事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
企業集団の現況
当事業年度の事業の状況
事業の経過および成果
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大と収束を繰り返す中で、感染対策と社会経済活動の両立に向けた対応を推し進め、景気は緩やかながら改善に向かいました。一方で、世界的な資源・原材料価格の高騰による物価上昇や急激な円安等のリスクが顕在化し、依然、景気の先行きが不透明な状況が続いております。
このような状況の中、業種や企業規模を問わず、DX(ビジネス変革・プロセス変革)に対する情報化投資需要の高まりが継続し、クラウドを活用したシステムインテグレーションや管理運用受託企業の情報化投資は堅調に推移いたしました。一方で、経済環境・事業環境の著しい変化を受け、事業ポートフォリオの見直しを進めつつも、設備投資に足踏みする企業もあります。
当社グループにおきましては、上期に受注した大規模案件が順調に拡大したことに加え、金融分野での新規受注も拡大する中、リソースの最適化や生産体制の確保に努めてまいりました。また、キャリアフィールドに応じた人材育成や経営管理に係る情報化投資等を図り、経営基盤の強化・整備を進めました。
こうした活動や、上期より継続してきたエンハンス案件を中心とした収益性改善活動が実を結び、当連結会計年度における業績は売上高18,021百万円(前期比10.4%増)、営業利益は1,536百万円(同5.8%増)、経常利益は1,590百万円(同7.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,067百万円(同7.8%増)となり、増収増益で推移いたしました。
連結業績
所在地別のセグメントの業績は、CUBE SYSTEM VIETNAM CO.,LTD.、上海求歩信息系統有限公司を連結の範囲に含めておりますが、当連結会計年度における本邦の売上高が、全セグメントの売上高の合計に占める割合の90%超であるため、所在地別セグメント情報の記載を省略しております。
設備投資の状況
特記すべき事項はありません。
資金調達の状況
当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、主要取引金融機関と総額2,300百万円の当座貸越契約および貸出コミットメント契約を締結しております。
事業の譲渡、吸収分割または新設分割の状況
該当事項はありません。
他の会社の事業の譲受けの状況
該当事項はありません。
吸収合併または吸収分割による他の法人等の事業に関する権利義務の承継の状況
該当事項はありません。
他の会社の株式その他の持分または新株予約権等の取得または処分の状況
該当事項はありません。
財産および損益の状況
対処すべき課題
当社は2021年11月に「サステナビリティ基本方針」を定め、企業価値の向上と社会課題の解決双方の実現に向けてサステナビリティ経営を遂行しております。そして、社員一人ひとりが事業活動を通じて社会に貢献し、企業価値の向上を目指しております。
当社グループは、現在この経営方針のもとで、中長期経営ビジョン《VISION 2026》の実現に向けて事業基盤と経営基盤を整備し、2024年度から2026年度までの第2次中期経営計画で飛躍的な事業成長を図ってまいります。
今日の日本経済は、ポストコロナにおける社会経済活動が活性化し、景気は緩やかな持ち直しの動きが続いております。一方で、原材料価格の上昇や諸資源の供給面の制約が継続し、金融資本市場の変動リスクは景気の行方を不透明な状況に晒しています。こうした経営環境のもとで、企業には中長期的な課題対策のみならず、リスクに対する機動的な対応が求められます。
このような状況に鑑み、当社は優先的に取り組むべき重点課題と施策を検討し、その遂行を通じて解決に取り組んでおります。
重点施策
1)事業の成長
当社は、これまで培ってきた強みと実績を基に、デジタルビジネス、SIビジネス、エンハンスビジネスの3つを事業の軸として推進しております。第2次中期経営計画では、当社ビジネスモデルを以下の3つのビジネススタイルでお客様に価値を提供し事業成長を加速してまいります。
