事業報告(2021年3月1日から2022年2月28日まで)

企業集団の現況に関する事項

⑴ 当事業年度の事業の状況

① 事業の経過及びその成果

当社は、経営理念の実現とさらなる事業成長を遂げるため、長期ビジョンである2026年2月期(2025年度)にめざす姿を定め、社会価値・環境価値・経済価値の創出を通じて、地域社会とともに持続的な成長の実現に向けて取り組んでいます。

2021年2月期(2020年度)を初年度とする中期経営計画(2020~2022年度)では、「海外における高い利益成長の実現」「国内における安定的成長の実現」「成長を支えるファイナンスミックスの推進とガバナンス体制強化」「ESG経営の推進」を成長施策として掲げています。

成長施策の推進においては「海外事業の利益成長の実現と新規出店の加速」「CX(カスタマー・エクスペリエンス)の創造によるリアルモールの魅力の最大化」「次世代モールの構築と都市型SC事業の推進」「DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進」「中期戦略の推進とESG視点に基づく改革の加速」を経営課題およびめざす姿として定めております。これらの取り組みを通じて地域・社会の課題に対してソリューションを提供し続けることで、地域コミュニティにおける中核施設として社会インフラ機能のポジションを確立していきます。

当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の感染状況は国、エリアにより違いはあるものの、依然として収束には至らず、国内外の当社モールでは一部営業時間の短縮や臨時休業を実施しました。

当連結会計年度の経営成績は、営業収益は3,168億1千3百万円(前期比112.9%)、営業利益は382億2千8百万円(同111.1%)、経常利益は325億4千万円(同114.4%)、親会社株主に帰属する当期純利益は192億7千8百万円(前連結会計年度は18億6千4百万円の損失)と増収増益となりました。当連結会計年度における一時休業期間中の固定費等は、新型コロナウイルス感染症による損失として40億7千5百万円(前連結会計年度は165億7千2百万円)を特別損失に計上しました。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていない2020年2月期との比較(以下、「一昨年対比」という。)では、営業収益は97.7%、営業利益は62.9%、経常利益は58.0%、親会社株主に帰属する当期純利益は56.3%となりました。

セグメント別経営成績

<海外>

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営業収益は555億9千8百万円(前期比127.5%)、営業利益は62億5千7百万円(前期比165.9%)と増収増益となりました。中国は当連結会計年度の専門店売上は伸長し増収増益となりましたが、アセアンは第3四半期連結会計期間(7月~9月)にベトナムで新型コロナウイルス感染症拡大に伴い臨時休業を余儀なくされ、増収減益となりました。

なお、海外事業としては新型コロナウイルス感染症の影響を受けていない一昨年対比において、営業収益は113.1%、営業利益は75.3%となりました。

中国では北京・天津・山東、江蘇・浙江、湖北、広東の4エリア、アセアンではベトナム、カンボジア、インドネシアの3国を中心にドミナント出店を進めています。当社モールのブランド力向上により集客力が高まることで、優良専門店の誘致や有利なリーシング条件での契約が可能となる等、ブランディングメリットの享受が進んでいます。また、当社モールでは、日本で培った管理・運営ノウハウを活かし、消費を喚起するセールやイベントの開催による集客力の向上や、日本のモール環境と同等のクリンリネス(清潔、安全、快適な状態)の徹底および計画的な専門店入替を中心としたリニューアルを実施しています。

今後の成長戦略として、2025年に海外50モール体制の実現に向けた新規出店を加速していきます。2025年度末時点では、物件のパイプラインとして70モール体制となる仕込みを完了させるべく、中国・アセアンとも高い成長力が見込まれるエリアにおいて探索・確保を進めていきます。

なお、海外現地法人の決算期は12月末のため、当連結会計年度の業績は1月~12月となります。

(中国)〔当連結会計年度(1月~12月)〕

営業収益は431億3千9百万円(前期比137.6%)、営業利益は69億5千8百万円(前期比303.0%)と増収増益となりました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けていない一昨年対比でも、営業収益は120.3%、営業利益は123.8%と増収増益となりました。

7月下旬に中国全土で新型コロナウイルス感染症の新規感染者が発生し、8月には湖北省の一部モールを臨時休業しました。11月、12月には内陸部において発生した新型コロナウイルス感染症が各地に広がり、各地方政府において厳格なウイルス封じ込めに伴う活動制限やシネマ等の一部業種における入場制限措置等がとられました。

