事業報告(2022年3月1日から2023年2月28日まで)

企業集団の現況に関する事項

当事業年度の事業の状況

① 事業の経過及びその成果

a.連結経営成績に関する説明
当連結会計年度の経営成績は、営業収益は3,982億4千4百万円(前期比125.7%)、営業利益は439億7千9百万円(同115.0%)、経常利益は364億9百万円(同111.9%)と増収増益となりました。しかしながら特別損失に新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という。)の影響による一時休業期間中の固定費等として「新型コロナウイルス感染症による損失」を30億3千7百万円(前連結会計年度は40億7千5百万円)、減損損失を44億6千1百万円(前連結会計年度は33億2百万円)、店舗閉鎖損失引当金繰入額を20億1千7百万円(前連結会計年度は計上なし)、国内外モールの活性化推進等による固定資産除却損を24億9千9百万円(前連結会計年度は7億5千9百万円)等を計上しており、その結果、税金等調整前当期純利益は245億9千2百万円(同94.0%)となりました。また、前連結会計年度において、当社子会社である株式会社OPAの吸収合併に伴い繰延税金資産を計上したこと等により、法人税等合計が前連結会計年度との比較で45億7千3百万円増加したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は129億9千4百万円(同67.4%)と減益となりました。

連結経営成績

セグメント別経営成績

各国における営業概況および新型コロナの影響は次に記載のとおりです。なお、海外現地法人の決算期は12月末のため当連結会計年度の業績は2022年1月~12月累計期間の業績となります。

海外(中国)

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中国既存モール専門店売上 前期比推移

中国では、ゼロコロナ政策に基づく厳しい行動規制が敷かれ、一部の当社モールを臨時休業する等、新型コロナの影響を大きく受けました。政府は10月の中国共産党大会に向けて大規模な景気対策を強化していくと見通し、消費トレンドの回復を見込んでいましたが、共産党大会の閉幕以降もゼロコロナ政策は継続され、感染者が発生したエリアでは断続的に臨時休業が続きました。

12月7日以降、ゼロコロナ政策は緩和され当社モールの営業は再開しましたが、行動制限が無い中での感染爆発により、専門店従業員が出勤できず多くの専門店は休業しました。その結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比81.9%(対象21モール)となりました。

海外(ベトナム)

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ベトナム既存モール専門店売上 前期比推移

ベトナムでは、前連結会計年度(2021年1月~12月)において、7月以降、新型コロナが全土に拡大、政府指示による社会隔離措置が実施され、当社モールでは専門店を臨時休業しました。当連結会計年度(2022年1月~12月)においては、政府がウィズコロナ政策に転換したことから当社モールは全業種の専門店で営業を実施、ショッピング、アミューズメント、飲食等のレジャー機能を持つ当社モールは高い支持を受けました。また、シーズンセールやブラックフライデー等、各モールで実施した営業施策の効果等もあり、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比210.1%(対象6モール)と大きく伸長しました。

海外(カンボジア)

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カンボジアでは、前連結会計年度(2021年1月~12月)において、4月にプノンペン都で都市封鎖が実施される等、新型コロナが急速に拡大、シネマやアミューズメント等の一部業種での休業や営業時間短縮等の営業規制が実施され、集客面で大きな影響を受けました。当連結会計年度(2022年1月~12月)においては、同国内における行動制限は大幅に緩和され、イオンモールセンソックシティ(プノンペン都)ではモール内のテレビ局スタジオで公開収録イベントを実施する等、販促活動やイベント実施等による集客強化を図りました。その結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比161.3%(対象2モール)となりました。

海外(インドネシア)

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インドネシアでは、新型コロナの新規感染者数減少に伴い、政府による活動制限レベルが引き 下げられたことから、当社の全てのモールで4月より営業時間の短縮が解除、5月より入場者数の制限が解除されました。8月にはイオンモールBSD CITY(バンテン州タンゲラン県)において、産学官連携の取り組みとして、インドネシア有機農家組合と地域の子どもたちを対象にした地産地消の教育・体験イベントを実施、地元の有力テレビ局で当該イベントが特集される等、ブランディング強化による集客力向上に向けた取り組みを推し進めました。その結果、当連結会計年度の既存モール来店客数は前期比136.0%(対象3モール)と伸長しました。

日本

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既存モール専門店売上 前期比推移

当連結会計年度において、3月16日に発生した福島県沖地震の影響により、東北地方に所在する当社の一部モールを臨時休業しました。新型コロナの影響については、前連結会計年度では新規感染者数の増加に伴い緊急事態宣言が発令された影響で一部の当社モールを臨時休業しましたが、当連結会計年度においては、7月以降の第7波、12月以降の第8波で新規感染者数は増加する局面ながらも、当社モールは通年に亘り通常営業しました。集客強化に向けては、各モールでの集客イベントの開催に加え、9月16日から27日まで開催した「イオンモールのSDGsフェス」ではTVCMでプロモーションを実施、ブラックフライデーや年末年始商戦等では専門店とのコラボレーション企画を実施する等、さまざまなアプローチからの営業施策を積極的に展開しました。日本でもウィズコロナへの移行が進む中、お客さまの消費行動も徐々に活発化し、第4四半期連結会計期間(12月~2月)の既存モール専門店売上は前期比110.0%(対象85モール)と伸長しました。その結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比110.0%となりました。

