシティ(西ジャワ区)、12月にベトナム6号店となるイオンモール ハイフォンレチャン(ハイフォン市)の計2モールをオープンしました。

イオンモール セントゥールシティは、ジャカルタ中心部から車で約1時間の西ジャワ州ボゴール県内の開発エリア内に立地しています。同エリアでは既に住宅、オフィス、ホテル、学校等の開発が行われ、今後高い成長が期待されるとともに、ジャカルタ中心部とボゴールを結ぶ次世代型交通システムが将来計画されており、広域集客も期待できる立地です。なお、10月のオープンは一部先行オープンで、2021年にグランドオープンを予定しています。

イオンモール ハイフォンレチャンは、ベトナム第三の中央直轄市であるハイフォン市に立地し、北部最大の港湾都市として大規模なインフラ整備が進み、経済成長と商業発展が期待されるエリアです。当モールでは、ショッピング、食事、エンターテインメント等、地域ニーズに対応したMDに取り組みました。また、モール外壁に大型デジタルスクリーン、館内にタッチパネル方式の情報検索用サイネージ等、100台以上のデジタルサイネージを導入し、館内マップ検索や新型コロナウイルス感染症対策サイン表示に活用する等、最新のデジタル体験を提供しています。

ベトナムでは、10月にホーチミン市政府との間で「ホーチミン市におけるショッピングモール開発に関する投資及び事業推進に関する包括的覚書」を締結しました。本覚書に基づき、ホーチミン市での大型ショッピングモール事業の更なる展開に向けた相互協力体制を強化し、地域の活性化やお客さまへの新たなサービス創出に取り組んでいきます。

カンボジアでは、イオンモール プノンペン(プノンペン都)において、10月にカンボジア初となるラグジュアリーブランド「COACH」を導入しました。当モールでは、2021年にラグジュアリーモールへと生まれ変わる大型リニューアルを計画しています。

インドネシアでは、イオンモール ジャカルタガーデンシティ(ジャカルタ市)において、11月にジャカルタ特別州の行政機能であるSAMSAT(ワンストップ統合行政システム)をオープンしました。来店ついでに車やバイクの車両登録や自動車税の納税等の行政手続きを行える環境を提供し利便性を高めました。同施設では、今後運転免許更新センターのオープンも予定しており、さらなる集客拡大を図っていきます。

イオンモール セントゥールシティにおいて、所在するボゴール県との間で「地域活性化に関する連携協定書」を締結しました。本協定は、ボゴール県にお住まいの地域の方々の利便性向上や地域の情報発信、コミュニティの拠点となることを目的としたもので、双方の資源を有効に活用、連携することで地域の活性化を推進していきます。

新たな出店国として、ミャンマーのヤンゴン郊外(ヤンゴン管区ダゴンセイカンタウンシップ)に、2023年に1号店出店を計画しています。当社とミャンマー最大の不動産ディベロッパーであるSHWETAUNG(シュエタン) REAL ESTATE CO.,LTD.と合弁会社を設立し、今後、合弁会社がミャンマーにおける多店舗展開に向けた物件開発を推し進めていきます。イオングループではこれまで、ミャンマーにおける学校建設支援事業や植樹活動等の社会貢献活動を実施し、交流を深めてまいりましたが、モール事業を通して新たなライフスタイルの提案、経済活性化に寄与してまいります。

なお、2021年2月にミャンマー国軍によるクーデターが発生し、同国内は非常事態宣言下にあることから、現地の状況を踏まえて従業員の安全を最優先しながら対応してまいります。

<当連結会計年度における海外新規モール>

(注)
  • イオンモール セントゥールシティは、一部先行オープンで、2021年にグランドオープンを予定しています。
  • イオンモール タンジュンバラット(インドネシア南ジャカルタ区)は、建築工事スケジュールの変更に伴い、オープン予定時期を2021年度に変更しました。

<日本>

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営業収益は2,370億9千3百万円(前期比86.2%)、営業利益は305億9千7百万円(同58.3%)となりました。

国内では、2020年4月7日に緊急事態宣言が発令されたことを受け、2020年4月8日から当社グループが管理・運営するモールの専門店および都市型ショッピングセンターを段階的に臨時休業し、2020年4月18日からは全国164施設全てを臨時休業しました。その後、緊急事態宣言の段階的解除を受け、5月13日より順次営業を再開し、5月28日には全施設の営業を再開しました。