しかしながら、中国では新型コロナウイルス感染症は局地的に発生事例があるものの、政府主導で厳格なウイルス封じ込め対策が取られることから短期間で収束する傾向にあります。当社モールの専門店売上に与える影響は限定的であり、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比132.0%(対象21モール)、一昨年対比105.3%(対象19モール)と伸長しました。引き続き、中国国内の感染状況を注視しながら営業施策を積極的に推し進めていきます。

新規モールでは、5月に広東省4号店となるイオンモール広州新塘(広東省広州市)をオープンしました。既存モールでは、湖北省においてイオンモール武漢経開(湖北省武漢市)、イオンモール武漢金橋(湖北省武漢市)、イオンモール武漢金銀潭(湖北省武漢市)の3モール、広東省においてイオンモール広州番禺広場(広東省広州市)、イオンモール佛山大瀝(広東省佛山市)、イオンモール広州金沙(広東省広州市)の3モール、江蘇省においてイオンモール蘇州園区湖東(江蘇省蘇州市)でリニューアルを実施しました。

(アセアン)〔当連結会計年度(1月~12月)〕

営業収益は124億5千9百万円(前期比101.8%)、営業損失は7億1百万円(前期は14億7千4百万円の利益)となりました。新規モールオープンの効果により増収となったものの、ベトナム、カンボジア、インドネシアでの新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きく、営業利益は減益となりました。なお、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていない一昨年対比では、営業収益は93.8%、営業利益は33億8千7百万円の減益となりました。

ベトナムでは、5月にベトナム南部で拡大した新型コロナウイルス感染症は7月以降ベトナム全土に拡大、当社モールの出店エリアでは厳格な都市封鎖が実施されましたが、10月より政府指示による社会隔離措置が解除され、当社モール専門店の営業を再開しました。ただし、ワクチン未接種の専門店従業員は店頭での接客対応ができないといった営業上の規制が残っていた影響もあり、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比73.2%(対象5モール)、一昨年対比65.2%(対象4モール)となりました。

カンボジアでは、3月にプノンペン都において拡大した新型コロナウイルス感染症に伴い都市封鎖が実施され、4月には専門店を臨時休業しました。ワクチン接種率向上に伴い、7月をピークに新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は減少基調となったものの、シネマ、アミューズメント等一部業種の休業が継続し、年間を通じて集客面で影響を受けた結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比75.9%(対象2モール)、一昨年対比57.0%(対象2モール)となりました。

インドネシアでは、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数減少に伴い、5月の既存モール専門店売上は一昨年対比8割程度(対象2モール)まで回復しましたが、6月以降再び感染が拡大し、営業時間短縮やアミューズメント業種の休業、モール入場者数の規制等が実施され、当連結会計年度の既存モール来店客数は一昨年対比6割程度と厳しいトレンドで推移しました。

新規モールでは、インドネシアにおいて、11月に4号店イオンモール タンジュン バラット(南ジャカルタ区)を一部先行オープンしました。また、2020年10月に一部先行オープンしていたイオンモール セントゥールシティ(西ジャワ区)を2021年10月にグランドオープンしました。既存モールでは、4月にインドネシア1号店のイオンモールBSD CITY(タンゲラン県)において、2015年の開業以来初となる大規模リニューアルを実施しました。

<日本>

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営業収益は2,612億1千4百万円(前期比110.2%)、営業利益は319億4千5百万円(同104.4%)と増収増益となりました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けていない一昨年対比では、営業収益は95.0%、営業利益は60.9%となりました。

国内では、4月25日に発令された緊急事態宣言により、当社グループのモールおよび都市型ショッピングセンター30施設を5月11日まで臨時休業しました。その後も新型コロナウイルス感染症が拡大し続ける中、営業制限は緩和されたものの緊急事態宣言は対象エリアを拡大しながら9月30日まで断続的に実施されました。緊急事態宣言が解除された10月以降、お客さまの消費行動は外出自粛が続いた反動から改善傾向にありましたが、1月以降、感染力の強いオミクロン株が流行し、まん延防止等重点措置が適用される等、お客さまの消費行動は再び自粛傾向となった結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比108.5%(対象84モール)、一昨年対比82.3%(対象83モール)となりました。

当連結会計年度においては、新規モールでは3月にイオンモール新利府 南館(宮城県)、6月にイオンモール川口(埼玉県)、7月にイオンモール白山(石川県)、10月にイオンモールNagoya Noritake Garden(愛知県)をオープンしました。既存モールでは11月にTHE OUTLETS HIROSHIMA(広島県)を増床オープンしました。