成長施策に基づく取り組みの推進

当社は、経営理念の実現とさらなる事業成長を遂げるため、長期ビジョンとして2026年2月期(2025年度)にめざす姿を定め、社会価値・環境価値・経済価値の創出を通じて、地域社会とともに持続的な成長の実現に向けて取り組んでいます。

2021年2月期(2020年度)を初年度とする中期経営計画(2020~2022年度)では「海外における高い利益成長の実現」「国内における安定的成長の実現」「成長を支えるファイナンスミックスの推進とガバナンス体制強化」「ESG経営の推進」を成長施策とし、以下の経営課題およびめざす姿を定め、取り組みを推進してきました。

海外事業の利益成長の実現と新規出店の加速

成長エリアへの新規モール出店

最重点出店エリアであるベトナムでは、4月にホーチミン市ホックモン県、5月にホーチミン市に隣接するドンナイ省、6月に中部エリアのダナン市との間で、新たに「ショッピングモール開発に関する投資決定についての包括的覚書」をそれぞれ締結しました。5月にはトゥア・ティエン・フエ省の省都であるフエ市において、中部エリア1号店となるイオンモール フエ(フエ市)の出店を決定、2024年下期のオープンに向けて2023年2月に建築着工しました。

中国では、2023年度以降の新規オープンに向けて、(仮称)イオンモール武漢江夏(湖北省武漢市)、(仮称)イオンモール杭州銭塘新区(浙江省杭州市)、(仮称)イオンモール長沙茶塘(湖南省長沙市)で建設着工しました。

カンボジアでは、12月に3号店イオンモール ミエンチェイを一部先行オープン、2023年4月7日にグランドオープンしました。1号店イオンモール プノンペン(プノンペン都)では、都会的なラグジュアリーモールへの進化を図り、2023年度に増床リニューアルオープンを計画しており、エンターテインメント機能が充実した2号店イオンモール センソックシティ(プノンペン都)も含め、それぞれが立地特性を活かしたMD展開を行うことで、プノンペンにおいてエリアドミナンス強化を図っていきます。

インドネシアでは、5号店(仮称)イオンモール デルタマス(ブカシ県)を2024年度オープンに向けて建築着工しました。計画地のデルタマスシティは、同国内不動産最大手のシナルマスランド社と双日株式会社による世界最大規模の都市開発事業としてアジアを代表するスマートシティをめざしており、当社も積極的にプロジェクトに参画し、地域の中核施設として発展に貢献していきます。また、2021年11月に一部先行オープンした4号店イオンモール タンジュン バラット(南ジャカルタ区)を5月にグランドオープンしました。

活性化推進による既存モールの進化

既存モールでは、活性化の推進によりハード・ソフト両面での進化を図っていくことで、急速に変化するお客さまのライフスタイルに対応していきます。

中国では、イオンモール天津中北(天津市)において、ゼロコロナ政策による市外からの天津市への入境制限等の影響を受けつつも増床リニューアルを実施し、9月9日に先行オープン、11月11日にグランドオープンしました。駐車場として利用していた3階フロアを店舗化し、新レストラン街を導入するほか、既存フロアにも新規専門店の導入を進め、専門店数230店舗(+63店舗)、総賃貸面積76,000㎡(+16,000㎡)へと進化しました。

2022年9月イオンモール天津中北 増床リニューアルオープン
売上年間推移

イオンモール武漢経開(湖北省武漢市)では、4月と7月の2期にわたり、計84店舗のリニューアルを実施しました。さらに8月には、立体駐車場の増設によりエリア最大級となる4,500台の駐車場を備えるモールへと進化しました。イオンモール武漢金銀潭(湖北省武漢市)においても、7月と9月の2期にわたり、計41店舗の専門店を入れ替えるリニューアルを実施する等、武漢市における当社モールのエリアドミナンスを強化し、さらなる集客力向上を図りました。

カスタマー・エクスペリエンス
CXの創造によるリアルモールの魅力の最大化

リアルならではのCX向上の取り組み

お客さまの消費行動や購買習慣の変容が加速する中、リアルモールを展開する当社では、カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験価値)を新たに創造し、リアルモールの魅力を最大化していくことで、継続的に集客力向上を図っています。

開放的で居心地の良い外部ゾーンに対するお客さまのニーズが高まる中、「安らぎ」や「心地よさ」といった五感に訴えかける仕掛けを取り入れる等、お客さまにとって憩いの場となる施設環境づくりを推進しています。

4月28日にオープンしたTHE OUTLETS KITAKYUSHUでは、オープンエアな環境を最大限活かし、各ストリートにテーマ性を持った植栽景観を構築し、公園を散歩しながらショッピングを楽しめるような、居心地の良さを感じられる環境空間としました。

10月7日にオープンしたイオンモール土岐では、1階レストランゾーンに隣接する形でオープンテラスを配置し、緑豊かな景観と風通しの良い環境で食事を楽しめる空間設計としました。

また、吹き抜けのある開放的なモール空間や共用通路、フードコート等への自動音量制御装置の導入、さらに従来のモールと比べスピーカー台数を増やす等、五感で感じていただける音環境の実現をめざしていきます。

