事業報告(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)
1. 企業集団の現況に関する事項
企業集団の事業の経過及びその成果
全般的概況
売上収益
当社グループの経営指標である為替一定ベース(注1)のcore revenue(注2)は、前年度比8.4%増となりました。また、売上収益は、プライシング効果に牽引されたたばこ事業及び加工食品事業における着実な増収により、前年度比10.9%増の3兆1,498億円となりました。
調整後営業利益、営業利益及び当期利益(親会社所有者帰属)
当社グループの経営指標である為替一定ベースの調整後営業利益(注3)は、主にたばこ事業が牽引し、前年度比7.5%増となりました。また、調整後営業利益は、コスト関連通貨高及び一部新興国通貨安による為替影響がネガティブに発現し、前年度比3.3%増の7,519億円となりました。
営業利益は、調整後営業利益の増加により、前年度比3.7%増の6,972億円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の増加を、金融損益の悪化等が上回り、前年度比3.9%減の4,634億円となりました。
当社グループの経営指標

全社業績

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(注)
- 為替一定ベースは、たばこ事業における当期の調整後営業利益、core revenue又は自社たばこ製品売上収益から、前年同期の為替レートを用いて換算・算出した為替影響及び一定の方法を用いて算出した一部市場のインフレに伴う売上又は利益の増加分を除いたものです。
- core revenueは、自社たばこ製品売上収益、医薬事業・加工食品事業・その他の売上収益の合計です。
- 調整後営業利益は、営業利益+買収に伴い生じた無形資産に係る償却費+調整項目(収益及び費用)です。なお、調整項目(収益及び費用)はのれんの減損損失±リストラクチャリング収益及び費用等です。




事業別の概況
たばこ事業

当年度におきましては、約2/3の市場における継続的な市場シェアの伸張、RRP販売数量(注1)の二桁成長により総販売数量(注2)は前年度比2.4%増の5,529億本となりました。Combustibles販売数量(注3)は、主にWinston及びCamelの伸長により、前年度比2.0%増の5,419億本となりました。RRP販売数量は、Ploom販売数量がグローバル全体で前年度比40%増加したことに加え、日本においても前年度比33%増加したことにより、前年度比24.2%増の109億本となりました。
自社たばこ製品売上収益(注4)は、全クラスターにおいて発現したポジティブな単価差/商品構成影響1,975億円、EMA(注5)を中心としたポジティブな数量差影響290億円及び円安によるポジティブな為替影響により、前年度比12.1%増加しました(為替一定ベースでは、前年度比9.1%増)。RRP関連売上収益(注6)は、RRP販売数量の増加により前年度比21.1%増加しました。
調整後営業利益は、ポジティブな単価差/商品構成影響及びVector Group Ltd.(以下、「VGR社」)の買収効果が、Ploomの地理的拡大に向けた投資強化及びインフレに伴うコストの増加影響を相殺し、前年度比5.6%増の7,918億円となりました(為替一定ベースでは、前年度比9.7%増)。

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(注)
- RRP(Reduced-Risk Products)は、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品です。
- 総販売数量は、水たばこ/製造受託/RRPデバイス及び関連アクセサリーを除くたばこ製品の販売数量です。
- Combustibles販売数量は、水たばこ/E-Vapor/無煙たばこ(Snus・ニコチンバウチ)/加熱式たばこ/製造受託を除くたばこ製品の販売数量です。
- 自社たばこ製品売上収益は、物流事業/製造受託等を除く売上収益です。
- JTグループのたばこ事業をより深く理解していただくために、同事業を3地域のクラスター(Asiaは日本を含むアジア全域、Western Europeは西欧地域、EMAは東欧、中近東、アフリカ、トルコ、南北アメリカ大陸及びGlobal Travel Retail)に区分けしたものです。
- RRP関連売上収益は、自社たばこ製品売上収益の内訳としての、RRPデバイス/関連アクセサリー等を含むReduced-Risk Productsの売上収益です。
Ploomの進捗
- 日本におけるHTS(注1)カテゴリ内シェアは、2024年度第4四半期時点で前年同期比1.7%増の12.6%に伸張
- 地理的拡大も順調に進捗しており、2024年末の展開市場数は24市場に到達し、グローバルHTS総需要の約75%を占める市場で展開
- 2025年末までにグローバルHTS総需要の約80%をカバーするというターゲットに向けて順調に進捗


