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1.議案の要領
当社の取締役の報酬限度額は、2020年3月24日開催の定時株主総会において年額390百万円以内(うち、社外取締役年額35百万円以内)とすること、これとは別枠で、2018年6月28日開催の定時株主総会において、株式報酬の額として年額150百万円以内、株式数の上限を年27,000株以内(社外取締役は付与対象外。当社と委任契約を締結している執行役員への報酬を含む)とすることが承認されているが、今般、譲渡制限付株式報酬制度の対象となる当社の取締役と執行役員に対し、年額390百万円以内、付与株式数の上限92,000 株の譲渡制限付株式付与のための金銭報酬債権を付与することとする。
具体的な支給時期及び配分については、取締役会において決定するが、ROEとTSR(株主総利回り)を含む業績連動型のインセンティブ制度として設計し、かつ、業績基準を満たす場合には累計で固定報酬の3倍相当の譲渡制限付株式を今後3年間で付与するよう設計するものとする。
2.提案の理由
弊社は日本の取締役会の最大の弱点が各取締役による株式保有の少なさ、それによる株主目線の欠如にあると考えます。当社においても創業家出身者を除き各取締役の株式保有が少なく、取締役の経済的利益の大半は固定報酬としての基本報酬であり、一部業績の達成に紐づく報酬があるものの、譲渡制限付株式報酬の目的である株主との価値共有が不十分と考えます。取締役に当社の企業価値の持続的向上を図る経済的インセンティブを持たせ、株主と利益を一体化することで企業価値向上の成果を株主とともに享受することが必要です。
取締役と株主との価値共有を図るための効果的な株式報酬の目安は、固定報酬の3倍相当とされております。当社は譲渡制限付株式報酬制度を導入しているものの、第119期(2023年1月1日から2023年12月31日まで)では当社の取締役(社外取締役を除く)に年額約209百万円の固定報酬が支払われているのに対し、株式報酬は33百万円となっており、固定報酬の約16%しかありません。このペースでは、取締役と株主との価値共有を図るために効果的な株式報酬の目安とされる固定報酬の3倍相当の株式保有に到達するまで、約19年かかることになります。譲渡制限付株式報酬は取締役の在任中に付与されなければ意味がありませんので、より短期間で一定規模の付与がなされる必要があります。
また、欧米においてはほぼすべての主要上場企業において、株主との価値共有に必要と考えられる一定量の株式について一定期間の継続保有要件を定める株式保有ガイドラインが採択されています。数年間の猶予期間を経て、トップマネジメントであれば基本報酬の 3~5 倍、社外取締役でも報酬の 1 倍とするケースが大半です。弊社は当社の取締役その他の経営陣にも、過去の常識にとらわれず、世界水準に劣らないオーナーシップのレベルを目指すこと、適切な開示を通じてそのコミットメントを示すことを提案し、株式保有ガイドラインを制定すべきと考えます。
3.当社取締役会の意見
当社取締役会としては、本株主提案議案に反対いたします。
当社の取締役の報酬は、企業価値の持続的な向上を図るインセンティブとして十分に機能するよう株主利益と連動した報酬体系とし、個々の取締役の報酬の決定に際しては各職責を踏まえた適正な水準とすることを基本方針としております。
また、当社は社外取締役を除く取締役及び当社と委任契約を締結している執行役員に対し、株主の皆様との一層の価値共有を進め、中長期的な企業価値の持続的な向上を目的として、2018年6月28日開催の第113回定時株主総会決議にて事後交付型譲渡制限付株式報酬制度(年額150百万円以内、株式数の上限年27,000株以内)を導入しております。なお、当社はグループ従業員を対象とした譲渡制限付株式報酬制度を2024年度に導入しました。経営層だけでなく、グループ従業員もパーパスの実現や企業価値向上に向けて一致団結し、株価に対する意識付けや株主の皆様との一層の価値共有を図ることを目的としております。
取締役の株式報酬は、本制度の目的に照らして相当な額として、固定基本報酬とのバランスや従業員との報酬格差、会社規模、営業利益水準等を考慮の上で慎重な審議を経て決定しております。現状の報酬体系において株式報酬が最大額付与された場合、対象取締役等の報酬総額の約3割が株式報酬になります。
なお、取締役の報酬等の決定方針については、企業経営に関する豊富な経験や専門性の高い知識等を持つ社外取締役4名及び社外監査役3名より、独立・客観的な立場からの適切な意見、助言及び指摘等を得た上で、取締役会にて決定しております。
本株主提案は対象取締役等に対して年額390百万円以内、付与株式数の上限92,000株の譲渡制限付株式付与のための金銭報酬債権を付与することとし、業績基準を満たす場合には累計で固定報酬の3倍相当の譲渡制限付株式を今後3年間で付与するよう設計されたものであり、現在の業績水準からも乖離していると考えます。
よって、当社取締役会は、本株主提案に反対いたします。
なお、当社取締役会は、本株主提案に反対いたしますが、今後も引き続き報酬構成のバランスや報酬水準、中長期におけるインセンティブの付与等、企業価値向上のため報酬制度を継続的に見直す必要があると認識しております。
当社グループの存在意義(パーパス)『すこやかな毎日、ゆたかな人生』の実現に向けた価値創造を強化し、中長期的な企業価値の向上及び株主共同の利益に資するコーポレートガバナンスの構築のため、今後も社外取締役を含めた当社取締役会の適切な報酬体系について積極的に検討してまいります。