2022年10月イオンモール土岐 オープン
2022年11月イオンモール浜松志都呂 リニューアルオープン

モール周辺敷地の新たな活用として、地域行政やパートナー企業さま等との連携により新たなライフスタイルに合わせた環境を形成し、人々の交流を促す賑わいを創出することで、従来のモールにはない新たな価値をお客さまに創造するとともに、収益増加を図っていきます。

イオンモール土岐では、幅広い世代の方々に上質なエンターテインメント体験を提供するため、約20万㎡を超える広大な敷地の活用として、外部棟にゴーカートサーキット場や温浴施設、大型SUV専門店等を配置しました。

デジタル技術を活用したCX向上の取り組み

店舗の売り場づくりやお客さまへのサービス向上を目的として、お客さまの行動だけでなく、マーケットデータや当社が保有する様々なデータを組み合わせ有効なマーケティングデータとすることで、お客さま一人ひとりのライフステージを見据えたソリューションに活用していきます。

デジタル化を通じたお客さまのショッピング体験の高度化をめざし、イオンモールアプリではユーザビリティ向上やタイムリーな情報発信等による機能進化を進めており、2023年2月時点の累計ダウンロード数は約1,700万まで拡大する等、お客さまとのタッチポイント強化による来店頻度の向上に向けた取り組みを図っています。1月には、スプーン等のカトラリー類の受け取りを辞退したお客さまに電子マネー「WAON」のポイントを抽選で付与する機能を新たに追加しました。環境省が推進する「グリーンライフポイント」の補助金交付事業として採択されたもので、脱炭素社会の実現に向けて、環境意識が高まるお客さまの生活様式転換をサポートしていきます。

デジタル活用による専門店企業との共創の取り組みとして、全国のイオンモールで働く専門店スタッフが発信するおすすめ商品やコーディネート提案等を、館内のデジタルサイネージで配信する取り組みを開始しました。来店されたお客さまは、専門店の優秀なスタッフインフルエンサーから配信された情報をもとに実際に専門店を訪れ、ショッピングを楽しむことが可能となります。

次世代モールの構築と都市型SC事業の推進

様々な視点でのマーケット分析に基づき、出店エリアの立地特性に応じた多様な開発パターンによる次世代モールの構築を推し進めることで、新たな価値提案を図っていきます。

THE OUTLETS KITAKYUSHUでは、地域創生型商業施設「THE OUTLETS(ジ アウトレット)」業態2号店として、アウトレットショッピング体験だけでなく、「遊び」と「学び」を融合したエデュテイメントの提供等により、地域社会や周辺観光施設と連携を図りながら国内外の観光需要に対応していきます。

2022年4月THE OUTLETS KITAKYUSHU オープン

当社子会社の株式会社OPAでは、ターミナル立地中心の都市型施設8店舗の管理・運営に経営リソースを集中し、DX推進による新たなビジネスモデルの創造および業務効率化等の具現化に向けた取り組みを推進することで、収益力強化に努めています。

金沢フォーラス(石川県)では、石川県の伝統工芸品をセレクト販売する「MIHON-ICHI KANAZAWA」のバーチャルショップにて、最新のAR技術を活用し商品を360度自由にご覧いただける等、新たなショッピング体験に関する実証実験を実施しました。

高崎オーパ(群馬県)では、服の循環を生み出すアップサイクルコミュニティとして、服の回収から仕分け、染め直しを行い、新たな服として再活用することで、ファッションロス削減に取り組みました。

2022年3月金沢フォーラス MIHON-ICHI KANAZAWA オープン
2022年8月MIHON-ICHI KANAZAWA バーチャルショップでの実証実験

デジタル・トランスフォーメーション
DXの推進

当社は、「ヒトの想い」や「一人ひとりが持つ個性」が重要であると考え、「“ヒトの想い”を中心としたDXの実現」をDXビジョンに掲げ、お客さまのライフステージに応じた新たな価値創造のための事業開拓、デジタル技術やデータを活用した地域やパートナーとの共創による新たなビジネスモデルの創出、次世代に対応するオペレーションシステムの確立に向けた取り組みを推し進めています。

新たな暮らしの未来を実現するビジネスアイデアの創出に向けては、社外で活躍する個人の方々との共創を目的に、5月に当社初となるビジネスアイデアソン(注)を開催しました。この取り組みは、社会の課題や新たな技術と当社の経営資源を掛け合わせたビジネスアイデアの発想を目的として行うもので、新規事業開発やスタートアップ企業等の一般社会人の方や、事業構想関連を学ぶ学生等を対象に参加を募り、その多様な視点や経験を活かし、商業施設の枠組みを越えた新たなアイデアで当社のビジネスモデルを検討いただきました。

(注)
アイデアとマラソンを掛け合わせた造語。特定のテーマを決めて、そのテーマについてグループ単位でアイデアを出し合い、その結果を競うイベント。
日本2022年5月ビジネスアイデアソンを開催