中期戦略の推進とESG視点に基づく改革の加速

当社は、SDGsと日本および海外における社会課題を考慮したマテリアリティ分析を実施、ステークホルダーおよび自社にとっての重要度を評価し、ESG視点での重要課題として「地域・社会インフラ開発」「地域とのつながり」「環境」「ダイバーシティ・働き方改革」「責任あるビジネスの推進」の5分野10項目からなるマテリアリティを定めています。当社の全社員が個人目標の中にマテリアリティに関する項目を組み込む等、社内における意識向上を図りながら、ESG経営実現に向けた施策を推進しています。

イオングループでは、持続可能な社会の発展に向けたグループ全体の方針である「イオンサステナビリティ基本方針」のもと、環境面では、「脱炭素社会の実現」、「生物多様性の保全」、「資源循環の促進」、社会面では、「社会の期待に応える商品・店舗づくり」、「人権を尊重した公正な事業活動の実践」、「コミュニティとの協働」を重点課題に設定し、各課題への対応を進めることで、サステナブル経営を推進しています。当社においても、ESG視点に基づく経営を推進し、収益と企業価値の拡大を通じて経営基盤を強化し、さらなる発展をめざします。

(環境課題の解決に向けて)

・電気・ガスCO2排出量実質ゼロモールの運用

イオンモール川口は、国内の大規模商業施設として初めて、CO2排出量ゼロの電気・ガスを使用する施設として運用しています。当モールでは省エネルギーの取り組みを行うことに加え、東京電力エナジーパートナー株式会社の「非FIT非化石証書付電力メニュー(注1)」により実質CO2排出量ゼロとなる電気を調達しています。都市ガスは東京ガス株式会社から「カーボンニュートラル都市ガス(注2)」の供給を受け使用しています。

同様に、イオンモールNagoya Noritake Gardenにおいても、中部電力ミライズ株式会社の「非FIT非化石証書付電力メニュー(注3)」による調達、都市ガスは東邦ガス株式会社から「カーボンニュートラル都市ガス」の供給を受け使用しています。

・地域とともに地産地消の再生可能エネルギーを創出

当社は、地域においてお客さまとともに地産地消の再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)を創出し、施設内で使用する電力は入店する専門店分も含めCO2を排出しない電力(以下、「CO2フリー電力」)とすることをめざします。

2025年度までに当社が管理・運営する国内の約160モールで使用する電力を再エネに転換するという目標において、各地域での再エネ直接契約による実質CO2フリー電力調達から、順次地産地消の再エネ(PPA手法(注4)含む)へ切り替え、2040年度には当社直営モールにおいて100%地産地消の再エネ(約20億kwh/年)での運営へ引き上げていきます。2022年度より太陽光発電から着手し、段階的に風力発電等の他の発電手法や、水素エネルギー、蓄電池等を活用していきます。

また、従来のV2H(車(Vehicle)から家(Home))から進化させたV2AEON MALL(車からイオンモール)を推進します。お客さま参加型の再エネ循環プラットフォームを整え、家庭で発電した電力(余剰電力)をEV(電気自動車)でモールに放電し、放電量に応じて環境貢献指数の見える化やポイントなど進呈します。アプリからアクションレコードを管理し、EVによる再エネの放電だけでなく、植樹活動や廃プラ回収、食品ロス対策協力等の環境貢献活動に対しても数値化を行い、活動する意味を見える化することで、お客さまとともに取り組みを推進していきます。

当社は、お客さま自身の「環境意識」を「行動」に繋げるサポートを行うことで、海外も含めた全ての地域の脱炭素社会をお客さまとともに築き上げていきます。

・衣料品回収「幸服リレー」の開催

当社では、循環型社会形成に向けて、Reduce(削減する)・Reuse(再利用する)・Recycle(再生する)の3Rに、Rethink(考え直す)・Repair(修理する)・Returnable(回収可能な)の3要素を加えた6Rの推進を掲げ、サーキュラーモールの実現に向けた取り組みを推し進めています。

その一環として、お客さまが使用しなくなった衣料品回収を行う「幸服リレー」を全国のモールで開催し、4日間で約103トンを回収しました。回収された衣料品は、再生資源にリサイクルされ、新たな衣料品として生まれ変わらせることで、衣類ロスとCO2排出量の削減に貢献していきます。また「幸服リレー!ワールド」として、国内7モールでお客さまからお預かりした衣料品の一部を、カンボジアのモールを通じて現地の子どもたちへ寄贈する取り組みを実施しました。

(注)