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▶受託ビジネス
- ・Sier案件
- ・プライム案件
- ▶サービス提供ビジネス
受託ビジネスにおける「Sier案件」では主要顧客との協業推進を図るとともに、案件の大型化や新規顧客開拓を進め、継続的、安定的な収益拡大を目指してまいります。当社の強みである「ソフトウェアエンジニアリング」において競争優位を発揮し、受注案件において様々な業種/業務、新しい技術にチャレンジすることで、さらなる強みの強化に努めてまいります。また、現状の受託開発における契約形態を見直し、改善することで、高度・多様化するお客様の要望に合致する価値の提供を実現してまいります。
「プライム案件」では、従来型のSIビジネスにおいて受注規模の拡大(案件の大型化)ならびに収益の拡大の両面を目指してまいります。お客様の事業成長に直結したDX案件、ビジネスプロセス改善による経営システムの効率化などの課題に対して、AI技術、プログラミング自動化技術などの先進技術も用いた積極的な提案活動を通じ、受注拡大を図ります。また、当社の保有するノウハウや知的資本を武器に新領域でのお客さまの獲得や事業開拓を行い、成長の軸となる顧客基盤の形成に努めてまいります。
「サービス提供ビジネス」では、当社得意分野である「Oracle Cloudサービス」をはじめとしたクラウドソリューションベンダーとの協業や当社高度人材による高付加価値のサービス提供を図り、成長の基盤となる事業を創り上げてまいります。具体的には、当社の得意とするマルチクラウド(お客さまの要望を最適化し様々なクラウドサービスを活用)分野での受注拡大を図り、お客様の経営システムをLift&Shift※してまいります。また、生成AIクラウドサービスを活用した人的資本にかかるソリューションを提供することで、当社のサービス提供ビジネスを確立いたします。
- ※レガシー環境をクラウド環境へ移行(Lift)し、クラウド環境に最適化しながらシステム再構築を段階的に進めていく(Shift)こと
2)事業基盤の強化
当社グループにおいて、事業成長を加速・促進するための事業基盤の強化は、重要な経営課題と捉えております。特に成長の軸となる基盤を以下の3点と捉え、その強化に努めてまいります。
- ▶生産体制・品質の強化
- ▶協業推進
- ▶研究投資
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①生産体制・品質の強化
「生産体制の強化」では、国内外の開発拠点の拡充、受注案件の外部委託先であるビジネスパートナーの選択と集中を進め、協業関係の促進・信頼関係の構築を図ってまいります。また、2024年4月に新設した開発拠点のヘッドクォーター(本社:ソフトウェア開発本部)を中心に、既存の国内の開発拠点(北海道、福岡、大阪)での生産性向上施策推進および生産革新への投資に努めるとともに、新規の開発拠点を模索し、当社の盤石な生産体制を整えてまいります。また、海外の開発拠点の一つであるベトナムキューブシステムでは、人材の採用、育成に努め、オンサイトでのブリッジエンジニア活用によってオフショアでの開発案件の拡大を行い、グループの総合力を高めてまいります。
「品質の強化」では、プライム案件のさらなる拡大を進めるべく、財務・法務・セキュリティといったリスクへの対応力の強化に努めるとともに、現状の当社独自フレームワークに加え、品質管理ノウハウを蓄積し体系化することで、品質管理体制を確保してまいります。また、生産体制の拡大に伴い、グループ会社連携・ビジネスパートナーとの連携における品質の確保は、重要な要素となってまいります。組織横断、グループ横断で品質に関わる人材を早期に育成するとともに人材の確保に努めてまいります。 -
②協業推進