営業再開にあたって、出入口へのAIによる検温器設置、売場・後方における飛沫感染防止対策としてのアクリル板の設置、来店客管理システムのデータに基づく入館制限基準の策定、外気取り込み量増加によるモール館内の換気機能強化等、感染拡大防止と安全・安心のための対策を実施しました。

新しい生活様式に合致したエンターテインメントとして、全国のイオンモール屋外駐車場にてドライブインシアターやドライブインパブリックビューイング等を開催しました。

ユーザビリティを向上し、よりストレスフリーなショッピング環境の提供を目的として、6月にイオンモールアプリを全面リニューアルしました。同アプリを活用し、来店時間のピーク分散やアイドルタイムでの飲食店利用など、お客さまの行動変容にあわせたクーポン発行、ポイント還元などのサービス提供を行い、専門店事業をサポートしました。同アプリは、アプリ分析プラットフォームを手がけるフラー株式会社が主催する日本最大級のアプリの祭典「App Ape Award 2020」において、2020年に本質的な成長を遂げたアプリとして、アプリ オブ・ザ・イヤー優秀賞を受賞しました。今後更なる機能拡充により利便性向上を図っていくことで、デジタル化を通じたお客さまの購買体験の高度化を推し進めていきます。

11月に開催した「イオンモール ブラックフライデー」では、お客さまの来店分散化を図るため、開催期間を前年の5日間から10日間に拡大しました。例年のセール企画に加え、ライブコマースやイオンモールアプリで参加いただける抽選会等、コロナ禍でもお買い物を楽しんでいただける、リアル・オンラインの両チャネルを活用した新企画を実施しました。

地域におけるワンストップソリューションの提供に向けたモール機能強化として、12月にイオンモール宇城(熊本県)に、宇城市小川支所新庁舎が外部棟に開所しました。モールへの支所移転は全国初であり、就労支援を目的とした障がい者施設の運営によるカフェや、子育て世代を対象に広い空間を利用した憩いスペースの設置など、利用者の利便性向上を図りました。

ヘルス&ウエルネスの取り組みとして、ミズノ株式会社と共同で、リアルとデジタル双方でのスポーツ体験を通じたスポーツ実施者の増加方策事業を推進しています。本事業では、スポーツへの意欲向上や実施回数の拡大、スポーツ体験を通じた健康サポートの実現をめざし、11月から12月にかけて全国6モールでスポーツ体験イベントの開催、および両社のWEBサイトやアプリ等を通じたデジタルコンテンツの配信を実施しました。当プロジェクトによる取り組みは、スポーツ庁の公募事業「令和2年度Sport in Life推進プロジェクト」に採択されました。

当連結会計年度における新規モールとして、12月にイオンモール上尾(埼玉県)をオープンしました。当モールは、コロナ禍における新規オープン1号店として、館内全ての吹き抜けへのサーキュレーター設置や吹き抜け上部のハイサイドライト窓の開放等、換気機能の強化を図りました。当モールにおける防疫対策の取り組みは、来訪者や従業員の健康と安全に配慮した施設としての評価を受け、国内商業施設で初めて「WELL Health-Safety Rating」を取得しました。また、ニューノーマルなモールづくりとして、上尾市との地域連携協定締結により地域密着に注力した取り組みとともに、案内ロボットの導入、「お客さまの声」のデジタル化、外壁の320インチ大型サイネージによる情報発信等、デジタルを活用した取り組みを推し進めました。

既存モールでは、8モールのリニューアルに加え、イオンモール高崎(群馬県)、イオンモール高知(高知県)の増床リニューアルを実施しました。

イオンモール高崎において、6月に既存棟と合わせて全体の約50%となる106店舗をリニューアルしました。増床棟では大型ファストファッションや書籍、家電、ペット用品等のライフスタイル型専門店を導入し、3階フードコートは12店舗・700席から16店舗・1,000席のフードコートに拡大しました。

イオンモール高知において、9月に既存棟と合わせて全体の58%となる92店舗をリニューアルしました。増床棟では、2階に国内外の大型ファストファッション専門店を導入し、既存棟から移転した3階フードコートは10店舗・650席から14店舗・1,000席の大型フードコートに拡大しました。また、館内の換気機能をより促進するために、換気扇の増設や高性能フィルターを使用した空気清浄機をフードコートに新設する等、防疫対策の取り組みを強化しました。