  • 東京電力が調達した環境価値を、系統電気と一緒にお客さまの需要場所に送るメニューで、実質的にCO2フリー電気を使っているとみなせるものです。
  • 天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、CO2クレジットで相殺(カーボン・オフセット)し、燃焼させても地球規模ではCO2が発生しないとみなされるものです。なお、対象となるCO2クレジットは、信頼性の高い検証機関が世界各地の環境保全プロジェクトにおけるCO2削減効果をCO2クレジットとして認証したものです。
  • 中部電力ミライズのグループ会社が所有する非FIT水力電源から、電気と非化石証書を調達することでCO2フリー化した電力です。
  • 電力小売事業者との契約により、資産を所有せず当社の専用発電所から電力供給を受ける手法。
(社会課題の解決に向けて)

・防疫対策の取り組み

イオンモール上尾(埼玉県)、イオンモール新利府 南館、イオンモール川口、イオンモール白山、イオンモールNagoya Noritake Gardenでは、世界的な新型コロナウイルス感染症対策への評価である「WELL Health-Safety Rating(注)」を取得しました。施設内での飛沫感染、接触感染防止対策をはじめ、各出入口での安全対策や施設内の清掃管理体制などを徹底し、お客さまや専門店従業員が安全・安心にご利用いただける施設として管理・運営を行っています。

・国内外における新型コロナウイルスワクチン接種の推進支援

当社では、各自治体と連携し、モール内のホールや駐車場等の施設を新型コロナウイルスワクチン接種会場として活用いただく取り組みを推進しています。イオンモール広島府中(広島県)、イオンモール春日部(埼玉県)、イオンモール旭川駅前(北海道)など、全国で約30のモールが新型コロナウイルスワクチン接種会場として使用され、約49万人の方々にワクチン接種を実施しました。当社モールを最大限活用していただくことで、地域の皆さまの安全・安心で快適な暮らしの実現に努めていきます。海外においても、ベトナムのイオンモール ビンズオンキャナリー(ビンズオン省)では、モール内に大規模接種会場を提供し、市内の工場や商業施設で働く約3,300人を対象に、1日約650回のワクチン接種を実施しました。インドネシアでは政府との連携のもと、イオンモール ジャカルタガーデンシティ(東ジャカルタ市)にワクチンセンターを設置し、約1,400人を対象にワクチン接種を実施しました。地域コミュニティにおける感染拡大を防ぐため、今後も地域の皆さまの安全・安心の確保に積極的に協力していきます。

また、イオングループでは、地域全体の接種率を引き上げるため、全国のグループ従業員に対して新型コロナウイルスワクチンの職域接種を推進しており、イオンモール幕張新都心(千葉県)、イオンレイクタウン(埼玉県)等の当社モールが接種会場として使用されています。当社では接種対象枠を当社従業員だけでなく、専門店従業員の方々にも拡大することで、安心して働ける職場環境づくりに努めています。

・産学連携協力の取り組み

新型コロナウイルス感染症の影響により、学生にとって学問や文化活動の発表の場が制限されている中、当社モールを活動発表の場として活用していただく取り組みを推進しています。

イオンモールNagoya Noritake Gardenでは、4月に学校法人三幸学園との間で「産学連携協力に関する連携覚書」を締結しました。この覚書に基づき、11月27日から12月25日にかけて、名古屋こども専門学校や名古屋ビューティーアート専門学校等の生徒たちと一緒に、クリスマスツリー装飾を制作するワークショップやメイク体験、エクササイズ体験等、「私らしいクリスマス、見つけよう」と題したイベントを実施しました。

6月には国立大学法人東北大学災害科学国際研究所、公益財団法人イオン環境財団、当社との三者間で「産学連携協力」に関する協定を締結しました。三者は、安全・安心なレジリエント・コミュニティの創生をめざし、「イオン防災環境都市推進研究部門」を東北大学災害科学国際研究所内に立ち上げ、「防災・減災」「杜のデザイン」「感染症対策」の3項目を中心に、地域の皆さまにも参画いただくワークショップ等の実施を計画しています。特に、当社が東北大学雨宮キャンパス跡地に計画する施設づくりにおいて、地域の防災拠点として、地域の皆さまが安心して利用できるよう専門的な視点から検証・実施を進めていきます。

イオンモール白山では、「かがやき、あつまるプロジェクト」として、エリアに所在する学校との産学連携を推進しており、これまでに学校法人国際ビジネス学院、学校法人金城学園、石川県立翠星高校との間で「産学連携協力」に関する覚書を締結しました。モールが学校側に発表場所を提供し、学校側は研究発表やイベントに活用する等、各校との連携を深めて、継続的に地域の活性化と発展に貢献していきます。