中国では、地域の「暮らしの未来」をデザインする革新的な事業を生み出すことを目的に、中国国内のスタートアップ企業との事業共創プログラムを開始しました。「ESG」「顧客体験向上」等をテーマに事業提案を広く募集し、当社の持つアセットと多様なスタートアップの持つ先端テクノロジーの融合により、既存産業の変革や社会課題解決の実現をめざします。

中国2022年9月 スタートAEON MALL ACCELERATOR PROGRAM

中期戦略の推進とESG視点に基づく改革の加速

SDGsと日本および海外における社会課題を考慮したマテリアリティ分析を実施、ステークホルダーおよび自社にとっての重要度を評価し、ESG視点での重要課題として「地域・社会インフラ開発」「地域とのつながり」「環境」「ダイバーシティ・働き方改革」「責任あるビジネスの推進」の5分野10項目からなるマテリアリティを定めています。当社の全社員が個人目標の中にマテリアリティに関する項目を組み込む等、社内における意識向上を図りながら、お客さま、地域社会、パートナー企業さま等のステークホルダーとの共創によりESG経営実現に向けた施策を推進しています。

環境価値創出に向けた取り組み

自己託送方式による低圧・分散型太陽光発電「イオンモール まちの発電所」の稼働開始

9月より自己託送方式(注)による低圧・分散型太陽光発電設備「イオンモール まちの発電所」の稼働を開始しました。第一弾として、全国約740か所の低圧太陽光発電所で発電した電力約65MW(イオンモール4施設分の電力使用量に相当)を自己託送方式で全国のイオンモール約30施設に電力供給します。今後も全国に太陽光発電をはじめとする様々な「まちの発電所」を拡大していきます。

イオンモール土岐では、国内商業施設として最大の発電容量となる太陽光発電パネルを屋上屋根面にPPAモデルとして設置しました。当モールにおける使用電力の約20%相当を発電し利用することで再生可能エネルギー活用の拡大に貢献するとともに、電力会社からの調達電力単価高騰を受け、コスト削減効果にも寄与しています。

(注)
遠隔地の太陽光発電設備で発電した電気を、送配電事業者の送配電設備を利用し、自社施設または自社グループの施設へ送電すること。

フードロス削減への取り組み

THE OUTLETS KITAKYUSHUではフードコートにドギーバッグを導入し、まだ食べられる食品をお客さまの意思で持ち帰ることができる環境を提供しています。
また、ドギーバッグ設置場所には食べ残し残渣の回収器を設置し、回収後、バイオ式コンポスターで堆肥に変える運用も行っています。

施設全体での資源循環システムの構築

イオンモール太田(群馬県)では、2024年春の増床リニューアルに向けて実施した西側平面駐車場の改修工事において、撤去した既存の舗装材を粉砕して新たな舗装材として再利用しました。

また、イオンモール土岐では、地元のタイル工房と共同し、工事現場で掘削した土を材料の一部として再利用したタイルを活用し、オープンテラスの建物壁面に利用しました。

生物多様性保存に向けた取り組み

イオンモール新利府 北館(宮城県)では、11月に「鳥の巣箱づくりワークショップ」を開催しました。専門家の指導のもと、南三陸の間伐材で製作した鳥の巣箱をモール敷地内に設置、地域に生息する野鳥類の保全につなげることを目的とした取り組みで、利府町や南三陸の自然に触れ、自然環境を大切にする心を育む機会を提供しました。

社会価値創出に向けた取り組み

国内外におけるローカライズの推進

国内外での地域との連携によるローカライズの取り組みを積極的に推進していくことで、当社モールは地域に根ざし、地域から頼りにされるコミュニティの場をめざしていきます。

国内における取り組み事例の一つとして、イオンモール土岐では、岐阜県東濃地方の伝統工芸品である土岐美濃焼の普及に向けたさまざまな取り組みに加え、土岐市がNPO法人に運営委託する子育て支援施設「ときめっく」が出店しました。小さなお子さまを持つ方々にとって子育ての不安や悩み等を相談できる交流の場として広く利用されています。

日本2022年10月イオンモール土岐 子育て支援・交流施設「ときめっく」が出店

土岐市がNPO法人に運営委託する子育て支援・交流施設「ときめっく」を開設。小さなお子さまを持つ方々の子育ての不安解消や交流の場となっている。

日本全国の各モールが「産(企業)」「学(教育機関)」「官(行政)」「民(団体)」「文(文化・歴史)」「品(産品)」の6分野とコラボレーションし、各地域の課題に取り組み、また地域の魅力を磨き続けることを目的とした「究極のローカライズ企画」を2015年より継続的に実施しており、2022年度はさらに発展させた「ハートフル・サステナブル企画」として160を超える企画が立案・実行されました。九州・沖縄事業部ではイオン九州株式会社、JA(全国農業協同組合連合会)との協業企画として、九州産野菜を使用した飲食専門店での限定メニューの提供やモール共用部での関連イベントの実施等、専門店と共創・協業しながら九州産野菜をPRイベントを企画・実施しました。九州エリア内での相互連携による「地産外消(注)」を推進する取り組みとして、地域商材の販路拡大に繋げることで地域事業者に貢献しました。

中国においても、各モールおよび各エリア本社が積極的に取り組み、例えば、イオンモール天津TEDA(天津市)では「地元の農業発展に向けた支援活動」として、地元でのみ消費されていた農産品を地元TV局と提携しアピールするとともにモール内での試食会等を実施しました。