当連結会計年度の国内既存83モールの専門店売上は前期比76.0%となりました。第3四半期連結会計期間(3ヶ月)では、「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」のメガヒットによるシネマの集客効果等もあり、前期比91.8%まで回復しましたが、11月下旬より新型コロナウイルス感染者が再び拡大し、11都府県を対象に緊急事態宣言が再発令された影響もあり、第4四半期連結会計期間(3ヶ月)では前期比85.9%となりました。

都市型ショッピングセンター事業を手掛ける株式会社OPA(以下、旧OPA)は、2021年3月1日に、旧OPAが新設する100%子会社(以下、新OPA)を承継会社として会社分割(新設分割)し、分割会社(旧OPA)を当社が吸収合併しました。

新OPAはターミナル立地中心の都市型施設の管理・運営に特化し、経営リソースを集中することにより、新たな価値創造を図っていきます。旧OPAが保有するコミュニティ型施設および都市型施設の一部は当社が吸収し、デイリーニーズを満たす施設への変革や、物件によっては再開発実施により、物件価値の向上に取り組んでいきます。

<当連結会計年度におけるリニューアルモール>

(注)
  • イオンモール座間、イオンモール三光はシネマ棟の増床。
  • イオンモール高崎は増床リニューアル。専門店数は210店舗(+40店舗)、総賃貸面積は76,000㎡(+17,000㎡)に拡大。
  • イオンモール高知は増床リニューアル。専門店数は160店舗(+20店舗)、総賃貸面積は69,000㎡(+12,000㎡)に拡大。

<当連結会計年度における国内新規モール>

(注)

イオンモール新利府 南館(宮城県)は、建築工事スケジュールの変更に伴い、オープンを2021年3月5日に変更しました。

② 設備投資等の状況

当連結会計年度における設備投資総額は、597億3千8百万円(長期前払費用を含む)であります。

その内訳は、モール事業における「日本」423億4千2百万円、「中国」28億1千9百万円、「アセアン」145億7千6百万円であります。「日本」においては、当社所有新規モールであるイオンモール上尾の開設を行ったこと、既存モールであるイオンモール座間、イオンモール高知の増床リニューアルを実施したこと等による投資を実施しました。「中国」においては、イオンモール武漢金銀潭の増床リニューアル、「アセアン」においては、イオンモール ハイフォンレチャンの新規モールの開設を行ったこと等による投資を実施しました。

③ 資金調達の状況

当連結会計年度におきましては、長期借入金として既存取引銀行等より237億円、社債の発行により600億円の調達をいたしました。

⑵ 財産及び損益の状況の推移

① 企業集団の営業成績及び財産の状況の推移
(注)
  • 1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失は、期中平均発行済株式総数により算出しております。
  • 第110期(当連結会計年度)につきましては、前記(1)当事業年度の事業の状況①事業の経過及びその成果に記載のとおりであります。

【ご参考】

ご参考

ESG経営の推進

1 環境保全・社会貢献活動

当社は、「社会」「環境」「倫理」の側面から企業活動の方針を定め、これを推進する「イオンモールCSR(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ)会議」を毎月開催し、ESGへの取り組みの進捗管理および課題解決に向けての迅速な意思決定を行っています。

<環境課題の解決に向けて>

・脱炭素社会の実現に向けた取り組み

イオングループは脱炭素社会の実現をめざし、「店舗で排出するCO2等を2050年までに総量でゼロにする」「事業の過程で発生するCO2等をゼロにする努力を続ける」「すべてのお客さまとともに脱炭素社会の実現に努める」という3つの視点で取り組む「イオン脱炭素ビジョン2050」を策定しました。当社ではこの目標達成に向けて、太陽光発電設備およびEV充電器の設置等による省エネルギー活動を推進しています。

これまでにCO2フリー電力の活用を行ったイオン藤井寺ショッピングセンター(大阪府)、イオンモール名古屋茶屋(名古屋)、イオンモール長久手(愛知県)、イオンモール岡崎(愛知県)に加え、新たに2020年度は、イオンモール上尾(埼玉県)、イオンモール松本(長野県)、イオンモール津南(三重県)においてCO2フリー電力の活用を開始しました。イオンモール上尾ではテナントを含めたモール全体が完全にCO2フリーの電力で運営しており、本年度に導入した3モールの6月から12月までの7か月間で、合計約268トンのCO2を削減しました。