(注)同認証は、来訪者や従業員などの健康と安全に配慮し、施設を管理・運営していることを第三者検証機関により審査するグローバル基準の評価です。

(コーポレート・ガバナンスの強化)

・コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方

  • a 株主の権利、権利行使に係る環境整備・平等性を確保し、株主との適切な協働を進め、持続的な成長につなげます。
  • b 取締役会・経営陣は、お客さま・地域社会・パートナー企業さま・従業員・株主・投資家さま等のステークホルダーの権利・立場や、事業活動における倫理を尊重し、企業文化・風土の醸成、積極的なサステナビリティの取り組みのため、リーダーシップを発揮します。
  • c 財務情報・非財務情報について、「開示方針(ディスクロージャーポリシー)」、「情報開示管理規則」を定め、適切で分かりやすい情報開示を行い、透明性・公平性を確保します。
  • d 取締役会は、多様な経験と専門性を持ったメンバーで構成され、小売業出身のディベロッパーの強みを活かしながら、独立社外取締役の選任による監督体制の強化により、透明性の高い経営を実現し、長期ビジョン・中長期計画等の重要な企業戦略を定め、施策を推進します。
  • e 株主との建設的な対話を通じて得られた意見や評価を経営に反映することにより、企業価値の向上に活かします。

・現状のコーポレート・ガバナンス体制を選択している理由

当社は、持続的な成長の実現には、コーポレート・ガバナンス機能を強化し、迅速な意思決定による競争力の向上が不可欠と認識しております。

当社では、監査役制度を採用しており、監査役会は会計監査人と内部監査部門である経営監査部と都度相互の情報交換・意見交換を行うなどの連携もとりながら監査の実効性と効率性の向上に取り組んでおります。

・取締役会の役割・責務

当社は取締役会に付議すべき内容は、法令等も踏まえて「取締役会規則」で明確に定めていますが、取締役会の実効性向上の一環として、法的側面からガバナンスチェックを実施し、取締役会規則の改訂を行い改めて付議事項を明確化するなど、更なる改善に取組んでおります。

また、取締役の業務執行については、「職制管理規則」、「業務分掌規則」、「権限規則」、「決裁伺い規則」により、それぞれの業務執行において必要となる権限を付与して経営責任を明確にしたうえで、執行責任、執行手続の詳細について定めています。

・経営戦略諮問委員会の設置

当社では、経営戦略や経営計画、事業推進における重要事項の審議については、代表取締役社長の諮問機関である経営会議に社外取締役も任意で参加して検討する機会を設けるとともに、社外取締役、監査役全員への取締役会議案の事前説明における議論を経て、取締役会で建設的な議論となるように進めています。
さらに2021年5月には、代表取締役社長の諮問に応じて、重要な政策・経営課題から事前にテーマを設定し、その考え方や取り組みの方向性、具体的計画や進捗状況についての議論、意見交換を行い、社長に助言または答申することを目的として、経営戦略諮問委員会を新たに設置しました。独立社外役員の知見を政策実現や経営課題解決に活かすとともに、戦略や取り組みの方向性、あるいは基準やルールの妥当性や合理性などの議論を重視した体制・運用を行っております。

・ガバナンス委員会の設置

2021年10月に、利益相反取引の監督を目的とし、独立社外取締役5名により構成するガバナンス委員会を新たに設置しました。支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為については、同委員会で審議・検討を行い、当社の企業価値向上の観点から当該取引の公正性及び合理性が確保されていることを検証したうえで、取締役会での審議を経て承認を得ることとし、取引の重要性に応じて適切に監督しています。さらに、当社のガバナンス機能強化に向けては、取締役会の実効性評価の向上に向けた議論や、取締役会への議案上程基準の見直し等についても検討を進めていきます。

(サステナビリティファイナンスの取り組み)

当社は、社会課題の解決と環境配慮を目的に、当社初となるサステナビリティ・リンク・ボンド(以下、「本社債」という。)(注1)を11月に200億円発行しました。2020年9月には、サステナビリティボンド発行により300億円の資金調達を行い、新型コロナウイルス感染症対策や東日本大震災復興支援等に充当しました。本社債は、脱炭素社会の実現に向けたサステナビリティファイナンスへの取り組みとして、あらかじめ定めたサステナビリティ目標を達成するか否かで変化する条件での発行としており、今後もESGの取り組みをさらに拡充していくことで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