継続的なGFB(注2)・市場シェアの伸張によりCombustiblesは堅調
- 2024年度は60以上の市場で販売数量が伸長。GFBの販売数量は6年連続増加し、総販売数量の73%を占める
- VGR社買収により、米国内の紙巻たばこシェアは2024年度第4四半期時点で8.2%に到達し、米国内での市場シェアは第4位となる


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(注)
- HTS(Heated tobacco sticks)は、高温加熱型の加熱式たばこです。
- GFB(Global Flagship Brands)は、Winston、Camel、MEVIUS、LDの4ブランドです。
医薬事業

医薬事業につきましては、次世代戦略品の研究開発推進と各製品の価値最大化を通じ、当社グループへの利益貢献を目指しております。
開発状況としましては、現在当社において11品目が臨床開発段階にあります。
ブイタマー®クリーム1%(JTE-061(一般名:タピナロフ))につきましては、アトピー性皮膚炎及び尋常性乾癬を適応症として2024年6月24日に国内製造販売承認を取得し、8月15日に薬価基準に収載され、10月29日より販売を開始しました。また、JTE-061は、2歳以上12歳未満の小児アトピー性皮膚炎患者様を対象とした臨床試験の成績を踏まえ、国内製造販売承認申請を目指しています。
delgocitinibにつきましては、導出先であるデンマークのLEO Pharma社が、成人患者に対する中等症~重症の慢性手湿疹を適応症として米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)に提出した承認申請が2024年9月23日に受理されました。また、成人患者に対する中等症~重症の慢性手湿疹を適応症として2024年9月23日に欧州委員会(European Commission:EC)の承認を取得しました。
当年度における売上収益は、当社の連結子会社である鳥居薬品株式会社において、皮膚疾患領域及びアレルゲン領域における売上が伸長したものの、2023年に発生したJT導出品ライセンス契約に係る一時金収入の剥落等により、前年度比0.4%減の945億円となりました。
調整後営業利益は、売上収益の減収に加えて研究開発費の増加により、前年度比47.0%減の92億円となりました。

ブイタマー®クリーム1%
臨床開発品目一覧(2025年2月13日現在)
加工食品事業

加工食品事業につきましては、冷食・常温事業、調味料事業に注力し、収益力の向上に取り組んでおります。
当年度の冷食・常温事業におきましては、注力している冷凍麺、パックごはん、お好み焼等は引き続き国内市場において高いシェアを維持するとともに、更なる競争力強化に向け、家庭用新製品25品、リニューアル品53品を発売しております。2024年に発売50周年を迎えた冷凍うどんを含む冷凍麵類は「冷凍麺世界売上No.1」(注)としてギネス世界記録™に認定されました。調味料事業におきましては、主力商品群である外食店向けラーメンスープの素を中心に、ラーメン関連商品(ガラスープ・香味油等)の販売に注力するとともに、洋食調味料2品を発売し、幅広い分野の味づくりに取り組んでおります。
また、原材料費の高騰等が続き、事業に対してネガティブな影響がありました。そのような厳しい事業環境においても、生産性向上やコスト削減等の継続的な取組みに加え、出荷価格改定を実施し、利益の創出に最大限努めてまいりました。
当年度における売上収益は、冷食・常温事業を中心とした価格改定および外食市場の回復等を背景とした調味料事業における販売の伸長により、前年度比2.2%増の1,572億円となりました。
調整後営業利益は、原材料費の高騰による影響等があったものの、価格改定効果を含む増収影響等により、前年度比17.8%増の81億円となりました。
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(注)
- パスタ除く、記録名:最大の冷凍麺ブランド(最新年間売上)、対象期間:2023年1~12月