また、当社では2017年に日本企業として初めてEV100(注1)へ参加し、EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッドカー)でも安心してご来店いただける環境整備を進めています。当連結会計年度末時点で、国内外156モール(注2)に2,422基のEV充電器を設置しています。日本政府が2030年代半ばまでに国内のガソリン車の販売をなくすことが発表され、今後EV、PHVがさらに普及することが見込まれます。それに伴い、当社では短時間で充電が可能な急速充電器のさらなる拡充を予定しております。同時に、お客さまへの告知強化等により、既設の充電器利用率の増加をめざします。

・植樹活動

イオングループでは、イオンの基本理念を具現化する活動として、1991年から継続して植樹活動を実施しており、地域の自然環境に最も適した、その土地に自生する樹木をお客さまと共に植えています。2019年度末現在、イオングループ全体での累計植樹本数は約1,212万本に達しています。当社では、2020年度には国内外の新規オープンした4モールで約54,000本の植樹を行いました。

<社会課題の解決に向けて>

・認知症サポーター養成講座の受講

今後増加が見込まれる認知症の方への対応を学び、地域の様々なステークホルダーと連携して認知症の方を支える体制構築を目標に、2020年度より全社を挙げて取り組みを開始しました。2020年度下期はWEB講座を実施し、各モールでの独自開催分を含め累計407名が受講しました。

・イオンゆめみらい保育園

子育てをしながら働く従業員の活躍支援を目的として、事業所内保育施設「イオンゆめみらい保育園」の設置を進めており、当連結会計年度末において31園(注3)となりました。今後もモール専門店の従業員やグループ企業の従業員をはじめ、より多くの方々の仕事と育児の両立支援、待機児童解消の一助となる取り組みを進めていきます。

・献血活動

日本赤十字社と共に推進している献血活動について、2020年度は4月16日に発令された緊急事態宣言により、企業や学校、商業施設での献血機会の減少に伴い献血量の減少が懸念されたことを受け、当社では5月より営業再開したモールで順次受け入れをし、献血活動を強化しました。5月、6月の累計で、122モールにおいて合計832回の献血を実施し、45,123名の方(うち、献血実施は39,224名)にご協力いただき、14,905ℓの採血量が集まり、前年よりも多くの方にご参加いただくことができました。

<外部からの評価>

・WELL Health-Safety Rating

イオンモール上尾(埼玉県)は、世界的な新型コロナウイルス対策への評価「WELL Health-Safety Rating」を国内の商業施設で初めて取得しました。当モールは、お客さまや従業員が安全・安心にご利用いただける施設をめざし、2020年6月に制定した「イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル」に基づき、施設内での飛沫感染、接触感染防止対策をはじめ、各出入口での安全対策や施設の清掃管理などを徹底した管理・運営を行っています。なお、イオンモール新利府南館(宮城県 2021年3月5日グランドオープン)も同評価を取得致しております。

・GRESBリアルエステイト評価

2020年GRESB(注4)リアルエステイト評価において、当社は、総合スコアのグローバル順位により5段階で格付されるGRESBレーティングで最高位の「5スター」を取得しました。また、ESG推進のための方針や組織体制などを評価する「マネジメント・コンポーネント」と保有物件での環境パフォーマンスやテナントとの取り組み等を評価する「パフォーマンス・コンポーネント」の双方において優れた参加者であることを示す「グリーンスター」の評価を6年連続で獲得しました。

・CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)

気候変動に対する取り組みおよび情報開示が評価され、CDP(注5)より8段階の評価のうち2番目に位置するスコアA-を取得しました。サプライチェーンを通した気候変動対策に取り組み、温室効果ガス排出量の削減活動を実施していることを評価され、最高位である「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー・ボード」に初めて認定されました。

・なでしこ銘柄

女性が活躍して働き続けるための環境整備を進めており、女性人材の活用を積極的に進めている上場企業として「なでしこ銘柄」(注6)に5年連続で選出されました。2020年度は昨年度に引き続き、男性従業員の育児休職取得促進に取り組み、独自の育児休業扶助金制度の周知に加え、育児休職取得計画シートを導入しました。出産予定日がわかった段階から家族、部署そして人事部と育児休職の取得計画を立てることでより取得しやすい環境を整備しました。

・健康経営優良法人2021 (大規模法人部門)

当社が健康と福祉を重要なマテリアリティと定義し、従業員教育、労働時間適正化、運動機会の提供等、心と身体の健康づくりに向けた具体的施策を行っていることが評価され、経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人制度により、「健康経営優良法人2021(大規模法人部門)」に2年連続で認定されました。