(注)
地域で生産した物産をその土地で消費する地産地消に対し、地域を飛び越え大消費地、ひいては海外で物産が消費されること。

中国2022年7月イオンモール天津TEDA 地元の農業支援に向けた支援活動

地元でのみ消費されていた農産品を地元TV局と提携しアピールするとともに、モール内で試食会やオンライン注文会を実施。

SDGsフェス

持続可能な開発目標SDGsが採択された9月25日を含む、9月16日から27日までの12日間にわたり、『イオンモールのSDGsフェス』を開催しました。行政機関や地域団体、パートナー企業と連携し、「まちの魅力発信」「防災」「フードドライブ」「健康」等をテーマにしたオリジナル企画を約500実施し、各地域のお客さまに気軽に参加いただくことで、SDGsについて「知る」から「参加することで学ぶ」へお客さまの行動変容を促しました。

(サステナビリティファイナンスの取り組み)

社会課題の解決と環境配慮を目的として、4月に個人投資家向けサステナビリティ・リンク・ボンド(以下、「本社債」という。)(注1)を400億円発行しました。本社債は、脱炭素社会の実現に向けたサステナビリティファイナンスへの取り組みとして、あらかじめ定めたサステナビリティ目標を達成するか否かで変化する条件での発行としています。

② 設備投資等の状況

当連結会計年度における設備投資総額は、1,022億9千7百万円(長期前払費用を含む)であります。

その内訳は、モール事業における「日本」574億6千4百万円、「中国」135億8千4百万円、「アセアン」312億4千7百万円であります。「日本」においては、新規モールであるTHE OUTLETS KITAKYUSHUの開設、イオンレイクタウンアウトレットの土地を取得したこと等による投資を実施しました。「中国」においては、イオンモール武漢経開とイオンモール天津中北のリニューアル、「アセアン」においては、新規モールであるイオンモール ミエンチェイの開設を行ったこと等による投資を実施しました。また、開発用地の先行取得等による投資を実施しました。

③ 資金調達の状況

当連結会計年度におきましては、長期借入金として既存取引銀行等より559億4千6百万円、社債の発行により800億円の調達をいたしました。

財産及び損益の状況の推移

① 企業集団の営業成績及び財産の状況の推移
② 当社の営業成績及び財産の状況の推移

対処すべき課題

当社は、「お客さま第一」を基本理念として『イオンモールは、地域とともに「暮らしの未来」をつくるLife Design Developerです。』を経営理念としています。この経営理念の下、持続可能な社会の実現に向けて、企業市民として地域・社会の発展と活性化に貢献する当社の企業活動を「ハートフル・サステナブル」と定め、様々な取り組みを推し進めています。

ローカライゼーションの視点に基づいたエリアごとに個性あるモールづくりを国内外で推し進めることにより、人々のライフスタイルの向上と地域社会の発展に貢献していきます。そして、お客さま、地域社会、パートナー企業さま、株主・投資家さま等のステークホルダーとの共創による取り組みを通じ、地域・社会の課題に対してソリューションを提供し続けることで、地域コミュニティにおける中核施設としての社会インフラ機能のポジションを確立していきます。

当社は、経営理念の実現とさらなる事業成長を遂げるため、長期ビジョンとして2026年2月期(2025年度)にめざす姿を定めています。

上記の長期ビジョンの下、2024年2月期(2023年度)を初年度とする中期経営計画(2023~2025年度)を新たに策定しました。これまで成長施策として推進してきたESG経営のさらなる進化を図るべく「国内外におけるリージョナルシフトの推進」「ヘルス&ウエルネスプラットフォームの創造」を取組方針とし、ステークホルダーに対して経済価値、社会価値、環境価値を創出する「真の統合型ESG経営」の実現により持続的な成長をめざしていきます。具体的には「海外成長マーケットにおける事業機会の発掘と事業化」「国内におけるビジネスモデル改革の推進」「既存事業の枠組みにとらわれない新たなビジネスモデルの創出」を成長施策として展開し、成長を支える基盤構築として「サステナブル視点での財務基盤強化と組織体制構築」を推進していきます。

取組方針

(国内外におけるリージョナルシフトの推進)

人口動態の変化等により国・地域ごとに抱える課題が多様化・複雑化している社会において、 全国一律ではなく、地域の生活圏に着目し徹底したマーケット分析・調査を行うことで、各地域が抱える課題やニーズに対し地域のステークホルダーの皆さまとの共創を通じた事業展開を進めていきます。また、イオン生活圏(注)における中核施設として、イオングループ各社との連携強化を 図り、地域の生活者を起点とした商品・サービス・生活基盤をシームレスに提供していきます。

(注)
イオングループ各社の総合力を組み合わせて地域に根差した商品・サービス・生活基盤をシームレスに提供することでお客さまの生活を豊かにしていく、イオングループにおける成長戦略の1つ。

(ヘルス&ウエルネスプラットフォームの創造)