2. 企業集団が対処すべき課題
(1)経営の基本方針
当社グループの経営理念は、「4Sモデル」の追求です。これは「お客様を中心として、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく」という考え方です。
当社グループは、「4Sモデル」の追求を通じ、中長期に亘る持続的な利益成長の実現を目指しています。持続的な利益成長のためには、お客様に新たな価値・満足を提供し続けることが前提となることから、中長期的な視点に基づき、将来の利益成長に向けた事業投資を着実に実施していくことが肝要と考えております。
この「4Sモデル」を追求していくことが、中長期に亘る企業価値の継続的な向上に繋がると考えており、株主を含む4者のステークホルダーにとって共通利益となるベストなアプローチであると確信しております。
また、自然・社会・個人の様々なスケールで非連続な変化が起こり、事業環境の不確実性・複雑性がますます高まっている状況下において、当社グループが持続的な存在であるための方向性を明確にするものとして、JT Group Purposeを策定しております。具体的には、当社グループが未来において社会から求められ、かつ、長期に亘り価値を発揮し続けていくべき領域を「心の豊かさ」であると同定し、この領域を任され、貢献し続けていきたいとの考えから「心の豊かさを、もっと。」をJT Group Purposeとしています。加えて、JT Group Purposeの実現に向けて、各事業においてもこれを踏まえた事業Purposeを策定しております。事業戦略の遂行及び行動指針の実践を通じて、成果を創出し、実績を積み上げていくことにより、JT Group Purposeの実現を目指します。
時代や人により、多様で、変化していく「心の豊かさ」の領域を、今後も社会から任され、貢献できる存在であり続けるため、当社グループは絶えず進化してまいります。
<事業Purpose>
- ・たばこ事業:Creating fulfilling moments. Creating a better future.
- ・医薬事業:科学、技術、人財を大切にし、患者様の健康に貢献します。
- ・加工食品事業:食事をうれしく、食卓をたのしく。

(2)中長期的な会社の経営戦略及び課題
当社グループの中長期の経営資源配分は、「4Sモデル」及びJT Group Purposeに基づき、中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資(注1)を最優先とし、同時に事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視する方針です。
当社グループは、たばこ事業を利益成長の中核かつ牽引役と位置付け、たばこ事業の持続的な利益成長に向けた事業投資を最重要視します。一方、医薬事業及び加工食品事業は全社利益成長を補完すべく、必要な投資を実行していきます。
各事業の中長期の目標は以下のとおりです。

当社グループは、不確実性を増す経営環境を見極め、スピード感を持って競争力を強化すべく、期間を3年間とした経営計画を1年ごとにローリングを行う方式で策定しており、経営理念及び経営資源配分方針を踏まえ、全社利益目標及び株主還元の中長期の方向性を「経営計画2025」において設定しています。
「経営計画2025」における全社為替一定ベースの調整後営業利益の成長率は、たばこ事業において持続的なプライシング効果の発現、RRPの損益改善に加え、Vector Group Ltd.(VGR社)買収による貢献等により、年平均Mid to high single digitのレンジ後半となる年平均High single digit(注3)を見込んでおります。なお、中長期的に持続的な利益成長を追求していくことに変わりはありません。中長期に亘っては、引き続き全社為替一定ベースの調整後営業利益の年平均Mid to high single digit成長を目指してまいります。
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(注)
- たばこ事業の成長投資を最重要視し、お客様・社会への新たな価値・満足の継続的な提供を通じて、質の高いトップライン成長を実現することで、為替一定調整後営業利益の成長を目指す。
- Mid to high single digit:一桁台半ばから後半のパーセンテージ
- High single digit:一桁台後半のパーセンテージ