(注)
  • 電気自動車推進イニシアチブ。温室効果ガス排出量の削減に取り組む国際環境NGOのクライメイトグループにより、2017年9月18日から24日にニューヨーク市で開催された気候週間で発足を発表。EV100とは、企業による電気自動車の使用や環境整備促進をめざす国際的なビジネスイニシアチブ。当社は2017年11月10日より正式参加しました。
  • イオンリテール株式会社より管理・運営業務を受託している57モールを含んだ数値で記載しています。また、海外モール数について、海外現地法人の決算期は12月末ですが、日本の会計年度における数値を記載しています。
  • 当社が管理・運営する施設以外で、イオングループに設置している10施設を含みます。
  • GRESB (グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)は、欧州の年金基金のグループを中心に創設されたGRESB財団が行うアンケート調査に基づき、不動産会社・不動産運用機関のサステナビリティ・パフォーマンスを測るベンチマークです。
  • CDPとは運用総資産106兆米ドルを超える515以上の機関投資家等の要請により、温室効果ガス排出削減活動や気候変動緩和などの環境問題に関する企業の戦略及び対応を調査し、その結果を公表している非営利団体です。今回の調査では、約9,600以上の企業がCDPを通じて環境問題に関する戦略及び対応について情報を開示しました。
  • 経済産業省と東京証券取引所が共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を選定し、発表しているもので、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することを通じ、企業への投資を促進し、各社の取り組みを加速化していくことを狙いとしています。
<ESGファイナンスの取り組みについて>

当社は更なるESGの取り組みを拡充し、持続可能な社会の実現に貢献していくため、新型コロナウイルス対策、東日本大震災復興支援および国内外モールのグリーンビルディング推進等の資金調達として、国際資本市場協会(ICMA)のガイドラインに基づき「サステナビリティボンド・フレームワーク」を策定し、同ガイドラインのソーシャルボンド原則及びグリーンボンド原則等との適合性に対する外部評価(セカンドオピニオン)を株式会社格付投資情報センター(R&I)より取得、2020年9月24日にサステナビリティボンド300億円を発行し、当連結会計年度は対象事業に130億円充当いたしました。

<当連結会計年度の資金充当状況>

2 コーポレート・ガバナンスの状況について
2021年2月28日現在

⑴ コーポレート・ガバナンス組織図

取締役会: 経営監督機能の強化のため、代表取締役社長を議長とし、月1回以上開催。監査役も出席。(取締役14名のうち3名が独立役員)
監査役会: 監査の実効性・効率性向上のため、会計監査人と内部監査部門である経営監査部と都度相互の情報交換・意見交換を実施。(監査役4名のうち2名が独立役員)
経営会議: 経営戦略機能強化、意思決定プロセス効率化のため、社長の諮問機関として常務取締役以上の取締役・常勤監査役及び取締役社長の指名した者を中心メンバーにて構成、原則週1回開催。
経営監査部: 業務の円滑な運営と統制のため、専任者15名が各部門長と連携を取り、業務全般にわたる内部統制の有効性、実効性の調査・評価を実施。現場の各執行部門から独立。

⑵ コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方

① 株主の権利、権利行使に係る環境整備・平等性を確保し、株主との適切な協働を進め、持続的な成長につなげます。

② 取締役会・経営陣は、お客さま、ステークホルダーの権利・立場や事業活動における倫理を尊重する企業文化・風土の醸成、ESG・CSRへの積極的な取り組みのため、リーダーシップを発揮します。

③ 財務情報・非財務情報について、「開示方針(ディスクロージャーポリシー)」、「情報開示管理規則」を定め、適切で分かりやすい情報開示を行い、透明性・公平性を確保します。

④ 取締役会は、小売業に精通した取締役を中心に構成し、小売業出身のディベロッパーの強みを強化するとともに、独立社外取締役の選任による監督体制の強化により、透明性の高い経営を実現し、長期ビジョン・中長期計画等の重要な企業戦略を定め、施策を推進します。

⑤ 株主との建設的な対話を通じて得られた意見や評価を経営に反映することにより、企業価値の向上に活かします。

⑶ 現状のコーポレート・ガバナンス体制を選択している理由

当社は、持続的な成長の実現には、コーポレート・ガバナンス機能を強化し、迅速な意思決定による競争力の向上が不可欠と認識しております。

当社では、監査役制度を運用しており、監査役会は会計監査人と内部監査部門である経営監査部と都度相互の情報交換・意見交換を行うなどの連携もとりながら監査の実効性と効率性の向上に取り組んでおります。

