事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

企業集団の現況

当事業年度の事業の状況

事業の経過および成果

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大と収束を繰り返す中で、感染対策と社会経済活動の両立に向けた対応を推し進め、景気は緩やかながら改善に向かいました。一方で、世界的な資源・原材料価格の高騰による物価上昇や急激な円安等のリスクが顕在化し、依然、景気の先行きが不透明な状況が続いております。
このような状況の中、業種や企業規模を問わず、DX(ビジネス変革・プロセス変革)に対する情報化投資需要の高まりが継続し、クラウドを活用したシステムインテグレーションや管理運用受託企業の情報化投資は堅調に推移いたしました。一方で、経済環境・事業環境の著しい変化を受け、事業ポートフォリオの見直しを進めつつも、設備投資に足踏みする企業もあります。
当社グループにおきましては、上期に受注した大規模案件が順調に拡大したことに加え、金融分野での新規受注も拡大する中、リソースの最適化や生産体制の確保に努めてまいりました。また、キャリアフィールドに応じた人材育成や経営管理に係る情報化投資等を図り、経営基盤の強化・整備を進めました。
こうした活動や、上期より継続してきたエンハンス案件を中心とした収益性改善活動が実を結び、当連結会計年度における業績は売上高16,325百万円(前期比1.4%増)、営業利益は1,452百万円(同2.4%増)、経常利益は1,480百万円(同3.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は989百万円(同4.8%増)となり、増収増益で推移いたしました。

連結業績
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事業区分別の概況

事業の品目別の業績を示すと次のとおりであります。

売上高
前期比 %増
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(単位:

地銀・ネットバンク向けシステム案件の拡大および協同組合向けシステム案件の拡大等により、売上高は前期比0.8%増、営業利益は前期比1.2%増となりました。

売上高
前期比 %減
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(単位:

総合スーパー向けシステム案件の縮小等により、売上高は前期比4.9%減、営業利益は前期比7.7%減となりました。

売上高
前期比 %増
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(単位:

郵便事業会社向けシステム案件の拡大および製造業向けシステム案件の拡大等により、売上高は前期比9.5%増、営業利益は前期比13.8%増となりました。

所在地別のセグメントの業績は、CUBE SYSTEM VIETNAM CO.,LTD.、上海求歩信息系統有限公司を連結の範囲に含めておりますが、当連結会計年度における本邦の売上高が、全セグメントの売上高の合計に占める割合の90%超であるため、所在地別セグメント情報の記載を省略しております。

設備投資の状況

特記すべき事項はありません。

資金調達の状況

当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、主要取引金融機関と総額2,300百万円の当座貸越契約および貸出コミットメント契約を締結しております。
また、当連結会計年度において、2022年12月8日開催の取締役会決議により、2022年12月27日を払込期日とする、第三者割当による普通株式を新規発行し、1,646,300,000円の資金調達を行いました。

事業の譲渡、吸収分割または新設分割の状況

該当事項はありません。

他の会社の事業の譲受けの状況

該当事項はありません。

吸収合併または吸収分割による他の法人等の事業に関する権利義務の承継の状況

該当事項はありません。

他の会社の株式その他の持分または新株予約権等の取得または処分の状況

該当事項はありません。

財産および損益の状況

対処すべき課題

当社は2021年11月に「サステナビリティ基本方針」を定め、企業価値の向上と社会課題の解決双方の実現に向けてサステナビリティ経営を遂行しております。そして、社員一人ひとりが事業活動を通じて社会に貢献し、企業価値の向上を目指しております。
当社グループは、現在この経営方針のもとで、中長期経営ビジョン《VISION 2026》の実現に向けて事業基盤と経営基盤を整備し、2024年度から2026年度までの第2次中期経営計画で飛躍的な事業成長を図ってまいります。
今日の日本経済は、新型コロナウイルス感染症が縮小傾向にあり、ウィズコロナのもとで、経済・社会活動が活発化し、景気は持ち直しの動きが続いております。一方で、原材料価格の上昇や諸資源の供給面の制約が継続し、金融資本市場の変動リスクは景気の行方を不透明な状況に晒しています。こうした経営環境のもとで、企業には中長期的な課題対策のみならず、リスクに対する機動的な対応が求められます。
このような状況に鑑み、当社は優先的に取り組むべき重点課題と施策を検討し、その遂行を通じて解決に取り組んでおります。