「協業推進」では、主要なSierとのシナジーを更に生み出し、多様な社会課題の解決促進と顧客サービスの充実・拡大を通じて持続的な成長を目指してまいります。具体的には、新卒採用の継続による中長期的な開発体制の拡充と、中途採用の強化を行うことで経験者・高度人材による即時的な体制強化を進めてまいります。また、本社のソフトウェア開発本部を主体として国内開発拠点の充実を図り、Sierからの要請にしっかりと応えてまいります。また、当社はSier案件を上流から下流までワンストップで請負うソフトウェアエンジニアリングを志向し、取り組んでおります。当社の担当範囲の拡大や生産技術革新、生産性の向上などを図り、開発後のエンハンスも視野に入れた事業活動を展開することで、お客様との関係性を強化してまいります。 -
③研究投資
「研究投資」に関しては、顧客ニーズおよびマーケットのトレンドを踏まえ、先端技術をいち早く取り込むため、積極的に実施してまいります。具体的には、AI、IoTなどの先進技術を活用し、組み入れたプロトタイプの設計、製作、実証実験などを進め事業化に向けた取り組みを加速してまいります。また、新たなソリューションサービスに関する調査や研究開発を進めていくとともに、当社の培ってきた強みであるソフトウェアエンジニアリングの知的資産化を図り、競争優位性を高めてまいります。
3)経営基盤の強化
当社グループでは、事業を支える経営基盤の強化・構築は重要な経営課題と位置づけ、多様な活動に取り組んでおります。第2次中期経営計画では、以下3点に注力し、持続的に成長してまいります。
- ▶人的資本の充実
- ▶内部統制/ガバナンス
- ▶企業風土改革
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①人的資本の充実
「人的資本の充実」では、採用による体制の拡大、人材育成による能力・スキルの向上、社員とのエンゲージメント向上施策による意欲・働きがいの醸成を図ってまいります。その実現施策として、新卒採用・中途採用ともに、現在のチャネルを拡大(地方での採用、アルムナイ制度の導入、ヘッドハンティングなど)し、多様な人材の採用を進め、人材の確保に努めてまいります。また、当社規定の「プロフェッショナルIT人材」・「コーポレートスタッフ人材」におけるキャリアフィールドに基づいて、社員一人ひとりが目指す方向性や目標とするキャリアに対して育成計画を作成し、PDCAサイクルを実践することで人材育成の強化・促進を行っております。そして、社員が果敢にチャレンジできる機会を創出するとともに、フォロー・サポート体制や報酬面の制度を充実させることで、社員との更なるエンゲージメント向上に努めています。 -
②内部統制/ガバナンス
「内部統制/ガバナンス」では、市場や顧客に満足いただけるソリューションサービスを提供し続けるために、公正かつ効率的な経営を支えるコーポレートガバナンスを重要課題と捉え、その充実に努めております。特に社外取締役は、取締役会において監督・モニタリングや適正かつ機動的な意思決定に資するだけでなく、会社の経営プロセスを有効かつ効率的に機能させるために多面的な助言を行うことで、取締役会の実効性を高めております。また、内部統制・統合リスク管理会議では、パンデミックやその他災害への対策、地政学的リスクなどを加味した事業継続プログラム(BCP)の改善も進めていくことで、持続可能な運営に努めてまいります。 -
③企業風土改革
「企業風土改革」では、経営理念に基づき、社会発展のために果たすべき義務や役割を理解し、社員一人ひとりが事業や地域貢献などの活動を通じて企業価値向上と社会課題解決の実現に向けた意識改革を進めてまいります。その基盤となるコンプライアンスの実践を重要な経営課題の一つとして位置づけ、「法令や規則を守ること」に留まらず「会社を取り巻く全てのステークホルダーの信頼に応えること」を当社のあるべき姿として意識醸成に努めております。
この考え方に基づいて、社員と会社が共に成長し、共に成果を分かち合うWell-being経営を志向してまいります。そして、地域社会発展への貢献や環境にやさしい経営の実践、企業活動における人権尊重などにも取り組んでまいります。
これらの施策により、2025年3月期の連結業績の見通しにつきましては、売上高18,800百万円(前期比4.3%増)、営業利益1,600百万円(同4.2%増)、経常利益1,650百万円(同3.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,100百万円(同3.1%増)を見込んでおります。