また2018年度より取締役・監査役の指名・選任及び取締役の報酬の内容について、代表取締役社長に助言・答申を行い、透明性と客観性を確保することを目的に独立社外役員を中心とした指名・報酬諮問委員会を設置しております。

⑷ 取締役会の役割・責務

当社は取締役会に付議すべき内容は、法令等も踏まえて「取締役会規則」で明確に定めていますが、取締役会の実効性向上の一環として、法的側面からガバナンスチェックを実施し、取締役会規則の改訂を行い改めて付議事項を明確化するなど、更なる改善に取組んでおります。

また、取締役の業務執行については、「職制管理規則」、「業務分掌規則」、「権限規則」、「決裁伺い規則」により、それぞれの業務執行において必要となる権限を付与して経営責任を明確にしたうえで、執行責任、執行手続の詳細について定めています。

業務の適正を確保するための体制及びその運用状況の概要

⑴ 業務の適正を確保するための体制についての決定事項

① 当社取締役の職務執行に係る情報の保存・管理に関する体制

業務執行取締役又は使用人がその職務の執行をするにあたり必要とされる決裁書、会議議事録その他の文書を当社の社内規程に従い作成します。

作成した文書は、その保存媒体に応じた適切かつ確実な検索性の高い状態で保存及び管理を行い、必要に応じて閲覧可能な状態を維持します。

また、それら記録の管理については、「文書管理規則」に定められた主管部門が社外漏洩を防止します。

② 当社及び当社子会社(以下「当社グループ」という。)の損失の危険の管理に関する規程その他の体制

当社は、リスク管理の最高責任者を代表取締役社長、各本部の責任者を担当取締役とし、事業の継続と人命の安全を確保するための体制と環境を整えます。

当社グループは、危機の未然防止及び危機発生時の被害最小化を目的とした「経営危機管理規則(リスクマネジメント規程)」を策定し、リスクの減少及び被害の低減に努めます。また、リスク項目ごとに主管部門を定め、当社グループ全体の損失の危険を管理することを通じて、ブランド価値の毀損防止はもとより、企業価値の向上にも努めて参ります。

また、組織的、人的、物理的、技術的な各側面から情報資産の保護、管理を可能とすることを目的として、「情報セキュリティ管理規則」を制定し情報セキュリティに関する責任体制を明確化し、当社が取り扱う情報や情報システムのセキュリティレベルの維持、向上に努めます。

当社は、管理本部長を委員長とするリスク管理委員会を設け、当社グループ全体のリスクマネジメント推進にかかわる課題、対応策の審議を行うとともに、その議事については経営会議に報告します。また、重要な案件については、取締役会に報告するとともに、年間報告を行います。

内部監査担当部門は、リスクマネジメントの実効性を高めるべく、「内部監査規則」に基づき、年度監査計画を策定し内部監査を行います。なお、年度監査計画については取締役会に報告します。

③ 当社取締役及び当社子会社の取締役、執行役、業務を執行する社員、会社法第598条第1項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者(以下「子会社取締役等」という。)の職務執行の効率性を確保する体制

取締役会を月1回開催するほか、必要に応じて適宜臨時に開催するものとし、社長決裁以上の当社グループに重大なリスクの生じる恐れのある意思決定事項に関しては経営会議にて審議を行ったうえで、社長決裁ないし取締役会決議を行います。

業務執行については、予め定められた「職制管理規則」、「業務分掌規則」、「権限規則」、「決裁伺い規則」、「関係会社管理規則」により、それぞれの業務執行において必要となる権限を付与して経営責任を明確化します。

また、子会社取締役等の職務執行の効率性を確保するための体制として、当社は、取締役会にて子会社を含めたグループ中期経営計画、年度経営目標及び予算配分等を承認し、四半期ごとに、それらに沿った事業戦略及び諸施策の進捗状況を検証するとともに、その他重要な情報について報告を受けます。

④ 当社取締役及び使用人並びに子会社取締役等及び使用人の職務執行が法令・定款に適合することを確保するための体制

より良い地域社会との関係を構築するとともに、企業としての社会的責任を果たすため、コンプライアンス経営を重視し、イオングループの行動規範である「イオン行動規範」を遵守します。ハラスメント未然防止のため「ハラスメント防止規則」を定め教育・啓蒙し、また、贈賄行為を未然に防止すべく「贈賄防止基本規則」に基づき、当社グループの社内体制の整備、教育を行います。