重点施策

1)事業基盤の強化
  • ①事業拡大と収益性の向上
    当社は、これまで培ってきた強みと実績を基に策定した《VISION 2026》に向けて、デジタルビジネス、SIビジネス、エンハンスビジネスの3つを事業の軸として推進しております。新たな事業ポートフォリオ構成の変革と持続的な成長を目指して収益性の高い領域を見極め、経営資源を集中して事業拡大と収益性の向上に努めてまいりました。
    デジタルビジネスでは、DX実現のための高速開発環境「F@CE DX」を武器に、当社発のプロダクトやエンドユーザ様向けの企画・提案型案件への取り組みを積極的に進め、当社のブランド価値向上を目指します。
    SIビジネスにおいては、レガシー環境をクラウド環境に移行するLiftと新たな開発方法論を適用するShiftによるLift&Shiftモデルを確立いたしました。マイクロサービスを軸としたシステムの提供とクラウドベンダーとの共創促進に取り組み、特化技術の開発とエンドユーザービジネスの拡大を行ってまいります。
    エンハンスビジネスでは、グループ協業モデルの活用やビジネスパートナーとの連携などにより、高生産性、高収益性の実現に向けた取り組みを一層加速してまいります。
    また、当社グループは、社会貢献や健全で持続的な中長期成長を目指す経営の基本観を共有できると判断し、2022年12月に株式会社野村総合研究所と資本・業務提携を行いました。この提携を機会に、キューブシステムグループの独自性や強みを活かしつつ両社で連携を強化・拡充し、顧客・市場ニーズへの質および量の両面でサービスの充実を図り、当社の一層の企業価値の向上を目指します。
  • ②生産体制の拡充
    当社事業における設計・開発・保守・運用体制を強化し、市場に対してより競争力のあるサービス提供を実現するためには、それらの生産体制の拡充が重要な課題となります。その対応として、業務特性や能力特性に即した働き方改革活動のもとでの就業環境改善、パートナー企業と連携した弛まない生産能力の向上、生産体制の増強・拡充による開発・生産能力の強化に努めます。さらに、多種・多様化する顧客ニーズに対応しうる人材の獲得を強化し、当社の付加価値を向上してまいります。
2)経営基盤の整備
  • ①人的資本の充実
    エンジニアリング力は当社グループの競争力強化、差別化に直結するため、システムエンジニアの継続的なスキルアップは必要不可欠ですが、それを支える健全な組織や社員の健康は、当社の重要な経営課題と捉えております。働き方の改革活動を通じて社員一人ひとりが潜在的な能力を高め、より高い次元、難易度の高いビジネスを実行したり、チャレンジしたりすることでその価値が具現化し、当社の事業の成長や社会価値の提供に寄与することになると考えております。
    その実現施策として、当社が求める「プロフェッショナルIT人材」・「コーポレートスタッフ人材」をキャリアフィールドとして定義しました。そしてそれに基づいて社員一人ひとりが目指す方向性や目標とするキャリアに対して育成計画を作成し、PDCAサイクルを実践することで人材育成の強化・促進を図っております。また、社員が果敢にチャレンジできる機会を創出し、並行してフォロー・サポート体制や報奨面の制度を充実させるなどして、実行性・実効性の向上に努めています。さらに、新卒・中途採用の強化を図るとともに、ウェルビーイング経営のもとで役割と実績に基づく適切な処遇を行うために人事制度体系整備を進め、当社の健全で持続的な成長を支える高付加価値人財の確保を目指します。
  • ②品質向上の取り組み
    当社の主要サービスであるシステム開発事業は、プロジェクト管理の不備による顧客満足度の低下や予期せぬ不採算案件の発生による収益低下リスクが懸念されます。これを回避するために品質推進部を事務局とするシステム開発会議を設置し、顧客事業や当社経営に影響を及ぼしうる高リスク・重要度の高いプロジェクトを洗い出して案件内容や進捗状況、課題・リスクを全社で共有しております。システム開発会議では、提案・見積時のみならず工程毎の状況の点検プロセスを設け、次工程への進行可否判定等を通じて課題やリスクに適時・適切な対策をとるようにして不採算リスクを統制しています。
    今後も継続的に品質マネジメントシステムを改善し、品質を確保して顧客満足度を向上させるとともに、不採算案件の低減に努めてまいります。
  • ③ガバナンス体制の整備
    前述の重点施策の実施をはじめ、市場や顧客に満足いただけるソリューション・サービスを提供し続けるために、公正かつ効率的な経営を支えるコーポレートガバナンスを重要課題と捉え、その充実に努めております。当社のガバナンス体制は、監督・モニタリング、適正かつ機動的な意思決定に資するだけでなく、会社の経営プロセスを有効かつ効率的に機能させるために多面的な助言を行うことで、その実効性を高めております。特に事業戦略、人事戦略、コンプライアンス、セキュリティといった重要課題に対する経営の取り組み状況に注視し、対策の補強や適正化に貢献しております。また、パンデミックや、その他災害への対策、地政学的リスク等を加味した事業継続プログラム(BCP)の改善も進めていくことで、持続可能な運営に努めてまいります。
3)サステナビリティ経営の実践

当社グループは、経営理念に基づき、社会発展のために果たすべき義務や役割を理解し、社員一人ひとりが事業や地域貢献などの活動を通じて企業価値向上と社会課題解決の双方の実現を目指しております。また、その基盤となるコンプライアンスの実践を重要な経営課題の一つとして位置づけ、「法令や規則を守ること」に留まらず「会社を取り巻く全てのステークホルダーの信頼に応えること」としております。
この考え方に基づいて、これまで培ってきた強固な「財務資本」と多様な「非財務資本」を活用し、ビジョン実現に向けた事業活動を通じて持続的な社会の発展に貢献し、企業価値向上を図る仕組みを価値創造モデルとしています。社会課題の解決にあたっては、経営の基本姿勢である「Communication & Mutual Respect」のもと、ステークホルダーとの対話によってその声を経営に活かして価値創造モデルを適正に循環させるとともに、社員と会社が共に成長し、共に成果を分かち合うウェルビーイング経営を志向してまいります。そして、活気ある住みよいまちづくりと地域社会発展への貢献や環境にやさしい経営の実践、企業活動における人権尊重等にも取り組んでまいります。
当社グループは、これからもステークホルダーとの対話を通じ、サステナビリティ経営を実践してまいります。

(ご参考)

サステナビリティ経営・価値創造モデル

連結計算書類