お客さまの体や精神の健康のみならず、地域社会の健康、環境の健康をサポートする地域のヘルス&ウエルネスプラットフォームを創造していきます。その実現に向けては、快適で心地よい施設空間でのウエルネス関連テナントの発掘や新たな編集ゾーンの形成、あるいはウエルネス関連の新たな事業創造への取り組み等、地域で暮らす皆さまへの提供価値をさらに深めていくことで、地域におけるウエルビーイングな暮らしづくりを継続的にサポートしていきます。

成長施策

(海外成長マーケットにおける事業機会の発掘と事業化)

成長性の高いエリアにおける物件の探索・確保を進め、2025年度末時点での50モール体制実現をめざし新規出店を加速していきます。また、モール単一フォーマットによる事業展開から、各国および各地域が抱える課題を深掘りし、商業施設の枠組みにとらわれない新たな事業機会を探索していくことで、地域ごとの特性に合わせた新たな価値創造モデルで事業展開を図っていきます。

・重点エリアへの出店加速
2022年度末時点において、海外では中国22モール、ベトナム6モール、カンボジア3モール、インドネシア4モールの計35モールを展開しています。

最重点出店エリアであるベトナムでは、各エリアの地方政府と「ショッピングモール開発に関する投資決定についての包括的覚書」による相互協力協定の締結を進めてきており、ホーチミン市を中心とした南部、ハノイ市を中心とした北部の両エリアに加えて、中部エリアの周辺都市においてもドミナント出店を加速していきます。

中国では北京・天津・山東、江蘇・浙江、湖北、広東の4エリアでドミナント出店を進めてきましたが、今後、成長性の高い内陸部の湖北省・湖南省を重点出店エリアと位置づけ、新規出店を加速していきます。

・地域の課題解決に向けた新たな事業展開
カンボジアでは、2023年度に「シアヌークビル物流センター」の新規開業を予定しており、海外物流のプラットフォームとなる同国初の多機能物流センター事業を展開していきます。同国が世界の生産拠点となるためには保税倉庫の整備・運営が重要であり、当社が同事業を通じてお客さまの利便性向上と、当社を含む多種多様な事業者への事業機会やサービスを提供することで同国のさらなる発展に貢献していきます。
物流業界では、ドライバー不足や燃料価格の高騰に加え、2024年にはドライバーの時間外労働の上限規制が適用される等、従来と同じ品質での物流サービスの継続が困難となる可能性があります。当社は、パートナーである出店企業への新たな価値提供として、近畿・東海から名古屋エリアへの共同配送サービスの取り組みを開始しており、梱包資材やハンガーの共通化等も進めることで、経済価値だけでなく環境価値との両立をめざします。

(国内におけるビジネスモデル改革の推進)

国内においては、外部環境では人口減少、少子高齢化に伴う人手不足や資材高騰による建設単価の高止まり、アパレル業種を中心とした専門店企業の出店意欲低下等が顕在化し、また内部環境ではアパレル業種を中心とする専門店売上の低迷、建築コスト高騰による投資効率の低下等が大きな課題となっています。このように日々大きく変化する事業環境を機会とし、変わりゆく地域の課題やお客さまの価値観、潜在的なニーズに対応すべく、既存のビジネスモデル改革を推進していくことで、国内事業における集客力強化および収益性向上を図っていきます。

・マーケットに合わせた提供価値の多様化
出店地域のお客さまのニーズを徹底的に調査し、従来とは異なるアプローチから新業態での出店を推進する等、国内においてお客さまへの提供価値の多様化を図っていきます。既存のモールフォーマットへの機能拡充に加え、複合型や都市型等の立地特性に応じた開発パターンを推進する等、地域における新たなライフスタイル提案、地域課題に対する提供価値の多様化を進め、お客さまや地域のウエルビーイング実現に向けたソリューションを提供していきます。

・既存アセットの有効活用による収益性改善
既存モールを軸としたビジネスモデルの見直しにおいては、従来までの賃料収入だけでなく、BOPIS(注)の浸透およびリアル店舗の役割変化等を踏まえた収益モデルの多様化を推し進めていきます。既存アセットの有効活用として、十分に活用できていなかった敷地を新たな価値に転換すべく、モール内の敷地や駐車場の実態的な稼働率を踏まえ事業用地を新たに創出します。外部棟への積極的な企業誘致や賑わい創出等によりモールの魅力度を向上し、お客さまの来店動機となる新たな提供価値を創造することで集客力強化を図っていきます。

(注)
「Buy Online Pick-Up In Store」の頭文字で、ECで購入した商品を店舗で受け取ることができる仕組み。

・デジタル技術を駆使した業務効率性・利便性の向上
当社の従業員が、地域、パートナー企業の皆さまとのリレーションシップをより深め、日々の業務遂行において新たな価値創造のための時間を確保できるよう、最新のデジタル技術を駆使することで業務効率改善を図っていきます。当社従業員の業務のみならず、モール内で働く専門店企業の皆さまにおける生産性向上の実現により、パートナー企業の皆さまから出店先として選ばれ続けるディベロッパーをめざします。

・抜本的な事業構造改革の実行
外部環境およびお客さまの価値観が加速度的に変化する中、既存事業における深化を進めてきましたが、一部の当社施設においてはこの変化への対応が十分ではなく、集客力および収益性の低迷によりキャッシュ・フロー創出力が低下しています。活性化投資を含めた商圏内の競争力アップと運営効率の改善を進めるほか、不動産・財務的なアプローチからの抜本的な構造改革を視野に入れた取り組みを進めていきます。