② 設備投資等の状況

当連結会計年度における設備投資総額は、1,222億4千3百万円(長期前払費用を含む)であります。

その内訳は、モール事業における「日本」748億2千7百万円、「中国」226億7千4百万円、「アセアン」247億4千1百万円であります。「日本」においては、新規モールであるイオンモール新利府南館、イオンモール川口、イオンモール白山、イオンモールNagoya Noritake Gardenの開設を行ったこと、既存モールであるTHE OUTLETS HIROSHIMAの増床リニューアルを実施したこと等による投資を実施しました。「中国」においては、イオンモール広州新塘の新規モールの開設、「アセアン」においては、イオンモール セントゥールシティの資産の取得を行いました。また、開発用地の先行取得等による投資を実施しました。

③ 資金調達の状況

当連結会計年度におきましては、長期借入金として既存取引銀行等より340億2千6百万円、社債の発行により650億円の調達をいたしました。

⑵ 財産及び損益の状況の推移

① 企業集団の営業成績及び財産の状況の推移

【ご参考】

業務の適正を確保するための体制及びその運用状況の概要

⑴ 業務の適正を確保するための体制についての決定事項

① 当社取締役の職務執行に係る情報の保存・管理に関する体制

業務執行取締役又は使用人がその職務の執行をするにあたり必要とされる決裁書、会議議事録その他の文書を当社の社内規定に従い作成します。

作成した文書(電子媒体含む)は、その保存媒体に応じた適切かつ確実な検索性の高い状態で保存及び管理を行い、必要に応じて閲覧可能な状態を維持します。

また、それら記録の管理については、「文書管理規則」に定められた主管部門が社外漏洩を防止します。

② 当社及び当社子会社(以下「当社グループ」という。)の損失の危険の管理に関する規定その他の体制

当社は、リスク管理の最高責任者を代表取締役社長、各本部の責任者を担当取締役とし、事業の継続と人命の安全を確保するための体制と環境を整えます。

当社グループは、危機の未然防止及び危機発生時の被害最小化を目的とした「経営危機管理規則(リスクマネジメント規定)」を策定し、リスクの減少及び被害の低減に努めます。また、リスク項目ごとに主管部門を定め、当社グループ全体の損失の危険を管理することを通じて、企業価値の向上にも努めて参ります。

また、組織的、人的、物理的、技術的な各側面から情報資産の保護、管理を可能とすることを目的として、当社グループを含め「情報セキュリティ管理規則」を制定し、情報セキュリティに関する責任体制を明確化し、当社が取り扱う情報や情報システムのセキュリティレベルの維持、向上に努めます。

当社は、管理本部長を委員長とするリスク管理委員会を設け、当社グループ全体のリスクマネジメント推進にかかわる課題、対応策の審議を行うとともに、その議事については経営会議に報告します。また、重要案件については、取締役会に報告するとともに、年間報告を行います。

内部監査担当部門は、リスクマネジメントの実効性を高めるべく、「内部監査規則」に基づき、年度監査計画を策定し内部監査を行います。なお、年度監査計画については取締役会に報告します。

③ 当社取締役及び当社子会社の取締役、執行役、業務を執行する社員、会社法第598条第1項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者(以下「子会社取締役等」という。)の職務執行の効率性を確保する体制

取締役会を月1回以上開催するほか、社長決裁以上の当社グループに重大なリスクの生じる恐れのある意思決定事項に関しては経営会議にて審議を行ったうえで、社長決裁ないし取締役会決議を行います。

また、代表取締役社長の諮問に応じて、重要な政策・経営課題からテーマを設定し、その考え方や取り組みの方向性、具体的計画や進捗状況等についての議論、意見交換を行う経営戦略諮問委員会を毎月1回開催し、独立社外役員からの意見や助言を踏まえて政策実現や経営課題解決の推進を図ります。

業務執行については、予め定められた「職制管理規則」、「業務分掌規則」、「権限規則」等により、それぞれの業務執行において必要となる権限を付与して経営責任を明確化します。

また、子会社取締役等の職務執行の効率性を確保するための体制として、当社は、取締役会にて子会社を含めたグループ中期経営計画、年度経営目標及び予算配分等を承認し、四半期ごとに、それらに沿った事業戦略及び諸施策の進捗状況を検証するとともに、その他重要な情報について報告を受けます。

④ 当社取締役及び使用人並びに子会社取締役等及び使用人の職務執行が法令・定款に適合することを確保するための体制

地域社会とのより良い関係構築、企業としての社会的責任を果たすため、コンプライアンス経営を重視し、イオングループの行動規範である「イオン行動規範」を遵守します。ハラスメント未然防止のため「ハラスメント防止規則」を定め教育・啓蒙し、また、贈賄行為を未然に防止すべく「贈賄防止基本規則」に基づき、当社グループの社内体制の整備、教育を行います。