当社は、管理本部長を委員長とする「コンプライアンス委員会」を設け、当社グループにおける法令、定款及び社内規程の遵守状況等の確認と問題点の指摘及び改善策の審議を行うとともに、コンプライアンス委員会の議事については、経営会議に報告します。また、重要案件については、取締役会に報告するとともに、年間報告を行います。

また内部通報窓口として、ヘルプライン「イオンモールホットライン」を設置し(当社労働組合においても「組合110番」を設置)、子会社には、当社の仕組みに準じたヘルプラインを設置します。このヘルプラインの利用者のプライバシーの保護及び不利益な扱いを受けることのないよう周知徹底するとともに、報告・通報があった場合、担当部門はその内容を精査して、違反行為があれば社内規程に基づき必要な処置をしたうえで、再発防止策を自ら策定し、又は当該部門に策定させて全社的に実施させるとともに「コンプライアンス委員会」に報告します。

⑤ 当社並びに親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

親会社と当社の利益が実質的に相反する恐れのある取引や親会社と競業関係に立つ取引については、経営会議にて、その取引内容の詳細について審議したうえ、取締役会の承認を得てから実施します。

子会社含むグループ各社との取引についても、取引を実施する担当部門は当社の利益を害さないよう市場価格に基づいた適正な条件により取引を実施します。価格決定にあたっては、客観的な評価が可能なものについては第三者による評価書等の資料を取得し、判断に必要となる情報を取締役会及び経営会議に提出します。

また、子会社取締役等の職務の執行に係る事項の当社への報告に関する体制として、当社は、子会社に対し、当社が定める「関係会社管理規則」に基づき、子会社の毎月の業績、決算その他当社が必要とする事項につき、経営会議への報告を義務付けます。

内部監査担当部門は、当社及び子会社の業務が適正に運営されているか、「内部監査規則」に基づき、当社及び子会社の監査を実施し、「内部監査報告書」にて、社長及び常勤監査役に報告します。

⑥ 当社の監査役がその職務を補助すべき使用人(以下、「補助使用人」という。)を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項、並びに補助使用人の当社取締役からの独立性に関する事項及び補助使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項

当社は、監査役の補助使用人を、監査役会との協議のうえ、人選し配置します。

補助使用人は取締役又は他の使用人の指揮命令を受けないものとします。

また、補助使用人の人事評価については監査役の協議によって行い、人事異動、懲戒に関しては監査役会の事前の同意を得るものとします。

⑦ 当社の監査役への報告に関する体制

当社取締役及び使用人並びに子会社取締役等及び使用人は、当社の監査役に報告をするための体制としては、経営の状況、事業の状況、財務の状況並びに内部監査の実施状況、リスク管理及びコンプライアンスの状況等は、監査役が参加する取締役会もしくは経営会議にて報告します。

また、当社取締役及び使用人並びに子会社取締役等及び使用人は、当社及び子会社の業務又は業績に影響を与える事項、法令違反その他コンプライアンス上の問題で、当社及び子会社に著しい損害を及ぼす恐れのある事実があることを発見したとき、又はこれらの者から報告を受けた者は報告を受けたとき、当社の監査役会に速やかに報告します。当社又は子会社は、これらの報告をした者に対してこれを理由とする不利な取り扱いを行うことを禁止し、当社取締役及び使用人並びに子会社取締役等、監査役及び使用人に周知徹底します。

当社又は子会社は、これらの報告をした者に対してこれを理由とする不利な取り扱いを行うことを禁止し、当社取締役及び使用人並びに子会社取締役等、監査役及び使用人に周知徹底します。

⑧ 当社の監査役の職務の執行について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる費用又は債務の処理に係る方針に関する事項

当社は、監査役から会社法第388条に基づく費用の前払等の請求を受けたときは、社内の規程に基づき速やかに当該費用の支給を行うものとします。また、担当部門は毎期この支給に必要となる予算措置を講じるものとします。

⑨ その他当社の監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

内部監査担当部門は、内部監査の内容について適時に監査役と打ち合わせるなどして監査役会と緊密に連携を図り、効率的な監査役監査に資するように協調して監査業務を進めます。