(既存事業の枠組みにとらわれない新たなビジネスモデルの創出)

変化のスピードが速い不確実性の時代において、当社は既存事業の発展のみならず、新たな価値創造に向けた事業創出に注力し、事業領域の拡大に向けた取り組みを推進していきます。

・複合開発機能の拡充
複合開発機能の拡充に向けては、社会課題解決を目的としたソーシャルビジネスへの事業拡大を目的として、資本業務提携等のM&Aを通じたパートナー企業との連携強化により、地域共創を実現していきます。地域共創は、グローバルな課題を地域課題に因数分解し、共感できる人たちとともに、新しい価値を創造して、この課題をひとつずつ解決することを考えており、2023年3月には同じ理念を持つ分譲マンションおよび収益不動産事業を柱とする株式会社マリモとの資本業務提携を行いました。政府の進める“立地適正化計画”の目的である「持続可能な都市構造への再構築」の実現、「都市拠点への居住機能や医療・福祉・商業、公共交通等のさまざまな都市機能の誘導による、コンパクト+ネットワーク型の都市の実現」に貢献できるという考えのもと、市街地における再開発・複合開発事業を推進していきます。

・新たな事業創出に向けた取り組み推進
新たな事業創出に向けては、当社組織のマインドセット改革やアクセラレータープログラムによる他社との共創活動等、未来のありたい姿からのバックキャスト思考で事業化に向けた検討を重ねてきました。当社では新たにCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立、スタートアップ企業への出資等を通じて、スタートアップ企業が持つ最先端の技術やノウハウを結集するとともに、社内ベンチャー制度による新たな価値提供等を行うことで、地域課題の解決、店舗運営の高度化を通じた新たな事業価値創造に挑戦していきます。

基盤構築

(サステナブル視点での財務基盤の強化と組織体制の構築)

急速かつ急激に事業環境が変化する中、当社がめざす「真の統合型ESG経営」の実現に向けた取組方針である「国内外におけるリージョナルシフトの推進」「ヘルス&ウエルネスプラットフォームの創造」を推進すべく、サステナブル視点での財務基盤の強化および組織体制の構築に取り組むことで、持続的な成長を可能とする経営基盤強化を図っていきます。

・ファイナンスミックスの推進と資産ポートフォリオの最適化
今後の成長ドライバーである海外事業への投資に必要な資金については、国内外における直接・間接金融、不動産流動化、ESGファイナンス等の組み合わせによるグローバルファイナンスミックスの推進により調達手段の多様化を図っていきます。また、新規物件における開発型リースの活用、高採算な既存優良物件の取得等を通じた資産ポートフォリオの最適化を通じて、投資効率の向上を図っていきます。

・経営監督機能の強化と迅速な業務執行体制の構築
経営戦略・成長施策の推進と計画数値達成の実現に向けて、組織の役割・責任の明確化、業務執行のスピードを上げるとともに効果的なモニタリングを行っていくために、当社では2023年5月より執行役員制度を導入します。経営の監督と執行の分離による監督機能強化をはじめ、既存事業の進化と新規事業の開拓、業務執行責任の明確化と意思決定の迅速化を進めるとともに、次世代の経営人材育成も含め、組織体制を整備していきます。

イオンモールの重要課題(マテリアリティ)

SDGsと日本および海外における社会課題を考慮したマテリアリティ分析を実施、ステークホルダーおよび自社にとっての重要度を評価し、ESG視点での重要課題として「地域・社会インフラ開発」「地域とのつながり」「環境」「ダイバーシティ・働き方改革」「責任あるビジネスの推進」の5分野10項目からなるマテリアリティを定めています。当社の全社員が個人目標の中にマテリアリティに関する項目を組み込む等、社内における意識向上を図りながら、お客さま、地域社会、パートナー企業さま等のステークホルダーとの共創によりESG経営実現に向けた施策を推進しています。
マテリアリティに基づく主な行動指針や目標、具体的な取り組み状況等については次の通りです。

当社ウェブサイト「イオンモールのマテリアリティ」についてもご参照ください。
https://www.aeonmall.com/sustainability/materiality/

(イオンモール脱炭素ビジョン)

「イオン脱炭素ビジョン2050」に基づく脱炭素への取り組みとして、2040年までに国内での当社事業から排出するCO2等を総量でゼロにすることをめざします。

太陽光発電設備およびEV充電器の設置等の省エネルギー活動を継続的に推進してきましたが、今後はこれらの削減策に加え、各地域での再生可能エネルギー(以下、再エネという。)直接契約の推進等により、2025年度に国内約160モールで使用する電力を再エネに転換することを目標としています。その上で、現在各地域での再エネ直接契約による実質CO2フリー電力調達から、順次地産地消の再エネ(PPA(注)手法含む)へ切り替え、2040年度には当社直営モールにおいて100%地産地消の再エネでの運営へ引き上げていきます。