当社は、管理本部長を委員長とするコンプライアンス委員会を設け、当社グループにおける法令、定款及び社内規定の遵守状況等の確認と問題点の指摘及び改善策の審議を行い、その議事については、経営会議に報告します。また、重要案件については、取締役会に報告するとともに、年間報告を行います。

また、内部通報窓口として、ヘルプライン「イオンモールホットライン」を設置し(当社労働組合においても「組合110番」を設置)、子会社には、当社の仕組みに準じたヘルプラインを設置します。このヘルプラインの利用者のプライバシーの保護及び不利益な扱いを受けることのないよう周知徹底するとともに、報告・通報があった場合は、その内容を精査して、違反行為があれば社内規定に基づき必要な処置をしたうえで、再発防止策を策定し、全社的に実施させるとともにコンプライアンス委員会に報告します。

⑤ 当社並びに親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

取締役が、自己または親会社、子会社、その他イオングループ各社など第三者のために当社と利益が実質的に相反する恐れのある取引や競業関係に立つ取引を行う場合、経営会議で審議したうえ、取締役会の承認を得てから実施します。

イオングループ各社と取引を行う場合は、「関連当事者取引管理規則」に則り、市場価格に基づいた適正な条件により取引を行い、年1回関連当事者取引先各社との年間取引実績の増減率等の報告を取締役会に行い取引の合理性・相当性の精査をします。

その内、重要な取引については、取締役会の諮問機関として独立社外取締役のみで構成するガバナンス委員会において、当社の企業価値向上の観点から当該取引の公正性及び合理性が確保されていることを検証したうえで取締役会に付議し、また特別利害関係人を除外した上で決議し、手続の公正性を確保します。

なお、当社グループにおいても、取引の公正性及び合理性を確認したうえで決裁します。

また、子会社取締役等の職務の執行に係る事項の報告体制として、子会社に対し、当社が定める「関係会社管理規則」に基づき、経営会議への報告を義務付けます。

内部監査担当部門は、当社及び子会社の業務が適正に運営されているか、「内部監査規則」に基づき、当社及び子会社の監査を実施し、「内部監査報告書」にて、社長及び常勤監査役に報告します。また、定期的に監査結果を取締役会に報告します。

⑥ 当社の監査役がその職務を補助すべき使用人(以下、「補助使用人」という。)を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項、並びに補助使用人の当社取締役からの独立性に関する事項及び補助使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項

当社は、監査役の補助使用人を、監査役会との協議のうえ、人選し配置します。

補助使用人は取締役又は他の使用人の指揮命令を受けないものとします。

また、補助使用人の人事評価については監査役の協議によって行い、人事異動、懲戒に関しては監査役の事前の同意を得るものとします。

⑦ 当社の監査役への報告に関する体制

当社取締役及び使用人並びに子会社取締役等及び使用人は、経営の状況、事業の状況、財務の状況並びに内部監査の実施状況、リスク管理及びコンプライアンスの状況等を、監査役が参加する取締役会もしくは経営会議にて報告します。

また、当社取締役及び使用人並びに子会社取締役等及び使用人は、当社及び子会社の業務又は業績に影響を与える事項、法令違反その他コンプライアンス上の問題で、当社及び子会社に著しい損害を及ぼす恐れのある事実があることを発見したとき、又はこれらの者から報告を受けた者は報告を受けたとき、当社の監査役会に速やかに報告します。当社及び子会社は、これらの報告をした者に対してこれを理由とする不利な取り扱いを行うことを禁止し、当社取締役及び使用人並びに子会社取締役等、監査役及び使用人に周知徹底します。

⑧ 当社の監査役の職務の執行について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる費用又は債務の処理に係る方針に関する事項

当社は、監査役から会社法第388条に基づく費用の前払等の請求を受けたときは、社内の規定に基づき速やかに当該費用の支給を行うものとします。また、担当部門は毎期この支給に必要となる予算措置を講じるものとします。

⑨ その他当社の監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

内部監査担当部門は、内部監査の内容について適時に監査役と打ち合わせるなどして監査役会と緊密に連携を図り、効率的な監査役監査に資するように協調して監査業務を進めます。