⑵ 業務の適正を確保するための体制の運用状況の概要

当社は前項に記載の「業務の適正を確保するための体制についての決定事項」に基づいて、適切に内部統制システムが運用されていることを確認しています。

当事業年度における主な運用状況は次の通りです。

2016年度に実施したリスクサーベイの結果と、発生した重大なインシデントおよび新たな事業領域・環境への対応を踏まえ、重要度及び対策の必要性に応じてリスクのレベル分けを行い、主管部門の取組み内容を「リスク管理委員会」で集中的に議論することで、より実効性の高い管理体制を構築しています。

当事業年度では、新型コロナウイルス感染症を始めとするインシデント対応を踏まえ、当社グループ全体での連絡体制や意思決定ルートを再整備するといった緊急事態対応の見直しを行いました。他のリスクについても、従前集合形式で行っていた研修をリモートでの研修に変更するなど、リスク管理の視点からも新型コロナウイルス感染症の影響に拠る対策の遅延を最小限に抑え、事業のレジリエンスの向上を図っています。

当社子会社について、中国・アセアンでは2017年度にリスクサーベイを実施し、この結果に基づき各国のリスク管理体制を日本本社に準じて自律的に推進する体制としているほか、事業拡大に伴い子会社管理の重要性が高まっていることを踏まえ、子会社の規模・業容に合わせたリスク管理体制の基準の整備を推進し、当社グループでのリスク管理体制の向上にも取り組んでいます。

また、コンプライアンスリスクとなる法令・社内規則等の違反を防止するため、「コンプライアンス委員会」にて、過去に社内で発生した違反を事例研究として取扱い、再発防止に向けた議論を行っております。当事業年度では、ハラスメントの防止施策や労働時間管理の強化を中心に議論して参りました。
特にハラスメントの防止に向けて、内部通報状況・モラールサーベイの結果・コンプライアンス教育の実施結果から次の対策を議論し、経営会議・取締役会へ報告することを通じて対策が適正に取られているか確認をすることで、実効性を高められる取組みを進めています。親会社及びグループ各社との利益が相反する取引が発生する場合の対応については、「関連当事者取引管理規則」に則り、取引の合理性や取引条件の相当性を審議しています。また、取締役会付議の議案につきましては社外役員に対して事前説明を実施し、必要な判断が行えるようにしています。また、中国・アセアン地域の海外子会社については、内部統制強化のため、規定の整備や監査体制の強化を図るとともに、重要な決定事項は経営会議で承認を得るなど、情報を統括し管理を行っています。なお、2018年9月に国内外の贈賄行為を未然に防止すべく「贈賄防止基本規則」を制定し、社内体制の整備、教育を行っております。
内部監査部門は月1回、常勤監査役とのミーティングを実施し、改善状況の進捗管理を行い、半期に一度、経営会議に報告しています。

~反社会的勢力排除に向けた取り組み~

1.基本的な考え方

コンプライアンス経営の徹底、企業防衛の観点から、反社会的勢力とは関わりを持たず、不当な要求に対しては毅然とした態度で対応し、排除することが企業の社会的責任であることを認識しています。

2.反社会的勢力排除に向けた整備状況

①万一反社会的勢力による不当請求があった場合には、個人的対応は行わず、民事及び刑事の法的対応を含め、外部専門家や捜査機関とも緊密な連携を構築し、組織的対応をしています。

②「(財)千葉県暴力団追放県民会議」に加盟し、平素から警察、防犯協会等と緊密に連携して、反社会的勢力に関する情報収集に努め、各事業所を含めた全社的な情報を担当部門に集約して、社内啓蒙活動をしています。

③「取引管理規則」に基づき、取引先が反社会的勢力との関わりがないか調査し、反社会的勢力の排除を徹底しています。

⑶ 剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、収益力向上による株主の皆さまへの利益還元を重要な経営政策と認識しており、利益配分は、株主の皆さまへの安定的な配当継続を重視するとともに、内部留保金は事業基盤強化のための成長事業、新規事業、経営体質強化のために投資していくことを基本方針としています。

また、毎事業年度における配当の回数につきましては、中間配当と期末配当の年2回とし、これらの配当の決定につきましては、会社法第459条第1項に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めています。配当性向については、海外事業がキャッシュ・フローを創出できるステージに入っており、連結配当性向25%以上としています。

【当期剰余金の配当について】

当期の剰余金の期末配当は、2021年4月8日開催の取締役会決議により、1株当たり普通配当20円とさせていただきました。これにより、中間配当20円と合わせた当期の年間配当金は1株当たり40円となります。

なお、期末配当金の支払開始日(効力発生日)は2021年4月30日(金曜日)とさせていただきました。

連結計算書類