脱炭素社会の実現に向けては、海外を含めて取り組みを推進し全ての事業活動で排出するCO2等を総量でゼロにすることをめざし、取り組みを加速いたします。

(注)
「Power Purchase Agreement(販売契約モデル)」の略称で、PPA事業者が電力需要家の敷地や屋根等を借り太陽光発電
システムを設置し、そこで発電した電気を需要家に販売する事業モデル。

当社ウェブサイト「イオンモールのサステナビリティ」についてもご参照ください。
https://www.aeonmall.com/sustainability/

(サーキュラーモールの実現)

廃棄物や資源の問題に対しては、サーキュラーエコノミー(注)の考え方をモールの運営に取り入れ、資源循環を行える仕組みを構築することで、廃棄物を「削減する」という考えから「ゼロにする」という前提で、地域における循環型経済圏の構築に取り組んでいきます。循環型社会の実現に向けては、お客さま、地域社会、パートナー企業さま等のステークホルダーとともに、脱プラスチック、食品リサイクル、衣料品回収等の取り組みを通じて、「サーキュラーモール」の実現をめざしています。

(注)
従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等をめざすもの。

(生物多様性保全に向けた取り組み)

事業活動における生態系への影響を把握し、お客さま、行政、NGO等のステークホルダーと連携しながら、その影響の低減と保全活動を積極的に進めています。マテリアリティ(重要課題)において「生物多様性・資源の保護」を重要項目に掲げ、定量目標として2030年度までに「いきもの共生事業所®認証(注)」の取得モール数を増やしていくことを目標としており、2023年3月末時点で19施設にて同認証を取得しています。

(注)
一般社団法人「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」が作成・登録した「いきもの共生事業所®推進ガイドライン」に基づき、生物多様性に配慮した緑地づくりなどの取り組みを第三者的に評価・認証する「いきもの共生事業所推進協議会」が行う認証。

(人材ビジョン・組織ビジョンの策定)

『イオンモールは、地域とともに「暮らしの未来」をつくるLife Design Developerです。』を経営理念としています。当社のビジネスは、お客さま、地域社会、パートナー企業さま等、様々なステークホルダーの方々をつなぎ、地域の課題を解決していくことであり、人材こそが持続的な成長を果たしていくための最も重要な「資本」であるという考えのもと、経営理念の実現に向けて革新の原動力となる人材および組織に関するビジョンを次の通り策定しています。

(ダイバーシティ経営の推進)

人材こそが持続的に成長していくための最大の経営資源であるという考え方のもと、全ての従業員が健康で自分が持ち合わせる能力の100%を発揮し成長し続ける、多様性を強みとする組織をめざしています。特に、社会の変化や従業員のニーズの変化に対応し、異なる視点からの意見を積極的に交わすことで創造的なビジネスモデルが生まれると確信し、多様な人材が活躍できるダイバーシティ経営を推進しています。そのために人材成長を支える様々な人材育成・教育プログラムを整備しています。

女性活躍を支援する仕組みづくりとして、具体的には女性従業員の産休から復職までの社内外の制度の周知、事業所内保育園「イオンゆめみらい保育園」の整備、女性の上位職へのチャレンジ意欲を醸成する研修等の教育機会を増やしています。また、女性だけでなく男性の育休取得促進にも力を入れており、男女の固定的な役割意識をなくし、女性の幹部社員登用に対する上司や職場の理解につなげています。こうした取り組みは、仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組む企業として「くるみん」認定を受けています。

海外での人材登用については、当社の理念を深く理解するローカルスタッフによってそれぞれの地域に根差した運営を行うことを基本方針としています。海外事業の将来を担う人材を育成するための国内と海外間における人材交流の活発化、国籍に関係なく成果を上げた人材の積極的な管理職への登用等を推進しています。

(健康経営の推進)

従業員の健康づくりが企業活動のベースであり、従業員が健康であることにより、地域のお客さまに健康と心の豊かさをもたらすサービスを提供できるとの考えのもと、健康経営を推し進めています。

経済産業省と日本健康会議の主催で特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度である健康経営優良法人制度において、2023年3月に「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定されました。

(責任あるビジネスの推進)

イオンの人権基本方針に基づき、人権を尊重し、性別や国籍等に関わりなく企業の発展に参画できる組織、またすべての従業員の能力が最大限に発揮できる職場の実現をめざしています。

イオンの人権基本方針では人権デュー・ディリジェンスの実施を明記しており、当社では2020年より取り組みを開始し、2021年度においては当社および当社から見た上流サプライヤーのアセスメントを実施しました。2022年9月13日には日本政府により「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定され、今後は政府の方針に沿って実施範囲を下流の委託先や専門店へと拡大していくとともに、潜在的な負の影響の特定・評価・予防・軽減・是正計画を策定してPDCAサイクルを確立することで、定常的に人権リスク低減に取り組む体制の構築をめざしていきます。

また、人権侵害となるような事案発生を未然に防ぎ、持続可能なバリューチェーンを構築するため、イオンの人権基本方針およびイオンサプライヤー取引行動規範に基づき、当社独自に「持続可能な取引のためのガイドライン」を2021年8月に策定しました。同年12月には建設関係の取引先を対象に同ガイドラインの理解促進および普及を目的とした説明会を実施、2022年6月には専門店企業を対象に同様の説明会を実施しました。

連結計算書類