⑵ 業務の適正を確保するための体制の運用状況の概要

当社は前項に記載の「業務の適正を確保するための体制についての決定事項」に基づいて、適切に内部統制システムが運用されていることを確認しています。

当事業年度における主な運用状況は次の通りです。

2016年度に実施したリスクサーベイの結果と、発生した重大なインシデントおよび新たな事業領域・環境への対応を踏まえ、重要度及び対策の必要性に応じてリスクのレベル分けを行い、主管部門の取組み内容を「リスク管理委員会」で集中的に議論することで、より実効性の高い管理体制を構築しています。更に、事業規模の拡大、社会情勢の変化を踏まえ、2021年度はリスクサーベイを実施し、管理すべきリスクを更改しました。

リスクサーベイの実施以外にも、経営戦略リスクの検討体制の見直し、リスクマネジメントに関する研修を行い、更なるリスク管理体制の実効性向上を図っています。

その他の具体的取組として、海外事業における出店拡大やインシデントの多様化を踏まえ、物件開発に関わるリスクの調査、ミャンマーでのクーデター等を踏まえた緊急事態対応マニュアルの見直し、国内事業においても事業の拡大・多様化を踏まえたBCPの改訂を行っております。

当社子会社について、中国・アセアンでは2017年度に実施したリスクサーベイの結果に基づき、各国のリスク管理体制を日本本社に準じて自律的に推進する体制としているほか、事業拡大に伴い子会社管理の重要性が高まっていることを踏まえ、子会社の規模・業容に合わせたリスク管理体制の基準を整備し、当社グループでのリスク管理体制の向上にも取り組んでいます。

また、コンプライアンスリスクとなる法令・社内規則等の違反を防止するため、「コンプライアンス委員会」にて、国内外問わず発生した違反を事例研究として取扱い、再発防止に向けた議論を行っております。議論の結果は経営会議・取締役会にて報告することで実効性向上を図っております。当事業年度では、ハラスメントの防止施策や優越的地位の濫用、労働時間削減を中心に議論して参りました。

特に海外のコンプライアンス違反に関して、本社への報告フローを確立するとともに早期認知に努め、一刻も早い解決と再発防止に向けて対策を進めております。

親会社及びグループ各社との利益が相反する取引が発生する場合の対応については、「関連当事者取引管理規則」に則り、取引の合理性や取引条件の相当性を審議しています。また、取締役会付議の議案につきましては社外役員に対して事前説明を実施し、必要な判断が行えるようにしています。また、中国・アセアン地域の海外子会社については、内部統制強化のため、規定の整備や監査体制の強化を図るとともに、重要な決定事項は経営会議で承認を得るなど、情報を統括し管理を行っています。なお、2018年9月に国内外の贈賄行為を未然に防止すべく「贈賄防止基本規則」を制定し、社内体制の整備、教育を行っております。

内部監査部門は月1回、常勤監査役とのミーティングを実施し、改善状況の進捗管理を行い、半期に一度、経営会議に報告しています。

~反社会的勢力排除に向けた取り組み~

1.基本的な考え方

コンプライアンス経営の徹底、企業防衛の観点から、反社会的勢力とは関わりを持たず、不当な要求に対しては毅然とした態度で対応し、排除することが、企業の社会的責任であることを認識しています。

2.反社会的勢力排除に向けた整備状況

①万一反社会的勢力による不当請求があった場合には、個人的対応は行わず、民事及び刑事の法的対応を含め、外部専門家や捜査機関とも緊密な連携を構築し、組織的対応をしています。

②「(財)千葉県暴力団追放県民会議」に加盟し、平素から警察、防犯協会等と緊密に連携して、反社会的勢力に関する情報収集に努め、各事業所を含めた全社的な情報を担当部門に集約して、社内啓蒙活動をしています。

③「取引管理規則」に基づき、取引先が反社会的勢力との関わりがないか調査し、反社会的勢力の排除を徹底しています。

⑶ 剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、収益力向上による株主の皆さまへの利益還元を重要な経営政策と認識しており、利益配分は、株主の皆さまへの安定的な配当継続を重視するとともに、内部留保金は事業基盤強化のための成長事業、新規事業、経営体質強化のために投資していくことを基本方針としています。

また、毎事業年度における配当の回数につきましては、中間配当と期末配当の年2回とし、これらの配当の決定につきましては、会社法第459条第1項に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めています。配当性向については、海外事業がキャッシュ・フローを創出できるステージに入っており、連結配当性向30%以上としています。

【当期剰余金の配当について】

当期の剰余金の期末配当は、2022年4月7日開催の取締役会決議により、1株当たり普通配当25円とさせていただきました。これにより、中間配当25円と合わせた当期の年間配当金は1株当たり50円となります。

なお、期末配当金の支払開始日(効力発生日)は2022年5月2日(月曜日)とさせていただきました。

連結計算書類